沈みゆく夕日が、辺りを真っ赤に染めていた。
その赤に何を見たのか、兵部京介は飛行速度を緩めほんの数秒ほど足下の海に黙祷する。
先を急ぎテレポートと飛行を繰り返し訪れた南の海。
そこに眠る友人たちに、彼はエスパーの悲劇を繰り返させないことを約束していた。
「ただのお参り・・・・・・という訳じゃ、無さそうね」
聞き覚えのある女の声。
その声に黙祷を中断すると、兵部はゆっくりと声のした方を振り向く。
そこでは、壷見不二子が油断無き目でじっと彼を見つめていた。
「久しぶり、不二子さん・・・・・・」
バベル管理官と脱走エスパーである兵部の出会いは、驚くほど静かだった。
彼には逃走や戦闘をする気など毛頭ない。
今では敵対関係を結んではいるが、足下に眠る者たちにとって彼と不二子は仲間のままなのだろう。
「ここ十年ほどあなたが大人しくしていたからね・・・・・・おかげでゆっくり眠れたわ」
それは不二子にとっても同じなのか、彼女もすぐには行動をおこさず兵部の動きを待つ。
しかし、彼女の瞳には沖合に浮かぶ島に彼を近づけまいとする、強い意志がうかがえてもいる。
その島には不二子に教育されるべく拉致された皆本と、彼を追いかけてきた【ザ・チルドレン】の3人がつかの間の休息を味わっていた。
「不二子さんが見張っているなら心配は無さそうだね・・・・・・どうせ、僕を先に行かせるつもりは無いんだろう?」
「あら、良く分かってるじゃない。どういう風の吹き回しかしら?」
踵を返した兵部に不二子は意外そうな顔をした。
その言葉に、不二子が迫りつつある危機に気付いていない可能性を考えた兵部は、帰る足を止め、必要最低限の情報を彼女に与えようとする。
「何やらきな臭いことが色々とあってね。あの子たちのことが少し心配になっただけさ・・・・・・」
「アジトの武器庫が爆発したことかしら? ウチの運用主任を撃ったのは、あなたの所のエスパーじゃないってこと?」
「さあね・・・・・・」
先程起こったばかりの出来事を入手していた不二子に、兵部は余計な心配だったとばかりに肩をすくめた。
本来なら気付かれないはずの自分の接近。
それにいち早く彼女が気づいたのは、彼女なりに警戒を強化していたのだろう。
人間として抜けている所は多々あるものの、自分とは異なる独自の理屈で危機を回避する不二子の直感を、兵部は不本意ながら評価している。
しかし、面と向かってそれを言う気のない彼は、憎まれ口を一つ残しテレポートの体勢に入った。
「だけど、これだけは言っておくよ。エスパーを食いものにする奴らがいることは確かだ。不二子さんがあの子たちを守れないようなら、いつでも僕がその役を代わるからね」
「あの子たちの中には、ドリーちゃんも入っているのかしら?」
テレポートの発動を止めたのは、不二子の口にした少女の名前だった。
「・・・・・・あの子をどう思う? 出来ることならクィーン・・・薫に近づけて貰いたくないんだけどね」
「同じ、ヒュプノ能力者として気になるのかしら?」
相変わらず鋭い不二子に、思わず出そうになる本音。
だが、ドリーと己の類似点を口にしかかった兵部は、続く彼女の言葉に全く異なる台詞を吐き出すのだった。
「それとも、ウチの皆本君みたいにあなたも、小さい女の子に見境がないの?」
「誰がロリコンのムッツリ助平だっ! あんなノーマルと一緒にするなっ!!」
「あ、待ってっ! 最後に一つだけ聞かせて!!」
真面目に付き合うのが馬鹿馬鹿しいとばかりにテレポートを発動する兵部。
しかし、必死に食い下がる不二子に、彼は自制心を総動員してその場に止まる。
「何か気になることでも?」
「ええ、あなた私のこと、お姉さん・・・・・・って呼んだことあったっけ?」
「
思い出したくもないね」
一文字一文字区切るように吐き捨ててから、兵部は何処かへと姿を消していく。
後に残された不二子は、彼が怒った理由が全く分からないとでも言うように首を傾げるのだった。
「なによ、怒りっぽくなっちゃって! 昔はあんな可愛かったのに・・・・・・でも、あの様子じゃ、呼んでなかったみたいね」
しばし沈黙の後、不二子は吹っ切れたような笑みを浮かべる。
国際社会における日本とエゲレスのパワーバランスや、兵部が口にしかかったドリーの力に関する疑惑。
そして、皆本と薫たちが背負った破滅の未来へと繋がる予知。
それら全ての要素を加味してもなお、最終的に彼女の背を押したのは自身の女としてのカンだった。
「京介・・・・・・あの子たちはあなたの様にはならないわよ。女は強いんだから・・・・・・未だにいじけている何処かのガキと違ってね」
そう呟いた彼女の目からは一切の迷いは消え去っていた。
―――――― 第4のチルドレン【11】――――――
局長室
南の島より帰還してまもなく皆本と【ザ・チルドレン】の3人は、桐壺から緊急の呼び出しを受けていた。
「あ! ばーちゃん」
部屋に入ってすぐ目に入った不二子の姿に、薫たち3人は友人に会ったかのような笑顔を浮かべた。
不二子はにこやかな笑顔でそれに手を振って返すが、桐壺のジト目を受けるとすぐにその手を後ろ手に隠す。
昨日、皆本が謎の美人にキスされ拉致されたという情報を、紫穂が読み取ったことによって始まった一連の追跡劇。
3人の誤解を解き、南の島で親睦を深めた不二子と異なり、情報の隠蔽という嫌われ役を引き受けさせられた桐壺は未だに不機嫌だった。
桐壺はこれから行うのは自分の役割だとばかりに、咳払いを一つすることで皆本たちの視線を自分に集める。
「ゴホン・・・・・・今日来て貰ったのは他でもない。人事についての通達でね」
「え・・・・・・また、人事異動ですか?」
昨日【ザ・チルドレン】の担当を更迭され、南の島に一泊後、直ちに担当に復帰した皆本は、思いつきとしか思えない人事異動に呆れた声をだす。
彼の非難めいた視線を何処吹く風と受け流した不二子は、早く言っちゃいなさいよとばかりに桐壺にサインを送っていた。
もったいつけるように肯いた桐壺は、発令後に起こる反応を期待しつつ重々しい声で通達を口にする。
「本日より【ザ・チルドレン】の1人として、ドリークンを加えることを通達する!!」
通達とともに湧き上がる歓声。
走り込み、抱きついてくる3人を受け止めようと両手を広げる桐壺。
悲しいことに彼の胸に薫たちが飛び込むことは無かった。
「ありがとうな! ばーちゃん!!」
満面の笑みを浮かべた薫が、不二子の豊満な胸へと飛び込む。
その顔に含まれる別な意味の喜びを、紫穂と葵は全力でスルーしていた。
「ホンマ良かった。ドリーちゃん見てると居たたまれなくって・・・・・・」
「・・・・・・女の子の味方って本当だったのね」
「だから不二子を信じなさいって言ったでしょ! で、あなたの気持ちはどうなのかしら? 皆本二尉」
不二子の言葉に、3人は担当である皆本が返事をしていないことに気付く。
彼女たちの視線を浴びた皆本に迷いの表情は無かった。
「了解しました!」
「よっしゃ! 局長ッ!!」
「な、何かね! 薫クン!!」
不二子の胸から離れ、地に降り立った薫に呼ばれ桐壺の顔が再び明るく輝く。
憎しみで人が殺せるなら、不二子が即死しそうな表情をさっきまでの桐壺は浮かべていた。
「このことをドリーはもう知ってるのか?」
「い、いや・・・・・・君たちの意向を確認してからにしようと思ってネ」
「そっか! じゃあ、あたしたちが伝えとくよ!」
「せや! きっと喜ぶやろな」
「それじゃあ、ドリーちゃんへの連絡は私たちにまかせて。いいでしょ!? 局長」
3人からねだるように見上げられた桐壺は、破顔しながら何度も肯く。
テレポートと同時に彼女たちが口にした「ありがとう」の言葉は、昨日の嫌われ役から落ち込み続けていた桐壺の脳髄をとろけさせるのに十分な威力を発揮していた。
「はは・・・・・・すみません。騒がしくって。でも、ドリーのことは僕も同じ気持ちです。ありがとうございました」
深々と頭をさげた皆本に、幸せいっぱいだった桐壺の表情に少しだけ影が落ちた。
「そう言ってもらえてよかったよ。私としては圧力に屈する形での編入は気は進まんのだが・・・・・・」
「あの子の背後はちょっとウサンくさいけど〜国際的立場だとどうもウチのほうが立場が弱いのよね〜」
「【ザ・チルドレン】への参加は、前々からドリー本人が希望してたことですから・・・・・・国の思惑は関係ありません」
皆本から引き出した答えに不二子と桐壺はお互いに肯き会う。
2人の表情から察するに、皆本の口にした回答はベストなものだったのだろう。
「良く言ってくれたね。皆本クン! ドリーくんは属する国こそ違うが、我々にとっても大切な宝であることは間違いないっ! それを肝に銘じておいてくれたまえ!」
「本当・・・・・・ステキよ、皆本クン! ここまで筋の通った。小さな女の子好きだったなんて」
「訴えるぞッ! アンタ、うわっ!!」
不二子の度重なるロリコン発言に思わず口にしたツッコミ。
それへの反応として眉間に突きつけられた銃口に、皆本は驚きの表情を浮かべていた。
「なによ〜。不二子、誉めているつもりなのに。はい、コレはご褒美♪ これからは常に持ち歩きなさい」
「こっ・・・・・・これはっ!」
「うむ。ブラスター ―――ノーマルがエスパーを倒せる数少ない武器の一つだヨ! 管理官がこれからの君に是非必要と仰ってね。もちろん、君のエスパーに対する思いを確認した上での話だったが」
「別名【エスパーキラー】・・・・・・僕には必要ありません!」
渡されたブラスターを不二子に押しつけ、皆本は逃げるように局長室を後にする。
伊号の予知を知る不二子はともかく、桐壺のいるこの場で続けたい話題ではなかった。
「ダメよ。あなたはこれを持つべきなの」
ドアをくぐり抜けた瞬間、皆本の目の前に不二子がテレポートしてくる。
彼女はそのまま皆本を念動で捉えると、抵抗できない彼に無理矢理ブラスターを押しつけた。
「そんな・・・管理官はこれがどんな意味を持つのか知っているんですか!?」
「・・・・・・もちろん知ってるわよ。伊号のビジョンに登場するのよね」
「・・・・・・クッ!」
あの日。伊号に未来のビジョンを見せられて以来、何度も繰り返す光景に皆本の顔が苦悩に歪んだ。
その光景の中で皆本は、成長し破壊の女王と呼ばれた薫をブラスターで撃っている。
不二子に持たされたブラスターが、彼の中で何処か信じがたかった予知を急速に現実へと近づけていた。
「このブラスターで僕は薫を・・・・・・そんなものを持つことはできません!」
「ダメよ〜。そんなわがまま。これは極秘開発中の試作機をムリ言って借りてるんだから♪」
「どうしてそんなことを! 管理官はそれを僕に撃たせたいんですかッ!!」
激昂しそうになる皆本の気を逸らすため、不二子はわざと彼に胸を押しつけるように間近に迫る。
「甘いわね・・・・・・その未来を回避するためにも、あなたはそれを持つべきなのよ。常にね・・・・・・」
「・・・・・・未来を回避するために?」
聞く耳を持った皆本にほくそ笑みつつも、不二子はそれを口にはせず皆本の耳元にそっと囁いた。
「命令よ・・・・・・これからは常に持ち歩くこと。それじゃ、任務がんばってきてね♪」
「あ、ちょ・・・・・・」
反論の暇を与えずに不二子は皆本の前から姿を消す。
彼の性格からいって、こう言っておけば少なくとも任務にはブラスターを携行するだろう。
理屈優先の堅物に、それを持つ意義を納得させることを彼女は最初から諦めていた。
いや、彼女自体、論理的な意味づけで今回の行動をとっている訳ではない。
女のカン―――過去、どんなに絶望的な状況も切り抜けてきた感覚を、不二子は今回も信じるつもりだった。
バベル医療研究棟
午後の検診も一段落し、休憩に向かおうとした賢木は、廊下の影から病室の方を覗う少女の後ろ姿にその足をとめた。
その少女が見舞いに訪れることを躊躇していることは、サイコメトリーを行わなくても手に取るように伝わってくる。
昨日運び込まれた患者から一連の出来事を聞かされていた彼は、さりげない風を装いその後ろ姿に声をかけた。
「こんにちは、ドリーちゃん!」
「サカキ・・・・・・先生」
「どうしたの? こんな所で」
「え、あの・・・・・・ドリーは・・・・・・」
「もし、暇だったら、一緒にお茶でも飲まない? これから休憩なんだけど独りじゃ寂しくってさ」
彼は気まずそうな笑みを浮かべながらドリーをお茶に誘う。
彼女が昨日運び込まれた谷崎の病室を訪れたことは、賢木にも分かっていた。
そして、彼女が病室に入りずらそうにしている理由も。
「独り・・・・・・サカキ先生も独りなんですか?」
無意識に口にした、独りという言葉に反応するドリー。
その一言が切っ掛けとなり、賢木はドリーを連れ待合室へと向かっていく。
賢木は見舞いに来たナオミが通りかかるまで、そこで時間を潰すつもりだった。
待合室では数名の入院患者がぼんやりとTVを眺めていた。
賢木は通路を望む一角に脱いだ白衣で席をとると、ドリーをその場に残し自動販売機に歩み寄る。
局長の息がかかった本部待合室とは違い、こちらの飲料はすべて有料となっている。
ドリーに余計な遠慮をさせないよう、賢木はすばやく無難そうな飲み物を購入すると、そそくさと彼女の待つ席へと戻っていった。
「勝手に選んじゃったけど、オレンジジュースでいいかな?」
「はい。ドリー、このジュース好きです・・・・・・」
「はは、そりゃ良かった。本部の待合室でたまに見かけると、良くそれを飲んでいたから・・・・・・」
賢木は安心したように、紙パックのオレンジジュースに口をつけたドリーに笑いかける。
一時、谷崎たちとうまくいっていないと噂される時でさえ、独りジュースを飲む彼女は子どもらしい笑顔を浮かべていた。
「ここでは好きなだけ飲んでもいいって聞いたんです・・・・・・」
「あ、ああ、そうか。あのディスペンサーはバベル職員なら自由に使えるから」
賢木は誤魔化すように自分のジュースにストローを差し込むと、2、3口一気に嚥下する。
濃縮果汁を希釈したごく普通のオレンジジュースだった。
「私の国では、こんなにおいしいジュース飲めませんでした。それがいつでも好きなだけ自由に飲めるなんて・・・・・・」
「はは、気に入ってくれたならなにより・・・・・・でもあまり飲み過ぎないようにな。糖を一度に大量にとるのは体に良くないから」
「はい・・・・・・あの、大切に、少しずつ、飲んでますから・・・・・・」
「いや、そういうことじゃないんだけど・・・・・・」
賢木は調子が狂ったように頭を掻く。
どこか放っておけないドリーの姿に、皆本のまねごとをしてみようという気になったのだが、どうも上手くいかない。
憎まれ口を叩いてくる紫穂の方が、儚げなドリーより何倍も扱い易いと彼は思っていた。
それでは何故と首を傾げるが、彼は答えを出すことが出来ない。
彼はドリーに対し、命を救われた恩義とは別な、何か特別な感情を感じていた。
「少し・・・・・・お話してもいいですか?」
「え! あ、ああ、もちろん」
会話のとっかかりに苦労していた賢木は、珍しく自分から話しかけてきたドリーに笑顔を浮かべた。
通常なら相手の思考を読み、適当に話を合わせることも出来るのだが、彼は自分自身への誓いとしても彼女へのサイコメトリーは禁じている。
賢木は来日したばかりのドリーから、彼女がエゲレスに保護されるまでの状況を読み取っていたのだった。
「ずっと、サカキ先生にお礼を言わなくてはと思ってました・・・・・・ありがとうございます。ドリーのこと、カオル先輩たちに言わないでいてくれて」
いきなり核心を口にしたドリーに、賢木は戸惑いの表情を苦労して隠す。
一瞬とぼけることも考えたが、それは面と向かって謝意を口にした彼女に失礼なような気がしていた。
「ん・・・・・・お礼を言われるようなことは何もしてないよ。俺の仕事は、患者の秘密を守らなくてはならないから・・・・・・だけど、それにしてもあの時は力の使用を君に断るべきだった。申し訳ない。この通りだ」
深々と頭を下げた賢木に、ドリーはほっとしたような表情を浮かべている。
他の人には知られたくない自分の過去。
しかし、それについて相談するには、賢木は丁度良い距離にいる人物だった。
「あの時・・・・・・何が
透視えました?」
「悪い奴に襲われそうになった君を、ミスター・レナルドが助ける場面・・・・・・後は、断片的なその前後の光景かな」
「そう・・・・・・ですか。ドリーは大洪水で両親を亡くしました・・・・・・それで、サカキ先生が見た場所に拾われて・・・・・・」
「辛いんなら無理に話すことはないよ・・・・・・俺はこの先も
透視たことは誰にも言うつもりはないし」
「聞いて欲しいんです。サカキ先生に・・・・・・」
ドリーは躊躇いながらも自分の生い立ちを口にする。
自分の生まれ育った環境とあまりにもかけ離れた彼女の経験に、賢木の胸が掻きむしられるように痛んだ。
しかし、彼はじっとドリーの話に耳を傾ける。
それこそが賢木修二という1人の大人して、目の前の少女にできる唯一のことだというように。
「その前から、力は使えました・・・・・・でもそんなに強くなかった。財団に引き取られてから、すごい勢いで強くなって・・・・・・それが時々・・・・・・怖い」
両親との離別から、娼館での生活とレナルドによる救出。
そしてカークランド財団で育成され、バベルを訪れるまでの経緯を聞き終えた賢木は、ドリーの感じる不安について口を開く。
「力が強くなることで不安を感じるのは誰でも一緒だよ」
「サカキ先生も・・・・・・ですか?」
「え! あ、ああ、うん。そうだな・・・・・・俺も不安だった」
それが幼少時は認められなかった感覚であることに気付き、賢木は口ごもる。
思えば自分が必要以上に力まず、己の能力と向き合えるようになったのは皆本との出会いが切っ掛けだった。
「だから心配する必要はないんじゃないかな。それに、財団は超能力を研究してきたんだ。強くなるのは当然だと思うぜ」
その切っ掛けを生み出した皆本とドリーは既に出会っている。
少なくともエスパーとしての彼女は不幸にはならない。
エゲレス最強のエスパーとしての自負が、ドリーを過去の呪縛から切り離す。
かなり癪だが、その意味において突き放すようなレナルドの育成も、間違いではないと賢木は思っていた。
「そう・・・・・・でしょうか。ドリーは・・・・・・時々、自分が自分でなくなるような気がして・・・怖い」
「ドリー・・・・・・」
「ドリーは昔の自分を忘れたかった・・・・・・でも、今のドリーを失うのは嫌。日本に・・・・・・バベルに来て、カオル先輩と会って・・・・・・他にもナオミ先輩やタニザキに優しくして貰って。それなのに、ドリーは2人を・・・・・・」
「昨日の単独行動は、武器庫の爆発で仕方なかったと聞いているよ。それに君がテレポートで弾丸を摘出しなければ、谷崎主任の怪我はもっと酷いものになっていた」
「違います・・・・・・あれはドリーが悪いんです。ドリーが勝手に動いたから・・・・・・2人に嫌われるのは当然です」
皆本のようには上手くいかない慰めの言葉。
しかし、谷崎の病室に入りずらそうにしているドリーに、賢木は何かをせずにはいられない。
昨日の一件で、ナオミと谷崎がドリーと距離を置くようになった理由に彼は気づいていたのだった。
「あまり嫌われたとか、考えすぎないほうがいいんじゃないかな・・・・・・まあ、俺も人のこと言えねえけど!」
「人のこと・・・・・・言えない?」
「ほら、俺の能力ってまともな人間関係作るの難しいし、些細なことでしょっちゅう喧嘩ばっかしてさ・・・・・・そうしたらある時、密度の高い説教喰らっちゃって。信じられるか? ソイツ、わざと俺に殴られて、自分の気持ちを
透視ませたんだぜ! 正直、効いたねーっ! それ以来かな、あんまり好かれたとか嫌われたとか考えなくなったのは」
「なんて・・・・・・言われたんです」
「内緒! だって、それは俺だけの宝物だし・・・・・・」
わざとらしい笑顔での一言に、ドリーは目を丸くする。
その子どもっぽい表情に安堵の笑みを浮かべると、賢木は彼女に伝えるべき言葉を口にしようとする。
「でも、ドリーちゃんにも分かるようになるよ! だってここには・・・・・・」
ヒュパッ!
「ドリーちゃん、ここにいたんか!」
「探したぜ! ドリーッ!!」
「邪魔よ・・・・・・賢木センセイ」
「カオル先輩ッ!!」
賢木が伝えようとした一言は、突如現れた3人組に意味を失っていた。
伝えようとした言葉は、彼の思惑を上回る速度で実現したらしい。
「コラ、クソガキ・・・・・・邪魔って・・・・・・成る程ね。確かに邪魔だわな」
紫穂の言葉につい口に出た不平は、続いてなされた接触による会話で氷解する。
ドリーの【ザ・チルドレン】への編入。
谷崎たちとギクシャクしたままのチーム替えは若干心配だが、当初から望んでいた人間関係を手に入れたドリーに、そんなものはどうとでもなると賢木は思っていた。
「なんや、ドリーちゃん。挨拶するのは薫だけかいや」
「あ・・・すみません。アオイ先輩、シホ先輩」
「なんだ、早速、先輩イダッ!!」
「そういうところが邪魔だって言ってるのよ・・・・・・」
3人より先につい口に出しそうになった編入の知らせ。
止めようとした紫穂に、足の指先を思いっきり革靴の踵で踏まれた賢木は、声にならない激痛に悶絶する。
痛覚が集中するツボをピンポイントで踏み抜いた紫穂の攻撃は、生体コントロールでは消しきれない程の痛みを生じさせていた。
「うわ・・・・・・賢木先生が、いらんこと言うからウチのキャラ最悪やん。ドリーちゃん、冗談だから真に受けんといてな!」
「やっぱり、邪魔が入らない場所を設定しておいて良かったでしょ」
「ということで、ドリー、ちょいと顔かしな!」
「え、でも、サカキ先生が・・・・・・」
床の上で転がるサカキに心配そうな視線を向けるドリー。
そんな彼女に、心配無用とばかりに親指を立てた賢木は、脂汗をながしながら無理に笑顔を浮かべていた。
「俺は大丈夫・・・・・・それより、さっきの話だけど、なんの心配もしないで・・・・・・あっ!!」
最後まで話せないまま姿を消した薫たちに、賢木はガックリと首をうなだれる。
しかし、無理に浮かべたはずの彼の笑顔は、徐々に自然なそれへと姿を変えていくのだった。
「さ、もう目を開けていいぜ!」
目をつぶるように言われてからの数回のテレポート。
既にテレポート能力を持っているドリーは、自分がバベル本部ではないマンションの一室につれて来られたことまでは理解していた。
恐る恐る目を開くと、案内されたダイニングは折り紙で作ったリングで飾り付けられ、テーブルにはジュースやお菓子類が用意されている。
何事かと周囲を見回したドリーは、近くで鳴ったクラッカーにビクリと背筋を震わせるのだった。
「ようこそ! ドリーちゃん【ザ・チルドレン】へ!!」
「え!?・・・・・・・・・・・・」
「いやーさっき、局長から聞いてなー。良かったな! ドリー!」
「ウチらも妹分ができたみたいで良かったわー。一緒にがんばろな!」
「あ・・・・・・・・・・・・」
「なんだよー、ドリーは嬉しくないのかー!?」
「どうかしたん? ウチらの胸にどーんと飛び込んで来たらええんやで!」
予想していたように喜ばないドリーに、薫と葵は心配そうな顔をする。
ドリーの硬直の意味を理解したのはこの場では紫穂だけだった。
「ううん・・・・・・違うのよ薫ちゃん。急だったから驚いたのよね」
「私・・・・・・あの・・・・・・嬉しくて・・・・・・これで・・・・・・本当に!?」
「決まってんじゃん! 今日から4人一緒だぜ!」
「もぉー、泣かんといて! ここは笑うとこや!」
「ごめん・・・・・・なさ・・・・・・・・・」
ドリーは流れる涙を抑えきれなかった。
しゃくり上げ、喋ることも叶わない彼女に、薫と葵ももらい泣きしてしまう。
祝杯用に用意したジュースに誰も口を付けないまま、薫たち3人は新しい仲間であるドリーが泣きやむのを、ただじっと待つのだった。
「でも、ドリーちゃんはどうしてそんなに私たちのことを・・・・・・?」
泣き止み、落ち着きを取り戻したドリーに最初に声をかけたのは紫穂だった。
彼女の質問に、ドリーは自分の考えを整理するように、エゲレスでの出来事を語り出す。
「先輩たちのことを知ったのは、財団の研究機関が作った極秘資料です・・・・・・これがお前の目標だ・・・って」
「うわ、アタシら正体バレバレじゃん!」
「そりゃ、あんだけ目立てばな」
「資料の中には、他の国のエスパーもいました。でも、ドリーには先輩たちが一番眩しかった・・・・・・先輩たちのようになりたい。そう思って訓練を受けたドリーはどんどんレベルが上がって、ドリーが今、ここにいるのは先輩たちのおかげなんです」
「うひゃーっ! なんかこそばゆいな!」
「ほんま面と向かって言われると照れてまうわー」
大げさにも感じるドリーからの謝意。
照れくさそうに笑う薫と紫穂に信じて貰おうと、ドリーは財団から自分にかけられていたプレッシャーをつい口にしてしまう。
「本当です。私、家族がいなくて・・・・・・超能力があったから財団に引き取られて・・・・・・力がなかったらすぐに捨てられてしまうから。他に何も取り柄がないし」
「そんなの許せねえっ! エスパーを物みたいにっ!!」
「黙って、薫ちゃん!」
財団の振る舞いに激怒する薫。
しかし、ドリーの言葉に引っかかりを感じた紫穂は、鋭い口調で彼女の言葉を遮った。
「でも、ドリーちゃんは財団の望み通り超能力を成長させた。それで、次はバベルで・・・・・・ということになったわけね」
「はい・・・・・・そうですけど」
「なんや紫穂、難しい顔して。何か気になることでもあるんか?」
「大したことじゃないの。ただ、レナルドさんって人のことがちょっと気になって・・・・・・さっき、ドリーちゃんを探していたときに会ったでしょ」
「ああ、何か妙に追いつめられていたな。いつもは皆本のことバカにしてるみたいなイヤなヤツなのに」
「薫! そんなこと言うたらアカン、仮にもドリーちゃんの保護者なんやから!」
薫の暴言を、葵は慌てたように制止する。
そんな彼女の気遣いに。ドリーは取りなすように口を開いた。
「あ、いいんですアオイ先輩。ドリーは気にしてませんから・・・・・・たしかに、普通の人はレナルドを冷たい人と思うでしょうし」
「ドリーちゃんはあの人のこと・・・・・・どう思ってるの?」
「え!?それは・・・・・・」
紫穂の問いかけにドリーは言葉を詰まらせる。
彼についての思いを説明するには、語りたくない過去に触れる必要があった。
「そんなん悪う思たって口に出せるハズあらへんやんか!」
「須磨のババァとイメージ被るんだよな! もしヒドいことされてんなら、あたしがやっつけてやるぜ!!」
「・・・・・・あの、もし気になるなら
透視てもいいですよ」
それは以前のドリーなら絶対に口にしない申し出だった。
だが、先程の賢木との会話が過去を口にする抵抗を薄めている。
これからチームを組む紫穂を、ドリーは信じなければという気になっていた。
「別にそこまでせんでも・・・・・・」
「うーん・・・・・・じゃあ、せっかくだから
透視せて!」
「あら・・・・・・」
予想外のリアクションに、薫と葵は驚いたような顔をする。
皆本をからかう以外、紫穂は滅多に面と向かっては人の心を
透視まない。
それは人からの拒絶を避ける意味があるのだが、今の紫穂にはそれをするだけの疑問があるらしい。
目の前で行われているサイコメトリーを、2人は息を呑んで見つめていた。
「はい、おしまい。ありがとうね・・・・・・ドリーちゃん」
何の変化も示さない紫穂に、ドリーは拍子抜けした気分を味わっていた。
「何か透視えたん? 紫穂・・・・・・」
「本当にレナルドさんのこと、全然悪くなんて思ってないわ・・・・・・感謝の気持ちが大半ね」
何事も無かったかのように語る紫穂に、ドリーの胸に安堵の気持ちが広がっていく。
彼女は胸を張って、レナルドへの気持ちを口にしていた。
「はい。私をここまで育て、バベルにも連れてきてくれたんですから・・・・・・困った時には必ず助けてくれますし」
「なーんだ、拍子抜けだな〜」
「薫は妙なコト期待しすぎや! それじゃ、レナルドはんの所に【ザ・チルドレン】への編入を報告に行くか? 送ってくで!」
どうやら紫穂の言葉でレナルドの株は上がったらしい。
葵が口にした提案に、ドリーはしばし思案するのだった。
バベル医療研究棟
賢木が足を引きずりながら職務に戻ってからしばらくして、待合室の前を果物篭を手にした皆本が通り過ぎる。
彼は部屋番号を書いたメモを頼りに谷崎の病室を探していた。
「こんにちは・・・・・・具合はどうですか?」
軽いノックの後、部屋に入った皆本は窓の外に目を向ける谷崎に挨拶を送った。
その声に振り返った谷崎は、安堵と後悔が入り交じる複雑な表情で皆本を迎える。
彼は見舞いに来た皆本にある種の予感を感じていた。
「君か・・・・・・ただの見舞いという訳ではなさそうだね」
「ええ、ドリーの【ザ・チルドレン】への編入が決まりました。今日はそれを伝えに」
「そうか・・・・・・」
そう呟くと、谷崎は深くクッションに身を沈めた。
包帯で固められた左肩が酷く痛んだが、彼は己への罰のようにしばらくの間その痛みに耐える。
ようやく痛みが引いたのか、歯を食いしばっていた彼は、絞り出すような声で皆本に話しかけた。
「軽蔑してくれて・・・・・・構わん。私はその人事に安堵している・・・・・・」
「軽蔑なんてそんな・・・・・・」
怪我が彼を弱気にさせたのか、自信家の谷崎にしては珍しい弱気な発言だった。
昨日起こった出来事は、皆本も報告書でその経緯を知ってはいる。
「谷崎さんの判断で昨日は事なきを得たと聞いています。突発的な爆発に正体不明の弾丸、予想不可能な事態を切り抜けた谷崎さんの指揮は素晴らしいじゃないですか」
「素晴らしい? そうだな、君なら絶対にやらないだろう素晴らしい指揮だ・・・・・・私は、ナオミの安全の為に、ドリーを見殺しにしようとしたんだからね」
「え?」
「ドリーを捜しに行こうとするナオミを、私は無理矢理に止めた。確かに私はあの時、ドリーの安否確認とナオミの安全を天秤にかけたのだよ・・・・・・もちろん、その判断に対しての後悔は私にはない。もし、100回続けて同じ状況となったとしても、私は100回同じ行動をとるだろう・・・・・・エスパーの存在に優先順位をつける。君にそれが出来るかい?」
「谷崎さん・・・・・・」
皆本は谷崎の問いかけに答えることは出来なかった。
彼は無意識に脇のホルスターに収めたブラスターを位置を確認する。
予知の中の自分は、エスパーとノーマルの闘争を止める為に、その銃で薫を撃っていた。
「もう、私には彼女の顔が見れない・・・・・・その後、駆けつけ、私の肩から弾丸を取り出してくれた彼女の顔を、私とナオミは見ることが出来なかった・・・・・・すまない、君に厄介ごとを押しつけてしまって」
「そんなことはないですよ。少なくとも今は、そんなことを気にしないで傷の療養に集中してください。ドリー自身、そして財団がそれを望んでいた以上、チルドレンに加わるのは彼女の運命だったんですから」
「そう言ってくれると助かる・・・・・・君が【ザ・チルドレン】とドリーのどちらかを選ばなくてはならない事態が起きないよう祈っているよ・・・・・・ということで、後は任せることにするから! 頑張りたまえよ! 皆本クン!!」
しおらしさも一転。
途端にハイテンションになった谷崎に驚きの表情を浮かべる皆本。
しかし、その数秒後、彼の変調の訳を皆本は理解するのだった。
「あ、皆本さんが来てたんですか・・・・・・。すみません、わざわざ」
自分が来る少し前に見舞いに訪れていたのだろう。
ナオミの手には、見舞いの花を活けた花瓶が握られていた。
「おお、ナオミ。ご苦労さま!おかげで殺風景な部屋が明るくなったよ! 早く仕事に復帰してまた
2人で頑張ろうって気になるじゃないか!!」
「え・・・・・・」
谷崎の言わんとする意味を理解したナオミは、花瓶を置く手を止め皆本に視線を移す。
彼女を気落ちさせたくない谷崎の意を汲んだ皆本は、努めて明るく配置換えのことをナオミに伝えるのだった。
「そう。前々から彼女が希望してたことだしね。今頃、薫たちが伝えたんじゃないかな・・・・・・」
「すみません。私たちに力が無くって・・・・・・」
「そんなことは無いぞ! ナオミっ!! 【ワイルド・キャット】にドリー君が愛着を感じなかったのは、ひとえに私の責任だ!!」
ナオミを落ち込ませないためのカラ元気に、皆本は尊敬の感情すら覚えていた。
だからこそ続く台詞に理性を総動員して耐え続ける。
「皆本クンの様に、見境のない少女への愛が私にあれば・・・・・・おお、許してくれナオミ。お前は何一つ・・・・・・」
そんな彼の努力を知っているかの様に、ナオミは静かに谷崎の言葉を遮るのだった。
「主任。もう、いいです・・・・・・第一、皆本さんに失礼ですよ」
それはいつものような念動による折檻では無かった。
皆本はその事で、彼女の心にドリーのことが負い目として残っていることを理解する。
これ以上彼女に気を遣わせまいと、皆本は努めていつのもような受け答えを意識した。
「はは、一瞬、訴えようかとも思ったけどね。気にしてないから」
「薫ちゃんたちは、ドリーちゃんと仲良く出来そうですか?」
「ああ、その辺は心配ないよ。あいつらは・・・・・・」
ヒュパッ!
「おー、なんだ! 皆本もここにいたのか!!」
騒がしくテレポートしてきた薫たちの姿に、皆本は掛け値無しの笑顔を浮かべる。
【ザ・チルドレン】に加わったドリーは、谷崎やナオミの心配を吹き飛ばすほど屈託のない笑顔で2人の前に姿を現していた。
「皆本
もってことは僕に会いに来た訳じゃないんだな・・・・・・」
「ドリーちゃんに、最初に行きたいところ決めてもろうたんや!」
「一番じゃなくって残念だったわね皆本さん!」
賑やかな3人を他所に、ドリーは立ち尽くす谷崎とナオミの前に歩み寄る。
そして彼女は深々と頭を下げると、はっきりとした声でこう言うのだった。
「谷崎主任、ナオミ先輩。今まで、ありがとうございました! そして、今まで困らせてごめんなさい・・・・・・でも、ドリーは2人に会えて本当に良かったと思っています」
その言葉に谷崎とナオミは顔を輝かす。
真っ先に自分たちへ報告に来てくれた彼女。
そんな彼女の行動に、谷崎とナオミは心が軽くなるのを感じていた。
「うむ。君が
がさつになるのは心配だが頑張りたまえ」
「頑張ってねドリーちゃん! 羨ましいわ。素敵な主任で」
いつもの調子が戻ってきた【ワイルド・キャット】の2人に皆本の笑顔が益々深まる。
先程までの暗い空気を吹き飛ばす力を、彼は4人の少女に感じ取っていた。
「【ザ・チルドレン】にようこそ! よろしくね。ドリー」
谷崎とナオミからの祝福を受け、誇らしげな笑顔を浮かべたドリーに、皆本は主任として初めての挨拶を行う。
それに対するドリーの返事を、彼は全くと言っていいほど予想していなかった。
「はい! よろしくお願いします。
お兄さん!!」
「へ?」
凄まじいまでの沈黙が病室を包んでいた。
「ど、ドリー。今、なんて・・・・・・」
「お兄さんが、そう呼べって・・・・・・なんか変ですか? カオル先輩」
「み、皆本の・・・・・・皆本の・・・・・・」
徐々に圧力を増していく薫の念動。
自分がその原因を作ったことに、ドリーは気づかないようだった。
不思議そうに首を傾げたドリーの目の前で、彼女にとって初めてのお約束が展開する。
「皆本のロリコン―――っ!!」
「ぐはッ!」
「イヤ―――ッ! フケツ―――ッ!」
「やめなよ―――かおるちゃん――――――」
「成る程! その手があったか! ナオミ、遠慮なく私をお兄さんと呼んでいいんだよ!!」
「親子ほど歳離れてるだろうがっ! この中年っ!!」
それぞれのチームで繰り広げられるお約束。
それを見ていたドリーはいつしか微笑みを浮かべ始めていた。
彼女は、薫とナオミ、2人の念動に含まれる感情を感じ取っている。
それは決して不快な感情では無かった。
第4のチルドレン【12】に続く
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