「ああ、光お姉さま〜」
世界はある意味とても美しい。
ある女子高の校舎の中庭。
遠めにみえるは礼拝堂。それは神様の名のもとに。
しかしここに今ある光景はある意味怖い。
「……ついてこないで! 私は……」
「兵部先輩にその手作りのクッキーをお渡しするの? ああお姉さまは素敵ですわよね♪」
グラサンをかけたセーラー服の女子高生。
いやむきむきまっちょ。
その名はおか……。
「もう、大鎌さんったら!」
「ああ光お姉さま、その顔もお美しい!」
むきむきが女子高生が出来る時代到来!
まあそれはおいておいて。
手をこうなんというか胸の前でふりふりさせているおか……。
大鎌が眼鏡の女子高生を見上げていた。
髪の毛は肩先で切りそろえている。
眼鏡越しにみえるその瞳の色は黒。
セーラー服の裾が風になびいていた。
今の時期はちょうど冬、紺色のセーラー服のひだがとても風になびいて美しい。
臙脂色のネクタイ、上下は紺。
しかし大鎌のセーラー服は白である。
そのスカーフはピンクだった。
ある意味怖い。とても怖い。
きゃ、と目の前で手をもってきてぶりぶりする大鎌をどこか呆れたという顔で光は見ていた。
茶色っぽい髪を後ろでおさげにしているおか……。
「手紙ありがとう、どうしたんだい? ボクに何か用事かい?」
「きゃあ♪ 兵部お姉さま!」
「すいません、お手紙などさしあげてしまって。兵部先輩……あの私」
来てくれたんですね。と皆本は現れた声の主を見る。
さわやかな声とともに現れたのは少し古めかしい感じのセーラー服を着た少女。
肩先で切りそろえた白い髪が風に舞っている。
可愛い君のためなら、どこにでもとんでいくよ。とにこっと彼女が笑うと、お姉さま。と目をうるませて大鎌が彼女をみている。目をきらきらさせながら。
顔を少し赤らめ、光は兵部を見る。
「先輩、これ私が作ったクッキーなんです」
「先輩なんて他人行儀だね。京子とよんでくれないのかい? キミとボクは姉妹の誓いをかわした仲じゃないか」
ああキミはあいかわらずかわいいね。とクスクスと兵部が笑う。
顔をますます光は赤らめ、そして兵部にそっと手にもつクッキーがはいった袋を差し出した。
可愛らしくピンクのリボンでラッピングされている。
「……相変わらずやっぱりキミはかわいいね」
京子……先輩。と小さな声で光は囁いた。恥ずかしげなその声をきいて可愛いね。とプレゼントをうけとりながら、楽しそうに兵部が笑う。
ああ、美しい姉妹のお姿、とうっとり、と大鎌がその光景を見ていた。
「……光ちゃん、今週の図書委員の当番、私たちよ、早くいかないと!」
「すいません、朧さん」
もう忘れちゃだめよ。と三人の下にかけて来るのは、まあある意味なんというかとうがたったというか、年増というか……。
「……やあ柏木さん」
「兵部先輩、今日は。光ちゃん、今週は図書委員の当番なんです。お昼休み図書室でうけつけしないと。ちょっとかりていきます」
長い黒髪が美しい、見た目はどう見ても大鎌とおないどしくら……。
まあ光の同級生の朧は、とても柔らかく兵部にむかって微笑みをかえす。
ごめんなさい、と謝りながら光が朧にかけよる。
朧のセーラー服は光と同じタイプの形。
まああまり似合ってないというか……こすぷ……。
まあそれはおいておいて、中々面白い光景ではあった。
「そういえばボクも不二子さんからよばれてたんだ。では失礼するよ。このクッキー、とても美味しいよ」
袋をあけて中にはいっているクッキーを兵部は受け取りつまむ、ありがとうございます。と嬉しそうに光が笑う。
ほらほらいくわよ。と朧がちょんちょん、と光のセーラー服の裾をつまむ。
「……理事長の御用時があったのに……」
「どうせ大切な用事じゃないさ、ボクはキミのほうが大切だよ。光」
「京子……お姉さま」
もう、と朧が呆れたように笑う。ああ美しい光景、と大鎌が手をふるふるさせて目を売るめかせている。
「……不二子より、光ちゃんのほうが大切なんて、妬けちゃうわね」
「仲がいいことはよいことです」
遠くからこの光景を見ているのは、長い金の髪をした女性と、長い黒髪の男性。
もう不二子、京子のほんとのお姉さんなのに、ないがしろにされてるわ。妬けちゃう。とぶうっと不二子は膨れる。
「まあまあ、理事長」
「真木だって、従兄弟なのに、ほとんどこの頃あいてにされてないじゃない。腹たたない?」
「私は京子さんが幸せならそれで」
ああもう甲斐性がない男ね、とため息を不二子はつく。
まあ桐壺君もたよりないけど、貴方も頼りないわ。とふうと深いため息を不二子はついた。
聖パンドラ学院の理事長である不二子。
彼女の従兄弟である真木と校長の桐壺は完全に彼女の尻にひかれてしまっている。
「あれ、真木先生、こんなところでなにしてるんすか?」
「葉、お前な……」
タバコをぷかぷかふかしながらひらひらと手を振る葉。
彼女はふう、ほんと中々この季節寒いよね、とぶるっと震えている。
「……タバコはやめろといっただろう!」
「ほんとまじめなんすねえ、理事長補佐ともなると」
もうまた真木をからかってる。不二子知らない。と不二子は呆れたといった顔で苦笑する。
「……あれ紅葉は?」
「俺とあいつは1セットじゃないですよ」
いやあいつもいっしょだからな、といいながら真木は葉からタバコを真木はとりあげた。
「やめてくださいよ!」
「タバコはやめろといっただろう」
ある意味この光景も見慣れると楽しいわね。とクスクスと不二子は笑う。
聖パンドラ学院はある平和だった。
とても平和だった。
「また理事長はさぼりか、どうしたらいいんだ……仕事が!」
理事長室でぼやく一人の男性。
校長桐壺、彼は机の上にのった大量の書類の前でため息をついている。
「京子君が助けてくれないと、だめなのか、あの人はやればできる人なのに……」
さぼりの理事長不二子。
それを助ける理事長補佐の真木(しかしいつも遊ばれている)
不二子の妹京子の助けをかりないとこれはだめだな。と桐壺はかなり青ざめた顔でため息をついてた。
まあこの人以外はいつもどおりこの学院は平和だった。
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