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【夏企画】誘惑、おキヌちゃん

<<SIDE:タマモ>>


おキヌちゃんから、突然のお願い。

――明日ね? 横島さんとお出かけするの。
   だから……

だから、それに着ていくための格好が、おかしくないか見てみてくれない? って。



「ねぇ……まだー?」

「もーちょっとー」



だから、今こーやって。
私とおキヌちゃんだけの、小さな小さなファッションショー。

……でもねぇ。
自慢じゃないけど、私は流行とか、今の世の中の事に関しては疎い。
なんせ”産まれたて”――転生したてなんだしね。
だから、私の意見なんか参考になんかならないだろうに……
大体、おキヌちゃんは、美人なのだから、何着ても似合うに決まってる。
従ってこの私なんかが、意見する事なんか何にもないのよ。

まぁ、本音はめどかっただけなんだけどね。
でも、おキヌちゃんには色々と、お世話になってるから、断るなんて出来ないし……
何より、あのおキヌちゃんが、あの横島とデートだってんだからねぇ……しゃーないわ。
ここは一発気合いを入れて、バッチリとコーディネイトしてあげましょう。
オトコどもを骨抜きにした、前世・傾国の魔物のセンスをみせてあげるわ! 殆ど何にも覚えてないけど!!

なーんて、ひとりメラメラと燃えてたところに、着替えたおキヌちゃんよーやく登場。
けれど、その格好は、私の予想をぶッちぎって……

[illust1]



「えと……これ、どうかな、タマモちゃん?」

「……ん、んな――っ!?」



恥ずかしそうに。嬉しそうに。
ほんのりとほっぺたをピンクに染めて、くるりとゆっくり一回転。

”勝負服”とやらに身を包んだ、そんなおキヌちゃんを前にして、私はただただ絶句した。
てか、そーするしか出来なかった。



「え……これ、なんかへンですか?
 私、一生懸命こーでぃねーとしたんですけど……」

「いやいやいや! それはちょっと……」



だって、真っ白な短パンは、あのバカイヌがいつもはいてるカットオフのジーンズより、ずーっと短くて際どいの。
フトモモ、付け根まで丸見えだし。



「あ、これ卸したてなんですよー♪」

「え、や、そーゆーことじゃなくってさぁ……
 そんな短いんじゃ、ショーツとかハミ出しちゃうじゃ……」

「大丈夫。
 そんな事はありえませんから♪」

「……そ、それって、はみ出さない位小さいの履いてるって事!?」

「うふふー♪
 それは秘密です」



ピンク色のキャミソールなんか、もっとすごい。
どっちかというと小柄なおキヌちゃんが着ていても、なんだかちょっと窮屈そう。
肩は全開。髪の毛も上げて、うなじもバッチリ見えちゃってるから、益々小さくみえちゃってる。



「えと、サイズはぴったりですよ?」

「や、肩もお臍も丸出しじゃないの!?
 てかそれ、上から覗くとブラとかばっちり見えちゃうんじゃない?」

「えーとね?
 その、これで中にブラ着けてるとかえって目立っちゃうから……あの」

「ぇ、ぁ、え、ええええええっ!?」



……まさか 着 け て な い なんて……
それってつまりそのキャミが、ほんの数センチずれただけでも、胸の先っぽのサクランボが、丸見えになっちゃうって事じゃないの!?

……はっ!?
ってゆー事は、下の方もそーだったり? 
下着がはみ出したりしないって、それつまり最初っから履いてないから!?
だって無いモノは見えないもの!



「どーかしら?
 悪くないと思うんだけど……」



いつもの美神さんよりも、露出が激しいかもしれない。
もはや、着ているっていうよりも、身体に布が引っかかってる。

なんだか、そう言った方が合ってる気がする、おキヌちゃんの勝負服。



「ぅ、うーん……これはちょっと……」

「えー?
 おかしいかなぁ?」

「ヘンってワケじゃないんだけど……」



いや、確かに似合ってはいるし。
同じ女の私から見ても、可愛いとは思うんだけど……

流石に、ねぇ?



「おキヌちゃん、いつからそんな露出きょ……見せたがりになったのよ?
 美神さんじゃあるまいし」

「あ、それは大丈夫ですよ?
 タマモちゃんが言ったみたいに、これ上も下も近くにきて覗き込まないと、中見えないように出来てますから。
 ほら、ね?」

「ぁ、や、ちょっと!?」



おキヌちゃんはそう言って、ぐいっと私と腕を組んだ。
……うーん確かに、見えそうで見えない。
ってか、大事な所が見えなきゃOKって、そーゆーワケでもないと思うんだけど……

だけど、それって逆に言うと、おキヌちゃんのすぐ傍に
今みたくぴとっと身体をくっつけて、腕組んじゃったりする相手には……

お出かけの相手の横島には、覗き放題の見放題って、そーゆー事になるんじゃないの?

それって……



「さすがに……ちょっとカゲキすぎない?」

「えー……そうですかねー?」



どっかヘンな所もある、普通じゃない所もあるって、それはちゃんと知っている……
だけど、おキヌちゃんといえば、清純派の代名詞、事務所メンバー最後の良心。
それがこんなえろえろーんな……それも、横島とのデートで、なんて。
いったいどーしちゃったのよー!? ちょっと、パニック気味な私……

けど



「でも……まぁ、しょうがないですよねー?」

「はぁ?
 ナニが仕方ないってのよ?」

「だって夏ですもん」

「なっ……」



あぁ、なるほど、そっかそっか。
そーゆー事だったのね〜……って。

どこか、決意を感じさせるおキヌちゃんの表情を見て。
初デートだからってだけじゃない、気合いの入った彼女を見て。

私は、よーやく解った気がした。
すとーんと、腑に落ちたってゆーやつ。



「夏ですもん、暑いんですもん。
 薄着になるのは”あたりまえ”なんです。
 だから……」



だから、あっちこっちから色々と、ナニやら見えちゃったりしても。
それを見ちゃった横島が、こーむらむらーっときちゃったりしても。

挙句、とんでもない”間違い”がおこっちゃったりなんかしても。

それは……



「”仕方ない”……ですよね?」

「……なるほどね」



つまりはそーゆー事なのね。
露出過多なその格好は単なるアピールってだけでなくて 『OKですよ?』 のサインなわけで。
鈍いんだか鋭いんだか、よく解らない横島への、控えめ……でもない、お誘いなのね。

なるほど、それなら納得がいくわ。
これは確かに”勝負服”よ。



「……それで、どーですか? コレ……」

「そーゆー事なら……
 いいんじゃない?」



私、横島さんならいいです……いーえ、寧ろ望む所! ばっちこーいってなもんですよ!!
……そんなどこかテンパったみたいな、おキヌちゃんの心の叫びが確かに聞こえたよーな気がした。

そこまで腹を決めちゃってるなら、これはもー何を言ってもムダでしょー。
賛成する以外ないじゃない。

とゆーか、それなら最初から私なんかに意見を求める事ないのに……とも思うんだけど。
でもまぁ、なんとゆーかそこら辺は複雑な乙女心とかゆーヤツで。



「えへへ、やっぱりタマモちゃんに見てもらってよかった♪」

「いえいえ、どーいたしまして」



いくら自分ひとりでは、覚悟完了したつもりでも。
誰かに『それでいいよ』って、言って欲しかったんでしょうね。

ん〜……なんか、カワイイかも♪



「あ、それとね……」

「わかってる……美神さんとバカイヌには、内緒にしといてあげるから……
 がんばってね、おキヌちゃん」

「うん……ありがとう♪」



そう言うおキヌちゃんのにっこり笑顔は
見てるこっちまであたたかくなれる、ひまわりを思わせるよーな、とっても明るいものだった。






おしまい
あの過激な装いの裏には、彼女のこんな思惑が……
はっかい。様の『【夏企画】夏のお嬢さん(マテ (GS)』イラストより、電波受信のお話です。
こちらから→ http://gtyplus.main.jp/cgi-bin/gazou/ecobbs.cgi?topic=0120

『夏だから薄着になるのは当然で、だからそれで見られちゃうのは仕方ないですよね♪』
みたいな感じで、女の子らしい可愛らしい”いやらしさ”が描ければなぁ……
と思ってたんですが、なんかおかしくなっちゃいました……orz

こんなんですが、突っ込み・ご指摘など、いただけると幸いです。

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