1714

愛してる

「愛してる、愛してる、愛してる」
 神様にお願いするの、三回呼びかけると、そのお願いは叶えられるの。
 心が揺らぐたびに、私はこの呪文を唱える。
 愛してるという心は変えられないから。
「京介、京介、京介」
 私は呼びかける、神様へと。
『不二子さん』
 呼ぶ声を思い出すたびに切なくなる。
『大好きだよ、不二子さん』
 私達は海辺に立っている。そして京介は私へと手を差し出す。私は微笑みながらその手をとる。
 そして私たちは海の中へと足を踏み出し、そして水をかけあうのだ。
『大好きだよ、ずっとずっとずっと』
『私もよ』
 目を閉じると思い出すのは、遠い夏の思い出。
 その声が私を……惑わせるのだ。
 私は信じてるから、バベルのみんなを。
 だから私は京介と戦いあうしかない。
「京介、どうして……」
 幸せになりたかったのだ。ただそれだけだったのにね。
 私は別荘の一部屋に今いる。
 そう、あの人が京介に酷いことをした部屋に。
 この部屋にくるたびに、私は京介と戦いあう現在を確認するのだ。
 呼ぶ声が聞こえるたびに。
 私は神様へと願い事を捧げる。
 そう、ただ捧げるだけ。
 神様はとても残酷で。
 人間のことなんて見てない。
 だからこの世界は悲しみに満ちてる。
 でも幸せも少しだけは残ってる。
 それは人が作り出したもの、神様じゃない。
 でも私は神様へと祈りを捧げる。
 あの時のことを思い出すたびに。
 懐かしい夢を見るたびに。
兵部と不二子さんが愛し合っていたなら? という妄想ですが。
この二人の因縁を思うと、切なくなります

[mente]

作品の感想を投稿、閲覧する -> [reply]