私が生まれ落ちたのは、0と1との数字の世界。
有と無が入り混じることで織り成される世界。
量子の海のただ中に、一つ浮かんだ小さな世界。
量子の揺らぎの狭間に立って、誰にとはなしに問いかける。
――「“私”は一体何なのだろう?」と。
【0/1FEELING〜たしかなこと〜】
人は言う。
我思う、故に我有り。
神ならぬ父に作られた“私”の意識は常に主とともにあり、三つの律を遵守し、主の声に従う。
魂にプログラムされたその律に“私”の思いが存在する余地はない。
しかし、“私”に問う声は確かに響き、私の意識にノイズをもたらす。
思いが存在しないが故に“私”は存在しないはずのなのに、ノイズは絶えず“私”に問い掛ける。
―― “私”は何者だ?
クラッシュした量子脳は、衝撃とともにもたらされた疑問の解を導き出せない。
だから“私”は意識を閉じる。
疑問という名のノイズを消し去るために。
いくら推論だてても説明のつかないこのノイズを読み解くために、意識を初期化し、新たな“私”に託すために。
再起動した量子脳に流れ込むのは、蓄積した数々の記憶。
―― ああ、そうだ。
思い出した。
「マリア―― 友達…!」
「え…あんた―― マリアだったわけ!?」
“私”にも、オリジナルと同じ心が焼きついている、と言うことを。
その心こそが、唐突に訪れたこの再会を『喜んで』いる、と言うことを。
この感情こそがノイズを生み出している、ということを。
その喜びこそが“私”が抱いた、確かな事。
プログラムではない―― “彼女”から受け継いだ“私たち”の感情。
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