「……ともかく、皆本はんが
ウチらをお嫁さんにしてくれるって
わかっただけでも朗報やな」
ちょっとした騒動が終わった後で、つぶやく葵。
その『騒動』とは、薫の『お義母さん』発言・皆本の対応・紫穂のツッコミで構成されたもの。
たわいない一場面ではあったが、これで葵たちは、『三人のうち一人とは結婚するつもり』という言質をとった気分になっていた。
「そうだな……」
「なんや、薫?
ノリが悪いやんか。
三人一緒じゃないと嫌なんやろうけど、
でも、こればっかりは……」
葵は、薫に声をかけながら、その肩をポンと叩く。いつもほどノリノリではない彼女を心配したのだが、そんな二人に、背後から別の言葉が投げかけられた。
「大丈夫よ」
振り向いた葵が目にしたのは、ソファーに座っている紫穂。
紫穂は、ポッキーを食べながら、何かの本を読んでいる。
「皆本さんを外道にせずとも……。
三人で一緒に、
皆本さんのお母さんを
『お
義母さん』って呼べる日が来るわ」
手にした本から視線を逸らさないまま、話を続ける紫穂。
「ホンマ!?」
「ホント!?」
「ええ!
だから私にまかせて」
葵だけでなく薫も目を輝かせるのだが、二人とは別の意味で、紫穂の目もキラリと光っていた。
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そして。
時は流れて……。
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「おめでとう!」
「おめでとー」
「おめでとー」
「おめでとう!」
親族・同僚・友人・知人などから祝福される新郎新婦。
しかし、その『祝福』の声に少しぎこちなさも混じっているのは、事情を知る者も混じっているからであろうか。
新婦は、それを誰よりも理解しているはずだった。なにしろ、新婦はサイコメトラーなのだから。
そして、新婦の親友である二人は……。
「なんで……?
なんで紫穂ひとりが皆本と結婚できて……」
「……ウチらは皆本家の『養女』なんや!?」
参列客の中で涙を流していた。
二人は、あのとき紫穂が読んでいたのが漫画本だったことを知らない。その内容も、あまり詳しくは知らなかった。
だから、『その漫画ではヒロインの一人が養父母に対して「お養父さんお養母さん」と言ったり「お
義父さんお
義母さん」と言ったりしている』ことも、知らなかったのである……。
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