ひがな一日のんびりと過ごすのも悪くない、そんな日差しと風が差し込むとある学校で
「あ、あんまし動くな」
「そ、そっちこそ動かないでよね」
ガタガタと物音立てる、面妖な掃除道具入れ
「ちっ、この体制じゃあ攻撃のしようもないわ・・・って、んっ!馬鹿、いったいどこ触ってるのよ!?」
「不可抗力じゃ不可抗力!大体何処触ったかなんてわかんねえよ!暗いし狭いし凹凸ないし!」
「なんですって!って・・ひゃん!馬鹿、アホ!変態横島!!」
本来ならば、掃除道具が納まっているのが当たり前、いやそれこそ掃除道具入れの存在意義なのだが・・・
「あっつ〜い・・・」
「俺もあつい、我慢しろ」
「つーか汗臭い!!アンタ風呂入ってるの!?」
「入ったのは2日前、一応、タオルで拭いたりはしてるけどな」
「キャー!汚いーーー!」
「失敬な!大体文句なら美神さんに俺の自給アップ頼んでくれ!!」
「・・・無理ね」
「せやな」
今現在、掃除道具入れに入っているのは、掃除道具ならず悪霊の類を掃除する、掃除屋さん男女2人だったりする
「あ〜、これで相手が美神さんやったらな〜」
「例えこの距離でも何かしらの攻撃を食らって、下手したら死んでるわね」
「・・・ありえる」
男の名は横島 忠夫
「一体いつまでこの中に入ればいいのかしら・・・はぁ〜〜」
「そのうち愛子のヤツが気づいて応援を呼ぶさ、それまでの我慢だタマモ」
女、いや少女の名はタマモ
2人は軽いアルバイト感覚でGメンの仕事を回してもらい、
「お小遣い、今時月に1000円って・・・」
「いや、どこぞの置物の中学生時代のお小遣いと同じらしいぞ、高校に入ったら2000円、でも携帯買ってもらって貰えなくなったり、携帯も使いすぎで止められたりしたらしい」
自分の学校にでる妖怪を退治しに来て、
「そういえば此処ってアンタの学校なのよね?」
「ああ、最近暮井先生・・・美術の先生な、その人がハニワの置物を美術室に飾ってから、やたらセコイ悪霊やら妖怪やらが集まりだしたんだわ。そんでチョロチョロGメンに依頼が・・・流石に俺ら除霊委員も無料でこんだけの相手はしたくないし、一応、授業を受けてる間は生徒だからな」
「捨てなさいよソレ」
「いや、それは出来んのだ。宇宙意思的に」
アホみたいな大ポカして、
「大体アンタがいけないのよ、トイレの花子さんを隙だらけでナンパしてるから!!」
「しゃーないんじゃ!まさかこの学校にあんなボン!キュッ!!ボン!!!の美神さんばりのスタイルした妖怪がいたなんて!一生の不覚だったんじゃ!!大体お前だって人の事言えんだろ!テケテケと追いかけっこしてて捕まったって・・・小学生か!!」
「しょうがないじゃない!なんか可愛かったんだから!」
妖怪にとっつかまって、掃除用具入れの中に閉じ込められたのである
(以上、この状況に対する言い訳終了)
「それでU・・・ゲフンゲフン!!『英語で2文字の妖怪』にとっつかまって、こんな所に閉じ込められたなんて美神さんが知ったら・・・」
「言うなや頭が痛くなる、意外に素早かったなあのU・・・ゲフンゲフン、『英語で二文字の妖怪』」
『我、密室密着こそ真髄とみたり(とりあえずごめんなさい)』
さて、今の状況を説明しますと、横島とタマモが掃除道具入れの中に閉じ込められました
横島が先にとっつかまり、後にタマモが閉じ込められたので、横島が奥、タマモが入り口側となっております
向きはお互い入り口の方へ向いており、つまりは横島がタマモを後ろから抱きしめる形となっております
「抱きしめてねぇぇぇ!!ずーっと万歳状態じゃぁぁ!」
「きゃッ!ちょ、ちょっといきなり叫ばないでよ!あ、腕下ろしたら後で殺すわよ?」
「なんでじゃ!!お前、長時間の万歳状態って地味にキツイんだぞ!?」
「アンタその腕下ろしたらさっきみたいに変なところ触ってくるでしょうがこのスケベ!!」
「誰が好きで触るかまな板!!」
「なんですって!」
狭い密室で行われる痴話喧嘩は、酸素濃度を上昇させ、なおかつ湿度も汗で上昇中
例え春だろうが冬だろうが、身動きが取れないぐらい狭い掃除道具入れの中に2人で入れば、嫌でも汗を掻くというのは、どこぞのアホが小学生の頃、身を持って体験し実証してたりするんだから間違いない
段々と暗闇に目が慣れてくれば、道具入れの隙間から漏れてくる光のおかげで少しずつ色々と見えてくる
どうやら掃除道具は全部外に出されているらしい。用意周到な・・・英語で二文字の妖怪さん
チラッと下を見れば、タマモの白くて決め細やかな首筋が見え、そこから続く肩には、シャツの襟元からチラホラ見えるピンクのブラヒモ
ジワリジワリと掻く汗が、タマモの着るシャツにゆっくりとしかし確実に透明感を与え始め、先ほどのブラヒモを追いかければ、見えてくるは小さな丘が2つほど。残念だがその先はブラがガッチリと役目の一つを果たしていた
「な〜に見てるのよこの変態!!」
「はぐあ!?」
ソレを追ったのは男ゆえの本能だ、なんて言い訳を考えたが、それより先にタマモの目潰しが横島に決まる
どうやら横島、気がつかないうちに上から覗き込む姿勢になっていたらしい
「暴れないでよ!」
「目潰ししないでよ!!」
「女言葉使うな気持ち悪い!」
「ボケぐらい見逃せ!!いや見逃すな突っ込め!!」
「突っ込んだでしょ今!」
「む、確かに・・・」
下らないやりとりでもしてなきゃ気が気でないのが本音の横島
それほどまでにタマモの後姿は、色々な意味でヤヴァかった
後ろから覗くだけ、ほんの少し見える横顔だけでも美人だ上玉だと思わせる
漂ってくるタマモの匂いは、どうしようもないほど理性を狂わせ、己の内なる獣を呼び起こす
(俺はロリコンじゃない俺はロリコンじゃない俺はロリコンじゃない俺はロリコンじゃない俺はロリコンじゃない俺はロリコンじゃない俺はロリコンじゃない俺はロリコンじゃない俺はロリコンじゃない俺はロリコンじゃない俺はロリコンじゃない俺はロリコンじゃない!!)
鎮静剤代わりの念仏じみた自己暗示を唱え続ける横島
しかしなんというか、タマモが少しでも身動くと、身長差からお尻が太ももに擦れるわけでありまして
「ん、暑ッいわね、後でアイス奢って横島?」
「あ、ああ・・・」
「・・・どうしたの?ちょっとだけいつもより変よ?」
「あ、あんまり動くな・・・あた・・・いや、なんでもない・・・」
「??」
動くと擦れる、そして狭い空間内の空気も動いて鼻をつく
そろそろタマモの太ももに、第三の足が当たってもおかしくはなかった
「ねえ、そんなに辛いの?」
「え?」
「腕よ腕、あ〜・・・うん、変な事しないっていうなら、下ろしてもいいわよそれ」
元々合わせ辛い目線だが、そっぽを向いてそう言ったタマモの首筋が赤く染まるのが確認できる横島
(・・・いろっっぽい)
見えるうなじ、染まる首筋、透ける服。花札なら三光か猪鹿蝶なみの破壊力
出来るだけタマモには聞こえないよう気をつけてクビリと唾を飲む
「そ、そうか、ありがとな」
「いいわよ、こうなったの、お互い様だし」
「へ、へぇ〜・・・やけに素直じゃねえか」
「う、うるさい!」
此処で素直になられたら、余計に役が増えていく
不意打ち気味の素直さは、時としてビック・バン
っと、馬鹿な事を考えていても、肉体というのは素直なものでいい加減腕が痺れてきていた横島、実は少しでも気を抜けばタマモの頭の上に腕を落としそうだったのだ
「それじゃあ失礼して」
「え?」
ゆっくりと腕を下ろす
この時何も考えてなかったのがいけなかった
いや第一、この狭い掃除道具入れ、上げたはいいけど下ろすとなれば当然そうなる・・・もんだと思って頂きたい
タマモが顔を横に振れば、左右に見えるは横島の腕
腕 顔 腕
これはある意味もくそもなく、場所が場所なら恋人同士がやってそうな姿勢なわけでありまして
お互いの身長差も必要なちょっとした大技、冬場に暖めあうアベックがやるアレだ、石を投げつけたくなるヤツ
(気づけ鈍感!)
「ん?どうしたタマモ?」
「な、なんでもないわよ!」
下ろして良いと言ったのは自分自身
だがまさかこんな下ろし方をしてくるとは思ってもみなかった
ある種抱きしめられているような状態に対して、一瞬にして真っ赤に染まるタマモの顔
そして
(しまったぁぁぁぁぁ!!もうちっと考えて腕を下ろせばよかったぁぁぁぁぁ!!)
っと、実はしっかりと気づいていたタマモ曰く鈍感な男
(柔らかい軟らかい、そして暖かいぃぃぃーーー!)
三光から雨四光。ゲームはまだまだ『こいこい』状態
ムニュリと肘に当たるのは、先ほど見えた丘2つ。無いとは言いつつもしっかりあるそれは、山ではないが、丘には丘の良い所があるもので・・・・
(ああぁぁぁぁ!なんか2つのポッチがぁぁぁ!!サクランボがぁぁぁぁ!!)
実はそれ、タマモの服についているボタンだったりするわけだが、錯乱している横島は気づかない
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・」
横島が何かを鎮めるために大量の酸素を消費したせいか、気がつけば酸素を求めるタマモの息遣いが荒くなっている
このままでは脱水症状かはたまた酸素不足でぶっ倒れるかの二択
タマモの肌にも玉のような汗が噴出してきており、更に女の子の匂いが掃除用具入れ内に充満していく
すると横島のナニな煩悩が刺激され、それを鎮めるために酸素を消費し・・・まさに悪循環、人によっては好循環
「・・・な、なんとかして出れんもんか」
「無理ね、なんか・・はぁ・・・はぁ・・・強力な結界が・・・はぁ・・・はぁ・・・されてるわ」
「そ、そうか」
「文・・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・文珠は?」
「し、品切れや」
タマモの息遣いがやけに色っぽく感じるのは、生命の危機に落ちた時に発動する本能ゆえか
状況と腕の感触とうなじと匂いと息遣い
霊感含めて6つの感覚を持つ横島は、今現在、『嗅覚』『感覚』『視覚』『聴覚』の4つが堕ちていた
「って、なんか・・・はぁ・・・はぁ・・・・アンタ、はぁ・・・・んッ・・・ん・・・」
「ど、どうした?」
喋ってる途中で口に溜まった唾を飲む、ただそれだけの行為がこんなにも色っぽかったかと思いつつも相槌を打つ
「アンタ、平気そうね?」
「まあな、真夏のトランク内よりかはまだ・・・」
「不憫ね」
「やかましい」
横島にはこういったやり取りが本当に助かっていた
一瞬でもいいから煩悩を刺激するものを忘れさせてくれれば、なんとかギリギリ瀬戸際紙一重で理性を保てると・・・
そう思っていた矢先の事だった、弟子の声が聞こえてきたのは
「先生!」
「「シロ!?」」
天の助け・・・になるかどうかは怪しいところ、何せシロだし
なんて事を思う、ちょっと酷い2人。だがその考えは正しかった
「いつまでタマモと遊んでるでござるか!!散歩の時間でござるよ!!」
「アホかお前は!これがどう遊んでるように見えるちゅうんじゃ!」
「ん〜〜、密室殺人探偵ごっこ?」
「閉じ込められてるのよこの馬鹿犬!つかどんな遊びよそれ!!」
場所が広ければ見事なコケを見せれただろうと、横島の血が残念がるが、そんな事はどうでもいい
「閉じ込められてるって・・・開ければいいでござろうこんなの」
なんで開けないの?なんて事を考えながらも掃除用具入れの取っ手を握るシロ
しかしドアはしっかりと封印されており、可憐な暴走少女シロ、実は力持ちな彼女が引っ張ると当然
「わ、馬鹿ちょっとまて!」
「あゎゎゎゎ倒れるぅぅぅ!!」
バターン!と学校中に響く音を立てて倒れる掃除用具入れ。倒れない封印なんてもんはなかったみたいだ
「先生、大丈夫でござるか!?」
「ちょ、ちょっと横島重い!!」
「うわっスマンタマモ!」
位置関係上、タマモの上に倒れこむ形となった横島が、慌てて離れようとするが、そこは掃除道具入れ内、離れられるわけもない
慌てて動けば動くほど、「あんっ!」とか「んっ・・・」などと、やたら色っぽい声を出すタマモ
それに慌てて更に動いてタマモが呻く、またも起こる悪循環
「ぐっ、し、シロ!上向けろ上!」
「う、うえ!?掃除道具入れの上って・・・あ、こうでござるな!」
緊急事態だという事で、慌てて上に向けろと言ったのが悪かったのだろう
シロはドアの方が天を向くように掃除道具入れを転がしてしまった
自然と今度は横島の上にタマモが乗っかる
「う、うわばっか!この馬鹿犬!!」
「ぬっ拙者は馬鹿ではござらん!」
「う、うみゅ〜〜〜」
横島と違ってタマモはこういった事態に慣れてないのか、倒れたり回ったりとして目を回してしまった
「と、兎に角だ、立たせ「あ、アイツでござるな先生を此処を閉じ込めたのは!待つでござる!!」・・・ってお前が待てやウォイ!!」
「きゅ〜〜〜〜」
横島達を此処に封印した妖怪が近くを通りかかったのか、シロの気配が「待つでござる英語で二文字の妖怪!」との叫び声と派手な足音と共に離れていく
そう、掃除用具入れをそのままにして・・・だ
「はぁ〜〜、さっきよりは楽になったわ」
「ソレハヨカッタデスネ、タマモサン」
立ちっぱなしの姿勢がダルかったのか、横島の上で少しばかり寛ぐタマモ
文字通り下敷きとされている横島も確かに肉体的には楽にはなっていた、そう肉体的にはだ
「・・・あ、重いとか言ったら殺すわよ?」
「イエ、大丈夫デスタマモサン、タマモサンハ、トテモ軽イデスヨ」
「うん、よろしい♪」
横島の言葉を聞いて宝石のような笑顔を見せるタマモさん
身長差ゆえに自分の胸元から見上げるようにして飛んでくる宝石の煌きと、チラっと見える少し汗ばんだ胸元と、全体重にて押し付けてくるタマモの柔らかさが、横島の何かを決壊させてしまった
ムクリ
「・・・・」
「え、え〜っと・・・この腰の部分に当たる感触はなんなのかな〜なんて思ったり」
どうか横島を責めないで欲しい、それより今まで起き上がらせる事がなかったことを褒めて欲しい
自分の腰に当たった違和感、どこか軽い熱を帯びているソレがなんなのかと確かめるために、ゴソゴソっと手を腰に持っていくタマモ
ソレに対し横島は黙して語らず、もう後は野となれ山となれの心境か、目が悟りを啓いいていた
ムニュリ
がっちりと掴まれてしまった、マイ・マグナム
美少女に掴まれた、そんな背徳感がマグナムを暴発させそうになる
「・・・・」
「・・・・」
しばしの沈黙
どこか遠くから聞こえてくる、「成敗!」という弟子の声と妖怪の断末魔
(・・・もう、疲れたよパ○ラッシュ)
さあオチだ、この距離でも可能な攻撃で俺を落としてくれ
大丈夫、俺は生き残って見せる!その後の拷問だって俺は耐え切ってみせるから!!
さあ人思いに!
なんて覚悟を完了させた横島、長年の王道となったオチの流れがその体と魂には刻まれており、その顔は親指を立てて答えたくなる良い〜顔をしていたが、そうは問屋がおろさなかった
「え、えっと・・・その・・・・////」
タマモの意外な反応、それは「あんまり嫌がってない!?」なんて反応だった
「し、仕方ないわよね!こんな美女が・・・その、くっついてるんだし!!」
「あ、ああ・・・」
「それに・・・春だし・・・」
そう言って何やらモゾモゾと足を擦り合わせるタマモ
どこか瞳は潤んでおり、息遣いも先ほどとは微妙に違う
そう、春で、春なのだ
そして横島がタマモの香りと温もりを胸いっぱいに感じていたように
タマモはタマモで、横島の香りと温もりを体いっぱいに感じていたりする
そして・・・再三言うけど・・・・春なのだった
おしまい
-----おまけ------
「先生、タマモ!大丈夫でござるか!?」
ガチャンと音を立てて掃除用具入れのドアを開けるシロ
学校中を駆け巡ったU・・・ゲフン、『英語二文字の妖怪』との追いかけっこに勝利し、再び横島とタマモが封印されている掃除用具入れのあるクラスまで戻ってきたシロ
術者が倒されると解除されるタイプの封印だったのか、先ほどまで感じていた妖力を感じる事はなかった
さあ散歩に行くでござる!と、息巻いて掃除用具入れのドアを開けたシロが見たのは
まさに春の光景だったそうな
ほんとにおしまい!
Please don't use this texts&images without permission of 紅白ハニワ.