カタナのシートに横向きに座り、シロはぼんやりと人が行きかうのを見ていた。
東京の行き着けの店で仕入れてきた刻み煙草は、そろそろ尽きようとしている。N市で刻み煙草が置いてある店など知るはずもなかった。ここは自分の街ではない、自分がいる場所ではないのだ。
頬杖をつき、ぼんやりと眺める視線の先には提灯がぶら下がっていた。行き交う人は、黒い服を着ていた。
「まだ帰ってなかったのか?」
「そういうお主こそ」
振り向きもしなかったが、それが雪之丞であることは分かっていた。
「死者に引き摺られ、呪縛からは脱すること適わず……か」
「例の禁術書の一文か?」
「そうでござる。霊を弄んだものは、霊によって縛られ、永遠にこの世を彷徨う。魂の呪縛が続き、いつしか自分が操られる存在へと変わる」
雪之丞は煙草を咥えると、シロの腰につけてあるタマモンで火をつけた。
「それが分かっていて、見逃したのか?」
「男が決めたことでござる。拙者には口出しする権利はござらんよ」
「まぁな。俺がお前の立場でも、同じことをしただろうな」
紫煙をゆっくりと吐き出した。立ち昇る煙は、雪之丞なりの送り火のようであった。
「昨夜、古井澄から理事職の辞退願が出されて受理されたそうだ。ヨーダの専属は続けるが、息子は即日イギリスへ留学した。親の力の届かないところで鍛えてもらうんだと」
「政治だけだは役に立たない世界でござるからな。身をもって知ったのでござろう」
「ヨーダの方も、この件はさすがに全部は握り潰せなかったようだな。なんせラキシスの製造ラインとストックが潰れちまったからな。火災として処理され、責任者の氏川は更迭。さすがに現場を見た人間はあれが火事なんかじゃないと分かるからな。とりあえずの形で更迭となってはいるが、見返りに三年後の本社復帰時には重役のイスが待っているそうだ」
犬歯が、ぎしりと音を立てた。
「そして今朝、社長の依田耕吉が辞任した。業績悪化の責任を取るんだと。経済誌の連中の推測では退職金は一億くらいという話だ。後任には息子の専務が繰り上がり、結局何も変わらないままだな」
ぼんやりとしていた目が鋭くなった。斎場の中に入った人間を睨みつけている。
その男は受付に香典を渡し記帳すると、祭壇に向かい手を合わせた。遺族に頭を下げ、何やら話しているがそれが耳に入ってくるだけでも苛立ちを覚えた。
遺族は男に頭を下げるものの、握り締めた手がすべてを物語っていた。
斎場の外に出た。途端に嫌そうに鼻息を荒げると、舌打ちをして足早に立ち去った。氏川であった。
「何も変わらない……そう、何も変わらないでござるよ」
犬歯に舌を這わせると、そう呟いた。
「お前、何考えてやがる……」
「伊達殿……会長殿は本物の大狸でござるよ」
ゆっくりと雪之丞の方を振り向いた。
「正気か? お前」
「正気でござるよ。会長殿は、『好きに遊んでこい。ケツは全部持つ』といったでござるよ」
右肩を上げ霞丸を揺すってみせると、細くした目を大きく見開いた。
雪之丞は息をつくと、頭を掻いた。
「あの髭狸、こうなる事はお見通しだったってワケか……人の思惑に乗せられるってのは、俺のポリシーに反するんだが今回だけは乗せられてやるか」
咥えていた煙草を携帯灰皿に押し付けると、氏川の後を追った。その後ろ姿を見送ると、斎場に目を向けた。
真田の姿が見えた。息子と同じ作業服を着た真田は、シロの顔を見るとにっこりと笑った。
ったく面倒な。迷惑な話だ。
来週には地方へ転勤のため、仕事の申し継ぎや引越しの準備がある。下請けの通夜になど出席するのは時間の無駄だと氏川は考えていた。
呟きながら、表通りに向かった。斎場のある通りだと流しのタクシーが通っていなかったためである。
「三年我慢すれば、俺も重役か……まったく、テロ様々だな」
下卑た笑いを口元に浮かべた。
「別に我慢しなくてもいいんだぜ」
低い声が耳に入ると同時に氏川の体から力が抜けた。
首筋に霊力を流し込み麻痺させたのだ。スタンガンの応用ではあるが、スタンガンと違い跡は残らない。
氏川を担ぎ上げると、人目につきにくいビルの上へと駆け登った。
景気が悪いせいか、高いビルでも入居者は少なかった。おあつらえ向きに、ヨーダ・ラキシスの看板が影となり、下からは見えなかった。
靴を脱がせ揃えると、礼服の襟を掴み看板の端から吊るし上げた。気付けの変わりに霊力を流した。氏川は目を覚ましたが、現状を理解できないらしく辺りをきょろきょろと見渡している。
「ようやく起きやがったか」
自分の方を向けると、口の端を緩めた。
足が宙に浮いていた。数回動かすと、自分がどのような場所にいるのか、ようやく理解できた。
「おろせ! おろしてくれ!!」
「いいのか? このままおろして」
手を緩めると、氏川は慌てて雪之丞の手に捕まった。
「どうした? もっと景色を楽しんだらどうだ、人を見下ろすのが好きなんだろ?」
「違う! これは違う」
「贅沢の多い奴だぜ」
摘み上げると、看板の端に下ろした。そのまま手を放すと、細い看板の縁を地面の上のように歩いていった。
「お、おい、待てよあんた。俺を置いていくのか?」
両手両足を使い看板にしがみついた氏川は、震える声を絞り出した。
「さっきもいったろ? オメェ人を見下ろすのが好きなんだろ、しっかり楽しめよ」
「何のことだよ! 俺はしがないサラリーマンだぞ」
「そのサラリーマン様は、天下のヨーダ自動車の看板で下請けを見下してきただろ」
「俺だけじゃないだろ! 誰だってやってるじゃないか」
「赤信号、みんなで渡れば怖くないってか? それがヨーダの方針だというのか?」
足を止め、ゆっくりと振り返った。
「そうだ。誰が好き好んであぁいうことやるっていうんだ」
その言葉に目を細めると、口元を緩めた。
「会社のため、そして家族のためか」
「そ、そうだ。俺にも家族がいるんだ、食わせていかなきゃいけないだろ」
星の見えない空を見上げると、口元を裂けるように開けた。
「恐ろしい生き物だな、お前らリーマンってのはよ。善悪は別にして、強盗殺人の方がよっぽど人間らしい。欲にとり憑かれていやがるからな」
「仕事だ、仕事なんだよ。仕事じゃない限り、そんなことはやらない」
口を開けたまま、三白眼を見開いた。
「月数万の給料アップのために、大勢の人生狂わせて、人殺しておいて会社のせいか……人として、いや生き物として終ってるな、お前らは」
「俺じゃねぇ!! あいつらが勝手に死んだんじゃねぇか! 別に死ぬほどのことじゃないだろ!」
頷き、3歩ほど氏川に近づいた。
「確かにそうだな、死ぬほどのことじゃねぇ。俺も鬼じゃねぇからな……そこでだ、俺とお前の距離が5歩。お前が俺のところまで来ることができたら、ここから下ろしてやるよ」
「ほ、本当か?」
「嘘はつかねぇよ。閻魔に舌抜かれたくねぇからな」
顔を引きつらせて氏川が笑った。
ゆっくりと立ち上がり、震えながら足を踏み出した。
「ところでよ、お前が勝手に死んだと思っている連中は、お前のことどう思っているんだろうな……」
「し、知らねぇよ。大会社に勤めるってのは、恨まれてナンボだからな」
「だろうな」
雪之丞は氏川の足元を見ていた。
二歩目を踏み出した。足が動かない。バランスを崩し、両手を看板についた。ビルの外側へと引き摺られるような感覚に陥った。
力の方向に目を向けた。何十もの白い手が体に絡みつき下へと導いていた。ビルの下は、光りが一切ない闇であった。
「な、なんだ!? なんだこれは?? や、やめろよ、やめてくれよ!!」
「勝手に死んだ連中だよ、成仏できないで彷徨っているようだな。お前も一緒に彷徨えってよ」
「騙したな! 貴様、騙しやがったな!!」
「騙しちゃいねぇよ。その連中はずっとお前にへばりついていたんだよ。勝手に死んだっていってた割りには、えらく執着しているご様子だな」
「知らねぇ……そんなの知らねぇよ!!」
「知るも知らねぇもねぇよ、その手が全てを物語ってる……生者と違って、死者は嘘はつかねぇんだよ」
体が看板からずり落ち、看板の縁に両手で掴まった。
「お前がどう言い訳しようと、連中はそうは思ってくれねぇようだな」
ヨーダの看板から引き摺り下ろされた。氏川の体は白い手に導かれ、闇の中へと消えていった。闇はどこまでも暗く、そして深く続いていた。
黒いラキシスがN市を走っていた。
バイパスから片道2車線の道に入ると、混みだして来た。迂回すると、パトカーと救急車が止まっていた。
「これが原因みたいですね、事故でしょうか?」
運転手が野次馬の隙間を覗いた。
「関係ない。前を見て運転したまえ」
依田耕吉は不機嫌にそう言い放った。
ふと上を見上げると、ラキシスの看板があった。
「まったく縁起でもない」
己の会社の真下で事故を起こされては、迷惑だといわんばかりであった。
「社長」
「もう社長ではないよ」
即座に返されると、運転手は頭を数回下げた。
「相談役、明日のご予定は」
「八時の飛行機で東京だ、経団連の会合がある。この不況のせいで雇用法を騒いでいるからな、それの対応だ。私がいないと全てが回らない、それは今までと何も変わらんよ」
「お忙しいのは、お変わりございませんね」
「私がいなくては、今の日本はありえんよ。経済なくして国の繁栄はない。大衆は中々それを理解してくれない、我々のような大企業があってこそ、庶民が生活できるということがね」
街灯が少なくなり、車の量も減ってきていた。住宅街へと入ったようである。
「だが日本はまだマシな方だよ、アジア諸国にいくとすぐにデモだ反乱だと……教育が行き届いていないところは、まったくもって野蛮極まりない」
不愉快そうにいうと、大きく息をついた。
ラキシスのエンジンが急に愚図りだした。回転が落ち込み、アクセルを踏み込んでも反応を示さない。
「どうしたのかね?」
「いえ、ちょっと」
ギアレンジを変えても、それは変わりなかった。前照灯やエアコンはついている。どうやらエンジントラブルのようであった。
エンジンが完全に止まると、運転手はセルを回し再始動を試みたがセルの音だけが響くだけであった。
「申し訳ございません。エンジンの方ががかかりません」
運転手は依田に頭を下げると、携帯電話を取り出した。
「すぐに代わりを寄越しますので」
「いい。家はすぐそこだ、これくらいは歩いていく」
眉を歪ませると自分でドアを開けた。慌てて運転手が降りるが一瞥もしなかった。
「明日は早いんだ。別の車を寄越しなさい」
鞄を手に高級住宅地を歩き出した。
「はい。申し訳ございませんでした」
運転手は何度も頭を下げて依田を見送った。靴音が遠ざかると、連絡を取ろうと携帯電話を開いた。
「あれ? 電池切れかな?」
通話ボタンを押しても、イルミネーションが光ることはなかった。辺りを見渡すが、公衆電話などはなかった。
「たしか、公園かコンビニがあったな」
ラキシスに鍵をかけると、路地の方へと歩き出した。
車が停まってしまった場所から、自宅まで僅か100メートルほどであった。
右手に鞄を持ち、依田は久しぶりに自分の足を使って歩いた。老眼の入った目では、よくは見えないが、だいぶ先にバイクが止まっていた。アイドリングの音は聞こえるものの、人の姿は確認できなかった。
「オートバイ、暴走族か? アイドリングゼロの時代だというのに、まったく新聞くらい読んどらんのか」
鼻で笑うと、足を進めた。
自分の家の門が見えた。歩を進める度に、足が重くなっていった。アスファルトの上のはずなのに、靴音がしない。まるで泥の中を歩いているようであった。
足元を見た。靴が見えない、アスファルトよりも黒いものに包まれていた。その中から無数の白い手が現れ、依田の足を掴んでいた。声を出そうとすると、白い手に口を塞がれた。背中から何者かに抱きつかれ身動きすらできなくなった。
赤と銀のカタナがアイドリングをしている側に、シロは座っていた。
煙管を悠然と燻らせ、ゴーグル越しの夜空を眺めた。星さえも見えなかった。煙を吸い込むと仄かに光り、白い肌を赤く照らした。煙をゆっくりと吐き出すと、煙管を携帯灰皿に叩きつけ立ち上がった。
「いったいどれだけの人生を狂わせ、どれだけの屍を踏みつけたら満足するのでござろうな。企業という化物は」
カタナに跨ると、霞丸を左手で抜いた。
「介錯つかまつる」
蒼白い刀身が現れる。鈍く重い光りを放った。シロは柄から刀身をゆっくりと見上げると、舐めるように正面に顔を向けた。正面に人影がみえる。依田耕吉である。
口元が裂けるように開き、牙を剥きだした。
誰かいる。先ほど小ばかにした暴走族にさえ助けを求めようとしていた。
空気が陽炎のように震え、歪んでいる。依田は、一瞬にして凍りついた。野性の獣が正面にいる。いくら現代社会において金や権力という文明の力を使おうとも、野性の獣の前では無力である。人間いや動物としての本能が危険を察知し、逃げ出そうとした。だが体はぴくりとも動かなかった。
アイドリングの音が獣の唸り声のように聞こえる。ライトが照らされ、唸り声から咆哮に変わった。
依田に向け加速するカタナ。霞丸の切先を下げると、シロの霊力に呼応するかのように鈍い光を増し放電するかのように火花が飛んだ。
依田の顔が恐怖に引きつる。
霞丸を振り上げた。
ライトに照らされ、依田の蒼白な顔が大きくなる。その後ろに真田の姿があった。
アクセルを開けカタナを加速させると、霞丸を真一文字に振り抜いた。
何も手応えはなかった。
そのままの速度で、カタナは住宅街を駆け抜けていった。
真田の霊体は四散し、依田に取り付いていた手は消えていった。黒い闇も消え去り、無傷な依田だけがその場にとり残された。
N市の郊外に差し掛かると、黒い影を見つけた。
「そこの小っこくて人相悪いアンちゃん、どこまでいくでござるか?」
「逆ナンか?」
雪之丞が振り返った。
「東京までなら送っていくでござるよ」
ニヤリと笑うと、リアシートに跨った。結構必死に足を上げた。
ゆっくりとカタナが走り出した。夜の部の車が動き出しているようである、トラックが多かった。
「終ったでござるな」
「あぁ終った……終ったけど、何も変わりはしねぇ」
分かっているといわんばかりに、シロはカタナを加速させた。
『訃報です。前ヨーダ自動車取締役社長、現相談役の依田耕吉さんが昨夜脳溢血のために亡くなりました。75歳でした』
テレビから流れてくるニュースに一瞬だけ目を向けると、東方はコーヒーをテーブルの上に置いた。
『なお依田氏が在職していた経団連理事には、ヨーダ自動車社長の依田耕作氏が就任するとの事です。では次のニュースです』
ソファーに座り、葉巻をシガーカッターで切ると卓上ライターで火をつけた。
「脳溢血ってことは、首落としやがったな」
葉巻の煙を燻らせた。カップがソーサーごと細い指で持ち上げられた。
「霞丸……物体には影響を与えず、霊魂だけを斬り裂く。時代の支配者に恐れられた霊能者だけが操れる妖刀。霊魂が死んでしまっては、肉体が無傷でも意味を成しませんからね」
美神美智恵は優雅な手つきで、カップを口に運んだ。
「なぜシロちゃんにこんな仕事を? あんな刀まで与えて」
カップをテーブルの上に置いた。東方はゆっくりと葉巻を燻らせた。
「企業って生き物はよ、イナゴの群れと一緒だ。食い物が無くなると、別の土地に移動して食い散らかしてしまう」
「人の土地だけでは済まないと?」
「あぁ。実際に協会に持ち込まれた仕事で、この時代に大妖が出てきやがった。この分じゃ、魑魅魍魎だけでなく間違いなく神魔ともめる。へたすれば戦争だ」
「企業にとっては、土地は土地ですからね。大金を積んで紙一枚で何をやってもいいと思っていますから」
「人ってのは見合っていない力を与えられて生まれてこねぇ。俺らGSの能力だって、普通に足が早いとか、手先が器用とかその程度だ。そう思っている奴にしか神に与えられちゃいねぇ。見合ってない力を手に入れるから、おかしなことが起こるんだ。バカな上司とか、自分を大物と勘違いした爺ぃとかな」
葉巻の灰を、灰皿に落とした。美智恵が僅かに口元を緩めた。
「相応しくない奴に権力というものを与えてみろ、結果は毎日のように新聞を賑わせている」
「ご高説は尤もですが、質問の答えにはなっていませんわ」
今度は東方が笑った。
「自分がやりたかったとでもいいたそうだな」
「ご想像におまかせしますわ」
笑みを浮かべたまま、カップを手にした。
「俺の次は唐巣、その次はあんたか西条。そしてその次があんたの娘か小僧だ。神魔と戦争を避けるためには、それしかない」
「えぇ。他の人がやったのでは、国や企業を抑え切れません。おそらく懐柔されてしまうでしょうね」
「俺の次は唐巣なんだぜ、唐巣がこういうことをやれと命令できるか?」
美智恵の目が鋭くなると、東方を睨んだ。
「できませんね。黙認はするでしょうけど、行けとはいえないでしょうね……だから自主的にやれと?」
東方がようやくカップに口をつけた。温くなっていた。
「犬塚は人狼だ。侍の心を持ち、仁義や忠誠心に厚い。そして妖怪いや自然の獣そのものだ。奴以上に相応しい人選は無ぇと思うぞ」
「確かにそうかもしれませんが……」
「今から鍛えておかねぇと間に合わねぇんだよ。時間が無ぇ。唐巣の就任にも、時代にも……だ」
葉巻を燻らせ、目を細めた。
「確かに時間は足りませんね。ですが、それだけでは何も変わりませんわ」
「そう、何も変らない。ヨーダにしても経団連にしても次がでてきて、何も変らない。変らなくていいんだよ……遅らせることができればな」
「時間稼ぎ……ですか」
「あぁ、時間さえ稼げれば時代は変る、小僧の時代になれば変るさ。あんたの娘と小僧、そしてその子供の時代」
「人柱になると?」
「年寄りにできるのはそれくらいだろ?」
「私はまだ若いですわ」
澄ました顔でカップに口をつけると、どちらからともなく笑った。
「ところで、雪之丞君の選出は?」
「こういう汚れ仕事に慣れてるだろ」
口元が緩んでいた。
「本当のところはどうなんです?」
美智恵の口元も緩んでいた。
「あいつ単純だろ? 単純バカの方が間違い無ぇんだよ、判断はっきりしてるから」
二人とも声を出して笑った。
インライン4のエグソーストノートが聞こえた。東方は立ち上がると窓の方に歩いた。
「帰ってきやがったな」
窓の外を見ると、シロと雪之丞がこちらを指差し、中指を立てて何か抗議していた。
「伊達も一緒か。美っちゃん見てみろ、犬塚の奴一丁前に文句いってるぞ」
庭先で子供のようにシロが騒ぎたてていた。嬢ちゃんとは言わなかった。
――― 終わり ―――
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