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【夏企画】―初めて出会ったあの日から―

ミーンミン、ミーンミン、ジュワジュワジュワジュワ、

「おキヌちゃんの来たかった所ってここ?」

「はい、私が初めて横島さんと出会ったところですから」

白いワンピースに麦藁帽を被ったおキヌは横島の腰に回していた手を解いて真夏の太陽に熱しられたアスファルトに降り立った。










―初めて出会ったあの日から―
   提供 氷砂糖









荷台に折った座布団を縛り付けた日陰に立掛けると横島は日の当る場所とは逆に冷たい壁に背中を押し当てた。

「はい横島さん、お疲れ様です」

ここに来るまでの道筋で買ったペットボトルのお茶をおキヌは横島に手渡した。その際横島とおキヌの指が触れ合い、それに気付いたおキ

ヌが顔を赤くして横島を上目遣いで見るのだが、横島はまったく気にすることもなく「プハァ!」と美味そうにお茶を飲み干したのを見て

おキヌは頬を膨らませるのだった。

「いや〜運動した後の冷えた茶は美味い!っておキヌちゃん機嫌悪くない?」

「そんな事ないですよ〜だ!」

「そ、そう?」

いや、むしろそんな事ないのは傍から見ても丸分かりなのだが、横島は虎の尾を踏むのが嫌なのかそれ以上踏み込もうとはしなかった。

「そういえばおキヌちゃんが飛び出してきたのはあの角だったなあ!」

そう言って陰から出て行き、曲がり角の方へと向かっていく横島に、おキヌは先程の機嫌の悪さも何処へやら。ムクムクと湧き上がってく

る悪戯心を抑えるどころか、ついやっちゃえと行動に出ることにした。

「えい!」

「わ!?」

背後からドンッとおキヌに押された横島はまったく警戒していなかったのもあり背中から地面に倒れこんだ。

「大丈夫ですかっ!?おケガはっ!?私ったらドジで…」

始めのうちは突然の事で目を白黒させていた横島だが、おキヌの悪戯っぽい表情と憶えのある台詞に直ぐにあの日の再現だと気付き、すぐ

さま横島もおキヌの企みにのった。

「今「えいっ」といわんかったかっ!?コラッ!!」

あの日の焼き直しそのまま、腕を引っ張り起こされた横島はそのままおキヌを真剣な目で見つめた後、堪えきれなくなったかのように顔に

笑みを浮かべる。

「大丈夫っ!?ケガはないっ!?俺ってドジで…」

「うっ!?今のショックで持病のシャクが…!!」

演技を続ける二人はまったく同じ笑顔を浮かべ、楽しそうに演技を続ける。

「ちょうどそこに薬が…取ってきていただけます?」

「へ!?」

「お願い…薬を…」

「い、いやしかし…こんなアホな…」

当然おキヌが指差すほうにネオンきらめく台座に置かれた玉露丸はないのだが、横島がさもそこにあるかのように慄いているのを見ておキ

ヌはもう一度クスリと笑う。

「大丈夫!!あやしくなんかないです!!」

「思いきりあやしいわいっ!!」

完全に演技にのめりこんで行く二人は笑いもせず、ただし心の中では物凄く楽しんであの日を再現していく。

「じゃ、せめてちょっとの間ここに立つだけでも…」

「わけのわからんことを…」

一歩、二歩、三歩、あの日は浮遊して詰めた距離を、今は自分の足で地面をしっかりと踏みしめて詰めていき、

「お願いっ!!」

「やりましょう!!」

横島の胸に頭を預け、背中に手を回した。









ミーンミン、ミーンミン、ジュワジュワジュワジュワ、











横島はおキヌが背中に回したてを外したら演技の続きをしようと思っていたのだが、いつまでも自分から離れようとしないおキヌに心拍数をじょじょに上げられていく。

「お、おキヌちゃん?」

突然止まった演技に横島が困惑気味におキヌに話しかければ、おキヌはピクリと僅かに身じろぎすると長い髪から覗く耳まで赤くして、ギュっと横島の服を握り。

「好きです、大好きです!多分初めて出会ったあの日から」

夏の熱い日差しの中、おキヌの告白は山々に響いた。
どうも氷砂糖です。
私を覚えている人はいるのだろうか?いたらいいなぁ
夏企画ということでこれは書かねば!と思い書かせていただきました。また甘い話になりましたが作者の病気が出たと思って温かい眼で見てください。
楽しんでいただければ幸いです。

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