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未来への自爆


「東野ん家とか泊まったことある?」

四時限も終わって昼休みの一幕
薫がふとちさとに問い掛けた
もう中学生なんだし、そろそろシてるんじゃないの?とでも言いたげな表情で


「あ〜うん。かなり小さい時に一回ね。東野君のお母さん料理美味しかったな〜」

薫は空気が抜けたように、拍子抜けした
クラスで、いや学年で最強のカップルなのだから、それ相応のことを期待していたのだ
セクハラ目的で聞いたのに、一気に路線を外れてしまった

「小さいっていつ頃のことなん?」

「やっぱ5〜6歳?」


そんな薫も放っておいて残りの二人は話を続ける
どんな些細な話題も膨らますのが少女の本能というものである

「うん、大体それくらいかな?」

「どんな感じやったん?」




「そうね………」







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それは、花井家の両親が仕事と同窓会で家をしばらく空けなければならなかった時のことである


「じゃあ、よろしく頼みますね」

「いえ、将も喜びます」


普段から仲のいい東野家にちさとは預けられた
いくら来年小学生に上がるとはいえ、まだまだ子供の身
一人で家に置いとくには心もとない気持ちが両親にはあった
そこで無理を言って、東野家に引き受けてもらうことになったわけだ


「お〜い。ちさとゲームしようぜ!!」


少年の声がリビングから聞こえてくる
その声はとても溌剌で元気爆発である

「ちさとちゃん来るのすごく楽しみにしていたのよ、将」

東野の母がちさとに呟く
ちさとはその言葉を聞くと、たちまち笑顔になり、「うん!」と言って東野の方へ駆けて行った

「嬉しそうにしちゃって…」

「でも可愛いですよね〜将のお嫁さんになってもらいたいわ」

「ふふ」


冗談めいた主婦の会話がいずれ現実のものとなることを今はまだ誰も知らない





ヤンチャ盛りの少年少女はその日外に出たり家ではしゃいだりと大忙しであった
そして、夜はあっという間に訪れた


「はぁ〜もうこんな時間か…」

リビングの時計を見て、東野は残念そうに呟いた
そうなのだ、今日みたいにちさととずっと一緒の日は終わってしまったのだ

いずれいつかまたこんな日が来るかもしれない
しかし、もうすぐ小学生に彼らはなる

小学生になれば、それぞれにまた新しい友達ができて
今日ほど二人っきりの時間も少なくなる

そのことが、今日の終りの切なさを増やす



ちさともそうであった
今日は今までで一番楽しい日だった
だからこそ、終わることがとても寂しかった


「お風呂、一緒に入ろっか?」

「へ?」

「だってお泊りしてるんだし、お泊りでしかできないことしなきゃ」

「あ、うん。そうだな」


今日が終わるのはさびしいけれど、だからこそ未来にも持っていける思い出にしよう
ちさとの提案にはそんな気持ちがあった

その日、二人は背中を流し合いして、小学生になる期待を喋り合った



「またお風呂入ろうね」

「ああ」



















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「今、考えてみればすごく大胆だったかな?」

少し顔を赤くして、ちさとはぼそりと呟いた
羞恥心がなかった当時は只の思い出作りだったが、
今になってみれば文脈を少し変えるだけで、あっという間に違うジャンルになる話である

「まあ、小さい頃やしな」

「にしても、その頃からラブラブだったわけね」

「え?違う違う!!まだ小さい頃だから!!」


先程よりも赤くなった顔をぶんぶんと振って、ちさとは反論していた
葵と紫穂は、その姿を相変わらず可愛いなと思いながら眺めていた











「で、東野は?」

「「「は?」」」

ゴゴゴゴゴという何か異様なオーラを放ちながら、薫が話に復活してきた
その轟々しさたるや、いつかのスーパーサ〇ヤ人と化した少年漫画の主人公を思い起こさせる

「え?何が?」

若干、声を震わせながら、ちさとは答える

「だから、東野は?」

「いや〜。あんまり覚えてないっていうか……」

「じゃなくて、その時の東野は?」

「え?だから小さい時のことだから、普通にお喋りしただけで…」



カッ



何かが薫の頭で弾けた
その弾けた音と同時に薫は東野のもとへと向かっていく

「ちょっ……明石さん?!」



ちさとの声は届かず、薫は東野の前に仁王立ちになると、下を向き、はぁ〜と息を吐いた



「ど、ど、どうしたぁ〜?明石〜?」

威圧感が東野を襲う
いや、教室全体を覆う







そして、







「東野ぉぉぉ!!!コラァァァ!!お前は何で千載一遇のチャンスを逃したんだ?!!」

薫の中で溜まっていた何かが一気に放出された
胸倉を掴まれている東野は何が何だかわからない

「一体…なんの…こ…と…」


辛うじて出した言葉も薫の耳には届かない

「とぼけんな!!ちさとちゃんほどの美少女に『お風呂入らない?』って言われたんなら行くとこまで行けってんだ!!!」

「明石さん!!!それは小さい頃の話で…」

「いや、、、…だから、……何の……は…なし…」

「据え膳食わぬは男の恥!!!
 その意味を知ってて、ただのお喋りかぁぁ?!ええ?!おい!!!」


「明石さん!!!やめてぇぇぇぇ!!!!!」






人の噂とは何日もつのであろう
薫がブチギレた日から一か月経った今でも「東野は理性の王、花井は意外と大胆」という噂が六條学院には根付いている
本当にすいません。他にネタが思いつかなかったんです。
これで勘弁してください。これが僕の持てる力です。

未来への自爆というタイトルも微妙ですけど、タイトルが思いつかなかったんです。


全然関係ないですけど、ネットで調べたら、mr.ミスターって外国のバンドがありました、ちょっと感動しました。

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