元カンザス州警察捜査官、ケン・マクガイア中尉は危機に瀕していた。
彼の周囲には武装したテロリストグループ。
迎え撃つべき武器は拳銃一丁のみ。
チームのオフェンスを担当しているメアリーとは、敵の巧妙な罠により分断されていた。
―――――― unlimited ――――――
「いい加減、観念したらどうだね。mutant【突然変異体】・・・・・・」
侮蔑以外の何ものでもない呼びかけに、ケンの内部にどす黒い怒りが湧き上がる。
彼を包囲しているのは普通の人々・・・・・ただしコメリカ版の。
ハンバーガーとバーベキューしか食べず、夜寝る時は裸にGパン。
ホームランが打ちたかったら薬物とコルクバット使い、枕元に銃が無いと安眠できないごく普通のコメリカ人。
そんな彼らが持ち前の差別意識をむき出しにしてエスパーを弾圧する。
彼らの今回の標的は、直接の戦闘力を持たないケンだった。
「ハッ! お前の力なら分かるだろう? 周囲にはあの忌まわしい女やジジイもいない・・・・・・さあ、どうする?」
猫が鼠をいたぶるような物言い。
しかし、偽の情報に踊らされ、敵のまっただ中に飛び込んでしまった己の迂闊さをケンは悔やんではいない。
弱きものの助けを求める声。
それに応えた自分の行動に彼は心から満足していた。
――― 今回はたまたまソレが街ぐるみの芝居だっただけだ。
彼は自身の中に湧き上がる怒りを熟成させながら、唯一の武器となった拳銃に視線を落とす。
それはカンザスの警官時代から生死を共にしてきた頼りになる相棒だった。
「おいおい、まさか自分に向けて使う気じゃないだろうな?」
リーダーらしき男の発言にどっと受ける周囲の人々。
エスパー排斥にかこつけたリンチを楽しもうとするその姿に、ケンはこめかみに血管が浮かび上がるのを感じる。
―――― オーケイ。お前たちがその気なら俺も遠慮はしない。
ケンはゆらりと立ち上がると、倉庫の扉に向かい歩いていく。
彼を奇妙な果実として吊そうとする集団は、一切の抵抗を諦めた様に見えるその姿に欲情にも似た表情を浮かべていた。
「どうした? 化け物! 手の中のソレはただの飾りかい!?」
「ははっ、たったソレだけの武器じゃ、抵抗も出来ないもんな!」
「撃ってみろよ! 化け物! 弾が切れた途端に蜂の巣にしてやるけどな」
口々に囃し立てる普通の人々。
ケンはその声に臆することなく、胸を張ってこう宣言する。
「無駄な抵抗はやめて大人しく逮捕されろ。君たちには弁護士を呼ぶ権利と、黙秘する権利がある」
それは元警官である彼の矜持が言わせたものか?
一瞬の沈黙の後、包囲していた武装グループから返ってきたのは爆笑の嵐。
しかし、ケンはそんなものは何処吹く風と、片時も外したことのないサングラスに手をかけた。
「!!・・・・・・ま、まさか」
サングラスの下に隠されていたケンの目が露わになる。
その視線に射抜かれたテロリストたちからは余裕の笑みが消えていた。
「そのまさかだよ・・・・・・」
長年の相棒である拳銃の撃鉄を引き起こしながらケンがニヤリと笑う。
彼の内部では、正義の怒りが臨界点に達していた。
そして――――
「逮捕だ! 逮捕だ! 逮捕だ! 逮捕だ! 逮捕だ! 逮捕だ! 逮捕だ! 逮捕だ! 逮捕だ! 逮捕だ! 逮捕だ! 逮捕だ―――ッ!!」
手足をばたつかせ、手に持った拳銃を乱射しながらテロリストグループに突進していくケン。
因みに鼻の穴”は”つながっていない。
無限に発射されるピストルと ―――
∞ ――― な彼の双眸に、テロリストグループは為す術もなく壊滅するのであった。
―――――― ∞(unlimited)――――――
終
これでいいのか?orz
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