「待機室に
こーゆー本を持ち込むんじゃないっ!!」
皆本が手にしているのは、エッチな雑誌。
小学生には早過ぎるどころか、普通ならば女のコではなく男のコが読むような本。『成人男性向けエッチ本』だ。
「いーじゃん別に。
皆本だってホントは好きなクセに――!!」
叱られても意に介さず、ウヒャヒャヒャッと笑う薫。
なにしろ、検査の最中でも堂々と、そうした本を読んでしまう彼女なのである。
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そんな薫も、いつのまにか、小学生から中学生へと成長。
そろそろ、お年頃になったので……。
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「い、いーじゃん別にっ!!
み、皆本だって本当は好きなクセにっ!!」
真っ赤になって、文句を言う薫。
皆本が持ってきた『エッチな雑誌』を、まるで隠すかのように、胸に抱きかかえている。
「いや待て、僕には違いがわからん」
という感想を口にする皆本だったが……。
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「あー、恥ずかしかった」
皆本がいなくなってから、薫は、エッチな雑誌を机の上に置いた。
彼はそういう意味で『違いがわからん』と言ったわけではないが、この雑誌は、実は昔と全く同じもの。薫が小学生の頃に発行された、もはや今では古雑誌なシロモノだった。
ただし、
「あたしが、こんなもの読んでるなんて……」
古い『成人男性向けエッチ本』なのは、表向き。
薫は、それをカバーとして使っているのだ。
中に挟み隠されている本は、全く別物……!
今、彼女が開いたページには、
『今月の特集!!
ステキなカレをゲットするためには!?』
という煽り文句が記されている。
「……皆本には知られたくないもんな」
そう。
成人向けでも男性向けでも何でもない。
普通に、ティーンの少女が読む雑誌だった。
しかし、お年頃の薫としては、自分の嗜好が真っ当な方向に変化していることを、かえって気恥ずかしく感じるのだ。
「ふう……っ」
ティーン少女向け雑誌のページをめくりながら、薫の頭に浮かんでくるもの。
それは、エロオヤヂっぽくない妄想。むしろ少女趣味な妄想。
最近読み始めた少女漫画の主人公に、ついつい自分を重ね合わせてしまうのであった。
『アンド……いや皆本。
大好きだったよ、愛してる。
おそらく、ずっと前から……。
でも、あまりに普通に、あまりに優しく、
皆本があたしを見守っていたものだから、
あたしは、その愛に気づかなかったんだ。
皆本、許して欲しい。
裏切ることよりも、
愛に気づかぬほうがもっと罪深い……』
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