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ひかりのみち 2


 パウッ イイイィィィン
 洞窟の南側で、ピート、横島、冥子の3人は扇状に展開して霊波を放出している。
(冥子さん・・・)
 ピートは先ほどの冥子の言葉を反芻した。
『私はいいから〜〜横島クンを〜〜・・・』
(・・・・・・)
『・・・送り届けてね〜〜』
(・・・・・・)
 横島を見る。彼は霊波を放出しながら、かたわらの幽霊と何か話している。
「・・・でも・・・横島さん・・・」
「・・・だって・・・おキヌちゃんだって・・・」
(・・・・・・)
『・・・連れてってあげて頂戴〜〜』
(なぜ・・・そんなにあっさり言えるんだ・・・)
 はじめから終わりまで、冥子は意志を翻さなかった。一度も逃げるとは言わないのだ。・・・それがどんなに迷惑でも。どうでも自分もみんなと一緒に行くのだと言い続ける。
(まだ20歳ぐらいのはず・・・ただでさえ短い人の身で・・・)
『冥子も行く〜〜っ』
 それがどんなことだかわかっているのだろうか。引き止めつつ、暴走の衝動を手に感じつつ、必死でなだめつつ、誰が呼んだんだこの人と思いつつ、それでもどこかで、なにか敬意を覚えずにはいられなかった。
『令子ちゃん、令子ちゃん〜〜っ』
 羽交い絞めにした肩の細さ・・・
(・・・あの細い身体のどこに、そんな強さが・・・)
『行ってくるわね』
 エミさん、エミさんも。
『精霊石よ!!私に力を貸せ!!』
(先生・・・!)
 あの人もいつも。いつもいつも。いつか尋ねた。どうして・・・
『どうしてそんなに強いんですか?』
『私が強いわけじゃないよ。この世界を構成する、もっと大きな存在の力を借りるんだ』
(僕はそれが知りたくて・・・あの島を出て・・・あの人に・・・)
「ピート」
 横島が隣へ来て、ささやいた。
「はい、なんでしょう」
「結界の穴が見つかったらさ、俺はいいから、冥子ちゃんを頼む」
 ・・・・・・
「何ですって?」
「冥子ちゃんを頼む」
 横島は繰り返し、頬をかいた。
「俺は美神さんとこへ戻るよ」
「・・・・・・」
「お前戻ってこなくていいから。外で待っててくれ」
「・・・・・・」
「冥子ちゃん、ちゃんと安全なところへ送り届けてくれよな。でないと俺」
 横島は眉をよせて、苦笑ぎみに笑った。
「俺、美神さんにドヤされるから・・・」
「・・・・・・・・」
 ピートは横島を見、その後ろでふわふわ浮いているおキヌを見た。おキヌは横島の言葉に、少し涙ぐんでいるようだったが、何も言わず、ピートに向かって微笑んだ。
 返事が出来ないうち、横島は結界の隙の探索に戻った。ピートも霊波の放出を再開したが、直後、
「!」
 同様に、冥子も、横島も気づいたらしい。
「あった!」
 紛れもない、霊波の抜ける手ごたえ、
「結界の穴だ!」
 二人は同時に振り返り、
「ピート〜〜、横島クンを〜〜!」
「ピート、冥子ちゃんを!」
 叫んで、・・・顔を見合わせる。
 ・・・・・・・・・。
「・・・ピート」
 二人に名を呼ばれ、もの問いたげな視線を向けられて、ピートは目を伏せ、うつむいた。
 ・・・こみあげる感情を抑えるために、貴重な2秒を使う。そして顔をあげて、にっこり笑った。
「わかりました。みんなで行きましょう」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「戻りましょう。美神さんやエミさんたちのところへ」
 あと8分?7分ぐらいか。それでもきっと、
「走れば間に合います。急ぎましょう!」
 言葉はもう、それで十分だった。力強くうなずくと、横島は駆け出した。おキヌが後を追い、それを追って冥子も駆け出す。
(先生・・・)
 しんがりを駆けながら、ピートは心で呼びかけた。
(僕はわかりました。先生)
『・・・どうしてそんなに強いんですか?』
 答えはたぶん今、目の前にある。それを守る力を、
(どうか僕に・・・!)
 洞窟の向こうに薄明かりが見える。駆け込む仲間たちの影が、光に溶ける。その背を追いかけてピートの姿も、光の中へ消えていった。
全2話完結です。
GS美神の二次創作を発表するのはこの話がはじめてです。
何か不都合あればお許し下さい。
・・・もしかしてこちらは絶チルの企画祭り中でした
でしょうか?お邪魔してしまったのならすみません・・・

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