今日、俺は大人になる!!!
俺もついに18歳を迎えた。
18になればどんなことが出来るか?
そりゃ決まってるだろ、18歳以上推奨のハードな作品が堂々と見れるってことだ!!!!
それを成し遂げてから、大人として認められるといっても過言じゃあねえんだよな。
仮にもGS資格所有者が、大人になれないんじゃ笑い者である。
『…以前も年齢偽って買ってたくせに…。おキヌちゃんが幽霊だった頃から18禁が部屋にゴロゴロしてて、しかもそれ見られてるだろ。それにそれとGS資格が何の関係があるんだ?』
外野、うるせえぞ!!!
コソコソ隠れて見る必要が無くなった喜びも解らんようなヤツは黙っとれ!!
そして俺は大人になる「儀式」を行うための準備を始めた。
まず、「儀式」の主役となる映像作品を確保しなければならない。
俺はレンタルビデオ屋に、堂々と入る。
カウンターには結構可愛いねーちゃんが座っていた。
普通、こういうねーちゃんがレジ係だと躊躇してしまうのが男の悲しい性なんだが、ここを乗り越えられなければ大人にはなれないのである。
俺は爽やかに、ねーちゃんに尋ねた。
「『裏DVD』無いの?」
期待…つーか当然というべきか、ねーちゃんの顔が幽霊にでもなったかのように青ざめた。
そりゃそうだろ、いきなり裏DVD無いの?なんて男が聞いてきたんだぞ?
それも爽やかにな…。
「巨乳の裸のねーちゃんがたくさん出てくるやつがほしいんだけど」
更にレジのねーちゃんを蒼白させる発言を、あくまでも爽やかに続ける俺だった。
いいのか俺の人生こんなんで…と一瞬思ったが、全ては大人になるための試練なのだ。
すると、ねーちゃんがなんか魂が抜けたような動きで、レジの奥のピンクのカーテンを潜って、なにやら探し出して持ってきた。
「お客さん……そこまで仰るのならば…これをどうぞ……」
ねーちゃんがプルプル震えながら、いかにもって感じのパッケージのDVDを俺の目の前に出してきた。
(やった、やった、やったぞーっ!!!!!!!!)
このとき俺は心の中でガッツポーズを決めた。
ついに念願の裏DVDを手に入れることが出来たのだからな。
思えば長い年月だった…ついに俺は煩悩の境地へと足を踏み入れ、大人になれるのだから…。
「…お客様、会員証はお持ちでしょうか?」
「あ、すんません。今作りますので少々お待ちを」
俺は会員証を作ることにした。
あくまでも俺は法律を遵守する男である。
会員証無しで無理やり借りようとするようなバカはやらない。
ただし、『西条輝彦』の名義と個人情報で作ったのは言うまでも無いがな(身分証明書も文珠で偽造したものを使ったし)。
こういうときは本名を明かさないのが定石なのだ。
こうして俺は大人への道のりのための儀式を行うための道具「裏DVD」を手に入れたのであった。
儀式を行うための聖域である、俺のアパートへと向かう。
なお、この儀式は合計4人のメンバーで行うこととなっている。
俺がアパートの前に到着した頃には、既にドアの前で待っていた。
そのメンバーは、タイガー寅吉、伊達雪之丞、ピエトロ・ド・ブラドー、そしてこの俺横島忠夫であった。
俺と同じく「大人になるため」に参加した…つーか無理やり参加させたようなものだが。
方や女性アレルギーの大男、方やマザコン戦闘狂、方や700歳のヴァンパイアハーフだ。
このボンクラどもに俺が教鞭をとってやらなきゃな、と思ったのである。
「横島さん、よく戻ってこれましたね…」
「…貴様には羞恥心と言うものは無いのか?」
「この儀式に参加してる時点で羞恥心もへったくれもねーだろうが…」
「へったくれってなんですカイノー…」
俺はドアを開け、3人を狭い部屋の中に連れて入った。
普段は散らかってる俺の部屋なのだが、幸い昨日おキヌちゃんが来てくれて片付けてくれたので大助かりだ。
無論、今日の「儀式」のことなどおキヌちゃんには口が割れても喋らなかった、いや喋れなかったと言うほうが正しいだろう…。
もしこの儀式を彼女が知ったら…間違いなく明日の朝日は拝めない、と0.0001秒で予想できるからな…。
俺は「儀式」の主なるアイテム、「爆乳巫女 風雲再起」のDVDをケースから取り出し、PS2のトレーにセット、再生させた。
ふふふふふ…いよいよ始まりだ。
そこに例のマザコン戦闘狂がタイミング悪く話し掛けてきた。
「横島」
「何だマザコン伯爵」
「勝手にあだ名をつけるな!!それも結構高い爵位を与えやがって!!…まあそんなことは今はいい。何故巫女さんモノを選んだのか説明してもらいたいんだが」
何故巫女さんモノを選んだかって?
そりゃあ……
『純真無垢な巫女さんが性に覚醒するシーンを見ることが大人の階段を登る第一歩である』
という持論があるからだ。
「どこをどうすればそんな論ができるんですか…」
「多分横島サンは、その純真無垢な巫女サンを見慣れてる上、手が出せないから欲求不満に陥ってるんじゃないかノー」
「なるほど」
後ろの二人、勝手に納得するな。
まあ、大体の内容はあってるけどさ……。
そんなこんなで、うっとうしい社名ロゴが終ったあと、ようやく裏DVD「爆乳巫女 風雲再起」の始まりである。
思えば長かった…俺はこの18年間、この裏DVDを見るために生きていたのかもしれない…。
生きていればそのうちいいこともあるっていうのは本当だったんだなあ、としみじみと思うこのときである。
そしていよいよ肝心なシーンに突入すると思いきや…。
「横島、これ修正が入ってるぞ」
「何言ってんだ、これは裏DVDだぞ。修正なんて…」
「ほら、よく見ろ。肝心なところにモザイクがかかってるぞ…」
ななななな何ィッッッッッッッ!!!!!!!
せっかくの裏DVDだというのに修正アリなのかぁぁぁぁぁっ!!!!!!
あのねーちゃんめ、謀ったな!!!!
「最近は日本も規制が厳しくなっとりますケン」
…規制ごときに、俺の大人への第一歩を邪魔されてたまるかぁぁぁぁぁっ!!!!
「文珠には、こういう使い方もあるんだっ!!!」
そう叫んで俺は「無」「修」「正」の文殊を生成。
裏が見たいという欲求と煩悩のパワーが相互作用し、いつものときより早く生成できてしまった。
煩悩万歳、とはまさにこのことだな…。
「というか貴重な文珠をそんなことのために…」
この状況でも冷静を保ってるピートが呟いていたが、まあいい。
「無」「修」「正」の文珠が、ブラウン管に放り込まれる。
すると俺達の夢を打ち砕いた忌まわしきモザイクが消え失せ、その真の姿を俺達の眼に見せ付けたのだ!!!!
フオオオオオオオオッ!!!!!!!!!!!
これだ!!
これだよ!!!!!!
俺はこれが見たかったんだ!!!!!!!!
純真無垢な巫女さんがあえぎながら、あられもない姿を晒しだす…これが大人へのパスポートなのだよぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!!!
「横…島サン……ワッシには……し…刺激…が……」
…一分も持たずにタイガー脱落。
流石に奴にはこれは過激すぎたようだ。
「ママーン!!!!ママーン!!!!!!!」
その隣ではマザコン伯爵(笑)が、気が動転したのかママンの名を叫び続けていた。
こいつにはママン以外の女に対する免疫が無いのか。
「…………。…………。」
700歳のヴァンパイアハーフはいたって冷静だった。
やっぱ700年も生きてると興奮しなくなるものなのかねえ。
結局奴らはボンクラだったわけか。
俺はそんな奴らは放置して、裏DVDが見れる幸せを噛み締めていたのである。
ああ、生きてるっていいなあ…。
40人にフラれても、美神さんにボテクリこかされても、絶対生きることを諦めなかった見返りがここに来たのだ。
幸せだなあ…。
だが、そんな幸せなときもいずれ終るときが来るのだった…。
コンコン…。
「横島さーん、今日の晩御飯作りに来ましたよー」
…!!!
…この可愛らしい声と弾けるような喋り…。
…どう考えたっておキヌちゃんにしか聞こえない……。
「…居ないんですか?…おかしいなぁ、お部屋の中からは音がしてるのに…」
まずい。
最高にまずい。
今俺が見ている裏DVDは、巨乳の巫女さんがあーんなことやこーんなことをされる内容だ。
巫女さんルックが霊衣のおキヌちゃんがこれを見ようものなら……確実に俺は……死ぬかもしれん!!!!!
「…ぐずぐずしてると幽体離脱してでも入ってきますよー」
そ、それだけは…!!!!
俺は泣く泣くリモコンのストップボタンを押し、ドアに向かうのであった。
「お、おキヌちゃんか!!今開けるよ!!」
ガチャ。
「…今日も来てくれたんだ……」
「はい♪今日はお肉の特売日でしたから…あれ?」
なにやらおキヌちゃんが、俺の後ろの方をじーっと見ている。
ストップボタンは押したんだ、ブラウン管は真っ暗のはず……え?
「横島さん……何を見ていらしたんですか………?」
急におキヌちゃんの目が座った……え?どうして?
疑問に思いながら俺は背後に目をやった…そして疑問は一発で吹き飛んだ。
「ああああああああああっ!!!!!!!!!!!」
そう、ブラウン管には巨乳の巫女さんのあられもない姿が静止画で映り続けていたのだった…。
あの時俺がストップボタンのつもりで押したのは…『ポーズボタン』だったのだ……。
「横島さん……少々お話したいことがあるのですが………」
あああ〜怒ってる…怒ってる…怒ってるよ…。
…鬼が怒ると書いて「キヌ」って読むのはまさにこのことだぁ……。
…昔の思い出が走馬灯のように流れていく…。
……すまん、ルシオラ…。
生まれ変わったお前に再会するって約束は果たせないまま終わりそうだ…。
…………本当に、本当にすまん…。
(ナレーション)
その後タイガー寅吉と伊達雪之丞は、氷室キヌに対して「クラスメートにはこのことは伝えないでくださいぃぃぃぃぃっ!!!!!」と泣きついたが、「貴方達も同罪ですっ!!」と聞き入れてもらえずに地獄を見たそうである。
ピエトロ・ド・ブラドーは、ひそかに身体を霧と化して脱出。
その時「さようなら横島さん、君のことは一生忘れません…多分」と呟いていたそうだ…。
後日、「地上最強の生物・鬼怒」なる本が出版され、ベストセラーとなった…というのは別の話であり、定かではない。
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