不意に鳴り響く警笛に、ジーク・フリード少尉は眉をしかめた。半ば書類の束に埋もれた自身の執務席からゆっくり立ち上がると、はね窓を開けた。漆黒の闇に包まれたここ魔界軍のとある駐屯地。中世欧州を想わせる石造りの塔が視界を埋める。それらを見下ろす一際高いその塔の一角から、ジークの斬れる様な眼光はその光景を捉えた。
「あれは確か…… 宝物庫の方だったな……」
漆黒の闇夜に尚染まる、白でも黒でも無く立ち上がるその灰色の煙を見つけて呟いた。
何者か賊が侵入したのであろうか? 魔界の宝物庫に忍び込むとは大胆かつ繊細なやつだ。何を盗んだ? 武器か? 秘宝か? 何が目的か……金か? 名誉か? 力か? しばし思惟した後、ジークは窓を閉めた。事ここに至ったからには今現在の自分には関係の無い事だ。自分が必要となれば命令が下るはずだ……まずはどこかの実働部隊が動くはずである。現に外からは将兵達の点呼が聞こえてくる。
「厄介な事にならなければ良いのだけど……」
頭上のベレー帽を整えると、ジークはゆっくりとした足取りで再び執務席に戻った。
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【M6夏企画】TSジーク!パラダイス?大作戦!!
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輝く太陽。寄せては返す白波。大勢の恋人達や家族連れが今この瞬間を満喫している。弓かおりもまた、彼女の隣でムッスリとする男の肩にしな垂れながら、今この時を満喫していた。
「明日。熱海にいくぞ!」
伊達雪之丞から唐突に電話が掛かって来たのは昨日の事だ。フリーのGS(ゴースト・スイーパー)として全国を駆け回るこの男からデートに誘われるなど簡単に数えきれる程だ。それでも夏のひと時を自分と過ごそうと想ってくれたその男に、「ありがとう……」 素直にそう伝えると、電話口の雪之丞は逆に驚いた様だった。
ジリジリとした熱視線が砂浜を焼き、潮風が心地よく肌を触る。
「肌焼きたくないから……」
そんなかおりの意を汲み、2人は手頃な海の家からビーチを眺めていた。
チープな座敷に隣り合って座る。かおりはイチゴ。雪之丞はブルーハワイ。シャクリ、シャクリとかき氷が唇に触れる。ただゆったりと、時間が流れて行く。
「雪之丞?」
長い沈黙をかおりが破った。
「さて…… 次いくぞ次!」
行き先も告げる事も無く、雪之丞は立ち上がった。
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小さな御城の天守閣から熱海の街並みと大海原を楽しんだ後、2人はゆっくりと階段を下った。突然に誘われたとは言え、女性の旅行荷物とも云えばそれなりの大きさになってしまう。狭い通路を難儀して歩くかおりであるが、この男に気遣いを求めるのは喧嘩のタネにしかならないのは重々承知している。
「ところで今夜はどんなホテル? それとも旅館かしら?」
「え? あれ? 言ってなかったか……」
「もしかしてノープランで熱海まで来たんですの? こんな繁盛期に予約もしないで一泊できる程、熱海は甘くないわよ? 成り行きでラブホテル! なんて絶対嫌ですわよ!」
「スマン。今回は仕事なんだ。せっかくの熱海だし、たまには一緒もいいかなぁ……と。ほら、アレが今回の仕事場……」
バツが悪そうに雪之丞が指さすその建物に、かおりは絶句を通り越して怒りさえ湧き上がってきた。先ほどからチラリチラリと視界の隅に入ってくるその建物を、全身全霊をもって脳内画像処理で消去し続けていたのだから。
その建物とは、知る人ぞ知る熱海のお約束。18歳未満の健全なお子様達には入館が固く禁じられているその―――
“熱海秘宝館”
デリカシーの欠片すら持ち合わせていない男だとは過去の事例から嫌という程知ってはいたが、アラサーにもなって妙なテンションで怪しい展示を楽しむバカップルになるくらいなら死んでしまいたい。いや。むしろ雪之丞一人で死ね。
その時、目の前のスロープに一台のタクシーが滑り込んで来た。清算を済まし出てきた女性と入れ違いに、かおりはそのタクシーに乗り込んだ。
一瞥をくれる事も無く、無言のままタクシーに乗り込むかおりに、流石の雪之丞も焦る。3秒ほどフリーズした後、
「ちょ…… おいちょっと待てよ!」
そう駆け寄った時、タクシーは勢いよく飛び出していってしまった。
「待ってくれよ……」
半ば茫然としながら消えゆくタクシーに呟いた。
「もしかして振られちゃいましたか?」
かおりと入れ違いにタクシーを降りたその女性に、唐突に話しかけられた。
「あんたにゃ関係の無い事だ」
強がりを見せた雪之丞ではあるのだが、その女性の姿に思わず息をのむ。
海風にたなびく純白の長袖ワンピースが包む褐色の肌。すらりとした四肢とそれと反比例するかの様な二つの膨らみ―― そして何より眼を引く銀色の長い髪。その頭上には、小さな麦わら帽子が置かれている。
強がってみせた雪之丞ではあったが、クスリと笑ってみせたその女性の姿に息を呑んだ。
「ママに似ている……」
「え? 誰に似ているって?」
「い……いやなんでもない」
必死にごまかそうとする雪之丞の姿に、妙齢の女性は一瞬ニヤリと笑みを浮かべた。
『大丈夫…… バレていませんね。そしてあなたも変わって無い様ですね……』
その女はさり気ない会話を装いながら雪之丞との距離を詰める。
「俺は伊達雪之丞。フリーのGSだ。あんたは?」
「私はジー……。そう…… ジーコとでも呼んで下さい。某国の特派員ですわ」
「なんだ大層な名前だな? もしかして(サッカーの)神様か?」
「と! とんでもない! 私は神様なんかじゃなくって魔…… いや。ただの普通の人間ですのよ!?」
「ただの人間には見えねぇけどな……」
雪之丞は左手の甲で、女性の肩をその純白のワンピースの上から軽く叩いた。
コツンコツン…… という金属音に、ジーコはさっと身を翻す。
『まさかもうバレたのか?』
ジーコの心配を余所に、「おたくも色々訳ありみたいだな」雪之丞は何食わぬ顔でポケットに手を突っ込むと、ジーコを尻目に歩き出した。
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過の事件直後、司令官から呼び出しを受けたジーク・フリード少尉を待ちうけていたものは、彼の予想を半ば裏切るものだった。
“奪われた魔界の宝物を奪取し、かつそれと対をなす宝物を人間界から持ち帰る事”
「ただしだ……」
司令官は言葉を続ける。今現在掴んでいる情報では、賊は人間界に逃亡しそこで対となる宝玉の奪取をもくろんでいる。しかもその賊とは、当日宝物庫の警備に当っていた一鬼で有るとの事。今回の事件は明らかに魔族側の失態であり、神族にその事実が知れ、介入されるような事態はデタントの流れからも是非避けたい。
「そこでだ…… 君の能力を封印し、人間として今回の任務にあたって貰う」
「そ! そんな! 単鬼で宝物の奪取を企てる様な相手なんですよ? 脆弱な人間風情に何ができるって……」
「これは君にとってチャンスでもあるんだ。いつまでも情報部の末席士官としてクスぶっているつもりではないんだろう? 大丈夫。こちらでも出来る限りの手は考えてある。紹介しよう―――」
司令官に促され、奥の部屋から一人の老人が現れた。
「彼は生前、主に日本の北九州を中心とした地域で悪の秘密結社と戦っていた実績がある。人体改造については深い造詣を持っていてね。鬼籍となった後、こちらの陣営に迎え入れた人物だ」
へらへらと薄ら笑顔の老人に、若干の不安を隠せないジークであるが、彼自身、自身の境遇には思うところもある。しばし躊躇の後、ジークは最敬礼と共に任務を了解した。
「よろしい。直ぐに人体改造を行い、地球時間で24時間後、特例でゲートを開く故、人間界に潜入せよ!」
<23時間30分後……>
容器内部のエリクサーがゆっくりと廃液されていく。2本の油圧シリンダーが駆動し、改造容器とも呼ぶべきガラス製の巨大な棺桶の蓋が開いた。
「ゆっくりと目を開けたまえ……」
マッド・サイエンティスト――老人の言葉に従い、ゆっくりと瞳を開けた。
ジークはそのままの姿勢で意識を体の隅々に巡らせる。
「やはり人間というものは脆弱ですね……」
ジークは立ち上がり大きく伸びをする。改造後の自分を確認しようと、部屋の片隅にある大きな姿見の前まで歩み寄った時、キャーと絹裂く悲鳴を思わずあげた! 目視した現実を現実として認識できず、自らの掌で躰をまさぐり確認する。想像した以上に貧相な肢体。これは良い。だって人間なんだもの! それよりなんだ? この躰の肩や二の腕、太股や腰の部分に鈍く光る金属製のプレートが、さもそこに有るのが当然といった風情でその存在を主張している。
「司令官殿も言ってたでしょう? 出来る限りの手は考えてあるって」
博士は狼狽を隠せないジークにひょうひょうと言い放つ。
「ま…… まぁ任務があるのですから、よくわからないけどそれは良い事にしましょう…… でもこれはなんなんですか〜〜!!」
発狂し、振り返ったジークの長い銀髪が躍動する。両の手でそれぞれ一つづつ支えた乳房を、ゆっさゆっさと揺さぶりながら―――――
「いや〜。ただ普通に改造するだけじゃツマんないなぁって。だって事前に嫌だなんて言ってなかったし!」
「聞かれてもいませんから!!」
全裸のまま博士ににじり寄るジークに、ポンとファイルを一冊投げて寄こした。
「それ、その躰の取り説ね。それともうすぐゲート開くけど……」
ハッと我に返ったジーク。
「後で問題にさせてもらいますからね!」
ファイルを乱暴に掴むと、ジークはゲートへと走っていった。
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秘宝館の事務所で今回の依頼内容を確認した後、雪之丞は館内を一通り見て回った。どうにも馬鹿馬鹿しい展示物とそれを熱心に見物する若いカップル達。小指を絡ませながら何やら含み合っている。
「これか……」
雪之丞は一つの展示物の前で歩みを止めた。黒光りするその珠の前には“宝玉”とのみプレートに書かれていた。
「こんなもんがそんなに大事なんかなぁ……」
今回の依頼内容。何者か人外がこの宝玉を狙っていると、匿名の投書があったらしい。どんないわくがあるのか知らないが、人外ということでGS協会に案件が持ち込まれたのだが、その依頼元があまりにも馬鹿馬鹿しいため、たらい回しにあったその仕事がフリーの雪之丞に降ってきたのだった。
「2丁目の黒真珠。その左珠ですわ……」
突然声を掛けられた雪之丞は2つの事で驚いた。1つにこの珠の素上を知っている事、そしてその時まで、背後に忍ぶジーコに気がつかなかったからだ。
「何やら訳ありの特派員らしいな……」
「確認しておきますが、私は敵ではありません。それに匿名で投書したのも私ですし。一人では少々難しい仕事になりそうでしたので……」
雪之丞のギロリとした視線がジーコに突き刺さる。
「まさか、有名人のあなたとご一緒できるとは想定外でしたが……」
「いくら不景気っていってもGSってやつは無駄にプライド高い連中が多くってな。仕事選んでやがるんだよ。そんなニッチを埋めるのが、俺みたいなフリーって訳だ」
すると雪之丞はすっと右手を差し出した。躊躇しつつ、ジーコはその手をしっかりと握り返えした。
「ありがたく前金で仕事貰ったんだ。今のところはとりあえず信用してやるよ。ジーコ嬢」
とりあえずホッとするジーコであるが、次の瞬間その顔に険しさが宿る。
「伊達さん…… 気が付きましたか?」
「あぁ…… 瘴気だ。 どこか異界のゲートでも開いたのか?」
サッと雪之丞は身構える。気がつけば、周りで談笑していたカップルたちが次々と正体を無くしてへたり込んでいく。
「素人さんに見せるもんじゃねえから遠慮したんだがな…… だが、急いだ方が良いみたいだ」
雪之丞がカっと目を見開くと、体から霊気を噴出しその身に纏っていく。強固な魔装の鎧を完成させると、守護するべき宝珠を背に守る。
「あんまり得意じゃないんだがな……」
しばし目を閉じると精神を集中し、周囲の霊視を始めた。
「そこかっ!」
天井の一角に、雪之丞の霊波砲がさく裂する。盛大に閃光とほこりを巻き上げながら、天井にぽっかりと穴があいた。物理的に……
「やべっ…… ミスった」
「あの…… 50センチ右です」
雪之丞がジーコを見ると、霊視ゴーグルを構えて、いまだホコリの舞う天井の一角を見据えている。
「そうなら最初から言えよ…… 危ない!」
一発の霊波砲がゲートの向こうから打ちこまれた。その霊波砲はジーコに直進する。素早く動いた雪之丞は、横っ跳びにジーコを抱きかかえ、なんとか免れる。
ジーコの指摘した異界ゲートから異形のモノがぞろぞろと身を踊らす。音も無く降り立つと、宝玉を背にした雪之丞とジーコを取り囲んでいく。
「このゾンビども…… おい! こりゃぁ、アシュタロスの一派じゃねえのか? 未だに残存一派が活動してるなんて話を噂に聞いた事もあったが…… こりゃ料金に釣りあわねぇぞ……」
「あら? こんなトコロで逢えるなんてうれしいじゃない〜」
ゾンビ達に続いて降り立った一鬼に声を掛けられる。その姿は雪之丞にとって過去との邂逅であった。
「てめぇ。勘九郎…… 魔界軍の下っ端兵士やってんじゃなかったのかよ……」
「そんな待遇にいつまでも甘んじる私だと思って? 私はね…… 私の理想郷を手に入れるの。いくらあなたでも邪魔はさせないわよ」
勘九郎が無言のまま右手をスッと挙げると、ゾンビ達が一斉に躍り出る。しかし勘九郎に対峙する雪之丞に一瞬の隙が生まれる。
「きゃっ!」
ジーコがゾンビ達に束縛されてしまった。
「何も力だけを求める理想郷を作ろうって訳じゃないの。ここは平和的に取引きしましょう」
勘九郎はその凶悪な顔を精一杯にニヤリと笑って魅せる。
「あたしの指定する場所にあなたが一人で後ろの宝玉を持ってくる。大丈夫。可愛がってあげるから。こんな女連れ歩く浮気性なあんたが悪いんだから♪」
「てめぇ…… 勘九郎――」
勘九郎とゾンビの一味はゆっくりと歩きだす。大きな扉を開けると大きなテラスがあり、熱海の海岸が一望できた。
「まったく―― こんな小娘にうつつを抜かすなんて、私がちょっと目を離した隙に……」
「駄目です雪之丞さん! GSが悪魔と取引なんてしては!」
「あんたは黙ってなさい!」
勘九郎のそんな意思を汲み取る様に、一体のゾンビが無言のまま一撃を。ジーコの鳩尾にめり込ませた――
『ポチっ!』
今週の驚きメカが登場するかのような、間抜けなスイッチ音に場の空気が一瞬で変わった。
「え? ちょ…… いまポチって?!」
次の瞬間――― ジーコの体を包んでいた純白の衣が音を立てて引きちぎられる。
『もしかして…… 人体改造の際に何か仕掛けが? 戦闘型スーパージークへの変身プロセスですね!?』
あの時博士から渡された仕様書は実は見ていない。情報士官として、それは許される事ではないのだが、あの精神状態で熟読する程お人善しでも無い。様々な駆動音がジーコの戦闘意欲を高めていく。ジーコを束縛するゾンビの手が緩んだその瞬間を逃さない。先ほどあっさりと掴まった汚名返上とばかりに、サッと身を翻すとゾンビ達と距離を取った。そして頭上の麦わら帽子をサッと投げ捨てた。
『さぁ! この変身能力の真価。見せてもらいますよ!』
しなやかな褐色の肢体を夏の日差しが包んだその刹那……
ジーコの肩、腕、脇腹etc…… 全てのプレートが一斉に開く。
シュパッ!!
盛大な轟音と白煙と共に無数のそれが飛び出した。ミサイルが――
「ちょっ! 何このインド人みたいな反則わz……」
魔界の導入した最新の機械兵器に、勘九郎一味は呆気なく鎮圧されてしまった……
「お前…… その体って一体……」
「雪之丞さん! 余計な詮索は無用ですよ!」
なかば茫然とする雪之丞の面前に、一柱の神族が空間転移してきた。
「小竜姫か!? これは一体…… そもそもなんであんたが出張って」
キッ! と雪之丞を睨んだ小竜姫であったが、その瞳はウルウルと潤み、心無しか頬が紅葉しているのがわかる。
「私はここの真の管理人でもありますから…… 老子が戯れで人間に授けてしまったのが“二丁目の黒真珠の左珠”だなんて…… だって左右そろったら、私の口から話す事も憚られる、イカガワシイあんな事もそんな事も思うまま。そっちの修行はどうなっておる? なんてあからさまにセクハラじゃないですか?! もうヤダこんな仕事……」
「え……と。つまり、本来は妙神山で保管しなきゃならんようなお宝を、猿の戯れのせいで小竜姫がわざわざ見張りをしなきゃならんと…… しかもそのお宝は勘九郎が欲するようなあんな事やこんな事が……」
『あの猿……』
ポツリと呟く小竜姫のその頬を、一筋の涙が流れた。
「ちょっと雪之丞! これは一体どういう事ですの?! 心配して戻ってみれば……久しぶりのデートだと言うのに何て破廉恥なっ!」
思うところもあり、悩んだ末であろう。現場に戻ったかおりが見たモノは――
限りなく全裸になって意識を失い転がるジーコと、国内にとどまらずアジア最強と言われる神剣の使い手が一柱であるす小竜姫。しかもその小竜姫の頬は涙を伝い、その傍らには茫然とする雪之丞である。
「雪之丞っ!」
有無を言わさぬかおりの張り手を、雪之丞はただ甘んじて受けるだけであった。
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「失礼します」
報告を終えたジークは、執務室を後にした。
若干不手際もあったものの、今回の事件は無事に解決。神魔族、それぞれ一珠づつ管理するハズの二丁目の黒真珠に関する一連の事件ではあったが、神族側の不手際も露わになった関係から色々有耶無耶に終わってしまった。
「あの時の雪之丞サンの腕の中。温かかったですね……」
どこか間抜けで憎めない、そして最後まで自分の正体に気がつかなかったやり手の戦友の事を思い出した時、思わず笑みがこぼれた。
「さて、任務も終了したし、この怪しい機械の体ともおさらばです」
ジークは軽い足取りで、例の怪しい博士の下に急いだ。
しかし数刻後。再びジークの悲鳴が魔界の駐屯地に響き渡ったという。それはまるで完全な人間の女性のそれであったと、遭遇した将校の一人が後に証言した。
おしまい。
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