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褐色の悪魔

「「「ぎゃああぁぁぁぁぁ!!!!」」」






チルドレン3人の凄まじい叫び声が、午後3時過ぎの街に響き渡る。



突然の絶叫に、電線の上のカラスは慌てて飛び去り、うたた寝していた野良猫は飛び上がり、散歩中の犬は吠え、その飼い主はギョッ、と目を見開き、叫び声の聞こえてきた目の前のマンションを見上げた。





そして、3人が叫んだ原因と言うと、チルドレンのリアクションを見てニヤリと笑った。(様な気がした)

そして、羽を広げ身の毛がよだつような羽音を、打って変わって静まり返った部屋に響かせ、飛翔、壁に移動する。





超能力対策とか色々施したのにもかかわらず、そとに響き渡ったその声自体が凄まじい。

しかし、何よりも3人にそれだけの声を出させたそいつは、もっと凄まじかった。






そのことを今の3人が知れるわけもない。





そんなわけで、話は2時間程前に遡る。








今日は任務がないと言うことなので、薫、葵、紫穂の3人は、自宅待機となった。



「あー、ヒマだぁ。何か面白い事無いのぉ〜?葵」

ソファーの上に寝そべり、テレビのチャンネルを替えながら、薫は振り向かずに背後にいる葵に訊いた。


葵は、テーブルについて本を読んでいた。背表紙には「恋愛必勝法〜憎き恋敵に勝つにはこれだ!〜」と書かれている。

(一体憎き恋敵って誰かしら)

と、反対側で座ってファッション誌を読んでいた紫穂が考えていたとは露ほども知らず、葵は視線を本からそらさずに答えた。


「ウチが知るわけ無いやん。何かおもろい番組、やってへんの?」

薫は、働いたら負けだと思っている感じに、ダラダラしながら答えた。

「無いから訊いてんじゃん。大体、今の時間何がやってるんだよ」


あいにく今日は祝日で、休みでも番組内容は平日と変わらない。

い○とも!はさっき終わったし、今やっているのは興味がわかないワイドショーや昼ドラだけだった。

「だから、ウチが知るわけ無いって言うてるやん!今集中してんねん、話しかけんとき!」

ピシャリと言うと、「えーっと、しつこいライバルにはこちらもじっくり………」

と、ブツブツ言いながら本に意識を戻した。


薫にも聞こえていたが、特に気にしなかった。

反対側で、テーブルを通して関接的に本の内容を透視していた紫穂は、かなり腹黒い顔をしていたが。


「はぁ、しょうがない。何か暇つぶしになるものでも買ってくるか」

薫が立ち上がる。すると、待っていましたと言わんばかりに、紫穂は本を閉じると、薫の元へ歩み寄る。

「私もいくわ。葵ちゃんも行くでしょ?」

紫穂が訊くと、葵は本を閉じ、テーブルの上に置く。

「仕方ないなぁ。うちも行ったるわ」

「よし、決まりね」

そう言って、3人は家を出ていった。


ところで、この日は9月下旬の残暑が厳しい日だった。

そして、「電気代がかかるから」と、皆本から言われていた3人は、言うことを聞いて窓を開けるだけにした。

そして…………開けっ放しで出かけてしまったのである。


そんな窓から、皆本宅に侵入した姿が1つ。

それは、テーブルの中央に降り立つと、辺りを見回すように少し動き、やがて隠れるように、ソファーのしたに潜っていった。








3人は、たっぷり、二時間程買い物などを楽しんできた。

薫は、レンタルショップでDVDを借りてきて、葵と紫穂は本屋で本を買ってきた。


紫穂が買った本が、「恋愛必勝法〜憎き恋敵に勝つにはこれだ!〜」だと言うことは、言うまでもない。

ついでに、と、3人は、お菓子を大量に買ってきた。

それを、家に帰りすぐさまテーブルに広げる。

それを食べながら、薫はDVDを見て、葵と紫穂は「恋愛必勝法」を読んでいた。


ちょうど、DVDの映画も終盤に突入し、葵と紫穂の腹の探り合いも膠着状態になっていたところ、奴が姿を現した。

薫もテーブルについついたので、ソファーの下から出てきた奴をハッキリ目視できた。


そいつが、3人が食べていたポテチの袋に乗った。






そして、冒頭の部分に戻る。




「ゴ、ゴ、ゴ、ゴキ…ムガッ!」

薫の口を紫穂の手が塞ぐ。

「それ以上言っちゃダメ!言ったら私」

「分かった!分かったから」

涙目で紫穂が言うので、薫は仕方なく、コードネームをつけることにした。


「おい!『G』!お前、どこから出てきた!」


『G』とはまたベタな、と言いたいが、今の3人は半狂乱状態なので、仕方ないと言える。

特に紫穂は、凄まじく拒否反応を示して、薫に抱きついている。

(あ、こういうシチュも良いかも)と少し思いながら、葵に言う。

「葵!テレポートで外に出せないのか?」

しかし、葵ももう限界と言う感じだった。

「さっきから一生懸命やってんねん。せやけど、こいつ直視しても焦点が合わへん」

確かに、『G』の周りの空間は歪んでいるが、一向にテレポートする様子ではない。




「くっそお!念動ぅぅぅぅ!」


薫が、両手にサイコキネシスを込める。




それを、全力で、『G』に向け放つ!


「『G』潰し!」

強力な衝撃が『G』とその周囲を押し潰す……筈だったのだが、何と『G』だけが、無傷でそこにいた。


「な、なんで!?」


すると、『G』は再び羽を広げ、今度は薫の顔目掛け飛んで来る。


「わぁぁぁぁぁぁぁっ!」

思わずうずくまり、『G』の攻撃(?)をかわす。そのまま、『G』は開きっぱなしのドアの近くに着陸する。



「この………」

掌を標的に向けるが、いきなり非効率的に力を使ったので、もう力が入らなかった。リミッターがかかっているから、尚更だ。


葵も紫穂も、力の使いすぎと極度の恐怖でダウンしている。


(もう…ダメなのか?………)


そう思ったそのとき、




「ただいま……ってなんだこりゃあ!?」

皆本が、帰って来た。



しかし




グチャッ






皆本が、スリッパで潰した。












その後、皆本に部屋をぐちゃぐちゃにした理由とかを説明するのに、約一時間を要した。


「それは……興味深いな……」


意外にも、皆本は『G』に興味を示した。

「薫のサイコキネシスや、葵のテレポートにびくともしないなんて………」


やはり、何かあるようだ。


「紫穂、悪いけど…」

「イヤ!イヤよ!絶対イヤ!」


紫穂は激しく嫌がったが、30分、皆本の必死の説得により、1日デートで手を打った。



恐る恐る、紫穂はスリッパを触る。


「これは………!」







どうやら、澪のイタズラだったらしい。
澪が、仲間のエスパーに強化(テレポートの変形により、テレポートを封じ、空間固定でサイコキネシスを中和したり)したやつを、飛ばしたらしかった。皆本が帰って来たのは、ちょうど効果が切れたときらしい。








翌日、「ザ・チルドレンに関する懸案事項666号」は、「天使」のパーセンテージが大きく増加したらしい。





終わり
初めまして。桜咲火雛と申します。

最初の作品はややコメディチックになったようです(汗

絶チルっぽくなかったかもしれせん。誤字脱字があるかもしれません。精進します。


さて、補足をちょっと。


まず、薫が見ていた映画ですが、一応アクションにしようと決めていました。が、ストーリーにあまり関わりないので、省略した次第です。


次に、葵達が読んでいた本ですが、これはチルドレン達が読む本と言えば、と考えて真っ先に思いついたタイプの本です。タイトルは、14巻の「そのとおりになるのです帳」で葵と紫穂が心理戦を展開していたので、こんなのどうだろう、と思ってつけました。


まだまだ未熟者なので、アドバイスなど頂ければ幸いです。

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