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tea break 〜 絶チル 86th sense.より 〜

※ 「絶対可憐チルドレン 86th sense. とっておきの日(2)」(07/23号)
 のネタバレが含まれています。未読の方はご注意下さい。

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     《進級祝い》



 パンドラのアジトにて。

 兵部の乗ったリムジンを、澪は室内から一人見送っていた。
「私だって進級したのに。……少佐のバカ」
 兵部がチルドレンの事を何かと気に掛けているのは腹立たしい。
 今回だって本当は反対したかった。自分も付いていきたかった。
 でも、それで兵部が困った顔をするのを見るのは嫌だったし、そうした分別ができるようになった自分が兵部以上に腹立たしくもあった。
 そこへ、外での見送りを終えた大鎌がやってきた。
「あら、もしかして、遊園地に行き損ねてすねてたのかしら?」
「なっ! 私はあいつらと違ってそんなに子供じゃないわ!」
 大鎌のからかう物言いに澪は反射的に否定する。
「そうなの? 残念ね」
 そう言って懐から取り出される数枚の紙切れ。
「だったらこれはいらないわよね」
 とある遊園地の無料チケットだった。当然ながら、兵部が行く予定のものとは別の遊園地である。
「マッスル、それどうしたの!?」
 思わず身を乗り出してしまう澪。
 彼女とてまだ小学生。年相応に遊園地には興味があったのだ。むしろ行きたくて仕方がなかったと言うべきか。
(少佐から澪への進級祝いだそうだ)
 後から部屋に入ってきたコレミツが、大鎌の代わりに説明した。
(これを付けていけば、検知ゲートに引っ掛かる事もないだろう)
 そう言いながら、こちらはイヤリング型のリミッターを差し出して見せる。
「それも少佐が……?」
 コレミツは無言で頷き、それに大鎌が続く。
「ね? 前も言ったけど、少佐はあんたの事もちゃんと大事に思ってるのよ」
(どうする、澪?)
 二人に問われ、逡巡する澪。チケットの期限は今日まで。つまり兵部と一緒には行けない。
 どうも体良くあしらわれているように感じないでもないが、それでも自分をちゃんと見てくれていた事への嬉しさの方が遥かに勝った。
 結局、彼女の選択肢は最初から一つしかなかった。
「……行く!」
 澪の明快な答えに、男二人は顔を見合わせる。
「じゃ、さっさと仕度しましょうか」
(俺達が保護者として付いていくように言われているから、多少窮屈なのは我慢してくれ)
 抑えきれない喜びと期待に顔を輝かせながら、「かまわないわ」と上の空で澪は答える。
 その様子に、彼らの目元は笑っていた。

     *  *  *

 そして、遊園地に到着して数分後。

「どーして入れないのよ!」
「そうよ! 私達の格好のどこが怪しいっていうのよっ!」
(……いや、十分不審者だと思うぞ?)
 どこからどう見てもハードゲイな大鎌と包帯大男のコレミツのせいで、門前払いされてしまったパンドラ御一行様なのであった。
「はあ。今頃、少佐達は楽しくやってるのかしら?」
(あちらは無人だからな)
「……少佐のバカぁ――っ!!」





     ― END ―
これも一種の差別なのでしょうか?(^^;

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