「今日は節分ということで、豆まきをやるヨ」
豆の入った枡を持った局長が、周囲の面々を見渡しながら言った。
「はい、鬼は〜外〜!福は〜内〜!!」
「「「「鬼は〜外〜!福は〜内〜!!」」」」
局長に続いて皆本、薫、葵、紫穂の4人が豆をまく。
「ほには〜ほほ〜ふふは〜ふひ〜…(ぼりぼり)」
「豆をまかずに喰ってるんじゃねぇっ!」
「(ぼりぼり、ごくん)だってもったいないし」
「…いや、たしかにそうだけどさ…」
まくべき豆を喰べる初音と、そんな初音を叱る明。
「鬼は〜外ぉ!!鬼は〜外ぉ!!」
「いだっいだだだっ!」
「鬼は〜外ぉ!!鬼は〜外ぉ!!」
まさに鬼の形相で豆を谷崎へ投げつけるナオミ。
「痛い、痛いぞナオミ!!
何故そんなに豆を私に投げるっ!?
それに福は内はどうしたんだっ!?」
「あんたが居なくなれば、私に福が来るんだよぉぉ!!」
「いだだだだっ!!
…ああっ…新たな道がっ…」
ナオミに本気で豆をぶつけられつつも、谷崎は恍惚とした表情を浮かべていた。
「さて、次は恵方巻きだけども…。
柏木君、正しいやり方はどうやるんだネ?」
「まず、今年の恵方…つまり縁起の良い方向を向いて、
目を瞑った状態で恵方巻きを口に咥え、願い事を思いつつ無言で食べ切る…とのことです」
手持ちの資料を眺めつつ朧さんが言う。
「縁起の良い方向と言うとどっちなんです?」
「今年は西南西とのことなので…あちらですね」
「なるほど」
朧さんが指差す方向へ向き直る皆本。
「え〜っと、願い事を思いながら無言で…」
「違うわよ薫ちゃん。
目を瞑ったままで、願い事を思いながら無言で食べるの」
間違った方法をしようとする薫へ訂正する紫穂。
「あ〜ん…」
「こらっ、1人だけ先に喰おうとするんじゃねぇっ!」
先走って食べようとする初音を止める明。
「ナオミ!
ここは私がナオミが食べてる逆側から食べると言うのはっ…ふぎゃぶっ」
「気持ち悪いこと言ってんじゃねぇぇえぇぇ」
ポッキーゲームならぬ恵方巻きゲームを提案する谷崎を床へ潰すナオミ。
「も〜、みんな好き勝手にやり過ぎやで。
ちゃっちゃと縁起の
ええ方向きぃっ」
ピシィッ!!
葵の言葉に空気が凍りついたかと思うほどの静寂が訪れる。
「…葵…」
「…葵…」
「…葵ちゃん…」
「…葵くん…」
「…葵ちゃん…」
「…葵姐さん…」
「…葵ちゃん…」
「…葵ちゃん…」
「…葵クン…」
「ち、違うんやっ!
今のはうちの、うちの中のお笑いの鬼が言わせたんやぁぁぁぁっ!」
全員の乾いた視線を受けながら、葵は頭を抱えながら泣き叫ぶのであった。
(終われ)
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