「動くな! 動けば結晶を破壊するぞ!!」
コスモプロセッサから、奥の手で奪取した『魂の結晶』、それは横島の手に渡った。
これを破壊すれば、アシュタロスの野望は潰える。
だが、それは同時に死んだルシオラを、見捨てることにもなるのだ。
(ヨコシマ! 結晶を破壊して!)
横島の心に、残留しているルシオラの意識が語りかける。
「なんで……なんで、俺が……!」
(アシュ様を倒すんでしょう? それとも自分の手は汚したくないの?)
「!……後悔するのは、てめえがくたばってからだ! アシュタロス!!」
「や、やめろっ!」
横島が、結晶を破壊する決心をしたそのとき、
(違う!!)
ルシオラとは違う声が心に響いた。
「!? な、何だ?」
(今君の手には、かつて誰も手にしたことのない強大な力、『魂の結晶』がある。本来はアシュタロスにしか扱えないものだが、横島よ、それを可能にする能力を君は持っているはずだ)
(ア、アシュ様!?)
「アシュタロス……なのか?」
その声はアシュタロスそっくりだった。横島の脳にコピーされたアシュタロスの記憶が、横島に呼びかけているのだ。
(そうだ。君の持つ能力は使い方次第で、万能にもなりえる。すべてをご破算にする、『
機械仕掛けの神』の加護は君のもとにある)
「そ、そうか!」
横島は文珠に念を込める。『模』の文字が浮かび上がった。
「馬鹿め、私をコピーする能力は封じてあると言っただろう」
現実のアシュタロスがあきれたように言う。
アシュタロスとベスパには、横島の霊力を遮断するジャミングがかけられているのだ。
「……ああ、そうだな。けど、コピーするのはお前じゃない!」
文珠の霊力が開放され、別の形を作り出した。
横島の手にある『魂の結晶』に覆いかぶさるようにして、きのこの様な形をしたものが現れる。
「なっ! いかん! それは!!」
一目見て、アシュタロスの顔色が一変した。
「因果を無視して、すべての願いをかなえる『
機械仕掛けの神』 コスモプロセッサだ!」
手のひらに乗る程度の大きさだが、それは確かにコスモプロセッサのコピーだった。
「馬鹿なっ!」
アシュタロスがあわてて、横島に襲い掛かろうとする。だが、
「もう遅い! コスモプロセッサ、アシュタロスを消去してくれ! そして、ルシオラを復活させるんだ!!」
コスモプロセッサのコピーから、強烈な光が放たれる。そして、それが収まったとき、すべては終了していた。
「本当に、終わったの?」
みんなが呆然とする中、美神令子がつぶやく。
だが、確かにアシュタロスの姿は消えてなくなり、横島のとなりには死んだはずの女性の姿が……
「ヨコシマ、お前は本当にすごいわ……え?」
横島はとなりに現れたルシオラに気づいていないのか、ぶつぶつと手にあるコスモプロセッサに、独り言のようなものをつぶやいていた。
「世界中の美女が俺に惚れますように。それに、女湯のぞいてもばれない能力ほしい。あ、もちろん女子更衣室も! いや、それより服を透視できる能力のほうがいいか……? えっと、それから……」
「「なに言ってんのよ、あんたわっ!!」」
ルシオラと美神の拳が横島の顔面に叩き込まれる。
どこまでいっても横島は横島だった。
殴られて吹っ飛んだ横島の手から、コスモプロセッサと魂の結晶が落っこちる。
地面に落ちると、それはボロボロと崩れてしまった。
「ああ! 俺の純真な願いをかなえる夢のマシンがあぁ〜!」
「「うるさいっ! この大馬鹿者!!」」
横島はもう一回殴られてしまった。
「たぶん、アシュタロスを消滅させるのに、『魂の結晶』のエネルギーをほとんど使い果たしたんでしょうね……
ルシオラさんが復活できたのは良かったわ。まあ、それ以上の願いは聞かないほうが、世界平和のためかしら」
ため息をつきながら、美神美智恵がつぶやく。
こうして一連の事件はハッピーエンドで幕を閉じた。それは、ありえたかも知れない可能性の物語。
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