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特別休暇



ボォォォォォ…


 遠くから船の警笛の音が聞こえてくる。
 深夜の港は闇に包まれ、その音すらも闇に吸収されるように聞こえなくなっていった。


「初音!そっちに逃げたぞ!」

「うんっ!!」

「きゃぁぁぁっ蛇っ蛇ぃっ!!」


 周囲が静寂の闇にどっぷりと浸かっている中、とある倉庫の中では大捕り物が行われていた。


「くそっ!
 こいつら素早過ぎてリプレイスする暇がねぇっ!!」

 きょろきょろと、周囲を忙しく見回しながら明は叫ぶ。

「ウゥゥゥゥ…こうなったら…」

 唸り声を上げながら変身をし始める初音。

「やめぇいっ!
 変身したら手加減出来なくなるだろうお前っ!!」

「だって…」

「だっても取っ手もあるかっ!
 死なせるわけにはいけないんだから、捕まえられないなら壁際に追い詰めろっ!
 動きが止まれば俺がリプレイスで操る!」

「うん、わかった」

「さそりっ!さそりがっ!!」


 倉庫内を走り回って何かを捕まえようとしている3人。
 3人の目的は、今現在倉庫内を逃げ回っている大量の動物たちであった。


「くそっ…!
 いくら逃げる為とは言え、密輸した動物たちを檻から解放しやがって…!」


 飛び回るヘラクレスオオカブトを追いかけながら叫ぶ明。
 その怒りは逃亡に失敗してロープで縛られ、気絶している密輸業者の男へと向けられていた。






「―――以上、計40種55匹が容疑者から押収した動物たちになります」

 一夜明けた次の日、無事に全ての動物たちを捕獲し終えた3人は事後報告の為、バベルの局長室を訪れていた。

「うむ、お疲れ様。
 いやぁ、お手柄だったヨ3人とも」

「本当に。
 お疲れ様でした」

「急な任務でしかもほぼ徹夜とは…本当に今回は大変だったネ…。
 何処かで休暇を取るといいヨ」

 疲労困憊の3人を眺め、局長が提案する。

「そうですね。
 今週末から来週にかけては特に予定は入っていませんし…土日に合わせて連休を取ったらどうでしょう?」

 スケジュール帳を確認しながら、朧は3人へと言った。

「本当ですか?
 ありがとうございます♪」

 上機嫌で小鹿が返答する。

「俺らは学校があるんで…」

 一応学生でもある明は苦笑しながら言った。

「学校へはこちらから連絡を入れておくヨ。
 学校のことは気にせず、ゆっくりと身体を休めるといいヨ」

「わ〜い♪」

 局長の言葉に喜ぶ初音。

「あ、ありがとうございます」

 恐縮するように言う明。

「気にしなくてもいいヨ。
 それと、良かったらこれを利用するといいヨ」

 そう言って局長が取り出したのは、何処かのホテルのパンフレットであった。
 それに続くように同じ物が朧から3人へと手渡される。

「これは?」

「バベルの休暇センターのパンフレットだヨ。
 特別観光するようなところは無いけれど、身体を休めるにはちょうどいい場所だから是非行って来るといいヨ」

「今の時期は職員も使用する頻度が低いので、静かに過ごせます。
 私も1度利用したことがありますが、自然に囲まれていていい所でしたよ」

「もちろん、宿泊費などはバベルで負担するヨ。
 食事の方も、こちらから伝えておくから気にしなくてもいいヨ」

 3人へ…主に明へ向かって言う局長。

「2人がいいなら私も行くけど、どうする?」

 後ろに立つ明と初音へと問う小鹿。

「行く行く〜♪」

「じゃあお言葉に甘えて…」

「…では局長、お願いします」

 2人の言葉を受け、小鹿は局長へと言った。

「うむ。
 では詳細はあとで連絡するから、今日のところは下がっていいヨ」

「はい。
 失礼致します」

「お邪魔しました〜」

「お前は…。
 失礼しました…」

 そう言って3人は一礼し、局長室を後にするのであった。








                    特別休暇








「こちらが『ヒナギクの間』になります」

 スッ…と音を立てずに木戸を引いて部屋を紹介する仲居のあとに続いて、和風なつくりの部屋へと入っていくザ・ハウンド一行。
 密輸業者の事件から数日後の土曜日、3人は局長から薦められたバベルの休暇センターへとやって来ていた。

「こちらには鍵はかかりませんが、中の扉には鍵がかかるようになっています。
 オートロックになっていますので、外出時には鍵を忘れないようにお願いします」

 そう説明しつつ、仲居は『ヒナギクの間』と毛筆で書かれた札の付いた鍵を小鹿へ手渡す。

「こちらは宿木様のお部屋、『ツバキの間』の鍵になります。
 内装はこちらと正反対になりますので、説明は省かせて頂きます」

「わかりました」

 頷きながら仲居から鍵を受け取る明。

「冷蔵庫の中の飲み物類は御自由に…」

「あ、コーラがある」

「なんで柿ピーが冷やされてるのかしら…」

 仲居の説明をぶった切って冷蔵庫の中を漁る2人。

「…足りなくなった場合はフロントへ連絡して頂ければ補充致します」

「すいません…」

 冷静に説明を終える仲居にバツが悪そうに謝る明。

「いえ、お気になさらず。
 これでお部屋の説明は終了ですが、こちらの施設に関してはテーブルに置かれたパンフレットを参照下さい。
 それとお食事ですが、こちらのお部屋にお持ちすると言うことでよろしいでしょうか?」

「はい、それでお願いします」

「…お1人様のみ5人分で…と伺っているのですが、これは…」

「いえ、間違いじゃないです。
 そのまま持って来て貰えれば…」

「…わかりました…。
 ご夕食は18時からお持ちしますがよろしかったでしょうか?」

「うんっ!」

 冷蔵庫を物色していたはずの初音が目を輝かせて返事をする。

「さっき電車の中で弁当喰いまくってたのに…。
 …18時でお願いします」

「承知致しました。
 それではごゆっくりと御寛ぎ下さい」

 最後まで冷静さを崩さず、仲居は一礼をして『ヒナギクの間』を後にした。

「夕食までは2時間くらいか…。
 とりあえず俺は荷物置いて風呂に行って見ますけど、どうします?」

 自分のバッグを肩に担ぎ、未だに冷蔵庫チェックを行っている初音と小鹿に問いかける。

「私たちもお風呂にいこっか?」

「うん」

「じゃあ18時までに戻って来ますんで。
 ノックしますから開けて下さい。
 あと、鍵持ってくの忘れないで下さいね」

「「は〜い」」

 明のお母さんのような言葉に、声を揃えて答える初音と小鹿。
 若干の不安を感じながらも、明は自分の部屋へと向かって行った。





「はー…。
 いいお湯だなぁ…」

 頭にタオルを載せ、肩まで湯に浸かりながら呟く明。
 約30分後、明は貸し切り状態の男湯へとやって来ていた。

「金曜だからなぁ…。
 さすがに一般客もいないか…」

 周りを見渡しても1人も客の居ない状態の男湯。
 日程が日程だけに仕方が無いのであろう。

「…露天風呂か…行ってみるかな」

 露天風呂の入口を指す看板を見つけ、湯船から上がる明。
 そのまま露天風呂へ続く扉を開き、外へと出て行った。


「へぇ〜…海が見えるのか〜…」

 岩に囲まれた露天風呂の中をざばざばと進んでいく明。
 景色を見るために壁代わりに作られた柵の向こうには、緑一色の山々と大海原が見下ろせた。

「は〜…。
 のんびりしてていいなぁ…」

 湯に浸かったまま岩肌にしだれかかり、外の景色を眺める。
 ザァザァと言う湯の流れる音と、山々を飛び回る鳥たちの声しか聞こえないこの空間。
 都会の喧騒にすっかり慣れてしまった明には、1分が10分にも感じられるほどにのんびりとしていた。


「あっ!海が見えるっ!!」


どばっしゃぁんっ!


 のんびりとした空間を切り裂くかのように聞こえて来る声に、明は身体を滑らせて湯船に沈んだ。。
 出会ってから、1日たりとも聞かない日が無かったこの声は…


「あっ!明だ!
 やっほ〜!」


 やはり初音である。

「…一体何処から…って上かっ!!」

 声がする方を向いてみると、壁だと思っていた岩の十メートルほど上にある柵から顔を出している初音を発見する。

「…女湯は上にあるのか…。
 …って男湯からは覗けないけど、逆に女湯から覗けるじゃねぇかっ!!」

 覗き対策だったのであろうが、構造的に欠陥が合ったらしい。

「こらっ!覗くんじゃないっ!!」

 それなりに距離があるので大丈夫であろうが、念の為にタオルで隠しながら叫ぶ明。


「え〜」


「残念そうな顔をするなっ!!」


「初音ちゃん、そんなに端っこに行くと危ないから…」

「は〜い…」


 微かに聞こえて来た小鹿の声らしき言葉に素直に従って顔を引っ込める初音。

「ったく…。
 …そろそろあがるか」

 のんびりとした気分が壊れ、逆に一気に疲れた気がする明はそう呟きながら男湯をあがっていった。






「いっただっきまぁ〜っすっ!」

「いただきます」

「いただきます」

 風呂からあがった3人を待っていたのは豪勢な夕食であった。
 通常こう言った夕食は1品ずつ運ばれてくる。
 しかし、事前に話が来ていたのか3人の料理は全て運ばれ、テーブルに並べられていた。

「はぐはぐはぐはぐはぐ…」

「わ〜おいしい〜」

「へぇ…こう言う組合わせもいいんだ…」

 一心不乱に喰べる初音と純粋に料理を味わう小鹿。
 そして味を盗もうとしているのか、調理方法を調べながら食べる明。
 各々楽しみながら食事を勧めていく。




「美味しかった〜」

「美味しかったね〜」

「ごちそうさまでした」


 30分ほどでほぼ同時に全ての料理を食べ終える3人。
 明や子鹿の5倍の量を食べていたはずの初音も同時に食べ終えたことに、今までずっと冷静さを保っていた仲居も驚愕している。

「あ、明日の朝食はバイキング形式になっていますのでお部屋の鍵を係員へお見せ下さい。
 鍵が入場券代わりになりますので」

「わかりました」

「それでは、ごゆっくりお過ごし下さい」
(料理長に明日は普段の倍は作るように言っておかないと…)

 冷や汗をかきながら仲居は去っていく。

「美味しかったね〜」

 そう言ったのは若干酒が回ってほろ酔い状態の子鹿。
 食事中にもいくらか飲んでいたがまだ飲み足りないのか、冷蔵庫から冷えた日本酒を取り出してチビチビと飲み始める。

「まだ19時か…。
 部屋でテレビでも見るかな」

 携帯の時刻を見て呟く明。

「ねぇねぇ明、ホテルの中見て回ろうよ」

「あ〜…そうだな、土産とかも見てみるか」

「けって〜い♪」

「子鹿主任はどうします?」

「私は明日見て回るから、2人で行ってきて」

 気を使っているのか、明へそう答える小鹿。

「んじゃ行ってくるか。
 初音、鍵忘れるなよ。
 鍵忘れて入れなくなるなんてお約束は嫌だからな」

「はぁ〜い」

「いってらっしゃ〜い」

 手を振りつつ、上機嫌で小鹿は2人を見送るのであった。




「19時で売店が閉まってるなんてなぁ…」

「残念だったねぇ〜…」

 ホテルの中を探索しつつ売店へたどり着いた明と初音であったが、平日は19時で閉店しているらしく土産物をみることは出来なかった。

「ま、明日起きたら見に行けばいいしな」

「そうだね…。
 あ、ゲームコーナーだ」

 ホテルの一区画に作られたゲームコーナーを見つけ、初音は小走りに入っていく。

「へぇ…。
 こりゃまたお約束なゲームばっか…」

 UFOキャッチャーを始めとした景品ゲームやレースゲーム、パンチングマシーン。
 こう言ったゲームコーナーのお約束とも言える品揃えに苦笑する明。

「ねぇねぇ、卓球台があるよ」

 ゲームコーナーの隅に置かれた卓球台を指差しながら言う初音。
 そばの椅子の上に置かれたかごには、ラケット数本とピンポン球が数個入っていた。

「お〜…なんか久々に見るなぁ」

「やろうやろう」

「そうだな、たまにはいいか」

 浴衣の袖をまくりつつ、明は初音の後に続いて卓球台へと向かって行った。






カコンッ!カコンッ!カコンッ!


「はぁっはぁっはぁっ!」

「はぁっはぁっはぁっ!」

 十数分後、2人は一心不乱に球を打ち合っていた。
 卓球台の近くに置かれた椅子に置いた得点板には、『09−09』と表示されている。
 当初はお遊びのつもりだったようだが、途中からかなり燃えてしまったらしい。

「すきありぃっ!!」

「ちぃっ…!」

 手元が狂ったのか、高く返してしまった明の球をスマッシュで返す初音。
 スマッシュは鋭い角度で明のコートへ突き刺さり、初音へ1点が追加された。

「なかなかやるじゃないか初音…」

「えへへー…」

「しかし、このサーブは取れるか!?」


カッ!!


 球にバックスピンを掛けて打つ明。
 明のコートを一度バウンドした球は、大きくカーブを描いて初音のコートへと落ちて行く。

「うわっ!」


コッ…


 慣れないバックスピンの球に追いつくだけが精一杯の初音は高めに打ち返すのがやっとであった。

「貰っ…!」

 作戦が成功し、ほくそ笑みながらスマッシュを打つ体勢を取る明…


スカッ!


 だったが、何故か明の動きはピタリと止まり、球は明の背後を転々と転がっていく。
 しばらくすると何故か明はその場でしゃがみ、そのまま動かなくなってしまう。


「…?」

「………」

「…明?」

 鋭いスマッシュが帰ってくる物と思っていた初音は疑問符を上げながら明へと近付いていく。

「どうかしたの?」

「……まえ…」

 しゃがみ込んだままぽそりと呟く明。

「…え?」

「…前を直せ…」

「前?直す?…あ」

 明の言葉の意味がわかったらしく、初音は『はだけた浴衣』を直した。
 どうやら熱中しすぎて浴衣がはだけてしまい、下着が見えていたことに気付いていなかったらしい。

「…明のえっち」

「気付かずにやり続けてるお前も悪いだろうっ!」

「明のえっちっち〜♪」

「うるさいっ!
 ったく、やめやめ…俺の負けだ負け」

 落ち着いたのか、立ち上がってラケットをかごへ戻す明。
 近くに転がっていた球も放り込む。

「は〜い。
 汗かいちゃった…」

「そうだなぁ。
 また風呂入ってくるか」

「そうしよっかな」

「んじゃ部屋に戻るとするか…」

「そうだね」

 そう言って2人は部屋へと戻って行った。




がちゃり…ガチンッ!!


「あれ?開かない」

「ん?どうした?」

「鍵で開けたんだけど開かない」

「どれ?」

 初音に代わり、鍵を回して『ヒナギクの間』の扉を開ける明。


がちゃり…ガチンッ!!


 10センチほど扉を引くと、金属音が響いて扉が止まる。

「…ドアガードが掛かってるな…。
 小鹿主任間違って掛けちまったのか…」

 隙間から見える2本の金属棒を見て呟く明。

「電気も点いてるし、テレビの音もするな…小鹿しゅに〜んっ!」

 扉の隙間から室内の小鹿に向けて叫んでみるも反応は無い。

「…駄目だな…。
 酔ってたから寝ちゃったのか…。
 初音、とりあえず…お、俺の部屋に来い。
 携帯に掛けてみても駄目なら…お、俺の部屋で寝るしかないな…」
(な、なに意識してんだ俺は…)

 『俺の部屋』と言う単語に動揺してどもる明。

「そうだね」

 明の動揺に気付いていないのか、さらりと同意する初音。

「…んじゃ行くか…」

 そんな初音の反応に若干落胆しつつ、明は自室へと向かって行った。




とぅるるるる…とぅるるるるる…


「…駄目だな、出ない」
 
 発信音を繰り返す携帯の画面を見つめ、溜め息をつく明。
 部屋に戻って数分後。
 とりあえず汗だくの初音をシャワーへ入らせ、明は小鹿へ連絡を取ろうとしていたのだが、何度かけても反応が無い。
 どうやら完全に寝入ってしまっているようだ。

「仕方が無いか…」

 オンフックボタンを押して発信を止め、メール画面へと切り替える。

「『寝落ちされてるようなので初音はこっちの部屋に泊めます。起きたら連絡下さい』っと…」

「どうだった〜?」

 背後から声がかかると同時に、にゅっと腕が生えてきて初音が抱き付いてくる。

「反応なし。
 完全に寝てるみたいだな」

 背中に密着する柔らかい感触を感じながらも、冷静を保って言う明。

「そっか。
 それじゃ一緒に寝るしかないね」

「………は?」

 初音の言葉の意味がわからず、明は疑問符を上げる。

「ほら」

 すっ…と初音の指が隣りの寝室に向けられる。
 そこには既に敷かれている布団が1組存在していた。

「…どっかに予備のがあるとか…」

 寝室に入り押し入れなどが無いか確認するも、そう言ったものは見当たらない。

「…俺が1人で泊まる予定だったから1組しかないのか…!?」

「そうみたいだね」

「…フロントに電話して追加を…」

「え〜…。
 一緒に寝ようよ〜」

 戻ろうとする明の手を力任せに引き戻す初音。

「うわっ…」

 重心を崩し、明は初音とともに布団へと倒れ込む。



どすんっ



「うきゅぅっ」

 背中から倒れた初音が変な声を出す。

「げはっ…。
 おま…おまえは…て…手加減をしろ手加減を…」

 両手をつき、なんとか初音を下敷きにすることを回避した明。
 体勢的には押し倒したような状態で初音へ声を掛ける。


「な…」


 が、仰向けになった状態で倒れる初音を見て明の言葉が止まる。

「いたたたた…。
 どうかしたの明?」

 様子のおかしい明へ問う初音。



「な…な…な…なんでお前下着つけてないんだよっ!」

 

「え?
 ああ、汗でびちゃびちゃだったから、軽く水洗いしてお風呂場に干したの」

 さらりと初音は言う。

「お、お前なぁ…。
 …どうりでさっき後ろから抱き付いてきたときの感触が…ってちがぁうっ!
 やっぱりもう1組布団を敷いて貰うか、俺は隣りの部屋で…」


ぐいっ


ふにょんっ


 立ち上がろうとした明の手が再度引っ張られ、今度は柔らかい所へ着地する。


「だから一緒に寝ようって言ってるのに…」


「お、おま…」


 初音の胸元に抱きしめられる形で倒れ込む明。
 顔面に感じる柔らかい感触に赤面しつつ脱出しようともがいてみるも、
 がっしりと後頭部を初音の腕でロックされている為、ますます柔らかさを感じる結果となってしまう。


「明のえっち〜」


「…お前に言われたくないっ」


 諦めたのか、力を抜いて叫ぶ明。


「あはははは。
 そうだね〜初音もえっちだね〜」


 笑いながら明の後頭部に回していた腕を外し、明の顔を見ながら初音は言う。


「明はえっちは初音は嫌い?」


「…初音こそえっちな俺は嫌いか?」


「好きだよ」


「…俺も好きだよ」


「じゃあ一緒に寝ようよ、ね」


「…そうだな」


 明はどこか釈然としないながらも、灯りを落として初音とともに布団へと入っていく。
 その後の2人がどうなったかは、欄間らんまに彫られた椿の花だけが知っていた…。



(了)
間に合いませんでしたっ!(土下座
いいんだ、1本出したから…ハウンド物じゃないけど…。

と言うわけで一泊&(微)エロです。
部屋を閉め出されて異性の部屋で一泊…修学旅行などの定番ですよねw
そして1つの布団で…。
とは言え『お互いを好きか嫌いか』と言うことと『一緒に寝る』と言うことには関係ございませんw
そこは明の思考力が低下していた為に初音に嵌められたと思って下さいw
それと、オチはお約束の『椿の花が落ちる〜』ってのにしようかとも思いましたが、花が咲く時期ではないようなのでカットです。
実際にそうなったかどうかは読んだ方の判断にお任せしますw

読んで頂いて楽しんで頂ければ幸いでございます。
それでは〜。

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