ザッザッザッザッザッ…
「…到着したな…」
「ああ…」
肩に下げていたボストンバッグを地面に置きながら、2人の少年…バレットとティムは囁き合った。
「行動開始時間はあと12時間後…。
かなりの長丁場になるな…」
腕時計を覗き込んで時間を確認するバレット。
時間は午後10時を指していた。
「待ち時間が長いのは仕方ないさ。
この作戦を成功させる為には大事なことだからな」
そう言いながらボストンバッグからブルーシートと寝袋を取り出すティム。
「そうだな、気合入れて頑張るか」
頬をパンッと叩いてバレットは気合を入れ、ティムと同様にボストンバッグの中から寝袋を取り出す。
「そう言えば、こんな物買ってみたんだ」
そう言ってバレットは小型のガスコンロとヤカン、それにチタン製らしい銀色のコップを2つを取り出して来た。
「おぉっ、いかにも野宿って感じがするなっ!」
「だろう」
自分の意図が判ってくれた相棒へニヤリと笑い、バレットは手を動かし始める。
ペットボトルからヤカンへミネラルウォーターを注ぎ、ガスコンロに火を点けて湯を沸かす。
沸騰したのを確認し、火を止めて1分ほど湯を冷ます。
その間にコップへドリップ式のインスタントコーヒーをセットする。
程よい温度になった湯をそこへ注いで出来上がり。
「インスタントだが、こう言う場所で飲むのもオツって物だろう」
ティムへコップを渡しながらバレットは言う。
「そうだな」
ふぅふぅと、コーヒーを冷ましながら口を付けるティム。
「よし、作戦を確認するぞ」
「ああ」
「バレットは南側から時計回りに進み、壁沿いに攻めていく。
俺は北側から反時計回りに壁沿いに攻めると…」
「半周したら西側から攻めればいいんだな」
「ああ、俺は東側から攻める。
あとはここの部分なんだが…」
「ここは無視しても大丈夫なポイントじゃないか…?」
「俺もそう思う。
ただ、たまに不意打ちを食らう場合があるからな…。
念の為に軽く見て回ることにするよ」
「そうだな、俺の方もここやここのポイントは完全無視ではなく軽く見回ることにする」
「それと、ここだけど…」
2人の作戦会議は深夜遅くまで続くのであった…。
ヴヴヴヴヴ…ヴヴヴヴヴ…
ヴヴヴヴヴ…ヴヴヴヴヴ…
独特な振動音が鳴り響いている。
「…う…時間か…」
もぞもぞと、寝袋から這い出してバレットは携帯のアラームを止めた。
「ティム…起きろティム、時間だぞ…」
眠い目を擦りつつ、隣りで同じように眠っているティムを起こす。
「ん〜…?」
「そろそろ時間だぞ」
「ああ、もうそんな時間か…」
あくびをしながら寝袋から出るティム。
「後片付けをして朝飯にしよう。
と言っても携帯食しかないけどな」
苦笑しながらバレットは言う。
「下手に食うと動けなくなるし、仕方がないさ」
「だな」
そう言って寝袋とブルーシートを片付ける2人。
入れ替わりに黄色い箱に入った、ブロックタイプの携帯食を取り出して来る。
ぱかっ…
ぴりっ…
ぽきっ…
「「美味過ぎるっ!!」」 携帯食を口に入れた瞬間、2人は同時に叫び声を上げた。
そしてお互いに顔を見合わせてニヤリと笑う。
「やっぱこれ食った時は叫ばなくちゃなっ!」
「ああ、お約束だよなっ!」
あはははは!と笑いながら友情を確かめる2人であった。
「これより、『ぜったい!チルチル』オンリーイベントを開催しまーす! 入場者の方々は、カタログを係員に見せながら前へお進みくださーい!!」 はるか前方より、男の声が聞こえて来る。
ざわっ…ざわざわざわ…
それと同時に周囲の空気が変わり、外なのに温度と湿度が上がったような感覚を覚えた。
「…始まったな…」
「ああ、全てはこれからだ…」
1歩1歩、確実に近付く『戦場』を見据えて2人は呟く。
「ティム、健闘を祈る」
「バレット、お前もな…」
がしりと手を繋ぐ2人。
「「グッドラック!」」
そう言って2人は二手に分かれ、漢たちの戦場へと走り出していくのであった…。
(終われ)
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