なぜ・・・
なぜ・・・
さっきから、頭の中で同じ言葉がぐるぐる回っている。
なぜ・・・
なぜ・・・
なぜ、こんな事になってしまったんだろう。
『未来は変わらない』と昔、奴が言っていた。
でも、それなら。
人にはあらかじめ定められた結末が待っていて、ただそれに向かって生きているだけなんだとしたら。
僕のこの10年間は、一体何だったんだ。
もう、止めよう。
今更いくら考えたってムダだ。答えはもう出てしまっているんだから。
結果として未来は変えられなかったし、過去に戻ってやり直す事もできない。
だけど、やはり考えてしまう。
なぜ、こんな事になってしまったんだろう。
一体、どこで道を間違えてしまったのか。いや、最初から間違ってなんかいなかったのかもしれない。
奴はきっと、今の僕の姿を見て、どこかで笑っているんだろう。
変わるはずのない未来を変えるためにもがき続けていた、哀れな道化の末路を。
外から聞こえてくる音が、だんだん大きくなってきた。出口が近いんだ。
この先に、あの子がいる。
ブラスターを握る掌がじっとりと汗ばんで、微かに震えている。心臓の鼓動が、やけにうるさく聞こえる。
もう少し。もう少しで、あの光景が、僕の前に現れる。
10年前に見た、どんな事をしてでも変えたかった、あの光景。
あの子は、少し困ったような表情で、僕のほうを向いて微笑んで、
僕は、そんな彼女に銃口を向けて、そして、、、
そうだ、まだ終わっていない。答えは、まだ出ていないじゃないか。
僕が、この引鉄を引かなければ、未来は変わる。変わるはずだ。
僕は今まで、神様を信じた事が無かった。
この世界で起こる出来事の全ては、科学で証明できると信じていた。
だけど今、僕は初めて神様に祈る。
願わくば、どうかこの僕に。
神よ、『女王』を守らせ給え。
God Save The Queen 終
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