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えす☆きす! −Especially Kiss−/第1話


 一際にぎやかに、蝉は声をすり合わせていた。
 蒼空を背景にした入道雲は、己を誇示するように隆々とそびえ立っている。

 廊下・教室の窓は全開だが、空気は動いていない。
 校庭を飾る木々に目を向けてみても、緑はまったく揺れる様子もない。
 強い日差しがただじりじりと、地面を焼き続けている。
 あらゆる環境が、過熱気味のサウナと、トレーニング中のマッチョなボディビルダーを連想させた。


 「……ひでぇもんだ」


 つぶやきと共に、横島忠夫は渋面を作った。
 熱気にあてられたか、日ごろ旺盛なはずの煩悩もくたびれている。
 否、煩悩どころか脳幹部位の、さらに奥底までが煮られているようだ。

 重たげに身をよじり、黒板上の時計を見やった。
 まもなく正午、そうすれば昼休みで食事の時間である。
 本日唯一の楽しみだというのに、横島の顔は晴れなかった。
 舌打ちはさすがまずいと思ったらしく、すぼまりかけた唇はすぐに閉じた。


 「ここは今度の試験に出るからなー。特にここ、3次関数と直線の接する条件については、例題でちゃんと復習しておくように」


 暑さにも負けず、熱心さを失っていない数学教師の言葉を、横島は右耳から左耳へとすばやく流した。
 シャープペンをドラムスティックのように回転させては、ときおり思い出したように、ノートの余白に何事かを記すだけだ。
 時給と日数の羅列から見て、恐らくは給料日までの残高をメモしたものであろうか。
 贔屓目に見ても、つつましき生活感が丸出しだった。

 1ページまるまる費やして計算を進めた結果は、とりあえず満足のいくものであったらしい。
 指先の湿り気に気付いた横島は、軽くペンを放り出し、汗じみたシャツで拭う。
 と、すぐに両腕を組み、両目を閉じた。下あごが外れそうな、大あくびを一つこぼす。
 勉強への意思を少しも感じさせず、うつろな目線を正面へと向けたままである。

 その瞬間は、まさしく閃光のように訪れた。



 ――― こ、これは!?



 横島の脳細胞は、爆発的に覚醒していた。
 まるで戦闘時のような緊張感を湛え始めている。
 眼は限界まで見開かれ、唇は固く結ばれた。瞬きの仕方すら失念したようだ。

 汗の筋が何本も、額から輪郭、そして顎へと滑り落ちていく。
 一瞬一瞬の変化を決して見逃すまいと、横島は集中力を高めていた。
 秒針の刻みが、横島の耳朶に飛び込んでくる。
 心臓の鼓動が、全身の毛細血管へと波を押し続け、時計の刻みと重なり合う。

 なにやらホラーゲーム的な演出のようだが、横島は気にも留めなかった。
 むしろ心に沸き立つものを、さらに奮い立たせている。
 それはあきらかに興奮であった。

 いまや横島の口元は達磨の如く、眼光はフクロウの如く、鼻息は闘牛の如し。
 彼の心は、ただひとつの答えを導き出していた。



 ――― 近くに、美人が、来ている



 横島は自問自答を、何度も何度も重ねていた。
 心が酔う。歓喜が9割、冷静さが1割、というところか。
 冷静と情熱の間を、蝶のようにフラを舞い、蜂のようにソウルを踊り、遊んでいる。

 足音は廊下の奥からゆったりと、そして律動的に響いてきた。
 コンクリートの廊下に反響し、確かな自己を主張するかのようだ。
 次第に大きく響いてくるそれは、ハイヒールと思しき硬い音色だった。

 横島の目は血走り始めていた。
 血流は全身を大河のように轟き、全神経はエマージェンシー・コールを響かせ始める。
 PC上の文字で表せば、ディスプレイ上を『キター』が羅列・猛進している状態である。
 授業はもちろん、蝉の鳴き声や暑さも、とっくに忘却のかなたである。
 全身の筋肉は、彼がいつでも机を飛び立てるよう、瞬発力の最大出力に備えていた。

 いまや横島のみならず、男子生徒陣の聴覚神経がフル回転していた。
 期待がひたひたと潮のように寄せ、気分は南国のサマー・ブリーズである。
 椰子の木陰でデッキ・チェアー。好きな異性とココナッツ・ジュースをすすり合う。
 先ほどまでのうっとうしさが180度転換し、南国気分がその身に押し寄せてくるのを感じていた。


 「はい、それでは今日の授業はここまで」


 授業終了を告げる鐘の音と、教師の言葉。
 さらに足音がドアの前で止まったのは、ほぼ同時であった。

 生徒一同起立し、姿勢を正し、一礼する。
 女生徒と教師がはて、と首を傾げるほどの整然さを、男子一同は見せた。
 来訪者はドアの向こう側で見計らっていたのか、一同が礼を戻すと、扉は間髪いれずに開いた。


 「イェアアアア!!」


 野太い声の喝采と、万雷の拍手が沸き起こった。
 予想通りか、はたまた想像以上であったのか、感極まって涙を流す者までいる。
 女子生徒は興味と好奇心を隠すことなく、眼差しを入室者に注いだ。

 褐色の肌。艶やかな黒髪。
 表情と佇まいは不敵さを醸し出している。
 タイツなど野暮だといわんばかりの脚線は、予想通りにハイヒールが支えていた。
 猫科を思わせる眼光は、しなやかな身のこなしと、さらに知的なスーツ姿と相俟って、並々ならぬタフさを感じさせる。

 教壇の中心まで速やかに歩を進めると、女性は野生的な微笑を浮かべながら、教室を見回した。
 数学教師は前もって事情を聞いていたのか、入室する彼女に目礼を返している。
 彼女、小笠原エミは、空気を押しのけるように生徒たちの方へと身を向けた。

 全身で歓迎の意をあらわにしたのは、2名の男子生徒であった。


 「うおおおお、エミすわぁぁぁんッ!!」

 「うおおおお、エミさんジャーッ!!」


 歓喜と情熱の全てをほとばしらせながら、タイガー寅吉と横島忠夫は、跳んだ。
 青少年の輝ける想いの前には、重力引力の物理法則なぞ何程の事やあらん。
 願わくば、愛と癒しとその他もろもろを込めて、年上のおねーさんらしく優しく抱きしめて、いろいろ導いて下さらんことを。



 ――― 豚と河童が、夏の空を飛んだ。



 とある一人の女生徒は、ダイブした2人をそう評した。
 窓の向こう、澄み切った青空を背景に、彼らの肢体が高く舞う。
 生徒一同の視線が、きれいな放物線をたどって、2人を追いかけた。

 世界がスロー・モーションで時を刻む中、女生徒の脳内にはクラシック音楽が、荘重なる響きを流していた。
 J・S・バッハ作曲、『主よ、人の望みの喜びよ』であった。


 「横島さんっ、タイガー!」


 友人にしてクラスメート、ピエトロ・ド・ブラドーの叫びは、彼らの耳にはすでに遠すぎた。

 一瞬で2人は抱かれた。
 抱きしめられたのは確かだった。
 胴回りが大人の二抱えほどもある大蛇、アナコンダに、である。

 開かれたドアからすばやく身をくねらせ、入り込んできたらしかった。
 誰もが気付く間もなく、視界の端に捉えたときには、すでにタイガーと横島は空中で羽交い絞めにされていた。

 なるほど、そういうことだったのか。
 ようやく認識し、納得した生徒一同は次に、驚愕と恐怖を味わう時間を得ていた。


 「お助けぇぇぇっ!!」

 「きゃ――――っ!!」


 狂乱が始まった。
 机も椅子も爆発したように吹っ飛び、一同は転げるように逃げ出した。
 数学教師はアナコンダが入室してきた瞬間、胴体に弾き飛ばされ、すでに泡を吹いて気絶していた。

 生徒たちは教室後方に身を寄せ合った。
 数十人分の必死の形相が並んだ。親を呼ぶ声、宗派を問わず唱えられる念仏が、教室内に飛び交う。
 友人と抱き合い、抜けた腰をなんとか立たせようと、懸命に全身を動かすさまがひっくり返った虫のようである。

 3D映画など比較にならぬ迫力で、アナコンダは大木のような肢体を、教室の前半分でひとつ大きくうねらせた。
 体表はてらてらと油染みたような光沢に覆われ、その下ではびっしりと、整然とした模様が並んでいる。
 巻き取った胴体を揺らし、大蛇の視線は、ただタイガーと横島のみに注がれていた。
 明らかに、横島とタイガー両人にかまっている風情である。食べ方を模索している、というのが正しいかもしれなかったが。

 いまや2人の顔色は、赤から青へとゆるやかに変色し始めていた。
 脱出方法を思考している余裕はまったく見られない。
 大蛇が本気を出せば、2人の胴体は生木を裂くように、たやすく千切られるであろう事は確実であった。


 「ほっほっほっ、やーっぱり準備してきてよかったワケ」


 嬉々として語るエミの表情は、さわやかさに満ちていた。
 彼女の声に反応したものか、アナコンダはしゅるしゅる、と舌を鳴らし、エミを見下ろした。
 黒真珠のような両眼がつぶらな輝きを放ち、太すぎる胴体には似合わぬ可愛らしさをにじませている。
 『こいつら食べちゃってもいいスか?』とでも聞いているのだろうか。

 パニック・ムービーであれば、蛇は問答無用で食欲に従うところであろうが、幸い今回は見送られた。
 冷静さを取り戻した生徒の1人が、エミの眼前へと進み出てきたのだった。
 砂糖を溶かしたような黄金色の髪と瞳の色、彫刻された表情と姿態は見慣れたものらしく、エミは喜色満面である。
 少年、ピートことピエトロ・ド・ブラドーは、必死の面持ちでエミへと懇願していた。


 「え、エミさんっ。どうか、もうその辺で」

 「ああん、ピートぉん。ピートがそう言うんなら、止めてあげてもよいワ・ケ」


 一同は盛大にずっこけた。
 男に媚びることなぞ無さそうな女性が、なんとも艶かしい声音と共に、身をくねらせている。
 エミはそのままピートの腕を取り、自分の方へと引き寄せると、ネコのにおい付けのように身を擦り付けた。

 男子生徒は嫉妬に燃えさかった。
 格差社会の弊害とはなんという壁の厚さと高さなのであろうか。
 女子生徒は対抗意識を芽生えさせた。
 年上の美人であっても、若さとフレッシュさだって立派な武器である。

 教室内の空気が、急速に内圧を高めつつあった。
 嫉妬は体温を上昇させ、数十人分の熱量が重なることで、空気が膨張していく。

 ある者は怒りに拳を握り締め、ある者は悲嘆にハンカチをかみ締め、ある者は教師と生徒のえっちい展開を誠心誠意期待する。
 自身へ向ける呪文があるとすれば、今まさに生徒たち自身がそれを唱え、己を悲しみと憎しみの鎖で束縛していた。

 美形が、美形が、美形が。
 胸が、胸が、腰が、腰が、尻が、尻が。
 でかい、でかい、つるつる、ぷりぷり、すべすべ。



 ――― 憎いッ、エロいっ、羨ましいィッッ!



 理不尽さは百も承知で、それでも憎まずにはいられない。
 ザ・人生である。

 生徒の幾人かはその結論に図らずも達し、泣いた。若さを想い、涙を滂沱と流した。
 どうして、人は必要と思った時に、イケメンではないのだろうか
 どうして、人は必要だと自覚させられた時に、ナイスバディではないのだろうか。

 言葉は要らない。
 歯軋りの響きだけが、教室内に響き渡っている。
 その内容も理由も、そして込められた意思も、耳にした者は誰もが理解できていた。
 イチャイチャしやがって、と瞬時に解釈できた。

 ピートの腕を取るそのしぐさ、彼の耳元で吐息を吹きかける艶めいた唇、そのいずれもが蠱惑的である。
 ああ、見たくもあり、見たくもなし。
 青少年の熱く滾る衝動と、羨ましさに身悶えせんばかりの懊悩が、絡み合って渦を巻いていた。
 校内での不純異性交遊には、せんせいもおとーさんも禁止、と叫びたくなること確実である、その光景。

 場の空気を払拭したのは、更なる入室者であった。


 「おい、いつまで待たせんだ」


 声の主を目にした途端、ピートは驚愕し、エミは邪魔が入ったとばかりにむくれた。
 生徒一同の視界に飛び込んできたのは、1人の男子生徒であった。

 目つきが異様に鋭く、温厚さとは無縁である事はすぐに分かる。
 しかし不良生徒と決め付けるには、全身から漂う雰囲気が、世を拗ねるといった投げやりなものではない。
 例えるなら、火事場や喧嘩へと好んで飛び込んでいくような、荒事を恐れぬ侠気と評すべきであろうか。


 「ゆ、ゆ、雪之丞ぉっ!?」


 目つきの悪い少年の名前を呼んだのは、横島であった。
 ようやく上半身だけを開放できたらしく、絶え絶えの呼吸がこぼれている。
 タイガーに至っては気絶寸前らしく、酸素を求める魚のように口を開閉させていた。

 エミ、そして雪之丞と呼ばれたこの2人は、横島、タイガー、そしてピートの顔見知りなのか。
 生徒一同をよそに、エミと雪之丞は至極あっけらかんとした風情で、自己紹介を始めていた。


 「小笠原エミよ。今日から非常勤講師として来ました。短い間だろうけど、ひとつよろしくお願いするワケ」

 「伊達雪之丞だ。文句があるヤツはいつでも来い。歓迎してやる」


 特にピートね、と言外に知れたのは、エミの扇情的に過ぎるウインクと投げキスによってである。
 伊達と名乗った少年は、ふてぶてしさを湛えた視線と態度で、教室を睥睨している。
 先ほどのアナコンダは、エミの頭上から教室を見下ろすと、しゅるしゅる、と再び舌を鳴らした。
 『エミの姐さんをよろしく』と言っているかのような丁寧さを感じた、と幾人かは後に語った。

 エミと雪之丞。
 この2人が真っ当に、教職に勤しみ学業を修める人物であるとは、もはや教室内の誰もが考えてはいなかった。










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                        えす☆きす! −Especially Kiss−

                             【第1話】

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 校舎の屋上なら、日当たりの良さは折り紙つきである。
 夏場の昼時ともなれば、陽光にさらされたコンクリートの床が熱気を放ち、フライパンの上で炙られているようなものだ。
 だが今日は幸いにも、昼ごろから緩やかに吹き始めた風が、熱気を幾分か和らげていた。

 茹だるような暑さを想像していた横島たちは、ほっと安堵していた。
 横島を先頭に、ピート、タイガー、机妖怪の愛子が屋上のドアを潜る。続いて伊達雪之丞に小笠原エミという面子が、昼のベンチを陣取った。
 思い思いに持参した昼食を広げながら、一同は自然に輪を作っていた。

 世の中は常に予測不可能で、しかも奇怪なことがあるものだ。
 横島はもちろん、ピート、タイガー、愛子の3人はそろっていぶかしげな表情を浮かべていた。
 どのような手続きを経たものかは知らないが、GS業界でも屈指のエキスパートと言って良い2名が、高校に赴任かつ転入してきたのである。


 「しっかし、お前が学ランねぇ。なーんか妙な感じやなぁ」

 「まーな。こちとら学校に費やす時間も惜しかったしな」


 咀嚼していた焼きそばパンを飲み込むと、雪之丞はあっさりと言い放った。
 学生服を着たことで、少しはそれらしくなるかと思えば、そこはやはり外観だけだったようだ。
 むしろ自慢げに聞こえる言葉に、横島はただ苦笑を返した。

 強くなるためなら労を厭わず、生死のかかった修行も『どんとこい』という気質の持ち主である。
 雪之丞が強さを求める精神的背景を、多少なりとも知っている横島としては、茶々を入れる気など毛頭ない。

 が、それにしても、もう少し加減したら良いのにとも思う。
 横島自身、万事、命あっての物種主義を貫く身である。
 生きてこそ浮かぶ瀬があるのはもちろん、美女とウハウハな人生が望めようというものではないか。


 「とにかく、長々とインチキ学生やってるなんざ、かったるくていけねぇ。手っ取り早くカタぁつけて引き上げるわ」

 「んなこと言うわりには、えらいエンジョイしとるやないか」


 雪之丞と彼の足元を交互に見ながら、横島はあきれたようにつぶやいた。
 空になったペットボトルが数本転がっており、紙に包まれたままのカツサンドにチキンサンドが、食されるのを待っている。
 嬉々として5本目の焼きそばパンに取り掛かる雪之丞の姿に、なにやら胸が重くなってきた横島は、意識と話題を早々にエミへと移し変えた。


 「それにしても、潜入捜査までせにゃならんて、よっぽどヤバイ事件なんスか?」


 よほど危険な幽霊が、近くをうろついているのだろうか。
 だが、虫を掃うように手を振りながら、エミは横島の言葉をあっさり否定していた。


 「ヤバイっていうか、長引きそうなワケ。それ以前に六道のおばさまに頼られちゃ、あっさり断るワケにもいかないでしょ」


 六道の名が出た途端、ああ、というため息と共に、一同の納得顔が並んだ。
 六道親子。特に母親と娘の冥子は、エミにとって、でき得るものなら近づきたくない相手の筆頭格である。
 愚者と天才は紙一重というが、六道母娘は天然気質も才能も、また才能から生じる災厄も桁外れであった。悪気はないのだろうが、ない分余計に性質が悪かった。
 エミはもちろん、横島にタイガーもまた、冥子が主導する除霊作業に付き合わされた結果、病院送りにされたことも数え切れない。

 事の発端は、エミが知己である六道家を訪れたことにあった。
 近く予定されている『六道女学院・夏季合宿』についての打ち合わせであったが、何より面倒事は手早く片付けておきたい気分もあった。
 今回の訪問でも例に漏れず、冥子とのティータイムを経て、六道母から依頼が持ち込まれていた。
 その後、引っ張り込まれたらしい伊達雪之丞を交えて、今回の件を打ち明けられたのだが、正直なところ、エミも対処に一考を求められる事例であった。


 「……学校を往復するだけの幽霊?」


 雪之丞、エミを除いた誰もが、戸惑いを隠さなかった。
 何か害を及ぼすわけではない。横島たちの高校と六道女学院の間を、一体の幽霊が単に行き来しているだけだと、エミは言うのである。


 「被害者は?」

 「なし」

 「六道側でも?」

 「なし」

 「となると、最近死んだ学生の幽霊とか?」

 「どっちの学校にもそんな生徒の情報はないわね」


 横島、ピート、タイガーはそろって首をひねった。
 霊障の単純さもあったが、エミがわざわざ出張ってくるほどの事例なのだろうか、という疑問が浮かぶ。
 また、エミが一考を要するという、その必要性もよくわからなかった。
 エミほどの腕前であれば、霊的アイテムでも駆使して、早々に解決できそうなものであるのに。
 彼らの疑問は当然とばかりに、エミは先んじて説明を始めていた。


 「霊波が弱すぎるのよ。もともと害意のない霊体らしくって、六道の方でも気がついたら見失ってたってワケ」


 一同はうなずいた。確かに霊障の多くは、霊体自身の害意から発することが多い。
 破壊衝動まるだしの悪霊を見ればわかるように、霊力を持たない一般人でも知覚できる場合がある。
 だが今回はどうもその例から外れているらしく、他者への害意もなければ、そもそも目的が何なのかも不明ときている。


 「おい、愛子。お前も知らないの?」

 「ううん、会ったことない。っていうか見たことも聞いたこともないわよ」

 「ってことは、うちの学校の幽霊じゃないってか」


 ピートとタイガーにも視線を向けてみるものの、心当たりがないとばかりに二人は首を振る。
 横島が視線を向ける前に、雪之丞が語を発していた。


 「はっきり確認できてねぇから、わからん」

 「ますますわけがわからんなぁ。わざわざ幽霊でモグリ学生とも思えんし」


 被害は皆無、目的に所在も不明。
 話を聞く限りでは、それほど深刻な問題ではなさそうだし、経緯を見守る形でも良いのではなかろうか。
 横島はパック入りのコーヒー牛乳を飲み干すと、エミへと向き直った。


 「こりゃほっといても良いんじゃないっスか? あちこちフラフラしてるだけみたいですし」

 「そうもいかないワケ。あんたもわかるでしょ。悪霊化なんてほんの僅かのきっかけよ」


 断ると六道家もうるさそうだし、とのつぶやきは正直すぎたが、皆は納得していた。
 雪之丞だけは、麦茶のボトルを一気に半分ほど飲み干すと、鼻を鳴らした。


 「そっちの方が願ったり叶ったりだがな。こっちは一戦交えてもかまわねぇんだが」

 「荒っぽすぎるわ! まぁ、お前がこんな仕事、引き受けたこと自体信じられんけど」

 「行きかけの駄賃ってヤツだ。小遣い稼ぎにゃちょうどよかったからな」


 お気楽さを丸出しにして、雪之丞は最後の焼きそばパンを食べ終えた。
 すばやくカツサンドを拾い上げると、ビニールを剥ぎ取り、頬張る。
 食事を思うさま楽しんでいるのが、ありありと知れる食べっぷりである。

 大した霊障ではなさそうだと決め付けてかかっているのもあろうが、雪之丞の気質を量れば、腕っ節を発揮できてこその除霊なのだろう。
 肉弾戦こそ技量の発揮しどころという価値観は、スイーパーというよりファイターである。
 考えてみれば、彼が選ばれたのも万が一の局面、戦闘でのサポートを考慮した六道側の人選であろう。
 そこまで思考を押し進めていた横島の予想は、にやりと微笑むエミの言葉で覆された。


 「あら、かおりさんとかいう彼女に頼まれたからじゃなくって?」

 「い、言うなっつったろーが、コラァ!」


 なんと珍しいことだ。ピートは驚いていた。
 血気盛んな心情はバトルのみに発揮されるとばかり思っていた、あの雪之丞がほほを赤く染めている。

 伊達雪之丞と弓かおり、二人の交際は、クリスマス以後も順調に続いているらしい。
 もっとも互いに頑固というか、素直でないというか、雪之丞の反応を見る限り、まだまだ恋人未満の仲であろう。
 二人に向かって交際などと口にしようものなら、目をむいて否定することは明らかだ。

 ニンニク入りの料理を食わされ、クリスマスに貧乏くじを引かされた身としては、どうも納得しかねる心情があるのも確かである。
 しかし、そこは神の慈悲を求めよう。ピートは内心で厳かな祈りを捧げた。

 勝者でありながら、嫉妬に身を焦がす罰当たりも存在していたが。


 「よぅし、いー度胸だ。校舎裏とは言わん。ここでケリをつけてやる」

 「横島サン、ワッシも手伝いますケェ」


 唐突に生じた殺気は周囲の空気をゆがめ、混濁させていく。
 横島とタイガー、彼らの背後を見れば、怨念に澱む黒い炎と『ドドドド』という擬音が響いてくるであろう。
 地獄の悪魔も「おう、同志よ」と酒に誘いたくなるようなネガティヴな感情が、どんどこ燃え盛っていた。


 「ま、待て待て、おいこら。俺は頼まれただけだぞ」

 「問答無用じゃ。オレらの前で、よくもぬけぬけと惚気てくれおったな。この罪は重いぞ、雪之丞」

 「ワッシもひさびさに野生の血が滾ってきたワイ」

 「やめなさいよ、二人ともバカね」


 ピートは微苦笑し、愛子は呆れ気味に声を投げていた。
 エミに至っては、すばやく席をピートの隣に移すと、彼に身を預ける始末である。


 「あ、あの、エミさん。ここは一応学校なので、その……あんまり引っ付かれると」

 「あらぁん、いいじゃなぁい。教師と生徒同士、禁断の恋愛なんて、なかなかに美味しいと思うワケ」

 「美味しくありませんっ。大騒動になりますよっ」

 「ね、ね、ピートぉ。エミ先生って呼んでくれない? いろいろ教えてあげちゃうわよぉ」


 なるほど。エミがやってきたのは、ピートの存在がその理由の大半であったのか。
 いまさらながらに、愛子は理解できていた。

 煩悩とは、どうしてこう伝染してしまうものなのか。
 まことに男も女も、その短絡的思考とは幼稚というか、困ったものである。
 横島にひとつ睨みを飛ばすと、愛子は青春の渇望に騒ぐ一同をぼんやりと見つめた。


 「おのれっ、ピート! 貴様、顔見知りとは言え、女性教師とイチャつくとは、なんというエロ本な真似を!」

 「くくくく……雪之丞サンだけじゃのーて、ピートサンまでも」

 「だ、だから、弓のヤツが勝手に頼んできたんだっての!」

 「エ、エミさんっ。お願いですから降りてくださいっ! 誤解を招いてしまうじゃないですかぁ!」


 愛子は、ふと空を見上げた。
 青く、高く、夏特有の力強い輝きに満ちている。

 今後の捜査に関しては、とりあえず『見鬼くん』を用いた地道な捜索を、当面の方針と定めるのが良いだろう。
 背後に喧騒を聞きつつ、愛子はさっさと今後の対応策を、一人でまとめていた。

 結局、終了のチャイムを迎えるまで、屋上は、騒動と黙考がバランスを保っていたのだった。





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 ―――『熱した薬缶に手を触れれば、一秒でも一時間のように感じるが、好意を持つ異性との会話は、一時間でも一秒に感じる』


 相対性理論の概念を持ち出すまでもなく、放課後がやってくる時間もまた、来てみれば長いようで短い。
 物理教師による雑談を思い出しながら、弓かおりは鞄の中身を手早く整えていた。

 教科書にノートが数冊、愛用のペンケースに手帳、図書館から借りた文庫本が2冊。
 ひとつひとつを数え終えると、そのまま蓋を閉じる。
 いつもの手順をいつも通りにこなしたはずだが、かおりはかすかな違和感を拭えずにいた。

 校庭に目をやれば、人影は一様に、校門へと足を進めていた。
 夏場の強い日差しを、はつらつとした表情で受け止める者もいれば、急ぎ足で避ける者もおり、様々だ。
 いつもの日程であれば、今の時間は昼休みであり、運動やら雑談やらで、校庭中が埋め尽くされているはずである。

 不意にかおりは、ため息をひとつこぼした。
 今日は金曜日。しかも放課後は早く訪れている。
 定例の職員会議とのことで、生徒一同は喜び合い、帰宅後あるいは寄り道の予定を立てていたものだが、かおりはその例外であるらしかった。

 風がカーテンを優しく押しのけ、かおりを撫でていく。
 長く艶やかな黒髪が大きく揺れると、柳のようなしなやかさで、元の位置へと落ち着いた。
 こぼした言葉は本人も意識していたものか、かおりの表情はどこか呆けていた。


 「雪之丞ったら、まじめに仕事してるのかしら……」


 彼女が話を持ちかけてから3日が過ぎていた。半分勢いの依頼であったとはいえ、時の経つのは早いものだ。
 連絡がないということは、いまだ作業が継続中なのだろう。
 学生生活を謳歌しているのかもしれないが、反面、彼が同級生たちと歓談している風景、というものがどうも浮かびにくい。
 むしろ不良学生との対立やら校舎裏での決闘やらと、物騒なシーンばかりが連想されてくる。

 目つきが悪く、始終腕っ節に頼りがちで、背丈は自分と変わらぬ程度と、およそ好男子の条件からは漏れる可能性が高い。
 そんな人物――確かに、知己ではあるけれども――に、半分勢いもあったとはいえ、霊障の解決を依頼したのは自分である。
 六道理事長も彼の参加を喜んでくれたのは確かだが、こうして時が経過してみると、その判断は本当に正しかったか、疑問と不安が芽生えてくる。
 もともと大した霊障ではないが、平地に乱を起こすような真似はしないまでも、乱を望むことは大いにありえる。

 余計に落ち着きを失いかけ、かおりはあわてたように鞄を取った。
 声は、かおりが振り向こうとしたその瞬間にやってきた。


 「ふむふむ、気になりますかね、奥さん」

 「だ、だ、だぁれが、奥さんですのっ!!」


 式は白無垢がよろしいですわね。ああ、でもウェディング・ドレスも捨てがたいかも。
 っていうか新郎がアイツだなんて今考えてしまった私の脳内は何を考えているのでしょうかと精神鑑定を行わねばならないのでは。

 言語中枢が過熱気味かつ支離滅裂の状態に陥り、脳内は結婚協奏曲のファンファーレが響き始めた。
 煩悩退散と振り払うように、脱線した思考を強制停止させ、かおりはツッコミの一言を思い切り放った。
 振り向かずとも声だけでわかるその人物は、同級生にして、いつのまにかの友人付き合いとなった仲、というべきか。

 女子らしからぬ短髪に長身。学生服から覗く手足は細く、だが程よく締まった筋肉がついている。
 六道女学院きっての武闘派学生、という評判はまさに的を射ていて、例えば授業時の白い鉢巻と木刀はあつらえたように似合っている。
 姉御肌の気質を周囲に振りまきながら、ツッコミを受けた彼女、一文字魔理は快活な笑い声を上げた。


 「そりゃ奥さん呼ばわりされてもしょーがないじゃん。ぼやっとしてたかと思えば、切なげに男の名前呼んでちゃあねぇ」

 「なななな、何がっ、切なげですかっ! 私は単に仕事を紹介しただけで、そんな不純な気持ちなど少しも……!」

 「いやぁ、ゴケンソンだよ乙女だよ、弓かおりさん。映画でも主役はれる頬の染めよう。伊達さんもデレるよマジで」

 「おだまりなさいっ!」


 唐辛子を丸呑みしたかのように、かおりの肌は赤く染まった。
 その様がおかしくて、余計に魔理は笑い声をあげた。
 ちょっと前までは、両人共に毛嫌いしていた間柄であったのに、きっかけを経てからの変化とは、何度考えても驚いてしまう。
 お高く留まったお嬢様気取りだの、大した霊的能力もない腕っ節だけの短慮思考だのと、互いが互いを言いたい放題であった。


 「魔理さんもかおりさんもそのへんにして、そろそろ帰りましょうよ」


 新たに投げかけられた声は柔らかで優しく、2人のやり取りを好ましいものに感じているようだった。
 かおり、魔理も声の投げ合いを収め、声の主へと振り向く。

 長く艶やかな黒髪はかおりと似ているが、日光が照らした部分は青みを帯びていた。
 夏服をまとった姿態は、年相応の成熟さを薫らせつつ、どこか幼さをも併せ持っている。
 ほわほわ、と擬音交じりで例えられよう微笑を浮かべながら、氷室キヌは2人の反応を待っていた。


 「わりぃわりぃ。んじゃ行こっか」

 「まったく……。だいたい、ゆきのじょ・・・・・・ごほんごほん。伊達さんが仕事に失敗すれば、紹介した私の責任にもなりかねない事ぐらい、容易に判断がつくでしょう。それだけのことですわ」

 「優しいなぁ。伊達さんも甲斐甲斐しい奥さんを持ったな。ねぇ、おキヌちゃん」

 「うんうん。当てられちゃいますよね」

 「……お二人とも、水晶観音でお仕置きされたいようですわね」

 「いーじゃん。男なら身も心も可愛い奥さんなんて大歓迎だろ。メイドにミニスカ・ナース、裸エプロン、いろいろ興味あるとか言ってなかったっけ?」

 「言うわけないでしょ、ふしだらなっ!」


 かおりほど赤くはないにせよ、おキヌも頬を染めながら、腹を抱えて笑った。
 発言した魔理の方も、からかい気味の笑顔をよくよく見つめてみれば、ほんのり桃色である。
 3人が3人とも、相見知った男友達を持つ身分としては、雑談交じりの情報交換というのも大切なのである。

 弓かおりは伊達雪之丞、一文字魔理はタイガー・寅吉、そして氷室キヌは横島忠夫。
 さらに彼女たちの先輩に当たる小笠原エミを加え、その横にピエトロ・ド・ブラドーを加えることで相関図が完成する。
 GSとしてのつながりもそうだが、高校生として、またいくつかの除霊作業に共闘して当たり、休日には皆で遊びに行く仲である。
 女性である自分たちはともかく、男性陣はそろいもそろって規格外級と来ているのだから、対応策の打ち合わせも必須といえた。

 ガールズ・トークという名の雑談を重ねるうちに知ったことだが、まったく男の趣味とは、広大にして意味不明なのが大半である。
 だが、ワン・ワードのみを抽出して検討すれば、なんとか理解できないこともなかった。
 何かと問われれば、その回答は『かわいらしさ』である。
 魔理を筆頭に、やや潔癖気味のかおり、知識不足のおキヌをして、うなずかせた結論であった。


 「おキヌちゃんは……やっぱ、メイドさんかな」

 「ま、魔理さんだって似合うんじゃないんですか? 今度の学園祭で、魔理さんに頼んでみようって、みんな言ってましたけど」

 「あたしぃ? やだ。かおりのバニーガールに任せる。ステッキ持って、燕尾服のジャケット着るとかっこいーらしいぜ」

 「だ、誰が着るもんですかっ!」


 単純に考えれば、女子特有の可愛さを引き立てる効果というか、着れば『かわいくなる』可能性が高くなるのである。
 モンブランにパウダーシュガー、ショートケーキにクリームやイチゴを飾るようなものだ。
 魔理、かおり、おキヌの3人としても、自分たちに似合うかどうかはわからないが、興味がないわけではない。
 想像だけでも楽しい気分は確かにあるが、本当に自分たちが着る場合を考えると、大いに抵抗を感じる段階である。

 かわいらしさとは、どの部分に見出し、またどう認識すべきであろうか。
 なにやら哲学的思考になってきたようだが、3人はいたって真面目であった。
 一応男性の、それも特定の人物の目ではあるが、うら若き乙女としては気にしていた方が良い。
 教室を出て下駄箱を経由し、校門へと向かう間も、会話は途切れなかった。


 「んで、かおり。伊達さんから、なんか連絡はあったのか?」

 「まったくなしのつぶてですわ」


 ホントにいろいろと無頓着なんだからと、かおりは鼻息を荒げた。
 ますます気苦労の多い奥さんのようだ。魔理とおキヌは視線と微笑みを交し合う。
 かおりの気持ちはわからないでもなかったから、無粋なツッコミを入れるのは差し控えたかった。

 正式な依頼は六道理事長が行ったこととはいえ、最初に仕事を紹介したのは、かおりなのである。
 そして今日に至るまで、雪之丞からは何の連絡もないときている。
 六道理事長にそれとなく尋ねてみたものの、いつも通り春風駘蕩の風情で、小笠原エミからの定期報告以外は何もないと教えてくれた。
 というわけで、なんだか放っておかれたような気分がして、かおりとしては不平不満が募っていたのだった。

 理不尽な感情であることは重々承知している。
 それにしたって、だからといって、それはそうと、とにもかくにも。
 何度も何度も理由を後付けしてしまい、感情をどうにか納得させようと試みるものの、やはり上手くいかなかった。
 理性的な解決で済ませたい弓かおりとしては、論理的思考の積み重ねで脳を加熱させていたのだが、結局は魔理とおキヌからの言葉によって解決法を見出していた。


 「じゃあ今度、学校に行ってみようぜ」

 「じゃあ今度、学校にお邪魔してみませんか?」


 気恥ずかしく、プライド等々が先立ったが、そこは仕事を紹介した者の義務の一環ということで、かおりは納得した。
 銀杏並木はみずみずしい緑色の葉を一杯に抱え込み、微風に揺れながら、蝉の声を受け止めている。
 葉の擦れ合う音を聞きながら校門をくぐろうとして、かおりはふと、先日の記憶の扉が開くのを感じた。
 なぜ今頃浮かんだのか、考える間もなく、それは自然に浮かび上がってきていた。



 ――― まぁ、心配すんな。手っ取り早く片付けてくるからよ。



 不敵な笑みを浮かべた雪之丞の姿だった。
 心配なんかしてませんわよ。かおりは胸の奥底で、放り返すように声を投げかけた。
 頼もしいんだか、血気盛んに過ぎるのか、行き当たりばったりの気質ゆえなのか、考えるのも今更という気分である。

 空が高かった。
 どこまでも突き抜けるような青さを帯びた空間を、申し訳程度の雲が、それでも悠々と流れていく。
 考えていても仕方がない。かおりは足に力を込めた。
 履き慣れたローファーの靴底が、少しばかり音を高める。

 3人は横一列に並び、すぐにかおりが半身ほど先んじた。
 流れるような歩の進みで、黒髪が後方へと波打ってなびく。
 軽く目を丸めた魔理は、だが次の瞬間には白く健康な歯を見せて微笑み、おキヌもまたそっと口元をほころばせていた。

 2人の目が再び交わされ、目視できる程度のうなずきを見せた。
 すぐさま、2人はかおりの背中を追い始めた。
 ローファーとスニーカーの響きが、コンクリートの上で歌うように跳ねる。

 かおりの横顔を、見たかった。
 薄く、はにかむように浮かんだその微笑を、もう一度見つめてみたかったのだった。








                        続く
ご無沙汰しております、ロックハウンドです。
ようやく、久しぶりに、作品をひとつ仕上げることが出来ました。

今作は、遅ればせというには遅刻が過ぎるのですが、絵師のアラコさんの誕生日プレゼントとして、書かせて頂きました。よかったらご笑納下さいませ。
皆さんにも楽しんでいただければ幸いです。

また、よろしかったら、読後の感想は最終話の方にいただければ、嬉しく思います。
それではどうぞ。ありがとうございました。

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