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【夏企画】唇にだけ残ってる懐かしさが
「うわああああ、海が青い」
「海が青いのは普通だよ。不二子さん」
漣の音が聞こえてくる。それに私は酔う。
暑い夏、避暑がしたいと駄々をこねたら、久しぶりに京介が連れてきてくれた海。
「……水が冷たいわ」
「それも当たり前だよ」
苦笑する京介、お茶を濁すのはやめてよ。と私はぶうっと膨れる。
「……戦争がおきるなんて信じられないね」
「そうよね」
戦争がはじまりそうになっていた。
この国は平和だと信じていたのに。
子供の頃から私達はずっと一緒だった。
私はぱしゃりと水に手をつける。
ぱしゃりと京介にかける。
クスクスとそれを見て笑う京介。
「……京介、あのね、私は」
「なんだい不二子さん?」
「……なんでもないわ」
日差しが暑いわねえ。と私はごまかすように笑う。するとおかしな不二子さん、とクスクスとおかしげに京介が笑う。
「……暑いわね」
「そうだね」
懐かしい思い出が頭によぎる。
私たちはずっと一緒だった。私は立ち上がり京介を見つめた。
「……京介」
「不二子さん?」
「……好きよ」
ずっと言おうと思ってた。だから言ってみた。
ずっと弟だと思っていた。でも違う。
いつの間にか男の子として意識して。
ずっとずっとずっと好きだったことに気がついたの。
「……僕もだよ」
眼差しが混じる。
交差する二つの心。
私たちは見つめあう。
まっすぐに私は京介を見つめた。
そして私は目を瞑る。唇に感触を感じる。
とても優しい感触を。
思い出すととてもそれは……。
……切なくなる。とても胸が痛い。
見たくなかったこんな夢は。
夢の残像は、とても悲しくて。
目をあけると悲しくなる。
暑い夏、私達はずっと二人だった。
でも私は今は一人。
胸が痛い。胸が痛い。
とても切ない。苦しい。
今は……一人きりだ。
セミの音、漣の音、聞くたびに胸が痛い。
私は夏が嫌いだ。
今は世界で一番夏が大嫌いだ。
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絶対可憐チルドレンの兵部と不二子で書いてみたひと夏の思い出です。
妄想が爆走してます・・・。このCPお好きな人がいたらよかったらどうぞ
しかし夏企画用のプロットなんですが、これでよかったのでしょうか・・・。すいません
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