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烏羽的 『とっておきの日(4)』 展開妄想




「彼は普通人(ノーマル)だし、仕事で君たちとつきあってるんだぜ?
 普通人とエスパー―――いよいよとなったらどっちの味方だと思う?」

 テーブルの向かいに座る3人へ聞く兵部。
 そこへ…


がちゃっ…!


「!!」

 突然開かれた扉に、リビングにいた全員の視線が集まる。

「…………」

 そこには、不機嫌そうに無言で立つ皆本の姿があった…。

「皆本さん―――!!」

 紫穂はリビングに現れた皆本を見て、目を見開いた。





烏羽的 『とっておきの日(4)』 展開妄想






「…………」

 無言でリビング内を睨みつける皆本。

「おはよう皆本クン、お邪魔してるよ」

 にやにやと、イタズラっ子のような笑いをしつつ皆本へ言う兵部。

「…………」


すたすた…ガチャリ…


 皆本は兵部を無視してテーブルの横を通り過ぎ、冷蔵庫のドアを開ける。
 中から牛乳パックを取り出し、戸棚から取ったコップへ注いでいった。

「……あれ?」

 怒り狂った皆本を見れるものだと思っていた兵部が首をかしげる。
 同様に、皆本の登場に固まっていた3人も疑問符を上げている。


ゴッゴッゴッゴッゴッ…


 そんな4人を無視し、腰に手を当てて牛乳を飲み干す皆本。
 牛乳パックを冷蔵庫に戻し、コップを流しに置いてリビングの扉へと向かっていく。

「お、おい、待てよっ…」

 扉へ手をかけた皆本の肩を兵部が掴む。

「…………」

 やはり無言で兵部へ振り向く皆本。

「そうか、メガネをかけてないからわからないんだな。
 ほら、これでわかるだろう?」

 皆本の顔に自分の顔を近づける兵部。
 なるほど、寝起きで皆本はメガネをかけていない。
 機嫌が悪くてこちらを睨んでいるのではなく、よく見えないために睨んでいるように見えるだけのようだ。

「……兵……部……?」

 ようやく目の前に立つ人物がわかったらしい。

「そうだよ。
 いやぁ、さっきまで彼女たちと遊園地でデートしててね。
 クィーンのお誘いで、君の家で食事を…って聞いてるのかい?」

 先ほどから、じ〜っと兵部を見ている皆本。
 どこか様子のおかしい皆本に兵部が声をかける。
 
「……兵……部……」

 再度、兵部の名を呼ぶ皆本。

「だからそうだって…」


ゴスッ!!!


「げぶぅっ!?」

 鈍い音がして兵部が前のめりに倒れかかる。
 が、目の前に立っていた皆本の肩を掴んで倒れることを防いだ。


「!?」

「なんや!?」

「皆本さん!?」


 突然のことに3人が驚愕する。

「い、いきなりボディブローとはなかなかや…(ドスゥッ!!)がはぁっ!?」

 再度鈍い音がして、兵部の身体がくの字に曲がる。
 ……どうやら皆本が兵部を殴っているようだ。

「…っは…君にしては直球じゃないか…!
 やはり自宅まで来たのには、頭に来たのかな…?」

 腹を手で抑えながら言う兵部。
 それでも顔はニヤリと笑っていて、余裕を見せていた。

「…………のに…………」

 ぼそりと、皆本が呟く。

「…?なんだって?」

 聞き取れなかった兵部が問う。


「……彼女たちが仲違いしてしまう夢を見てしまったって言うのに、
 今度は兵部が僕の家で彼女たちと楽しそうに食事を取っている夢か……」


 ……どうやら皆本は、まだ夢を見ていると思っているらしい……。

「たとえ夢だろうと、彼女たちをお前に渡してたまるものか…!!」


「!!!」

「!!!」

「!!!」

 皆本の言葉に、頬を染める薫と紫穂と葵。


「あ、あはははははは!!
 なるほどね、夢だと勘違いしてるってわけだ。
 でもね、これは夢じゃないんだ現実なんだよ。
 さっきが不意を付かれたが、まともに戦えば僕が君に負けるわけが……」


ガスッッ!!!


「うぐぅっ!?」


 皆本の膝蹴りが、兵部のみぞおちにめり込む。

「な、なんでESPが発動しな…」

 ESPで防御し、それと同時に攻撃をしたつもりの兵部。
 しかし、ESPは発動しなかった。
 わけがわからない、と言った感じで兵部が呟く。


しぱぁんっ…


 皆本の掌底が綺麗に兵部のアゴを捕らえる。
 脳をシェイクされ、ぐんにゃりと視界が歪んでいったとき、最も重要なことに兵部は気付いた。


「……そう言えばリミッター付けてたんだっけ……」


 そう呟いて、どさりと兵部はリビングの床に倒れこんだ…。






「…み、皆本って強かったんだ…」

「と、言うか…」

「生身の兵部少佐が弱いだけ…ね」

 皆本と兵部の戦いを見ていた3人が呟く。

「…で、どうするのこれ?」

 ズタボロになって気絶している兵部を、指差して言う紫穂。

「…外に居る運転手さんに渡す?」

 一番妥当であろう答えを薫が提案する。

「そうやね、ていっ」


ヒュパッ!


 葵のテレポートによって、兵部の身体が消え去った。

「とりあえずこれでよしと…って、皆本立ったまま寝てるっ!?」

 皆本に視線を移すと、皆本は立ったまま目を瞑って寝息を立てていた。

「…よっぽど疲れてたんやね」

「一体どんな夢見てたのかしら…」

「とりあえず起こそうぜ。
 お〜い皆本〜起きろ〜」

 ぺしぺしと、薫が皆本の頬を叩く。

「ん〜……?」

 皆本は微かに目を開いた。
 しかしその目はおぼろげで、まだ意識がはっきり覚醒していないようだ。

「お、起きたか〜?」

「皆本はん、おはよう」

「おはよう皆本さん」

「…………」

 3人の挨拶をぼ〜っと見る皆本。

「お〜い?」

 ひらひらと、薫が皆本の目の前で手を振る。


「……そうか、仲直りしたのか……」


 先ほどの夢の続きだと思っているのだろうか、皆本はそんなことを呟いた。

「は…?」

「…皆本はん、まだ寝ぼけてるんやろか?」

「…とりあえず話を合わせておいた方がいいんじゃない?」

 へたなことを言って先ほどの兵部のようになるのは勘弁だ、と思いつつ紫穂がいう。

「そうだな…。
 ああ、仲直りしたぞ〜。
 だから、あたしたちはいつまでも3人一緒だよ」

「…そうか…それはよかった…」

 安心したように呟く皆本。

「…でもな、あたしたちは皆本とも仲良くしたいんだよ」

 ニヤリと、何やら企んだ様子で笑いながら薫が言う。

「へ…?」

「薫ちゃん、何を…?」

 薫の言葉に2人が問う。

「し〜っ、まぁ見てなって」

 2人を制す薫。

「…僕とも仲良く…?」

 皆本が薫の言葉を反すうする。

「そ、『裸の付き合い』って言うだろ?
 みんなで一緒に風呂に入れば、もっと仲良くなると思わないか?」

 にっしっしっしっし、とオヤジ笑いをしつつ皆本に言う薫。

「ちょっ」

「か、薫ちゃん…いくらなんでも…」


「…それもそうだな…じゃあ一緒に入るか…」


 ……夢の中にいる(と思っている)皆本は、突拍子も無い(法律的に不味い)出来事も受け入れてしまった。


「おぉっ!!
 よっしゃぁ!風呂場へレッツゴー!!」

 薫はオヤジ顔のままで、皆本を押しながら風呂場へ向かう。

「い、いいんかなぁ…」

 戸惑いながらも、いそいそと薫に続く葵。

「皆本さんもいいって言ってるんだし…たまにはいいんじゃない?」

 記念撮影も必要ね〜…と、防水加工のデジカメを取りに部屋へ向かう紫穂。
 しばらくの間、皆本家の風呂場から騒がしさが消えることは無かった。












「…なんで…目が覚めたら、風呂に入ったみたいに髪が濡れてるんだ…?」

 2,3時間後―――ようやく目が覚めた皆本が、リビングで椅子に腰掛けながらそう呟いていた。

「…気のせいじゃない?」

 ぐっしょりと濡れた服を絞りながら、いけしゃあしゃあと言う紫穂であった。



(了)
おばんでございます烏羽です。
と言うことで、次回『とっておきの日(4)』の妄想であります。
『とっておきの日』冒頭の未来のシーンは皆本の壮大な夢オチだったと…。

多分そんなことは無いでしょうけども(ぉぃ

今週のラストページの皆本がメガネをかけていなかったのと、やけに不機嫌そうな顔付きだったのでまだ半分夢の中なんじゃないかと思いました。
皆本の視力がどれくらいかはわかりませんが、普通メガネをかけている人は起きたらすぐメガネをかけるはずですから………え?私だけ?

絶チルがまだまだ続くことを祈って、未来シーンをグダグダな状態で終わらせる…これが一番ベストかなぁと思った結果ですw
兵部が無能のレッテルを貼られてるし、皆本がやけに攻撃的な壊れ話ですが楽しんで頂ければ幸いです。
それではっ

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