「水元光‥‥ これが僕の名前ですか?」
渡された作戦計画に目を通した皆本は当惑したように確認を求める。
「ええ、作戦中はそれで通してもらいます」柏木がことさら事務的な口調で応える。
「作戦の性格上、本名というわけにはいきませんし、かといって全くの偽名では葵ちゃんが困るでしょう。だから同音異字ということで、名前の方は適当に選びましたが問題でも?」
「いえ、別に」と皆本。
『光』は両親が『光一』と共に最後まで迷った名前と聞いている。その意味でそれなりの思い入れがある名前。偶然だろうが、幾ばくかの感慨はある。
「ちゅーことは皆本はんはウチ、未来のアイドル上野蒼のマネージャー水元光ってコトやな」
自分の部分を見ていた葵が話に加わる。
「ええ、前任の『久々津』さんがクビになって代わりに来たのが皆本さんという形です」
「なら、堂々と皆本はんをコキ使える訳や。何ちゅーてもアイドルてっ我が儘なもんやし」
「はは、まあそうだな」皆本は苦笑いを浮かべる。
これまでチルドレンの身の回りの世話をし我が儘や勝手な振る舞いに振り回されてきた身としては『現場運用主任』の肩書きが『マネージャー』に変わっただけの気がする。
「ちょーしに乗るんじゃねぇ!」
「そうよ! あくまでも任務の上だから、それを忘れないでね!」
”主役”としてテンション高めな葵に横の薫と紫穂がぶーたれる。二人とも、今回は後方からの支援、”普通の人々”が現れるまで出番はない。
「ちょっとくらいエエやん! ウチは危険な役目やで!」
葵はそう抗議を一蹴すると軽く胸を反らせ
「打ち合わせが長引いたんでみんな不機嫌になっとるわ。水元! みんなにちゃー(茶)でも入れてんか」
TAKE3(その2)
10月 17日 10:08AM TAKE3
‘まだいるわね’
B.A.B.E.L受付エスパーチーム<ダブルフェイス>の一人、常磐奈津子は受け持つべき訪問者が途切れたのを潮に気になっていた人物に視線を移す。
その人物は玄関ホールが開いた時からその端に佇み待ち人を捜すように幾度となくホール全体を見渡している。
その振る舞いだけでも怪しいのに風体がそれに輪を掛ける。
頃は秋、朝夕はずいぶんとヒンヤリとしてきたとはいえ『寒い』という形容にはほど遠い時候。
にもかかわらずその人物はまるでここが冬の波止場かというようにトレンチコートの襟を立て顔を埋めているている。付け加えれば目深にかぶるハンチング帽に目元を隠す黒いサングラス。
『ここに不審人物がいますよ!』と幟でも立てている感じだ。
もっともここまであからさまだと、かえって怪しむのはバカバカしい。ホールを行き来する人々もその”痛い”人物を見ないようにしているだけ、それ以上の反応は示していない。
自分もそうした『事なかれ主義』に徹するべきかとも思うが重要な作戦が発動中でもあり落ち着けない。
意を決し特務エスパーの権限での透視を試みる。
‘‥‥ 透視できない?!’出た結果に奈津子は形の良く整えられた眉を顰める。
視点こそ相手の目の前に立つ辺りに近づけるものの、近づくに従い霧のようなものが視野に滲み像が結べなくなる。サングラスの下にどのような顔があるのかはおろか、コートで隠された体型すらもよく読みとれない(まあ、ある程度、華奢でひょっとすると女性かもしれないことぐらいは判ったが)
透視を試み”見えない”ことは‥‥ 実のところ色々とある。
例えば、超度の高いエスパーなら普通に備えている超能力への耐性(ちなみにノーマルでもその部分に高い能力を示す者もいる)。同じく超度の高い精神感応系エスパーが他者に施すプロテクト。あと、鉛に代表される対超能力特性を持った素材に近年普及し始めてきた超能力対抗ツール、などなど。
しかし透視を阻害するモノの”手触り”はどれとも異なる。
わずかに顎を引きデスクに目立たない形で内蔵されたタッチパネルを見る。手で触れるか超心理エネルギーを向けることで第二種警戒態勢が発動される事になっている。
‘‥‥ さすがにいきなり過ぎるか’と小さく首を振る。
ここまで、見回す以上に何かしでかしたわけではないし危険を感じさせる兆候もない。
少し躊躇した後、隣の同僚−野分ほたる−に思考を向ける。
ちょうど来訪者との対応中であったほたるだが、そこは伊達に特務エスパーの訓練は受けてはいない。無意識レベルで解放されている受信部が同僚のメッセージを感知する。
‘何?’対面した訪問者に業務用の笑顔を保ちつつ思考で返事をする。
‘気づいていると思うけど、ホールの端に変な人がいるでしょう。透視しようとしたらうまくいかなくて。精神をスキャンできるか試してみて’
‘ああ、あの人?! 怪しいのは確かだけど害はなさそうだし無視しておけば良いんじゃない。下手にちょっかいをかけて仕事を増やすのもどうかと思うし’
相変わらず要領よく物事を済まそうする同僚に苦笑しつつ、
‘そう言わないで。スキャンができれはそれで良し、できないとなれば私が引き受けるから、やってみて’
‘そこまで言うのならやるけど一つ”貸し”ね! 次の合コンの時は一番イイ男は私に譲んなさいよ’
ほたるはそう思考で応えると返事を待たず超能力を発動する。
「ほたる、どう?」と確認する奈津子。
ちょうど来訪者は途切れ小声であれば問題はない。
「ダメね。考えている事どころか感情もよく判らないわ」
同じレベルの奈津子が透視できないという前段があるのでほたるはさほど驚くでもなく答える。
「やっぱり。で、何が妨害していると思う?」
「そうねぇ、分からないって言うのが一番だけど‥‥」
ほたるは考えている事を示すように小首を傾げる。
「何か意図的な妨害って感じじゃないのよねぇ たまたま彼女の周りにすりガラスみたいなモノがあってそのために見えないって感じカナ」
「ほたるもそう思うの」同感とうなずく奈津子。
自分の実感としてもその説明が(事実からはずいぶん遠い気もするが)一番適切だと思う。ただし、超心理エネルギーに対して何が”すりガラス”となるのかは見当もつかない。
「どう? 下手な考えって休むに何とやら、警備課に連絡を入れてつまみ出してもらうのが一番じゃない。何かを企んでいるとしたらその時に何か反応を示すはずだし」
ある意味、真っ当な提案をするほたるだが、言っている本人自身、それが適切な対応とは思っていないようだ。
どうにも居心地の悪い状況に奈津子は意を決する。不安要素をこのままにしておくわけにいかない。
一応はほたるに振ってみるが、”言い出しっぺ”が行くのがセオリーと拒否。スカートの下に収まった銃を意識しつつ”不審者”の元につかつかと歩む。
「先ほどからどなたかお待ちのようですが、誰をお待ちでしょうか?」
言葉こそ丁寧だが明らかな詰問に”不審者”は恐れ入る風もなく顔を上げる。何らあわてる事もなく帽子を取りサングラスも外す。
そこに現れたのは十代後半、栗色の髪を軽く肩に掛かるショートにまとめたまず美少女といってよい少女。
「コヨミちゃん! コヨミちゃんなの?!」
明らかになった不審者に見覚えがあった奈津子は目を見張った。
‘前に会ったのは三年前、いや四年か‥‥ 誰かの法事の時だっけ?’
奈津子は少女についての記憶を手繰る。
姓は自分と同じ『トキワ』、ただし字は異なり時の輪と書いて『時輪』。少し遠いが親戚に当たる。一応は何度か会ってはいるはずだが記憶にはあまり残っていない。
強いて言えば最後に会った時、歳の割に(確か十三歳と憶えているが)落ち着いた‥‥ というか、重い雰囲気を纏った感じがするなと思った事ぐらい。
ちなみに、今こうして向き合ってみると雰囲気は記憶とかなり違っており、大人びた芯の強さを感じさせる瞳はしているが、(記憶に残る)重さというか暗さは感じられない。思春期という年頃がそうさせるのかと思うが、数年の差とはいえ微妙にうらやましい。
「お久しぶりです、奈津子お姉さん」
コートをくつろげた少女−コヨミは親しげではあっても礼儀を弁えた挨拶をする。
「そ‥‥ そうね」意味もなく口ごもる奈津子。
不審者の正体が知り合いだった事に戸惑い、というか気恥ずかしさは隠せない。何か言わなければと気持だけは焦り
「ああ、コヨミちゃん、おばあちゃんはお元気?」
「はい! そりゃもう元気で元気で。当分は殺しても死なないって感じです」
その明るくハキハキとした言葉遣いに奈津子の違和感がさらに強まる。まるで演技を見せられているような感覚に囚われ、同僚に本当のところを確かめてもらう事もちらり考えるが、心が透視(よ)めない事を思い出す。
だいたい、今はそんなことより‥‥
「コヨミちゃんはどうしてB.A.B.E.Lに?」
向けられた質問にコヨミは軽く不審を抱いた様子で
「奈津子お姉さん。お姉さんは特務エスパーですよね?」
!! 向けられた問いに戸惑う奈津子だが表面的には何事もないように
「私が特務エスパー? まさか。私はここには一般職として採用されただけ、ただの公務員よ」
と後ろめたさはないではないがマニュアルに添った答えで済ませる。
少し前まではそれほどでもなかったが、昨今の”普通の人々”のテロが増えるにつれ特務エスパーの情報管理が厳しくなっている。
「違うんですか? 三、四年ほど前に超能力に目覚めたって。それでB.A.B.E.Lにいるって聞いたんでてっきり特務エスパーかなって」
「まあ超能力はあるけど低レベルよ」と小さな嘘。
「そもそも特務エスパーって任務によっては超法規的権限なんかも付くから超度や実用上の効果の他に当人の適性なんかも考慮して採用するの。エスパーなら誰でもってわけじゃないわ」
「そうなんですか。私を不審がっている様子なんでそういう仕事なのかなって」
‥‥ 本質を突いた言葉に奈津子は怯むが気を取り直し
「怪しい人間に注意するのも受付嬢の仕事よ! だいたいその格好を見れば誰だって不審に思うでしょ」
「この格好は変装なんです」コヨミは人目をはばかるように声を潜める。
「噂じゃ、B.A.B.E.Lの受付ホールには恐いエスパーが待機していて、訪問者全員の心の奥の奥を透視(よ)んだり体を内蔵まで透視してるって」
「いったいどこの都市伝説よ、それ!」
確かに、ほたると一緒に訪問者をスキャンするが全員を対象にしているわけではないし、時には透視したコトをネタにするが、あくまでも対象はそういう洒落の通じる相手に限っている。
「嘘?! それから少しでも身を守ろうって変装してきたのに」
「あ、あのねぇ、そんな訳分かんない変装で超能力が防げるって‥‥」
とあきれる奈津子。
エスパーというか超能力に対するノーマルの理解はそんなものかと少なからず情けない。つい意地悪な気分で
「まあ ここの警備については私には教えてもらってないことも多いし。ひょっとしたら、今もあなたの心をスキャンして全身を透視しているかもしれないわよ」
「そうなんですか」コヨミは不安そうに辺りをきょろきょろ見る。
「で、話を戻すんだけど、ここに何をしに来たの?」
「待ち人がいるんです。名前はミナモトさんって言いますが‥‥」
「ミナモトさん? あの皆本さん?!」飛び出した意外な名に奈津子は思わず言葉を遮る。
「『あの』かどうかは知りませんが、水に元の水元さん、名前は光さんとか」
‥‥ 付け加えられた説明に今度は言葉を失う奈津子。
まだ『皆本光一』なら話は分かる、どこで知ったかという問題はあるにせよ実在しているのだから。しかし『水元光』となれば話は別、なぜならその名前は‥‥
!? 相手の表情が変わったのに気づく。
浮かんだ微笑みの先にいるのは葵を伴った皆本。止める間もなく親戚の少女はそちらへと向かった。
10月 17日 10:40AM
「とりあえず、けぇへん(来な)かったなぁ」葵が残念そうに隣の皆本に声をかける。
「ここまではな」と押さえた声で応える皆本。
視線で『迂闊なことを言うんじゃない』と付け加える。
B.A.B.E.Lの敷地内とはいえ不特定多数が出入りする玄関ホール、”普通の人々”が見張っている可能性は十分ある。
『しもた!』と小さく舌を出す少女に抑えた声で
「予知課も午前中に事件が起こる可能性は最大で7%としていたからこんなものだろう。問題は午後からだ」
「そやな。あからさまに怪しい仕事が入っているわけやし」とうなずく葵。
二日前、チャイドル『上野蒼』へ子供服か何かの宣伝というコトで郊外−観光牧場での仕事が入った。ざっと調べた範囲では依頼元などに問題は見つからなかったが”普通の人々”の浸透力を考えた時、それで安心できる事にはならない。
「まっ、どっちにせよ『来るなら来てみぃ!』ってとこや。”普通のバカども”に思い知らせてやるわ」
三人の中では一番穏やかで常識があるとはいえチルドレンはチルドレン。気性は十分に激しい。
まして、今回、(例え悪人であっても)エスパーを狙って悪意ある行動を繰り返しているが相手らしいと知ればなおさらである。
ちなみに、当事者には真相を知る権利があるという判断に基づき、”NG”やその背景にあるところは話している。
その高めのテンションに皆本はある種の頼もしさ感じる一方で危うさを感じる。超度7とはいえ、どこまで行っても子供は子供という思いが‥‥
「あっ、紫穂!」
!! 葵の声にびくっとする。
子供呼ばわりした心の内を透視(よ)まれるとただでは済まない。 あわてて周囲を見回すが紫穂の姿はない。
どうやら女の勘で心の内を察知されたようだ。
してやられた事に苦笑を浮かべつつ、見回した途中に気づいたところにへ目を戻す。そこには<ザ・ダブルフェイス>の奈津子とやや怪しい風体の少女がいる。
「誰やろ? 割と親しそうな感じやけど」皆本につられ葵も少女を見る。
「さあ?」としか返事のしようはない皆本。
二人の視線を察したのかその少女がこちらを向く。
少女はこちらににっこりと微笑むと奈津子の制するのをスルーする形でこちらへ。
目の前であらためて礼儀正しいお辞儀を一つ
「水元さんおはようございます。私は時輪コヨミといいます。午後の仕事を手伝うように言われ来ました」
「えっ?! 午後の手伝い‥‥ ですか」
およそ予想外の申し出に皆本は目をしばたかせる。
「あれェ 連絡、来ていませんか?」コヨミは大げさに首を傾げる。
「水元さんへの連絡は劇団の方から入れてくれるって聞いていたんですが」
「いや何も聞いてませんが」と皆本。後ろに来た困り顔の奈津子に
「常盤さん、知り合いのようですけど、どういう人なんですか?」
「ええっと、ウチの親戚なんですが‥‥」奈津子もそうとしか言いようがない。
「へぇ 奈津子はんトコの? そういやトキワはんやったな」
普通に納得しかける葵は妙な顔をする。というのも目の前の女性が不思議なものを見たような困惑を浮かべていたから。
一方、コヨミはその困惑をすぐに引っ込めると何事もなかったように
「上野蒼さんですね、よろしくお願いします」と深々とお辞儀する。
「ああ、よろしゅう」子供相手とは思えない丁寧な挨拶にあわてて応える葵。
「それで‥‥ コヨミさんでしたね。コヨミさんはどうしてここに、仕事の手伝いという事ですが、仕事は午後で場所も別でしょう?」
「ああ、『コヨミ』でいいです。年齢的にも仕事上も先輩ですから」
コヨミは落ち着いた物言いで訂正する。
「実は落ち合う時間も場所も聞いたはずなんですが判らなくなっちゃって! 幸いというのも変ですが、言われた時の話で蒼さんの午前中のスケジュールがB.A.B.E.Lでの超能力検診と訓練だって聞いたものですから、ここで待てば会えるかなって思ったんです」
「はあ、そうなんですか」と答えるが上の空の皆本。
直前、ほたるの思念波が届いたから。それによれば目の前の少女には超能力に対するある種の耐性があるとか、今日という日、それが偶然かは‥‥
ふと過ぎる可能性、『ぞくり!』と背筋に冷たいものが走る。その可能性を確かめるにはどうすれば良いかと思案を走らせようとした時
「あれ、皆本! 待っててくれたのか?」と薫の声がホールに響く。
声の方には宙に浮いた薫とその下を歩く紫穂。作戦として少し距離を取って随行していたのが、こちらがホールで立ち止まった分、追いついたようだ。
『拙い!』と狼狽する皆本と薫・紫穂をコヨミはこもごもに見る。まず薫ににっこりと微笑むと皆本の方を向き直り
「この子たちは? お知り合いですか」
「えっ‥‥ まあ‥‥ 同じ時間帯に検査と訓練をする事になっている子たちで良く会うんです」
本当のところを言うわけにもいかず、幸い私服だった事もあり、出任せを並べる。
そんな他人行儀な台詞にむっとする薫だが紫穂がすかさず肘で突っつき牽制する。
高超度サイコメトリーとしてノーマル十歳児の何百倍もの情報に接している分、判断力には一日の長がある。
薫もそれで自分の立場に気づいたらしく照れ笑いに切り替える。
「蒼ちゃん、この人は? いつもは水元さんだけなのに」と紫穂が話を引き取る。
台詞は葵に向けてだが『誰?! 聞いてないわ!』と皆本への詰問が含まれている。
「私は‥‥」とコヨミが皆本、葵が答えるよりも前に自分が名乗った時の台詞を繰り返す。
それを聞く紫穂の表情はわずかだが不審が走る。目の前の少女がちらちらと薫の方を窺うのに気づいたから。訳を探るべくさりげなく進み出るとたまたまといった感じに手を触れ‥‥
きゃ!! 短い悲鳴を上げて飛び退く紫穂。
バランスを崩すものの反射的に薫がそれを(サイコキネシス)で支える。
!! 主任としての反応を示しかける皆本だがそれはかろうじて自制する。
きょとんとするコヨミに驚きの表情のまま掌を見る紫穂、敵意とは言えないまでも警戒を露わにする薫と葵。
一気に気まずくなった”空気”中
「あの、水元さん上野さん、用意ができたそうです。いつものところに行ってください」
と奈津子が割って入る。
「あっ、判りました! 常磐さん」適切な”助け船”乗る皆本。やや早口に
「コヨミさん、これから午前中いっぱい検診と訓練なんです。ずっと待っていてもらうのも悪いし午後からの仕事は僕だけで十分、引き取ってもらって良いです。劇団の方にはちゃんと仕事をしたって連絡を入れておきますから」
「そんな冷たいことを言わず手伝わせてください! 初めての仕事が”子供の使い”だとおばあちゃんにも笑われます。待つのは構いませんので連れてってください、お願いします!!」
涙を浮かべかねない熱意で懇願する少女に皆本はそれ以上断る理由を見いだせなかった。
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ずっと以前、雑談の『投稿未満』に入れた分が前半になっています。その時点では奈津子(&ほたる)を重要な役にするつもりだったのですが、その後も原作者の意地かと思われるほどの影の薄さが続き(それどころか影の薄さをネタにされるほどの扱い)、この話でもこのシーンだけのチョイ役に落ち着きました。