なんとなくいい紅茶を手にいれたそんな午後。
僕は優雅にティータイムとしゃれ込んでいた。
いやあ、あいつらがいない午後は結構いい時間になる。
とても静かな時間だ。僕は居間で一人、紅茶が入ったカップを手に優雅に座り、ティータイムを楽しんでいた。
安らぎのひと時。
「……やあ、皆本クン!」
と思ったとき、愉快げな笑いとともに現れたのは……パンドラの首領、兵部京介だった。
どうしてこんなときにくるんだよ。と僕は苦々しく思う。
いつものようにやつはいきなり突然、姿をあらわした。
っていうか今は僕の数少ない安らぎタイムなんだ。
だからくるなよ。と思い僕はちっとしたうちする。
「そんないやな顔しないでもいいと思うけど」
紅茶を入れるのほんと、キミは上手だね。とどこか楽しげな微笑とともに、僕がいれた紅茶のカップにやつは手を伸ばす。
「触るな、せっかくのいい紅茶が腐る!」
「ええ?」
「……お前どうしてここにくるんだ?」
「いい暇つぶしだし」
優雅な時間は、こいつのために台無しだった。
僕は湯を沸かすべく、台所へと向かう。
だってせっかくいれた紅茶が冷めてしまったからだ。
「もうせっかく遊びにきたのに」
「別にきてくれと頼んだわけじゃない、すぐ帰れ、今すぐ帰れ」
しっしと犬を追い払うように僕は手を振った。
皆本クンがいじめる。と涙ぐむ兵部。
ものすごく鬱陶しい。
僕は台所でやかんに水をいれて、火をかける。そしてお湯を沸かす、暫くしてから、ポットの中に茶葉をいれて、お湯を注ぎいれる。
「ダンシングリーブスだね、葉っぱが踊ってる」
「よく知ってるな」
僕は感心する。兵部がそんなことを知ってるなんて意外だったから。
くるくると回る葉っぱ、それを兵部は興味深げに見ている。
僕はポットにふたをして、そして蒸らすべく、上からポットマットをかけた。
結構凝ってるね。と楽しげに兵部が笑う。
「……美味しい紅茶はこうやっていれないと、多少やっぱり手間をかけないとだめだしな」
「女王たちみたいに?」
「はあ?」
何をいうんだお前は、と僕は深いため息をつく。
兵部はにっこり、と相変わらずあの余裕の笑みをしながら、僕へと囁きかけた。
「……手間隙かけたら、友好関係が築けるなら僕もそうしようかな」
「あのなあ」
踊る踊る葉っぱたち、多分ポットの中で踊ってる。
僕は深いため息をまた一つつく。
そしてちょうどいい感じになったなとポットマットを取り、カップに湯を注ぐべく茶漉しを取り出す。
「ボクにもくれないかな?」
「はいはいわかった。わかった」
いつもこうやってこいつは茶を飲みに来る。でもそれが結構楽しい、と思える僕もここにいたりする。僕は、カップに紅茶を注ぎこむ。
「やっぱり皆本クンがいれる紅茶は美味しいなあ、いいお嫁さんになれるよ。うん」
「一言余計だ」
カップを受け取り、兵部は満足そうに紅茶を飲み干す。
台所じゃなんだし居間でゆっくり飲まないか? と聞くと、意外そうな顔を兵部はした。
「へえ、キミからそんなこというなんてねえ」
「ここじゃ落ち着かないから、言ってみただけだ」
落ち着いて紅茶を飲んでいたのに、お前が邪魔したんだろうが、と僕はため息とともに言う。
キミとお茶したかったんだからさあ、だからこの時間にきたのさ。と悪びれずにいう爺。
僕はふうとため息をつきながらも、結構こんな時間も楽しいなと思う。
普段、反目しあってる奴と優雅にティータイムというのも。
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