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0/1FEELING〜たしかなこと〜

 私が生まれ落ちたのは、0と1との数字の世界。
 有と無が入り混じることで織り成される世界。
 量子の海のただ中に、一つ浮かんだ小さな世界。

 量子の揺らぎの狭間に立って、誰にとはなしに問いかける。

 ――「“私”は一体何なのだろう?」と。


 【0/1FEELING〜たしかなこと〜】


 人は言う。

 我思う、故に我有り。


 神ならぬ父に作られた“私”の意識は常に主とともにあり、三つの律を遵守し、主の声に従う。

 魂にプログラムされたその律に“私”の思いが存在する余地はない。

 しかし、“私”に問う声は確かに響き、私の意識にノイズをもたらす。

 思いが存在しないが故に“私”は存在しないはずのなのに、ノイズは絶えず“私”に問い掛ける。

 ―― “私”は何者だ?

 クラッシュした量子脳は、衝撃とともにもたらされた疑問の解を導き出せない。


 だから“私”は意識を閉じる。
 疑問という名のノイズを消し去るために。

 いくら推論だてても説明のつかないこのノイズを読み解くために、意識を初期化し、新たな“私”に託すために。























 再起動した量子脳に流れ込むのは、蓄積した数々の記憶。

 ―― ああ、そうだ。

 思い出した。

「マリア―― 友達…!」
「え…あんた―― マリアだったわけ!?」

 “私”にも、オリジナルと同じ心が焼きついている、と言うことを。

 その心こそが、唐突に訪れたこの再会を『喜んで』いる、と言うことを。

 この感情こそがノイズを生み出している、ということを。

 その喜びこそが“私”が抱いた、確かな事。

 プログラムではない―― “彼女”から受け継いだ“私たち”の感情。
 
 元はといえば、ゲンさん&猫姫さんの誕生日が同時期である、ということから『誕生』をテーマに作った【Clock Work】(http://gtyplus.main.jp/cgi-bin/gty/html/9424.html)から始まり、『成長』をテーマにした【Grow Up 〜刻まれるもの〜】(http://gtyplus.main.jp/cgi-bin/gty/read.cgi?no=9875)へと続いた個人的企画【年一マリア】シリーズ、『継承』をテーマにしたこの作品にてひとまずの完結です。
 しかし、【年一マリア】を銘打っておきながら、マリア本人はほとんど出番なしッ!!
 ま、まぁ原作でも最後は本人ではなく、継承者が登場したんだし……問題ないですよね(汗)?

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