<<SIDE:横島>>
「ねぇヨコシマ……このブタさんの置物はなぁに?」
お、懐かしいな。
とっくの昔になくしたもんだと……どこにあった?
「そこ。
押入れの奥で埃かぶってたわよ」
ちょ……る、ルシオラさん?
独り暮らししてる男の部屋の押入れは、決して覗くこと無かれ。
あんたっちゃぶるの聖域ですよ?
それをあんた……
「今は ”独り” じゃあないでしょ?
それにそんな回りくどいいい方しなくても……
ハッキリ言ったら? みられたら困るナニがあるって。
裏でビニールな本の束とか、ラベルの貼ってないビデオとかDVDとか……」
あーっ! あーっ!!
いや、そ、それはデスネ。
俺にとっては必要不可欠というか、霊能力の源でありましてね……
「大丈夫、私は別に気にしてないから♪」
ほ、ホントに?
「えぇ勿論♪
別に、モデルの娘がムダに乳肉がデカい牛オンナばっかだとか、一番使われてそーなカッピカピんなったページの娘がやけに美神さんそっくりだとか――
私は、そーゆーの、ホント全ッッッ然気にしてないから!!」
うわぁーい。
全部チェックされてやんの♪
ってーゆーかルシオラさん……
気にしてないとか、そんな視線だけで人を殺せそうな笑顔で言われても説得力が……
「ふん……ま、いいわ。
その話は後でしましょ……時間をかけて、じっくりと……ね!」
ォゥフ―― orz
「で……話を戻すけど、このブタさんなんなの?
せともの、鼻とお尻にぽっかり大穴、中身は空で……ずいぶんと変わったデザインねぇ?」
あ、あぁ、そいつは一昔前の夏の風物詩っつーか、熱帯夜の必需品っつーか……
そうだ、そいつと一緒に緑色のグルグルなかったか?
「これ? 無事なの一コだけあったわよ。
他のは全部粉々で……」
あーそう、それ。つか、そっちがメイン。
そのブタは、そいつを入れて使うためのモンなんだよ。
でも、今はあんま見ないかな?
液体式の電動のが主流になってるっぽいかんなー。
「これは……見たところ 何かのお香みたいね。
それにしてはニオイがヘンだけど……」
そりゃ……何せソレ”蚊取線香”つって、虫除け、殺虫用のモンだかんなー。
お前ら姉妹にとっちゃあ……って……
「……ふぅん……なるほど。
”虫除け、殺虫用”ねぇ……」
……ぁ……あの……るしおら、さん?
「つまり……コレは、私へ対するあてつけなわけね?」
――は……え?
い、いやちがう! そーゆーんじゃ全然なくて……
「……また随分と遠まわしな……
あ、アレな本やビデオの娘が、私とは正反対のばいんばいんな娘ばっかなのも、そ、そーゆーつもりなのかしら?
私のことが嫌いなら、はっきりとそういえばいーのにねっ!!」
いや、んなワケねーだろ!? つか、どこをどーしたらそんな結論になるんだよ!?
お前が持ってくるまで俺はそいつの存在すら忘れて……
大体なぁ……もとはといえば、お前が勝手に押入れんなか引っ掻き回すから……
「うるさいうるさいうるさい!
ヨコシマのばかっ! おっぱい星人!
どーせ私のは洗濯板よ!!」
な!? き、きたねーぞ!! 泣くのは反則だろ!?
あーもーっ!!
めんどくさい女は美神さんだけでじゅうぶ……
「な、なんだとーーっ!?」
あ、ウソです。
ゴメンナサ……い、痛っ!?
「うわーーーーーんっ!!」
や、やめ……暴力反対ーーーっ!?
おしまい
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