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白<シロ>色

 昔の記憶。

 人狼の里での古い記憶には、父が道場で剣を振る姿がある。
 人狼族も稽古では竹刀をつかうのだが、彼らはそこに霊力を巡らせる。
 これにより、剣術と霊力の制御を同時に行うのだが、シロはその霊力を纏った竹刀の色が好きだった。

 個人個人で皆違う。

 長老は鋼のような鉄塊色。村の若い人達は若草色や空色の人が多い。
 そして、大好きな父の色は暖かな黄金色だった。

 シロは己の小刀のような霊波刀を出してみる。ほとんど無色の白色だった。
 実はシロのちょっとしたコンプレックスである。普通は最初、薄蒼の霊波刀が出来、それを己で研鑽することで、各自の色を現出していくものであるから。
 シロのようにほとんど無色という刃はまずない。

 道場の片隅で、そんな己の刃を見つめて気落ちしていると、大きな影が落ちてきて、シロの頭にやはり大きな手が乗せられた。
 ぽんぽん──と大好きなリズムとやさしさでそれが頭の上で跳ねる。

「どうした?」

 見上げればやはり、父だった。シロは己の刃をすぐに隠したが、見つかっていたのだろう、父は笑ってこういった。

「白は嫌いか?」

 嫌いではない。なにより自分の名前の色だ。好きでさえある。

「人と違っているのが嫌か?」

 図星だ。特に幼い心は他者との差異を嫌う。それが何であろうとも、何故自分は違うのだろうと自虐的な思考に陥る。
 そんな風に心が動き、しょんぼりと下を向いてしまうシロ。

「父は、そのシロの色が好きだがなぁ〜」

 そんなシロの耳朶にポカポカと暖かい声が聞こえた。
 無条件の肯定。自虐の螺旋から解き放つ心からの好意の声。

「拙者は父上の色が大好きでござるよ!」

 憧れだった。大好きな父親と同じ色になりたかった。
 父はニッコリと微笑むと、やはり──ぽんぽん──と頭を撫でてくれた。

「ああ、シロ、お前なら何色にでもなれるぞ」






「行くでござる!!」

 晴天の庭に、力強い声が響く。
 今日は珍しく横島がシロの稽古の相手を喜んでしてくれるのだ。それも事務所の皆が見てくれてのことである。
 決して朝からシロが上目遣いでひたすらにオネダリにオネダリを繰り返したせいではないはずだ。
 ましてや、そんな事態を見守っていた美神達が危機感をもち、稽古を特別に庭で行うことにしたとか、稽古を監視……もとい監督することにしたとかいう事は断じてない
 ──と美神女史はおっしゃる。

 とにかく今日は、特例というべき措置により、事務所の庭でシロの稽古を事務所メンバー総出で見ることになった。

 己の唯一の武器である霊波刀を構えるシロ。
 人狼の里で剣術を学び、事務所に来てからも毎日鍛錬を欠かさずにいるだけあって、流石に一分の隙もない。
 対する横島は全くの自然体だ。というかこの男は構えなんて知りもしない。
 もともと荷物持ちのバイトであり、数奇で笑えて少々悲しい運命により、今ここでGSをしている男である。だから横島の技術は全て実戦の中で己自身が生み出してきたものであり、シロのように霊波刀を使っても、型なんてものは存在自体知っているかどうかも怪しい。
 おまけに師匠である美神令子とは、あまりにも除霊スタイルがかけ離れているため、知識や実戦の肝はさておき、戦闘スタイルの確立ということには、全く美神の手が入っていなかった。
 我流も我流、大我流といったところである。

 だが、横島は強い。
 何でも有りで、こと戦闘とするだけならば、横島の強さは美神を凌ぐとシロは思っている。無論、戦闘という枠も取り外してしまえば、ぶっちぎりで美神が最強だとも思っているが。

 改めてシロは目の前に対峙している師匠と慕う男を見た。
 両手をぶらりと下ろし、足を肩幅ほどで開き、呆然とした表情で一見隙だらけだ。
 しかし、より注意深く観察すれば、膝には軽く溜めが作られており、腕も伸びきってはいない。なにより呆然とした視線は、視界を広くし、目に映る全てのものを最速で捉える戦闘のために最適解なのだ。

 シロもここまで判るようにはなった。
 自分が師と仰ぐ男が、その高みにいることが嬉しい。だが、それとは別に、戦士としての自分はこの目の前の男に勝ちたいとも思う。

「やあぁぁぁっ!!」

 掛け声一閃。シロは霊波刀を上段に構えると、人狼特有の身体能力の高さを生かし、一気に間合いを詰めるべく突進する。
 今日の稽古は文珠なしだ。間合いさえ詰めてしまえば自分のものである。

 上段から唐竹割り、これは横島に防がれてしまったがシロにとっては折込済みだ。重要なのは刀の間合いに入ったということである。
 とにかく横島の奇手を封じる。それには刀の間合いで猛攻につぐ猛攻をしかけることだ。純粋に剣技では自分のほうが勝っているはずである。これは自惚れでは無い。

 正規の剣特有の、無駄のない洗練された動きにより、怒涛の攻撃を繰り出すシロ。
 それでも横島は、烈風のようなシロの剣戟を、実戦経験で培われたカンとセンスで、「のひょ〜」とか「あひゃぁ〜」とかいう、いかにも力の抜ける声をあげながらも何とか凌いでいた。
 しかし、天秤は明らかにシロに傾いている。横島は防戦一方になっていた。

 追い詰めることが出来る。師に勝てる!
 確かに今のところ横島に有効打は入っていない。しかし、事態は自分の有利に進んでいる。焦るな、落ち着け、あと少し。

 そして、ついにシロの袈裟切りの一撃を受け、横島は体制を崩してその場に尻餅をついた。
 シロは霊波刀の切先を向ける。

「……えへん。王手でござる」

 勝った。初めて先生にに勝てた。
 だが、そんなシロに横から監督していた美神の声が掛けられた。

「たしかにチェックメイトね──惜しかったわシロ」

 美神の声で我に返ったシロ。
 そこで彼女は気づいた。自分の周りに幾つもの霊気の盾(サイキックソーサー)が浮遊していることに。
 その配置は自分を中心にして後方、左右、頭上と全方位を占めている。唯一存在しない箇所は前方であるが、そこには横島がいた。
 突進をかけた場合どうなるか?
 座り込んだ体制ではあるが、横島ならば自分の一太刀くらいはなんとかするだろう。だが、それと同時にあらゆる方向から飛来するソーサーの雨を自分は凌ぎきる自信がない。 一転、完敗であった。

「うぅぅ……拙者の負けでござる」
「ひぃひぃ〜〜もう嫌じゃぁ」

 悔しさに涙を滲ませるシロと、情けなく涙を流す横島。まるでどちらも敗者のようである。

「二人ともすごかったですよ」

 稽古が一段落したと見て、見ていたおキヌが二人にタオルを渡してくれた。
 シロはそれを、顔を隠すように頭からすっぽりと被る。

「また変な技考えたわね〜」

 とは、やはり稽古を見物していたタマモの言。変な技とは先ほどの浮遊する霊気の盾のことだろう。

「ふふふっ、見たか新技!その名も『サイキックマイン』」

 サイキックマイン──と名づけられたこの技は、どうやら霊気の盾をその場に留め置き(それが空中であっても可)後に飛ばす技のようだ。
 横島はシロとの戦闘中に、それとなく霊気の盾をばら撒いておいたという訳である。

 横島は、先ほどまでの涙もどこへやら、仁王立ちで得意げにのたまった。

「……実用的じゃないわね」

 だが、そんな横島の得意げな新技に対する美神の評価は辛かった。
 それも仕方ない、シロは気づかなかったが、傍で見ていた美神達には、横島が霊気の盾を置いていく様が丸見えだったのだから。
 つまり、相手が複数人なり居た場合、敷設段階で丸分かりということである。
 また、文珠と違って常時霊力供給を必要とするソーサーは、置いておける距離も限られるであろうし、敷設すればするほど自身の霊力が下がっていくという問題もある。
 なにより致命的なのは、例え1対1であっても、シロじゃなきゃ気がついただろう?というところだった。

「うぐっ、少しは褒めてくれてもええじゃないですか……一生懸命考えたのに」

 得意満面から、あっという間に奈落に転落である。
 それを見た美神は少しは悪い気がしたのだろう、横島に対して労いとでも言うべき言葉をかけた。

「まぁ、あんたなりに考えたという姿勢は評価できるし……出来ないよりは出来たほうがいいだろうし…………頑張ったんじゃない?」

 しかし、そこは美神令子、これが精一杯。
 そして、横島忠夫。

「はっ!美神さんが俺を評価、これはもはや遠まわしに愛を囁いているに違いない!!み、美神さん!ボカァ〜ぼかぁもおぉぉ────」
「ちったあ精神も向上せんかあーーーーっ!!!!」
「────あべしぃぃ!!!!」

 今日も彼は煩悩一杯だ。


 そんな主と師匠のいつものやり取りを、シロは頭からタオルを被ったまま体育座りで眺めていた。
 「ほい」と横からオレンジジュースのペットボトルが差し出される。

「だらしないわね。あんなのに負けてんじゃないわよ」

 とタマモは『あんなの』を指差した。指された先には、たった今生まれたばかりの肉塊が大の字で倒れている。
 タマモはシロの横に腰を下ろした。シロが頭からかぶっているタオルの端を使って、シロの頬を伝う汗を拭いてやる。

「ま、惜しかったじゃない」
「──惜しかった……でござるかなぁ?」

 シロは思っていたことを口に出した。
 本当に自分は強くなっているのだろうか?惜しかったといえるほど勝負だったのだろうか?結局は横島にしてやられてるではないかと。

 そんなシロの声が聞こえたのだろう。ほかの三人もシロの周りに集まってきた。

「はっきり言って、速さも技も体捌きも、こと接近戦に関しては、この事務所の誰よりもシロは間違いなく上にいるわよ」
「──けど……拙者は一度も先生に勝てないでござる」

 美神が評価してくれる。それは嬉しいが、納得できなかった。
 正直、今日は勝てたと思っただけにシロの落ち込みは激しい。

「でも──そうね……あとは横島君が言いなさい」
「え?俺ッスか?」

 突然の指名に驚く横島だったが、美神の──師匠のあんたが言うべきことでしょ──との言葉に逆らえなかった。
 シロは先生と慕う横島からの言葉を待った。美神も主ではあるが、なんといっても彼女の師は横島である。その師からの言葉となれば神妙さも一入だ。
 そして、その神妙な視線をもろに浴びた横島であるが、しばらくは言葉がみつからず『あ〜』だの『う〜』だの言語が不自由になってしまったかのような呻き声をあげていたのであるが、ついに覚悟を決めたのか、シロの方を向いた。

「──その、なんだ、お前は良い子すぎるんだ」

 良い子すぎる?意味がわからなかった。まだ横島は言葉を続けるようなので、それを待つ。

「──あ〜、良い子すぎるっていうのはだな、お前は教えられたことしかしないんだ」

 教えられたことしかしない?教えを守ることはいけないことなのだろうか?

「──いや、そうじゃない。まあキチンとした教えを受けていない俺が言えることじゃないが、お前が今まで里とかで教わってきたことを守るのは大事なことだと思う」

 言葉の最中「『キチンとした教えを受けていない』ね、後でキチンとした教えを体に教えてあげるわよ」という般若のごとき声が聞こえたような気がしたが、横島は目の前の弟子のため、一時的に忘れた。

「でもだな、それがお前に枠を作っちまってる──とも俺は思うんだ」

 教えを守ることはいいこと?拙者に枠?その枠が自分の弱さ?
 だとすれば、それは破らなければならない。

「先生、その枠を破るには如何したらいいのでござるか?」

 知りたかった。その枠とやらを破る方法を。
 シロの質問を受けた横島は、またしても『あ〜』だの『う〜』だの言語が不自由になってしまった。そして時計の秒針がたっぷり一周するほどの間をあけてから、ようやく口を開いた。

「……ん〜〜そうだなぁ色々やってみるとかなぁ」

 だが、出てきた答えは、なんとも抽象的であり、シロには納得できかねるものだった。

「たとえばだ、今日の『サイキックマイン』を使った罠だが、気づかなかったことはそれとしてだ、それを破るようなものをお前が持ってたら勝てただろ?」

 破れるならば勝てる。当然すぎて唖然とする。
 そんなことを言う横島に、シロは少し腹が立ち、口を開いた。そんなことが出来る技を自分は知らないし、だいたい自分は枠を破る方法が聞きたかったのだ、と。

「出来なきゃ工夫するの」

 そこで黙っていた美神が突然会話に割り込んだ。

「──口は出さないつもりだったけど……横島クンは甘いから。──シロ、あとは自分で考えなさい自分自信で考えるのよ」

 そう言うと、美神は『さ、仕事にするわよ』と手を叩いて皆に稽古の終わりを告げた。横島はシロに何か言いたげではあったが、美神がその首根っこを押さえて無理やり事務所の中に連れて行ってしまった。

 正直言ってシロには今のやりとりがよく分からない。おぼろげながら分かったことといえば、自分は枠を作ってしまっていて、そのために先生には勝てないということくらい。

「おキヌ殿……拙者のやってきたことは間違っていたのでござろうか?」

 しょんぼりするシロ。
 そんなシロにおキヌが近寄り手を取った。

「『教わってきたことを守るのは大事』って横島さんも言ってたでしょ?シロちゃんは間違ってなんかいないよ?──大丈夫、努力した分、きっと上手になりますよ」

 シロは顔をあげた。おキヌはやさしく微笑む。
 もう一人、残った人物が近づいてきた。

「あんたは頭悪いんだから、グジグジ考えても仕方ないでしょ。ほら、あんたが何時までも落ち込んでると、美神が窓から離れられないでしょ」

 口の悪い同僚の声に、シロは事務所の窓の方を向いた。すると、窓辺でこちらを伺っていた美神が慌てて隠れるのが見えた。






 N県にある大きな寺社。
 山中にあるその寺社の本堂に美神除霊事務所の一行は来ていた。
 むろん仕事である。所長の美神は現世利益至上主義の権化だ。今のところ神に縋ることはない。

「どう?現れた?」

 美神はトランシーバーの送信スイッチを入れると、別の場所にいる事務所の面々に向かって言った。

『こっちには何も出てないっス』
『裏のほうにも現れていません』

 正面の山門に陣取る横島×タマモ班と、裏門側に陣取るおキヌ×シロ班から、共に異常なしの報告を受ける。
 配置についてから二時間。夜は深け、月は既に中天に達していた。

 今回受けた仕事は次のとおりである。

 曰く
 何ものかが夜半に忍び込み、本堂内にある神仏の像を叩き壊している。
 この寺社は数百体の仏像を祭っていることで有名だが、このままではいずれ全ての仏像は破壊されてしまうであろう。
 寺社は警察に連絡し、事件の解決を依頼したが、数十人を費やして警察に出来たことは、警備の巡査たちを睡眠不足にさせることと、犯人すら分からぬままの仏像の破損リストを増やすだけのことだった。
 だが、警察も一本の麦も収穫できなかった訳ではない。
 あらゆる監視装置に写らなかった犯人、だが現行犯の現場だけは監視装置に記録され、また実際に生で現場を見ることも出来た。

 何も写っていない本堂で次々と壊されていく仏像の姿だけは。

 そして、居合わせた巡査部長が霊感の強い男であり、なにかしら霊的なものを感じるという証言を残したことで、事件は刑事事件から自然災害、更に言うとオカルト現象に移行し、美神除霊事務所にお鉢が回ってきたのである。


『にしても、夜な夜な仏像を壊す霊かぁ、なにもんなんスかね』

 トランシーバー越しに横島のぼやきが聞こえた。確かに気にはなるが、霊の行動なんていうものは、常に不条理なものである。問題はその行動が生者、極論すれば自分達に不都合があるかどうかだけだ。

「わざわざ無線をつかって、意味のないこと言うんじゃないの!」

 ぼやき丁稚を一喝すると、美神は己が担当である本堂内を見渡した。
 巨大で立派な本堂である。建物内部は1辺30mほどもあって、奥には大量の仏像が安置されている。本来は今以上の仏像がひしめいているそうだが、今はこの事件により半分近くが修繕に出されているとのこと。

 ふと、大障子ごしに差し込んでいた月明かりに影が差した。月に雲がかかったのであろうか?
 だが、美神は直ぐにこの考えを改めた。己の霊感が囁いたのだ『これは違う』と。
 美神は己の霊感を絶対的に信じている。それに従って命を拾ったことも幾度もあるほどだ。
 一瞬の躊躇いもなく、美神は大障子前から飛びのく。直後に障子は脆弱な音を立てて破れ落ちた。
 何かが本堂内に入ってきた気配を感じる。美神はトランシーバーのスイッチを入れた。

「来たわ…本堂よ!」




 無線で知らせを受け、駆け込んできた横島とシロが見たものは、何も居ないはずの本堂内で、暴風のように吹き飛ばされていく仏像の姿であった。
 すぐに美神の姿を探すと、本堂の隅で破壊の現場を観察している美神を見つけた。

「美神さん!無事ですか!?」
「大丈夫よ、とりあえずアレは仏像を壊すことだけが目的みたいね」

 その後、キヌとタマモが合流し、全員が集合したことを確認すると、美神は彼らに指示を飛ばした。

「早速だけど仕事にかかるわよ、横島君とシロはお札を使って、とにかくアレの正体を晒す。場合によっては文珠を使っても構わないわ」

 一番危険だから気を抜いちゃ駄目よ、と続ける美神に、横島とシロは頷いた。

「おキヌちゃんは笛を使って、アレが霊なのか、霊だとして説得できる相手なのかを探る。……出来るわよね?」

 やってみます、とキヌは返答した。

「タマモは指示したポイントに、例の結界用のお札を貼って」

 了解、と表面上はあくまで気楽にタマモは返事した。

「質問は?────ないようなら……やるわよ!」

 号令と共に散る美神達、開幕のベルが鳴る。


 横島はシロと共に、仏像がまさに今破壊されている地点にくると、取り合えず目を凝らしてみた。
 しかし、やはり何も見えはしない。

「とにかく、あの辺りに何かがいることは確かだ。俺があっち側にまわるから、そしたら『いっせーのーせ』でお札をばら撒くぞ」

 横島が即興の作戦を立てる。シロは肯いた。
 問題の地点を挟んで、対角線上に位置取る二人。そして、タイミングを合わせて数枚のお札を扇状に投擲した。そこに何かがいるのなら、それが霊的なものであるならば、幾種類かの違った効果をもつお札のどれかに、何かの反応が現れるはずである。

 だが、反応は思っても見ないものだった。投げ込まれた数枚のお札は、全てが空中でバラバラに切り裂かれたのである。
 たしかに何かしらがいることは確認できたが、札が効果を発揮する前に切り刻まれては、そこに居るモノの正体までは突き止めることが出来ない。
 横島は文珠の使用を決断した。

 『晒』

 キーワードにより、あらゆる事象を起こせる魔法の玉『文珠』。
 文珠はその力を十全に発揮し、ついに仏像を破壊し続ける何かの姿を晒しだす。




 結界用のお札を貼り終えて戻ってきたタマモ。
 その彼女が本堂内で見たものは、顔が三つあり、腕が六本ある体長3m程の巨大な仏像の暴れる姿だった。
 さすがにタマモでも知っている。暴れているのは阿修羅といわれる神仏の像だ。

「な、神様が相手なの!?」

 流石にそれは相手が悪い。タマモは慌てて美神達を探すと、本堂の隅で固まっているメンバーを見つけた。
 キヌが笛を吹いている。おそらくは笛を使った精神的な接触により、相手を探っている最中なのだろう。
 ちょうどタマモが合流した頃合で、キヌが笛から口を離した。

「……霊ではないと思います。アレからはずっと一つの意思……というか行動原理しか感じられませんでしたから」

 その一つとは、仏像を破壊し続けることだという。
 キヌは説明つづける。ある種の精神が壊れてしまった霊も、一つの意思、一つの行動原理に縛られることがあるが、それでも決してそれ『のみ』になってしまうことはない。かならず何らかのゆらぎを持つものである。
 だが、目の前のアレはその揺らぎが全くない──と。

「予測ですけど……たぶん思念が何かしらの要因で形になってしまったものだと思います」

 そう言ってキヌは口を閉じた。

「神様が相手じゃなかったのね」

 キヌの説明を聞き、タマモが安心したように小さく息を吐いた。

「とすると、とりあえずアレをなんとかするには、宿った思念を絶つか……滅してしまうかしかないわね」

 アレが何故仏像を破壊するのか?何故阿修羅の姿なのか?誰の思念か?何故今になって?などなど、疑問は尽きないが、とにかく今は目の前の破壊を止めることが美神達の仕事だ。
 あらゆる疑問は、とにかくアレを止めてから考えるしかない。

「──タマモ、結界の準備はちゃんとしてきた?」

 霊ではなく思念体が相手となったが、自分の張った結界は、多少効果があるはずだ。
 そう判断した美神はタマモの方を見る。
 タマモは手でOKサインを作っていた。

「それじゃ結界を結ぶわよ、あいつが何らかのリアクションをとるかもだから、みんな注意して」

 本堂外壁とお札を利用して張り巡らされた結界。この結界は多く見られる『結界内部を外の敵から守る』ものとは真逆に『結界内部の敵を滅する』力を込められたものである。
 雑魚霊ならばまとめて一掃できるほどの代物だ。仮に相手が強力で滅することはできなくとも、著しく弱らせることは出来るはずである。
 美神は結界の起動地点に己の身を滑り込ませると、発動用の複雑な印を結んだ。
 美神を中心にして本堂を囲むように張り巡らされたお札に霊力が注がれる。淡い光を合図にして、結界が発動する。

「──MUUoooonn」

 すると、それまで一心不乱に仏像の破壊のみを行っていた阿修羅像が、理解不可能な叫び声とも泣き声とも判断のつかない声をあげた。
 狂ったようにもはや仏像だろうが、なんだろうが切り刻んでいく阿修羅。
 結界が効いているらしく、僅かづつではあるが、阿修羅像の存在そのものが希薄になりつつある。
 このままいけば、阿修羅像を構成する思念自体を霧散させてしまうことが出来る。
 だが、そこまで上手くまわるほど世の中は甘くはない。
 暫らくの間、無闇やたらに辺りの物を破壊していた魔人像であったが、やがて三つある顔の一つが結界を発動している美神を捉えた。

 そして、正対するように美神達のほうに向き直る。

「…障害……と判断されたかしらね」

 美神が呟く。それが合図であったのかどうかは判らないが、阿修羅像が突進して来た。




 迫りくる石像。
 三面六臂の阿修羅の像。

 ただし、目の前のそれは、よく知られる少年のようにほっそりとした肢体ではなく、屈強な男を思わせる筋骨隆々とした四肢を持っていた。
 更に六本の腕、一つ一つに巨大な刀を持ち、それを小枝か何かのように振り回している。

 美神は誤算に舌打ちした。

 第一の誤算は霊ではなく思念体であったこと。
 美神達の装備は基本的に対霊を想定したものである。したがって思念体は対応できるが専門ではない。

 第二の誤算は想像以上に強力だったこと。
 美神は情報の少なさから、相手を相当上のランクと仮定して準備を練った。用心を怠ればこの業界では生きていけない。
 それが使用された結界であったり、10個におよぶ横島の文珠ストック数だったりする。
 だが、思念体であり、美神達との相性が必ずしもよくない相手だということを差し引いて考えても、予想を上回る力を持っていた。

 そして第三の誤算。
 撤退が出来なくなったこと。




 まるで瞬間移動だった。
 爆発のような衝撃が起きたかと思うと、目の前に阿修羅像が居た。
 美神達は、美神、シロを前衛に、横島を中衛、キヌとタマモを後衛という、美神除霊事務所の必勝陣で臨んだのであったが、仏像然とした姿に騙されて、初撃の速さを読み違えたのだ。
 そして、一本の剣がタマモを襲う。

「──え?」

 胸から剣が突き刺さり、背中へと貫通した阿修羅の剣。
 己の胸を突き抜けるそれを、不思議な目でタマモは見た。
 恐怖も理解も通り越していきなり結果だけを突きつけられ、訳が分からないという目。

 ゴフッ──と濁った音と共に、タマモの口から鮮血が溢れる。

「「「「タマモ(ちゃん)!!」」」」

 ──致命傷だった──

 阿修羅の腕がゴミを落とすように振るわれると、少女は紅い軌跡を描きながら、本堂の床に落ちた。

「このやろおぉぉぉあぁぁぁぁぁーーーっ!!!!」
「よくもタマモをぉぉぉぉーーっ!!!!」

 逆上する横島とシロ、だが美神は慌ててそれを押し留める。

「なにしてるの横島君!はやく!!ありったけの文珠を使ってタマモを癒すのよ!!急いで!!急げぇぇーーーーっ!!!!」

 美神も発狂寸前だった、だがしかし彼女は見た。
 剣を引き抜かれ、大輪の赤い花を散らしながら、だけど確かに意識ある目で倒れたタマモを。
 即死ではない。まだ死んではいない。
 ならば白面九尾の大妖怪の転生である彼女である、死ぬはずがない!死ぬなんてあってはならない!私の家族が死ぬなんて許しはしない!!

 美神の一喝で冷水を浴びせられたように、己を取り戻す横島とシロ。
 横島は慌ててタマモの元へと向かう。既にキヌがヒーリングをしているが、床を真紅に染め上げる紅い泉は、彼女のヒーリングだけでは止められない。
 美神は横島が向かうのを見届けた。あの馬鹿なら、どんなことをしてでもタマモを救うだろう。それこそ、己が動けなくなるまで力を搾り出してでも。それだけは確信できる。
 だから、彼女のするべきことは、後ろの三人をなんとしても守ること。

「いいシロ、動けるのは私たちだけよ。何があってもここは通さない、いいわね」
「もちろんでござる!!」

 美神とシロはお互いの目を見て肯きあった。
 目の前には圧倒的な武威を見せ付けた、まさに阿修羅そのものとでもいうべき敵。

 だが、負けるわけにはいかない。




「タマモ!しっかりしろ!!」

 タマモの基にたどり着いた横島。いつも皮肉を紡いでいた唇は、空よりも青くなっている。
 キヌは傷口に手を当て、一心不乱にヒーリングを施している。
 恐らくは、それが、それのみが、タマモのともすれば零れてしまいそうな命を、辛うじて繋ぎとめている一本の蜘蛛の糸なのだろう。
 キヌは明らかに限界以上の霊力を放出している。顔色はタマモに負けず劣らず蒼白だ。
 けれども、それを止めさせることは出来ないし、キヌは絶対に止めはしない。

 横島は、手持ちの文珠に『癒』を込めてタマモに使う。
 『全・快』も使用した。『回・復』も、『止・血』も、考えられるあらゆる治癒の文字を込めて、タマモに使い続けた。
 だが、文珠とてあらゆる事象を可能とするが、あくまでもそれは込められた力の及ぶ限りである。決して本物の奇跡にはなれない。
 しかし、横島はあきらめない。こういう時、この男は心底諦めが悪い。
 限界を超えて無理やり文珠を生成し、更に文字を込めてタマモに使う。

(まだだ、まだタマモは息をしている!───なら、助けられねえ訳がねえ!!!!)




 一方、美神とシロも絶望的ともいえる戦いを続けていた。
 阿修羅の姿をした石像の、その六本の腕から繰り出される豪撃は、その一撃一撃が明らかに美神たちのそれよりも重く速い。
 二人の利点を生かし、一人が回り込もうとも、相手は三面六臂の魔神像である。
 死角がなかった。

 追い詰められるたびに、美神は虎の子ともいうべき精霊石をつかって、なんとか窮地を凌ぐ。精霊石の数は3、使った数は2、残りは1。
 だが、引くことは許されない。
 後ろでやはり、ある意味美神たちよりも困難で絶望的とも言える戦いをしている二人から、タマモはもう大丈夫だと声が掛けられるまでは。

 シロは吼えた。己を奮わせ、大事なものを守るための雄叫びだ。
 横では美神が一緒に戦っているが、本来彼女の戦い方は、このような力には力で対抗するといったスタイルではない。
 彼女のもつ、天性のカンとセンスで凌いでいるが、いずれ限界が来てしまうのは明白だ。

 自分がやらなければ誰がやる。
 何のために自分は此処にいる。

 あの女狐は殺しても死ぬような奴ではない。また、自分の先生は断じてタマモを死なせるようなことを許さない。
 ならば、己の全てをかけて、拙者の群れを守るのみ。


 シロと美神は死力を尽くして戦った。それこそ敵と自分達の力を推し量ってみれば、それは奇跡のような善戦と言っていい。
 絶対に負けられない戦い。絶対に引けない戦い。
 その強い意志が二人を限界以上の力を与えていたが、その奇跡もついに種切れに時が来た。

 「──あぐっぅ!!」

 最後の精霊石を使い果たした美神が、阿修羅の剣を神痛坤でモロに受け、本堂の壁まで吹き飛ばされた。
 だが、気丈にも彼女は直ぐに立ち上がり、まだ剣を交えているシロの加勢に向かおうとする。
 既に満身創痍。血のついていない肢体はどこにもない。左腕は今ので折れたらしく、ダラリとして力を込めことさえ出来ない。
 美神は倒れこみそうになる体を無理やり踏ん張って、歩みを進めた。

 力を振り絞り一歩、精神を集中して二歩、根性で三歩

 ──しかし四歩目は踏めなかった。

 無様ともいえる格好でうつ伏せに倒れる美神。
 横島たちの方を見る。
 限界を超え鼻や口から血を流して、横島とキヌはタマモの治療をしていた。
 まだ大丈夫だとは言ってこない。まだ、まだもう少しかかる。

 美神は己の体を叱咤した。こんな時に、保護者の私が動けなくてどうする!!
 ちくしょう!動けポンコツ!動け!動け!!うごけぇぇぇーーーーっ!!

 だが、もはや一欠けらの力すら残っていない、否、一欠けらも残っていない体を無理やり動かして今まで戦っていたのだ。

 どこもかしこも満足に動かせない中で、瞳だけはまだ戦っている人狼の少女を見つめた。

(ごめん……シロお願い)


 二人がかりでさえ凌ぐのがやっとだった暴風は、いまやその全てを目の前のシロに向かって叩きつけてくる。

 圧倒的だった。

 シロは一気四連の剣戟を振るう。今己のもつ最高の技。しかし、目の前の敵は六撃。しかも一撃一撃がシロのそれを遥かに凌ぐ。

 だが、下がれん!下がるわけにはいかない!
 今ここで自分まで倒れては、一体誰が群れを守れるというのか。

 獣の雄叫びをあげて阿修羅の像と撃ち合うシロ。絶望の中に刹那の奇跡を信じて、刀を振るう。
 しかし、そこには絶対的に超えられない力の差があった。徐々に、しかし確実に追い詰められてゆく。


 ──そして、その時が来た──


 右からの三連撃を叩き落し、左の逆胴をバックステップして避ける。
 まだいける……とシロが思ったときだ。

 意識は濁ってはいないが、疲労は足からくる。

 バックステップを踏んだシロの左足は、その着地の際、一瞬ではあるが膝がくだけてしまった。

 時間にして1秒にもみたない一瞬。
 しかし戦いの最中では致命的ともいえる一瞬。

 その一瞬に無防備となったシロの頭上目掛けて、阿修羅像の六つの剣が振り下ろさる。



 此処までなのか?
 やれるだけのことはやったのではないか?
 群れを守るんではなかったのか?
 敵が強すぎたのだと納得できるのではないか?
 拙者は……




 脳裏をあらゆることが駆け巡ぐる。

『そうだなぁ色々やってみるとかなぁ』
 稽古の相手をしてくれた先生。

『出来なきゃ工夫するの』
 弱音を吐く拙者を叱ってくれた美神殿。

『努力した分、きっと上手になりますよ』
 拙者を励ましてくれたおキヌ殿。

『グジグジ考えても仕方ないでしょ』
 女狐。

『犬神の剣は一気八撃をもって完成する』
 長老の教え。




 そして


『シロ、お前なら何色にでもなれるぞ』
 父上。






 可能性をつぶすな、思考を柔軟にしろ。
 己には未だ至れる領域があるのだと、常に信じ妄信し過信しろ。
 妄信を支える努力はしていたか?
 過信を貫く根性はあるか?

 …己を誇って胸を張るのならば──あとは到達してみせる!

 己の努力と根性が、今日までの生き様が、支えるだけの土台であると!!






 阿修羅像の一気六連斬がシロを捕らえるべく放たれた。絶対的な死の円舞。
 完璧な間合い、シロを助けるサポートもない。

 迫る。

「シロ!!」
「シロちゃん!!」
「シロぉぉぉぉ!!!!」

 美神たちの悲痛な叫びが本堂を満たした。

 爆発にも似た強烈な斬撃。それは、あたりに積もった埃を巻き上げ。シロと阿修羅の姿を隠した。
 強烈な塵の奔流に反射的に目を閉じる美神達。


 のち訪れる静寂。


 横島は目を開けるのが怖かった。目を開けてしまえば、そこには辛い現実が待っているのではないか?悲しい事実を突きつけられるのではないか?

 ──愛弟子が既に居ないのではないか?──

 横島忠夫は弱い。
 誰よりも誰かを救うために力を出し切ることが出来るが、誰よりも誰かを救えなかったときに崩れ去ることが出来る。
 もしシロが居なくなったら、誰よりも先に壊れ去ることが出来る。

 だから一度閉じてしまった目は、己自身の力で開くことが出来なかった。




 何か聞こえた。

「──ん」

 暗中で己を閉ざしている横島の耳朶に、何か聞こえた。

「──ちゃん」

 おキヌちゃんの声だ。

「シロちゃん!!」

 そう、それは確かにシロを呼ぶ、おキヌちゃんの声だ。




 目を開ける横島。まだ塵があたりに飛んでいるが、痛みも構わず前を凝視する。愛弟子の居たところを。

 そして見た。亀裂の走った阿修羅の六本の剣を、無事な姿の犬塚シロを、黄金色に輝く弐振りの霊波刀を。

「よかった──シロちゃん」

 無事な姿のシロを見て安堵するキヌ。

「霊波刀で二刀流」

 美神は驚愕した。あれは刀を二本持って戦うとかいう簡単なことじゃない。

 霊波刀は、そのままでは放出されてしまう霊力を、己の力で括り、纏わせ、滞留させることで実現する。それは非常な集中力を要することであり、言うなれば箸で小豆をつまむようなものだ。
 箸で小豆をつまむことは、難しいが出来る人は多い。事実、美神も霊波刀を作ることは出来る。だが、霊波刀を振るうということは、まったく次元の異なる世界だ。だれが小豆を摘んだままの箸で撃ち合いができるというのか?

 そんなことは、異常ともいうべき器用さとセンスを兼ね備えていなければ無理だ。
 故に美神が知る霊波刀使いは、人間では唯一人、横島忠夫が居るのみ。

 例外は人狼族である。

 彼らはその器用さとセンスのハードルを、幼少よりの修練によって克服する。
 ただ其れのみに特化した修練、ただ其れのみを極めんとする修練。

 それにより、人狼族は大抵の者が霊波刀を具現化し、振るうことが出来る。

 だが、目の前の人狼の少女が見せたソレは、霊波刀を振るうという次元が、まるで手で物を掴むという、ありきたりのことに思えてしまうほどの結晶だった。

 左右両手に霊波刀を纏いそれを振るう。
 最も陳腐化してみろ、両手に小豆を摘んだままの箸で撃ち合う事を何ものが可能とするのか?

 修練、努力、才能、得手、それら要素をあらわす語の必要な全てを集め、ただ「霊波刀を振るうもの」として結晶化された存在。
 それが目の前の犬塚シロという少女をあらわす言葉である。




「──参る!!」

 両の手に纏った黄金の光。一気四連撃を二振り、合わせて八房。
 彼のものは人狼族最大の秘宝に頼ることなく、人狼族最高の剣技を極めた存在。
 対するは、各々が一剣必倒の豪剣ではあるが、込められる意思は最大六撃。

 彼女の、犬塚シロの心を折るには二本足りぬ。
 否、彼女の心を折ることは、たとえ幾万本の豪剣をもってしても不可能。
 幾万本の剣が相手ならば、幾万一本の刃を生み出してみせる。

 それが犬塚シロという結晶なのだから!


「ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「────MUU」




 本堂を染める黄金色の奔流。
 その奔流が収まったとき、そこには阿修羅像の姿はなく、犬塚シロのみが立っていた。

 とりあえず敵は倒した。
 タマモは?皆は?
 慌ててタマモの方を見るシロ。

 そこには──

「──まったく……二刀流なんて……あるなら…最初から…使いなさいよ……馬鹿…犬」

 そこには、真っ青な顔ながらも、血も止まり、いつもどおりに憎まれ口を叩く相棒の姿があった。


 ニッコリと笑う、おキヌどの。
 よくやったと褒めてくれる美神殿。
 泣きじゃくりながら抱きしめてくれる先生。


 よかった、拙者の群れは、家は、仲間は──よかった。


 限界以上に酷使された体は、今休息を欲していた。その場に倒れこみながら、シロは目を閉じる。
 とたんに猛烈な睡魔が襲った。

 意識が途絶える刹那のとき、目蓋の父が微笑んでくれた気がした。

 『お前なら何色にでもなれるぞ──お前はシロだからな』









おしまい






後書きのようなもの

え〜と、こんばんわ、または初めましてキツネそばです。

たかすさんの「二刀流シロ」の絵を見て感動しちゃいまして。
妄想のままに書いてしまいました。

絵の万分の一でも格好よさが出ていたらうれしいな〜
読み返してみて、少し推敲が足りなかったと思い、結構修正しました。
…とは言っても、話のスジはまったく変わってませんが^^;
自己嫌悪 orz

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