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BAD MORNING



前書き
 ※先にUPした合作、「いつか夢で」の元ネタにあたるSSになります。没SSとして処理するつもりでしたが、ミッションクリアの20泊が厳しそうなので、資源としてリサイクル、投稿いたします。
 ※・・・横島がわりとひどい目にあいます。ファンの方はすいません。




BAD MORNING 1




「ん〜、むにゃ、令子と呼んでいいんですね〜」
 チュン、チチチ・・・
「んあ…」
 横島は目を開けた。
「・・・・・・」
 窓から差し込む、朝の陽がまぶしい。遠く近く、小鳥たちの鳴き交わす声が聞こえる。
「・・・夢か。そーだと思ったよ。・・・ええ夢やったなー。もう一回」
 寝返りをうち、寝なおそうとする。その目の前に、
「ん?」
 何だこれ。
息がかかると揺れる。いい匂い。頬と首にふれる感触がくすぐったい。見覚えのある色だが、近すぎて形がわからない。
 少しだけ後ろへずれ、距離をとる。目の焦点があうと、それが髪だとわかった。ロングヘアが背に流れ、敷布の上に流れる。髪が縁どる、白い肌を目でなぞって、
「!!」
 一気に目がさめた。
 薄いケットの、布の盛り上がり。緩やかに低くなり、また高く盛り上がるきれーな曲線。
突き出た足。膝の後ろのくぼみと、なめらかなふくらはぎ、くるぶしと足指。
 足先までたどった視線をまた上へ。両のふとももを横切る白い布地、ウエストライン、背を覆う髪、髪からのぞく肩が裸であることに気づいた時、血圧が倍になった。
 隣に女が寝ている。
 誰かなんてそんなの決っている。美神だ。髪型とプロポーション、後姿だって間違いようがない。
(ななな、なんで??)
 あたりを見回す。ぐるぐる考える。ここ事務所だよな?!事務所の部屋だが、この状況は一体?夕べ何が、何をやらかしたのだ?うおおっ、思い出せ俺ッ!!
(た、たしか、夕べは酒飲んで・・・)
 そうだ、昨日仕事が終わって事務所に帰って・・・荷物下ろして軽食をとり・・・一杯やってる美神に相伴させてもらってワインを少し飲んだのだ。
『このワインは高いのよ。第一あんた未成年でしょうが』
 文句を言いつつも、美神は強いては止めなかった。どうやら本人も自分くらいの頃に酒を覚えたらしく、少しだけならと目をつぶってくれた。
(それから・・・けっこう長く話し込んで・・・)
 薦められて買ったというワインがあたりで、美味しかったせいなのか。美神はいつもよりよくしゃべった。同業者のウワサや霊能のウンチクに加え、普段はあまり話さないような話、高校時代のことや子供の頃の思い出話まで話してくれて、なんだか嬉しかったのを憶えている。つられて自分もいろんなことを話した。仕事のことや学校での出来事、両親の話・・・美神は笑い上戸で、酒が入るとよく笑う。自分のしょーもない冗談や小さい頃の失敗談にもカラカラと笑い、楽しそうだった・・・
(そんで・・・そこから何がどーしてこうなったんだ??)
 最後はたしか歌になった。ワイングラスを箸で叩いて、「ハクション大魔王のうた」の替え歌を歌ったのは憶えている。美神がウケて手を叩いていた。そこからの記憶がない。
(何をした俺・・・まさか・・・)
 夕べの夢。あれは夢じゃないのか。
(よ、酔いつぶれた美神さんをどーこーと・・・)
 それはない。そんなはずはない。美神は酒はバカ強だ。つぶれるなら、絶対自分が先のはず。
(じゃ、じゃあなんだ。この状況どう見ても・・・いや待て)
 手をついて身を起こす。着ているものを確認する。白シャツにジーンズ。ベルトも靴下もそのまま。
「・・・・・・」
 着衣だ。夕べとかわりない。上着だけが見当たらないが・・・
「・・・あそこか」
 枕元、左側の床に、Gジャンが投げ出されている。
「・・・・・・」
 右隣へ目を移す。
 背を向けて・・・美神はたしかに眠っている。聞こえてくる静かな寝息。
 流れる髪。むき出しの肩と腕。白い素足。
 ごくりと唾を飲む。それだけ見れば、裸身にケットが掛かっているようにしか見えないのだが・・・。
「・・・・・・」
 手を伸ばす。ケットの端をつかみ、音を立てぬよう、数ミリずつじわじわあげてゆく。隙間から、背をのぞきこんで・・・
「・・・・・・・なんだ」
 ちとがっかりしてつぶやく。美神も着衣だ。ケットの下はいつもの服だ。ボディラインを強調した露出の多い服。肩が裸なのであせったのだが、もともと肩も鎖骨も、むき出しの服なのだ。
 ふーっと息をついた。何にもなかったことは確定だ。酔いつぶれて寝ちまっただけだな。
(・・・・・・・・・)
 なんで事務所の床の上、同じ敷布のうえに、同じケットをかぶって並んで寝てるのか、それは依然として謎なのだが。
 横島はケットを下ろし、あらためて彼女を眺めやった。
(・・・美神さんて足長えな・・・)
 夕べも素足だったっけ。違ったような気がする。ストッキングはどうしたんだろう。
(肩・・・寒くないんかな)
 むき出しの腕も。触ったらきっと冷たい。両手で暖めたくなる。足も寒そうだ。暖めてやりたい。ていうか全身に、全体におーいかぶさりたい。
(・・・・・・いかん)
 長く見ているとタガがはずれそうだ。眠っている相手にどーこー、なんてのは、いくらなんでも反則だろう。美神もそう考えるだろうから、ばれたらいつものシバキではすまず、半殺しにされる可能性がある。てかこの状況、このまま目を覚まされたら、
(俺ぶちのめされるな。ていうか殺されるな。見つかんないうちに逃げた方がいいかも・・・)
 ・・・・・・。
(その方がいーよな)
 ・・・・・・。
(うむその方がいい。起きよう)
 ・・・・・・。
(・・・ってなんかぜんぜん立ち上がれません。てゆーかこー、だんだん近づいてませんか。背中)
 ・・・・・・。
(いや背中というよりも。だんだん下にずれてますよ俺。今フトモモがわりと目の前に・・・)
 ・・・・・・。
(・・・あーはさまれてぇ)
 ・・・・・・。
 ・・・・・・。
 ぴっちり閉じたモモとモモの間のスキマに。頭をつっこみたい衝動に駆られたが、今それをやったらいくらなんでも人としておしまいかと・・・
(う〜〜、う〜〜、ううう〜っあああああっ、くそっ)
 ・・・未練を振り払い、立ちあがる。Gジャンも忘れず拾っていこう。部屋に証拠を残してはならない。くしゃくしゃと頭をかきまわし、前髪をかきあげた時、
(・・・!)
 バンダナをしてないことに気がついた。どこだ。どこにやった。
(寝る時うざったくてはずしたか?・・・どこだ・・・あ、)
 あった。足元の床の上。
 かがんで拾おうとする・・・ん?
「なんだこれ」
 バンダナの上に、ふわっと何かが乗っていた。薄い・・・もやもやっとした・・・
「布・・・?」
 手にとって、びよーんとのばしてみたりして。
「・・・・・・」
 そのまま目の前にかかげて数秒。脳内検索により正体が判明した。
「パンストか」
 びよーんよん。
「なんでパンスト」
 びーよびよ。
「状況からいって美神さんのだが」
 こちらが脱がせたわけでは断じてない。寝るのに寝苦しくて、美神が自分で脱いだのだろう。着衣でいい加減に寝てしまった時、無意識のうちに靴下脱いだりとかは、自分もよくやる。
(これがバンダナの上にあるってことはだ、俺が寝ちまったあとで、美神さんが来たってことだよな。順番的に)
 パンストをびよびよしながら、横島は推理した。
(だったら俺は別に悪くないんじゃ・・・)
「うーん」
 心臓が跳ね上がった。隣で美神が寝返りを打ったのだ。とっさにパンストを敷布の下に押しこむ。
(ち、違うんですっ)
「ん・・・」
(これは違うんですっ。記念に持って帰ろうかなとか、そんなこと考えてないですっ)
「ふ・・・んー・・・」
 やばいっっもう起きる寸前だ。ドアまで逃げるヒマはない。横島はケットを引っかぶって敷布に伏せ、ぎゅっと目を閉じて、寝たふりをした。
「んー・・・・・・」
 かたわらで、目を覚ました美神が身を起こす気配がする。
(うううううう殺されるっ!)
 だが美神は座った状態でそのまま動かなかった。彼女は朝が弱い体質で、寝起きはあまりよくない。ちらと見ると、半眼でぼーっとしている。
(ま、まだ気づいてない・・・)
 しかし気づかれたら(絶対気づかれると思うが)それでおしまいだ。半殺しで済めば儲けもの、
(俺はもー・・・生きて太陽を拝めないかもしれん)
 美神がぼりぼり頭をかき、身動きした。周りを見回す気配。そして不意に、空気が止まる。
 ・・・・・・・。
 ・・・・・・・。
(・・・ああ)
 こっちを見ている。目を閉じていてもわかる。
(・・・見つかった・・・)
 うつ伏せに伏せたまま、横島は心で涙した。処刑は確定だ。半殺し、4分の3殺し、8分の7殺し、どれになるかはわからんけど、
(もうこうなったからにゃ、早よ済ませてくれ)
 五体投地の心境で、かたく目をつぶる。さあどぉぞ、美神さん。
 ・・・・・・・・・。
 ・・・・・・・・・。
 ・・・まだ来ない。最初は蹴りか、肘撃ちか。
(足技やろな、たぶん)
 ・・・・・・。
 ・・・・・・。
 ・・・まだですか。待たせるなぁ。この待ち時間がイヤンな感じ。
(何してんだろ・・・)
 うす目を開けて窺うと。
 ・・・様子が変だ。美神は前方を向いたまま、動転した表情でケットの端を握り締めている。唇やあごがわずかに動くのは、何かを必死で考えている証拠だが・・・。
(・・・・・・?)
 いったい何を?・・・と考えかけて、思い当たった。
(俺と同じか!)
 昨晩の出来事を思い出そうとしている。酒のせいで記憶がおぼろだが、何としても思い出さねばならないのだ。なぜって、
(そりゃ、起きたら隣に俺が寝てるんだもんな)
 美神がケットをはずし、背や胸に触れている。着衣を確認しているのだ。自分も同じことをやったから、手に取るようにわかる。一瞬ほっとしたような空気が流れるが、足に触れ、ストッキングを履いてないことに気づいてまた動揺がぶり返したらしい。あーそーいやパンスト。やべ。
 美神がこちらへ手を伸ばしてきた。耳までおおうケットの端をそーっとつかみ、持ちあげようとする。その理由もわかった。こちらが着衣であるかどうかを、確かめようとしているのだ。と、その時、

 とんとんっ

「おはよーございます美神さん。起きてますか?」
 心拍が一拍とんだ。美神は文字通り飛び上がった。身を翻して部屋を飛び出す。バタンッ!と閉まったドアの向こうで、うわずった声が聞こえてくる。
「おおおおはようおキヌちゃん!どど、どうしたの?」
「あ、ごめんなさい。おやすみでした?」
「い、いいええ、そんなことないわよ。起きてたわよ。何かしら」
「朝食、どーしましょう?用意できてますけど・・・」
「朝食?」
「はい・・・今日お昼からまた仕事だから・・・朝食、起こしてくれって言ってましたよね?美神さん」
「そっそっそういえばそんなことを・・・言ったわね、言ったわ。うん。そうね。なんかもうそれどころじゃなくて、頭からすっとんでたけど、たしかに言ったわ。ありがとおキヌちゃん」
「・・・お疲れみたいですね。私たち、今から食べるんですけど・・・もしまだお休みのようなら、一応用意はしておきますから、好きなときに降りてきてくださいね」
「そっそうね!それがいいわ!そうする!あとでいただくわ!」
「わかりました。横島さんもまだお休みですか?」
「へっ?よっ、横島クン?ななな、なんで?」
「?一緒に事務所に寄ったんでしょう?仮眠室にいるんじゃ・・・アパートに帰ったんですか?」
「い、い、いえ。そう!仮眠室よ仮眠室!うん!」
「横島さんも昼からお仕事ですよね・・・、朝食、声かけたほーがいいのかな・・・」
「かけなくていいと思うわ!ぜんぜんっ。まったく必要ないと思うわ!もう絶対!」
「・・・昨日遅かったんですね。わかりました。・・・美神さん、もしかしたら、ゆうべお酒飲みました?」
「え?え、ええ。ちょっとだけね」
「そーですか。じゃ、お部屋のグラス、下げておきますね」
「へっ?い、いえ、いいわよ、いいの、自分でやるから」
「え?だっていつも・・・。ついでだし、今やりますよ?」
「いいのいいの。大丈夫。自分で洗っとくから」
「そんな、遠慮なんか・・・」
「いいから、いいから、ね?気にしないで」
「・・・もしかして空き瓶ごろごろですか?もー。この頃飲みすぎですよ美神さん。・・・昨日どのくらい飲んだんですか?」
「えっと、その、ワインを少し」
「少しって何本ですか?見せて下さい」
「だだだだだめっ!だめっ!た、たいした量じゃないのよ、うん、ほんと!」
「?だったら、隠すことないじゃないですか」
「いいからっ!」
 ドアの外で押し問答が続く。みなまで聞かず、横島は跳ね起きている。Gジャンに跳びついて羽織る。バンダナはどこだ?!と、足が何かを蹴飛ばした。げ!
「精霊石・・・」
 一個で都心に家が建つ、高価な精霊石のアクセサリーが無造作に床に散らばっている。蹴飛ばしたペンダントを追いかけて拾い、左右見回してイヤリングも拾い、まとめて棚の上に置いた。敷布を飛び越してバンダナを回収し、窓を振りむいたところへ、
 バタンっ!
 美神が戻ってきた。
「・・・・・・」
 ・・・押し問答に勝利したらしい。ドアの外で、ぱたぱた、とおキヌが階下へおりる足音が響く。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
 チュン、チチ・・・
 明るい朝の日差しの中、美神が無言で見つめている。
・・・逃亡失敗だ。なんて言おう。
(あのぅ、お怒りはごもっとも、ごもっともなんですが・・・ですが、ここはひとつ、半殺しに負けといてくれませんか。4分の3以上になると、いくら俺でも一日じゃ回復は厳しくてですね・・・)
「あの美神さ」
「もっもう着替えたの?」
 ・・・え?
 こちらの絶句がうつったのか、美神もそれ以上の言葉に詰まる。目をそらし、下をむいて、視線を床のあちこちへさまよわせる。
「あのっ、えと」
「は、はい、なんでしょう」
「あ、いえ。いいのっ。違うの。いえね、私ペンダントどうしたかなーと思って。イヤリングも・・・」
「あ、ああ、それなら」
 横島は指差した。
「三つともあそこに置きました。棚の上」
 美神はぎょっとしたような顔になった。な、なんだ。盗ったわけじゃないぞ。
 棚へと歩く。美神は裸足だ。棚に視線を走らせながら、精霊石を置いた棚板の前を通り過ぎる。白い足がワイン色の家具の前を何度か往復する。え?わかんないのか?・・・ああそうか。
 横島は棚の方へ歩みよった。美神の頭越し、アクセサリーをつかみ、それを差し出す。
「はい」
 目だけを大きくして見上げる美神の。その頭の位置が、いつもよりも低いところにある。
(小さい・・・な)
 ヒールを履いてないからだ。その分視線も低いから、それより高い位置にあったアクセサリーが見えなかった・・・
「あ、ありがと」
 口ごもりながら礼を言い、美神は精霊石を受け取った。棚から離れ、まだきょろきょろしている。居心地悪そうに身じろぎし、床に視線を走らせる。何を探しているかわかったので、横島は言った。
「パンストなら敷物の下っスよ」
 美神は青ざめた。
 幽霊でも見るような顔つきだ。いや、美神は職業柄、幽霊を見たくらいではこんな顔にはならないのだが・・・なんというのか、顔から血の気が失せ、瞳には驚愕というより恐怖の色が浮かんでいる。反応に驚いた横島は、自分の発言がとんでもない誤解を呼んでいることに気がついた。
(ち、違っ)
 美神はどこか放心したような足どりで敷布に歩み寄り、その下を探った。探り当てたパンストをひっぱりだして見つめる。かがんだまま、のろのろ、という感じでこちらを見る。
(違う、違いますっ!俺が脱がせたわけじゃっ)
「み・・・」
 美神はまたパンストを見ている。
(冗談だろ・・・)
 こんな誤解をそのままにしていたら、ほんとうに殺される。保留ナシの全殺しにされる。なんとしても釈明をっ、
「美神さんっ!」
 埃を蹴立てて歩み寄る、その横島の姿を見た美神は、目を見張って立ち上がり、あとずさった。そして丸まったケットにつまづき、よろめいた。
「きゃ」
「あ…」
 反射的に横島は手を伸ばした。美神の手をつかみ、引いて転倒を防ごうとする。だが姿勢が不安定だったので、彼もバランスを失った。支えのために踏み出した足が、敷布を踏み、敷布はフローリングの床数十センチを横すべりした。
「どあああああああ?!」
「きゃーーーーーー?!」
 いまだぬくもりの残る敷布の上に。もつれ合って二人は倒れた。














ここまでお読みいただいた方、どうもありがとうございました。
この後オチが分岐します。
あなたのお好みは、

A.ラブラブ
B.ギャグ

どちらでしょうか。

Aの方は、直下「BAD MORNING 2のA」へ、
Bの方は、その下「BAD MORNING 2のB」へ、


それぞれお進み下さい。
最後まで読んでいただけると幸いです。














BAD MORNING 2のA


「ってー、つ、すっ、すいませ、美神さん、すんません」
「・・・めん」
「だ、大丈夫ですか、今の、大丈・・・」
「ごっごめんっ横島クン、実は私、何にも憶えてないのっ!」
「え・・・」
「き、昨日のこと、の、飲みすぎたみたいで、記憶がもうめちゃくちゃで、どこまでほんとなんだか、ぜんぜん!」
「は、はい、そスか」
「なんか、なんか、二人でアニソンの合唱をしてたりとかっ!」
「そ、それはやりました、はい」
「そのあと、テーブルをお立ち台にして、羽扇子持って、『ジュリアナ東京』のテーマで踊ったりとかっ!」
「ええええ覚えてない・・・てか、てか美神さんそれハマリすぎ・・・」
「あと、へんなエプロンとネコ耳のコスプレで、『おかえりなさーい』とかっ!」
「そ、それは俺の夢・・・なんかそれ、夢、混じってませんか・・・?」
「そのあと・・・ああああああ。あれは夢よね?いくらなんでも。違うの?もう何が夢で本当なんだかっ。これも夢?もしかして・・・」
「い、いや、違うかと・・・」
「だからつまり、つまり結論から言えば、全然おぼえてないのよ。私、私なんて言ってた?」
「えと・・・」
「あんた何て言ったの?なんでこーなったの?さっきから考えてるんだけど、まったく記憶がっ」
「・・・・・・」
「ご、ごめん、自分でもあんまりだと思うんだけど、ほんっとに思い出せないの。だ、だから、ね?巻きなおし!これが一回目ってことで!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・だ、だめ?あの、今度は忘れないわ。絶対。2回も忘れない。今度こそちゃんと・・・」
「・・・・・・・・・」
「今度はちゃんと・・・憶えておく・・・から・・・」



【BAD MORNING 2のA(予知確率0.1% 棚からぼたもちルート) 完】






















BAD MORNING 2のB


「おはよーでござる!おキヌどの!」
「おはよ、シロちゃん。ご飯できてるわよ」
「おお、いただくでござる!・・・うぉ?!今のは何でござるか?地震?」
「そうかしら・・・上・・・から響いたような・・・」
「おはよー、シロ。おキヌちゃん」
「おはよう。タマモちゃん」
「おはようタマモ・・・今何か揺れたみたいでござるな?」
「ああ・・・美神さんでしょ。私それで目が覚めたのよ。今上の部屋で横島シバいてる」
「先生が来てるのでござるか?」
「お仕事帰りに寄ったのよ。シロちゃん。美神さん昨日から言ってたもの。『今日の除霊は遅くなるから、終わったら荷物を降ろしに、夜中一度二人でこっちに寄る予定だけど、おキヌちゃん気にしないで寝てていーからね』って」
「なーんだそうだったのでござるか。それなら心配ないでござるよ。地震かと思って、拙者びっくりしたでござる」
「タマモちゃんも座って。ご飯できてるわよ」
「いただくわ。この煮物いい匂いね。・・・うわ、天井からホコリが。これ、フタかぶせといた方がいいかな」
「すごい音でござる・・・今日はまた一段と派手でござるな」
「うん、降りてくるとき、ちょっと覗いたんだけどさあ、なんかすごかったわよ。美神さん、もー顔真っ赤にして、デッキブラシで横島しばきまくってるの。横島ってば朝から何やらかしたのかしら」
≪このエロガキがーーーーーーっっ≫
≪かんにんやーーーーーーーーー≫
「・・・セクハラね」
「セクハラでござるな」
「セクハラだわね・・・横島さんと美神さんの分も朝食用意しといたんだけど、今は無理みたいだわ。先にいただいちゃいましょう」
「そうね。いただきまーす」
「いただきまーす。タマモ、ちょっとそこのショウユを・・・」
「はい。・・・この丸いの初めて見るわね・・・おキヌちゃん、これ、何?」
「ふふ。食べてみて」
「んー・・・。あ、美味し!」
「どれどれ・・・拙者も」
「私これ好き・・・!なんか油揚げっぽい!」
「タマモちゃんはそう言うと思ったわ。がんもどきの含め煮よ」
「がんもどきって何?」
「お豆腐をすりつぶしたのに、野菜の刻んだのを混ぜて、丸めて、油で揚げたのよ。ベースは油揚げとほとんど同じね」
「へー道理で・・・。出汁が染みてて、すごく美味しい」
「よかった。まだあるから、たくさん食べてね」
「美味しい・・・たしかに美味しいけど・・・ちょっとあっさりしすぎでござるな・・・」
「シロちゃんにはそうかな。夕食はお肉の予定だから、待っててね」
≪待たんかコラーーーっっ≫
≪違うんやああああっ!かんにんやあああ!≫
「・・・ほんとに激しいわね。今日。」
「いやー半殺しコースでござるな。これは」
「ねえ。・・・んーこの分だともっといくかも」
「たしかに今日の美神さんはちょっと・・・当社比1.5倍って感じ?・・・横島さん大丈夫かなぁ・・・」
「半殺しの1.5倍って、いくつだっけ」
「タマモおまえそんな計算もできないのでござるか?2分の3殺しでござろう」
「4分の3殺しよ、シロちゃん。あ、おショウユ、終わったらこっちにも貸してもらえる?」
≪天誅ーーーーーーーっっ!!≫
≪ぐごぎゃあああぁぁぁぁぁああ@%&£ЯШsdfghjkl;っ!!!!≫
「・・・すごい声。なんて言うんだっけ、こういうの。ダンチヅマ?」
「ダンマツマよ。タマモちゃん」
「ということは、もうすぐ終わりでござるな。よし、終わったら先生を散歩に誘うでござるよ♪」
「あのー、シロちゃん、今日は横島さん、つ、疲れてるんじゃないかな・・・?きっとケガもしてるし、散歩はちょっと・・・遠慮してあげたほーが・・・」
「何を言うんでござるかおキヌどの。先生は毎日のように大ケガするんだから、そんなこと気にしてたら散歩になんか行けないでござるよ」
「んー、でもさシロ、なんか静かになっちゃってない?上」
「・・・・・・」
「処刑完了って感じ?横島気絶してんじゃないの。散歩はやっぱ、今日無理なんじゃ・・・」
「だいじょーぶでござる。先生は、たとえボロ雑巾のようになってても、短パンでジョギングしているご婦人など見れば、たちまち元気になるのでござるよ。拙者何度も見てるでござる」
「でもさー、今日けっこう寒いよ。短パンが現れるまでどうすんの。気絶してちゃ走れないし、自転車にだって乗れないじゃない」
「・・・ふっふっふ。タマモ、おまえは甘いっ!そんな時のため、拙者にはこれがある!見よ!」
「って何?コレ」
「見て判らんか。縄でござるよ」
「いやそれはわかるけど、これがどうしたの?」
「気絶した先生を自転車のサドルに乗せて、これでぐるぐる巻きに固定するのでござる。あとは拙者が自転車に縄をかけて、ひいて走ればよいのでござるよ」
「それさぁ・・・散歩って言うの?シロ」
「シロちゃん・・・やっぱり今日は・・・やめといたほーが・・・自転車が倒れたりしたら危ないし・・・ね?」
「心配ござらん!自転車は止まると倒れるけど、走ってれば倒れないでござる。ノンストップで都内一周してくるでござるよ。拙者の足を信用してくだされ」
「・・・ねーおキヌちゃん、横島も大変ね・・・ちょっと同情するわ。鞭打ち百タタキの上、市中引き回しってカンジ?」
「そ、そうね・・・ちょっといろいろ違うけど、そんな感じよね・・・」
「じゃ、行ってくるでござる!おキヌどのごちそうさま!せんせー!起きてるでござるかー?!起きてても、そーでなくても、散歩、散歩に行くでござるよ!」



【BAD MORNING 2のB(予知確率99.9% やっぱりそうなるのかルート) 完】











どうもですカヤマです。毎度お読みいただきありがとうございます。
これを読んでくださった方は、たぶん合作「いつか夢で」も読んでくださってるのかなと思いますが、
前書きにも書いたとおり、合作よりこちらの方が先にありました。ミッションのために書き上げたけど、あまり気に入らず、没にする予定のSSでした。
没の理由は
1.シチュがありがち
2.Aのオチが気恥ずかしい
3.Bのオチの横島が気の毒すぎる
4.ていうか全体的に横島がパチモンくさい(目覚めて最初に隣に美神がいるのを見て、0.1秒で飛びかからない横島など横島ではない)
などでした・・・。ここからUGさんが、合作のSSを考えてくださった経緯は、合作の後書きに書いたとおりですが、「お酒の後」「精霊石」「パンスト」など、シチュエーションや小物は共通ながら、まったく違ったお話に再構成されているのが、両方読んだ方にはわかると思います。
自分の没ネタが、きちんと起承転結のある「ストーリー」へ、目の前で鮮やかに変身するのを見るのは、作者としてすごくびっくり&面白&感激でした。私の「へえええええっっ」感が、読者の方にも伝われば幸いです。

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