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触手せらぴー

<<SIDE:キヌ>>



湯気で、うっすらとぼやけた視界。

お風呂場の中はすごく熱くて、タオルが汗でぐしょぐしょに。
私も、身体の芯のほうから、かぁって火照ってきちゃってる。

なのに

――ぴちゃっ 



「んっ……」



鳥肌をたてて震える身体。
ぴくんっ 背筋が反り返る。

ぞわぞわとする感触。
身体に巻いたバスタオルが、もこもこと内側からうごくたび、全身ぞくぞく電気が走って……

濡れたタオルと、ハダカの素肌。
その間に潜り込んだ、まるでおおきなナメクジみたいな、何本もの触手のオバケ。

お腹や背中、わきの下。ふとももや、腕、指の間。髪を上げた首筋にまでするりするりと伸びてきて。
私のお肌の上をずりずり、ゆっくりとゆっくりと這いずり回る。

ぬるぬるしたり、ざらざらしたり。
ちゅうちゅう吸われて、ついばまれて……他にも色んな感触が、身体中のあちこちではじける。

――くちっ



「ぁ、は、きゃうっ!?」



そのたびに、びくびくと強張る全身。肌がかぁっと赤くなる。
もれ出る声を抑えられない。
お風呂場だから、きんきん響く。

いや、だめ。
ガマンしなきゃ。
こんなの、べつになんでもないもん。

でも、そうやって意識しちゃえばしちゃうほど、私の身体はビンカンになって。
刺激への、反応が大きくなってく。

――くちゅっ



「んぁ、ぁ、ぁうっ……」



触手のオバケがうねうねと、私の肌を撫でるたび、目の前にちかちか小さな火花。
びりびり身体が甘く痺れて、頭の芯が灼けるみたい。
身体中の毛穴が開いて、だらだら汗がとまらない。

あぁ、なんだか、とてもへん。
キモチ悪いのに、キモチいい。

私、もうダメかもしれない。

腰から、お膝から、力が抜けて
身体中がとろとろと まるで蕩けていくかのようで――



























「調子はどーですか? おキヌさん」

「ぁ、は、はい、魔鈴さん。だいじょうぶですよ〜」



あ。

私べつに、襲われてるワケじゃないですよー?
もちろん、え、えっちなコトしてるワケでもありません。

これはですね……魔鈴さんが、新しく考案したとゆー美容・健康法でして……



「ほ〜ら、おキヌさんどうですか?
 このコたちはこうやって、全身の皮ふを嘗め回して、古くなった角質とか、お肌から出る老廃物をキレイに食べてくれるんですよ♪」

「へ、へぇ……そ、そうなんで……ぁ、ひゃああっ!?」

「みてください。このコ達のおくち、細かい触手がみっちり生えてブラシみたいになってるでしょう?
 これでお肌を舐めて磨いてくれるんです。
 このお口でこうやって、ごしごしされるとですね、マッサージの効果もあって血行が……」



――ちゅるちゅるっ

しょ、『触手せらぴー』とゆーそうで。
つまり、魔鈴さんがどっからか召喚したこの触手のオバケ――見た目がちょっとアレですが『すごーくいいコなんですよー♪』だそうで――が……
こうやって私のお肌を磨いて、キレイに、健康にしてくれてる……と。

……名前とか、やり方とか、すんごくいかがわしいですけど……



「あ、あの……これ、本当に効果あるんですか?」

「おキヌさんは、ドクターフィッシュっていうのをご存じですか?
 温泉に住む珍しいお魚で、古くなったヒトの角質を食べるだなんて、変わった習性を持ってるんです。でも、それにはお肌の美容を保ったり、皮膚病の治療効果があったりして……
 『フィッシュセラピー』って、外国の方じゃ、ちゃーんと保険のきく治療行為って認められてる国もあるんですよ。
 つまり、それと同じ事……お肌をキレイにしてくれるのが、お魚か、触手ちゃんか、その違いってゆーだけです」

「へ、へぇ……ぁ、ひゃ!? 
 そ、そこはだめ! くすぐったいです! 
 あ、やっ……きゃははははっ!?」

「あ、ダメですよおキヌさん!
 ちゃんと開いて、身体から力を抜いてください。
 ソコは汗をかきやすくって、汚れが溜まりやすいんですから集中的にやらないと。
 見えない所こそキレイに、です」

「ひゃぁああああああああっ!?」



――ぶぢゅううううううううっ

びくびくっ 全身がケイレンした。
んん……い、いまのはかなりスゴかった……魔鈴さんとおしゃべりの方に、気をとられてちょっと油断。
ソコは私弱いのに。
力を抜いて、リラックス……なんて、とてもじゃないけど無理ですよう。

でも



「は、はぅぅ〜」

「ほら、まるで赤ちゃんのお肌みたいでしょう?
 こんなにつるつるのぷにぷになって♪」

「わ、ほ、ほんと! すごーい!!」



てかてか光ってお水を弾く、むきタマゴみたいなつやつやのお肌。
ピンクで、ふにふにやわらかになってて、自分でもビックリするくらい。

うん。
効果の方はバッチリみたい。お肌が確実に若返った感じ。
今、身をもって実感してます。
あーそっかー。魔鈴さんもきっとコレで、今の若さを維持してるんだ〜。

……ん、これならあのにぶちんな横島さんでも『キレイになったね』っていってくれるかも?



「あ、そーだおキヌさんついでに、『触手風呂』 のほーも試してゆかれませんか?
 湯船にこの触手ちゃん達を、なみなみミッチリと詰めこんで、そこに肩までどっぷり浸かって全身”てっかてか”にしてもらうとゆー……」

「さ、さすがにそれは遠慮します……」

「バストアップ用の吸引触手ちゃんもいますよ?」































「あら……
 おキヌちゃん……なんかキレイになった?」

「え、ぁ、そ、そんなことないですよ、美神さん」

「えー? だってお肌がこんな”てっかてか”になって……胸もなんだかふくらんでない?
 なんか、ヒミツがあるんでしょー?」

「そ……その……
 そ、それはナイショです♪」






おしまい
おキヌちゃんファンの方、すみません orz

以前こちらでみせていただいた、はっかい。さまの「バスタオルおキヌちゃん+触手」とゆー、お色気たっぷりなイラストより、電波受信したお話です。
しかし、あくまでもこれは『美容・健康法』のお話なので ”えっち” ではないはず。
因みに、魔鈴さんの言っているドクターフィッシュやフィッシュセラピーは実在のもので、此方の方もお話の元ネタになってます。

こんなんですが、突っ込み・ご指摘など、いただけると幸いです。

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