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こどもチャレンジ(19)



「ねぇ…」

「なんすか?」

「今夜 時間を作って欲しいワケ」

 すたすたと前を歩く猿神の方へ視線を向けながらの、そんなエミの声音には茶化し難い響きがあった。
 横島にしても、発覚したばかりのショックな事実に打ち拉がれていたから、余計な事を口にする事無く こくりと頷く。

「食事の後で軽く座学をするって言ってたから、その後に。
 場所は…」
「おぬしらが昼に使っとった異界空間を使うがいい。
 差しで話す方が良かろ? 人払いくらいなら、わしがやってやろう」

 振り向かぬまま挟まれた言葉に、エミは軽く思案してすぐに頷いた。

「そうして貰えたら助かるワケ。 感謝するわ」

 抑え込まれていて未だ彼女には はっきり見えない実力と、先程までの部屋でのあんまりな遣り取りとで、エミの中での猿神の株は下がっていたからだろう。 頭を下げつつも、だがその謝意の言葉はどこかそっけない。

「これもその小僧の事じゃからな。
 他になんぞあれば、わしに直接言いに来るがいい」

 大判振る舞いな発言は、横島の現状が彼をして それだけ興味深いと感じさせている事の裏返しだろう。
 …まぁ先に渡した袖の下の威力も、けして少なくなかったとは思われるが。





 こどもチャレンジ (19)





 食後、小竜姫も交えて始まった、神父による除霊講座が1時間ちょっと。
 その後それぞれ風呂を頂いて、一同が自身のと定めた部屋へ戻れた頃には、なんだかんだで午後10時を周っていた。

「あれ、入ってなかったんすか?」

 異界空間との出口になる建物の前。
 暗がりの中で一人佇んで居た人影に気付いて、横島は声を掛けた。

 こんな時刻にもなれば、ここ妙神山はほぼ夜の帳の闇の中だ。
 まぁ、清々するほどに人気(ひとけ)も何もないから、女の子が一人でいても大して不安は感じないかも知れないが。
 とは言え、中に入れば明るいし腰を下ろせる場所もある。 あえて外に居る必要は無い。

 まぁ、理由はなんて事の無い事で。

「ね、ここってさ…」

「はい?」

「修行じゃなくても、アレに着替えなきゃいけないのかしら?」

 割と真面目な、しかし意味のあまり無い問い掛けに、思わず横島の肩がガクッと落ちた。

「さ、さぁ… どうなんだろ?
 …あ、でも着替えられそうなら、そっちの方がいいかも知れないっすね」

 初めて入った時に、見学だと明言しても着替えを言い渡されたし、と遠い記憶を思い返す。
 実際に必要なのかは判らない。 ここを使う上での、単なる慣習なだけかも知れないし。
 それでも、然したるデメリットが無いなら、着替えておいた方が無難だろう。

「なら、私はそっちから入ってくから、おたくも早く着替えて来るワケ」

「ういっす」

 それぞれ『男』『女』と染め抜かれた暖簾を潜り、銭湯の脱衣所そのものの更衣室で服を変える。
 先に中へと入る事になったのが横島だったのは、まぁ当然だろう。 ここの着替えは、下着まで全て脱いだ上で、なのだ。 しかも、彼は前科持ちである。

「待たせたわね」

 横島と違い、入って来た扉が開かない事を確認したりもしていた事もある。
 考えに囚われていても無意識にそんな注意を払ってしまうほど、エミにとって彼は身近に居る存在だった。

「そんなに差は無いっすよ。 はは…」

「なんかあったワケ?」

 答えた後、口の中で何やら言葉を飲み込んだ彼に、エミが尋ね返す。

「いやぁ、ここの着替えって、適当に選んだ箱から取り出しても体にぴったしじゃないすか。
 アレ、どーなってんだろうなぁ、と」

「あぁ、そう言うコト…」

 顔だけ下げて、彼女は自身の服へと視線を移す。

 フリーサイズにしては、妙に体にフィットしているのだ。
 地が厚い事もあって、下着の無い不安感も然して感じられない。 だから気にならなかったのだが、言われてみれば確かに不自然な話である。

「でも、ま。 神様のやる事なんて、イチイチ不思議がっても仕方ないわよ」

「そっすね」

 どこか諦観した表情に、横島も苦笑で頷く。
 二十歳頃のエミだったらもっとムチムチだったろうと現実逃避からの雑念を、誤魔化す為に口にしただけだったのだし。

「…で、話ってなんすか?」

 そう話を本題に戻した途端、エミの視線は冷たくなった。

「そうだったわね。
 おたくに、どうしても訊きたい事があるの」

 エミらしからぬ… いや、正確には『こちらで出逢ってからの』彼女らしからぬ雰囲気での物言いに、背筋に冷たい物を感じて身を竦める。

「だから、力尽くで訊かせて貰うワケっっ!」

 叫ぶように言うなり、エミは霊体貫通波を撃ち出した。

「にょわっ?!
 な、ナニをぉ?!!」

 相変わらずの奇怪な動きで避ける横島へ、2撃3撃と攻撃が繰り返される。
 が、増えた手数も簡単に展開されたソーサーに阻まれ、まるで彼には届かなかった。
 舌打ちしながら、それでもエミは攻撃を繰り返す。

 対する横島はと言えば、訳の判らぬまま反撃どころかロクな対応も出来なくて、ひたすら避けと往なしとに終始した。

「いい加減 当たんなさいよっっ!!」

「なぜにぃ〜〜っ!!」

 エミは、出来るだけ早くに勝負を着けたかったのだ。

 この空間では、肉体の枷を越えての力が揮える。
 だが、そうは言っても普段からこんな場所で霊力を使っていない者には、はいそうですかとその特性を利用出来るものではない。 昼に使ってある程度感覚を掴んでいるとは言え、横島も使った経験はあるかも知れない以上、それが彼女の有利に繋がるのは ほんの短い時間だけだろう。
 反則的な彼の強さの、その全貌を知っている訳ではないのも、また確かだろうし。

「にょわっ。 ほわっ。 たはっ」

 そんなまるで癇癪の様な……いや、癇癪そのものの攻撃を、横島は気の抜ける様な掛け声と共にひたすら避け続ける。 まるで計った様にギリギリのタイミングで。

 この場所を使った経験なぞ、かつてに於いてすらそう有る訳でなく。
 ほんの数時間前に猿神から齎されたショックから、抜け出せて居る訳でもなく。
 もう3ヶ月弱になんなんとする、この意識と体格とのズレを克服しきれて居る訳でもなく。

 だからエミの認識とは裏腹に、横島には余裕なぞ ろくすっぽ無かった。

 しかし鬼門相手じゃあるまいし、伸してからと言う訳にもまた いかない。
 なにせ、こちらで東京に出て来てからは家族にも近い付き合いが有り、また百合子のお気に入りでもあるのだ、彼女は。
 しかも何故なのかは解らないまでも、エミの憤りの原因が自身に有るだろう事くらいは、横島も気付けていたから尚更である。

「にょわっ、なんで〜?
 謝りっますからっ、勘弁してっ下さいぃ〜っっ」

 そんな態度と表情が、余裕を感じさせて尚更にエミを追い詰めて行く。

 直接発揮出来る比率が高くなろうと、元から持っているキャパが増える訳ではないのだ。
 闇雲に揮っているが故に、力尽きるのはそう先の事ではあるまい。 その事は、彼女自身判っていた。 それでも、この八つ当たりに似た行動を止める訳にはいかないのだ

「なんでよっ!」

 家出少女となってから、初めて出来た家族にも近しい相手。

 だからこそ向けた、振り絞る様な一撃。 それは、しかし簡単に外される。

「なんでよ」

 当らない攻撃に焦れたかの様にも聞こえるその言葉は、けしてそう言う意図で吐かれている訳ではない。

 まるで泣いているかの様な雰囲気に、さすがの横島もエミの余裕の無さに気が付いた。

「…?!
 その、どーしたんすか、エミさん?」

 わたわたと慌て出す。
 ただし肝心な部分が判っていないから、彼女の気持ちがまるで解らない。 故に何をどうしていいのかも判らないのだ。

 ぺたりと座り込んだエミが、そんな彼へと睨む様な上目遣いで口を開いた。

「おたく…」

「は、はい?」

「ナニを考えて私に近付いたワケ?」

 嘘や誤魔化しは許さないと、泣きそうな瞳で、それでも真っ直ぐに視線を向けてくる。

「なに、って言われても…」

 猿神の言葉に、未だ半分現実逃避中。 その上、エミが何を不満に思っているのか想像も出来ていない。 だから横島は曖昧に聞き返すしか出来なかった。
 それが、彼女の不信感を更に煽る。

「ここの連中だけじゃなく、おたく、私や令子とも未来で知り合いだったのよね?」

「えぇ、そうっすけど…」

「なら、なんで私に近付いたワケ?」

 繰り返す。

 同情心からと言う行動。 それを、かつてならともかく、既に受け入れて久しい今。
 その事にまで今更どうこう言うつもりは、エミにとて無い。

 ただ…

「私が憐れに見えたから?
 それとも、おたくが知ってる未来の私を憐れんだから?!」

 ただ、それでも。

 たといそれが未来の自分へだったとしても、それが『今の自分とは別の誰か』に向けられたモノだったと言うのなら。
 自分じゃない誰かの為に、手を差し伸べられたのだとしたら。

 もしそうなら、はっきり言って許し難い。

 だってそうだろう。
 そもそも、今ここに居るエミが陥った他人から同情を受けるだけの窮地は、横島に使い魔を祓われた事に起因しているのだ。
 それがなければ、神父の様な庇護者の下に身を寄せずとも、かなりのところまで昇れるだけの力は有った筈。 そんな自身への自信は、今でも持っている。

 誰かに縋らなくたって、恐らく一人でやっていけただろう、あのままでも。 …いや、あのままだったなら。

「おたくの知ってる未来の私も、私なのかも知れないけど…
 でも、それでも、今ここにいる私じゃないワケ」

 それが未来の自分への為だったとしても、この少年の掌の上にずっと居たと言う事になる。
 誰かの身代わりに、エミ自身の意志を無視して押し付けられたと言う事になる。

 あの全てを失くしたと思った苦痛の何もかもが。
 今の満ち足りていると思える日々の何もかもが。

 その全てが、欺瞞の上だけにあった、と言う事になる。
 そんな事が許せようか。

 しかし…

「えっと… 
 俺、馬鹿だから、エミさんが何言ってるんだか良く解んないすけど…?」

 困惑を顕にした横島の顔が、エミの暴走していた思考にブレーキを掛けた。

 ここまでの短くない付き合いの間、彼がずっと演技をしてたのかと考えると、それはそれで肯(がえ)んじ難いのである。

 『この』横島が『こちら』に来てからで、一緒にいた時間の長い人間。 それを上げろと言われれば、話を聞く限りでは まず彼の両親たち。 これは言うまでもあるまい。
 そして、その次にくるのが自分だろうと言う自信が、エミには有った。 特にこの一月 足らずの間で言えば、一日の半分以上は共に居たのだ。

 その過ごした時間の中で見て来た全てが演技だとするならば、横島は超一流の俳優……いや超一流の詐欺師だろう。

 だが、それはないだろうとも、エミには断言出来てしまう。 これまでの積み重ねた時間が作為を否定するのだ。
 それに、百合子に腹を割った相談をされ、横島の事を気に掛け見続けてきてもいる。 自分を騙し切れるくらいなら、母親にそんな不審を持たれる様な手抜かりなぞしないだろう。

 だがそうなると、途端にその意図が解らなくなるのだ。

「…それ、どう言う事?」

「いや、どういうって言われても…」

 双方が、それぞれに困惑した顔を見合わせた。

「…おたく、私の事 知ってたのよね?
 だから、私に会いに来たのよね?」

 繰り返される様な問い掛けの、その言われた事の意味が判らなくて横島は首を傾げた。

 何せ彼にしてみれば、深く考えての末の行動でこの現状がある、と言う訳ではないのだ。
 誰かに何とかして貰いたくて、それだけで走り出して。 多分にその場その場での状況に流され、ただただ身を任せた結果、今、この場に居るのだから。

 それだけに、彼女が何を聞きたがっているのか理解出来ない。

「えと…
 その、あん時はエミさんに会ったのが偶然で、ホントは神父に会いに来た筈だったんすけど」

 浮かべられた苦笑いは、その時 本題をすっかり忘れていた自分に対してのもの。
 それを誤魔化しのモノだと感じたエミは、きつい視線を向けて訊き返す。

「なによ、それ?」

「だ、だから、こんな状況になっちゃったのを誰かに助けて欲しくて、神父に会いに東京に出てきたんです。
 その途中で見掛けた美人の後を、つい追っかけちゃったらいきなり毛玉が襲い掛かって来て、やっつけて落ち着いて見てみたらエミさんだったんで、その…」

 わたわたしながら尻窄みになる言葉に、彼女はもう一度 胸の内で繰り返した。
 ナニヨ、ソレ? と。

「いや、エミさんに会いたくなかったとか、そんなじゃなくて…」

 ますます不機嫌に見える彼女に、言い訳めいた言葉がだらだらと続けられる。
 対して、エミの思考は混迷しながらも、纏まり始めていた。

「…じゃあ、なに? おたく、なんにも考えてなかった、ってワケ?」

 口にしてみて、それが事実そのものなのだろうと気が付いた。

 改めて考えてみれば、5年先から来たとしてもそれでも横島は17〜8歳の筈なのだ。
 霊能者の家系じゃない事を考えれば、その能力は十二分に過ぎると言える。 …のだが、だからと言ってその中身まで大人だったとは限らない。 と言うか、裕福な一般家庭に育ったのであれば、大人と呼べるだけの中身を持っている事の方が少なかろう。

「へ? えっと…」

「ちょっと黙んなさい」

 すげなく切り返されて、横島は口を噤んだ。

 そんな彼をよそに、エミはもう一度今までの事を思い返し、今日知った事実と突き合わせてみた。

 出逢った時。
 確かにあの時の横島は、エミの事を誰かと認識出来ていなかったかも知れない。
 自身 起きてしまった状況に手一杯で一々観察していた訳ではないから、間違いなくとは言い切れないが。

 彼が東京に出て来てから。
 それから先は良く覚えている。 その中で…

 『美神』。

 不意に、好ましくない顔と共に思い浮かぶ。

 …あぁそうだ。
 美神令子絡みなど、考えてみれば不審な行動しか横島は取っていない。

 腫れ物に触るようでいて、なのにすっとその中へ違和感無く収まっている。
 最初、あれだけ嫌悪感を向けられていたのだ。 なのに気が付いた時には、なんだかんだで打ち解けていたのである。
 それがどこか悔しくて、エミは余計に美神にいい感じを持てなかったし、それが故に横島を間に挟んでの関係が成立していたのだ。

 それに呼び方の事が有る。

 横島は、美神を『美神さん』と呼ぶ。 神父が、母親である美神美智恵と区別する為に、名前で呼び合おうと言い出してからも、ついついそう口に出し、今では仕方ないと皆慣れてしまった。

 だが、それは不自然なのだ。
 それまで聞いていた限りでは、美智恵の方とこそ先に会っていたのだし、彼女をこそ『美神さん』と認識していた方が自然なのだ。
 勿論、今となってみれば、そう呼んでしまう事は理解出来る。 先に出逢っていた『美神』が『美神令子』なら、逆にソレこそが当然だろう。

 ふっと、その視線を居辛そうに黙り込んでいる横島へと向ける。
 びくっとして見せた怯えに、ちょっと腹が立った。

「なら、私は どうなワケ?」

 そう言ってエミは、やおら目の前の自分より小さな身体をキツく抱き締めた。

「えっ? なにゅぅおあぅぅ…」

「私の事はどう考えていたのよ? 『今の私』の事は」

「柔らか…じゃなくて、えっと、いやその、あふぅ〜ん」

 身長差から頭を掻き抱く様な形になっているのだ、 横島にしてみれば、顔に当たる胸が気になって、ナニも考えられない。

 なにせ、今のエミはまだ中学生で。 しかも家族にも近い付き合いをして来た『百合子が良く知っている少女』なのだ。
 歳からすれば充分以上なボリュームに、だが湧き上がる煩悩を暴走させる訳にもいかない。 自身のアイデンティティーを崩壊させかねない事もある。 それより何より、先に待ち構えているだろう折檻と言う名の恐怖が意識を縛りつけてもいた。

 そんな悶々としている彼を認識した上で、エミはそのまま自身の思考の内へと戻る。

 今までの行動に、今日知った事を何がなんでも隠そうと言う意図は見えない。
 気持ちを落ち着けて顧みれば、横島は騙して物事を都合いい様に変えようとか、そんな事は考えもしなかったのではないかと思える。 今さっき口にした、エミと出逢った時の事が行き当りばったりの結果でしかないと取れる言葉も、まるっきりの嘘だなどとは思えない。
 いや、恐らくこれまでの事 全てが行き当りばったりだったのだろうと、そう考えた方が自分の中ですっきりと来る。

 …そうあって欲しい、と言う願望が有るのも事実だが。

「忠夫…」

「な、なんすか?」

「おたく、『前の私』とはどんな関係だったの?」

 緩み掛けた顔を必死に堪えようとして失敗している横島に、考える材料が欲しくて尋ね掛ける。
 腕は解かないまま。 これは罰なのだから。
 …もし変な暴走をした時には、折檻した上で帰ってから百合子に言い付ける、当然。

 そんな幸せな地獄の中で、横島はぽつりぽつりと語り始める。

「その、そもそもは高2になってからだから、俺にとっては ほんの1年くらいの事なんすけど…
 ウチの親どもが外国……それもナルニアなんつー僻地に行く事になって。 それが嫌で日本に残ろうとしたら、最低限の事しかしてやれないっつーて。
 で、ホントに最低限の金しか出しやがらなかったんで、バイト探さなきゃなんなくなって、美神さんの事務所に入ったんすよ」

「事務所って…
 ナニ? 令子の奴、二十歳そこそこでGSとして独り立ちしてたワケ?」

 指折るまでもなく判った年齢は、しかしこの業界でも個人開業するには充分若い。
 今の自分を考えても、5年後に独立出来ているかと言われると、ムリでは無いが けして容易でもないと思う。

「一流どころで、億単位の仕事をバンバンしてたっすよ。 エミさんたちもだけど」

「えっ、私も?
 …まさか、一緒にってコト?」

 意外な言葉に、飛んだ発想が声音を苦いものに変える。

「ああ、そうじゃなくて…
 それぞれ別々に事務所持ってて、ライバル関係で」

 返された答は、それならそれで納得出来る。
 だって『今の自分』と『この横島』の出逢いが偶然だったのなら、『そちらで』美神と轡を並べて神父の下に居た筈も無いからだ。

「じゃあ、ナニ? おたくと私って…」

「一度、美神さんに呪いを掛ける為に引き抜かれた事もあったけど、仕事で偶に搗ち合うくらいの知り合いで」

 一瞬走った腕の震えの意味に気付かぬまま、横島は淡々と答えた。

「…そう、なんだ…」

 大して深い関係で無かったと言う事実が、胸をチクリと刺す。 だがその事実が、更に奥の荒立ったモノを穏やかに鎮めていく。

「その、エミさん? そろそろ…」

 そんなトボケた言葉に、もう一度腕に力を篭める。

「のわっ、ちょ…」

「ねぇ?」

「ふへ、はいぃ?」

 葛藤を顔と声とに出した横島に、再び同じ問いを掛ける。

「忠夫って『今の私』の事は、どう思っているの?」

 返された言葉に、この年下の『年上の青年』が、愛すべき莫迦だと再認識出来て、エミの心はようやく晴れた。




 【つづく】



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 1〜18は、投稿作品紹介のページに各話へのリンクページを作って頂けてますんで、そちらを見て頂ければ(__)



……ぽすとすくりぷつ……

 まずは、ごめんなさい(__)
 一体どれだけの時間を空ければ気が済むのやら。

 って言うか、いまだ納得出来ていなかったり… orz
 エミが、こうね、どうにもしっくりこなくてねぇ。 ここに至ってもまだ、そうなままなんですよね(苦笑)
 まぁ、色々あちこちからコールも有ったんで、そいでも とにかく出してみたんだったり(__)

 ともあれ前々からの宣言通り、次でとりあえずお終いでし(__)

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