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状況X、もしルシオラが横島に告白しなかったなら

 横島忠夫は悩んでいた。
 ベスパを助けて美智恵に一泡吹かせたのはいいが、この先の展望がまったく無かったのだ。
 このアジトの場所を美智恵に連絡すれば、彼女は即座に奇襲部隊を差し向けてくるだろう。いくらルシオラたちが頑丈でも、睡眠中に竜の牙とかを突き立てられればひとたまりもあるまい。人類も神魔界も救われる。
 しかし問題は、その奇襲部隊が自分を助けるかどうかということだ。美智恵は自分の命など気にしないだろうし、ましてみんなの目の前でベスパを助けてしまったのだからなおさらだ。
 あるいは手っ取り早く、精霊石弾頭ミサイルとかを撃ち込んでくる可能性もある。
 どちらにしても命はない。それは嫌だ。

(こ、こーなったら俺が生き延びる道はルシオラたちに勝ってもらうことしかないのか……?)

 土具羅は「この調子で働くなら、いずれこの島国の支配者にしてやってもいいぞ」と言っていた。これはつまり、人類を皆殺しにする気はないということだ。
 美神のことは気がかりだが、考えてみればルシオラたちは美神に個人的な恨みがあるわけではない。これほどの技術を持っているのだから、美神を殺さずに結晶だけを抜き取ることもできるだろう。意外にあったかい連中みたいだし、このまま真面目に仕えて好感度を上げていけば、そのくらいの頼みは聞いてくれると思う。
 そして首尾よく自分が日本の支配者になれば、立場は今までと逆転、美神を、いや日本中の美女・美少女をかしずかせることができるのだ!
 ここにおいて、横島忠夫の思考回路はコペルニクス的大転回をとげた。


(うはははは! よっしゃー、やるぜ、やったるぜ! 俺が日本の王じゃー、煩・悩・全・開ーーーッ!!)


 こうしてアシュタロスの反乱は成功し、世界は彼のものとなった。
 功績多大だった横島も約束通り日本列島の支配者となり、幸せな人生を送る―――はずであったが。
 どれほどの権力を持ったところで、横島が美神や百合子に逆らえるはずもなく。
 彼女たちが立てた計略によってアシュタロスは打倒され、三界は再び元の秩序を取り戻した。
 そしてその後、横島の行方を知る者はいなかったという。



 ―――おしまい。

 はじめまして。
 初投稿だというのに、とんでもない電波を書いてしまいました。
 怒涛の反対票をお待ちしております。
 それでは。

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