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ゴミ拾い

 男は毎日ゴミを拾った。
 家から歩いて数分の河原の沿道を歩きながら。

 目についた空き缶。
 心ない人の投棄した粗大ゴミ。
 タバコの燃えカス。

 どんなに疲れていても。
 どんなに忙しい時も。
 どんなに悲しい時も。
 男はゴミを拾い続けた。




 時として人は男の行動を称賛した。
 そんな時、男はちょっと困ったような顔をして苦笑した。




 淡々と流れる日々。
 いつしか男の巻いていた深紅のバンダナは色褪せ始め…
 まっすぐに伸びていた背筋も少しずつ曲がり始めていた。
 緩やかな時間の流れと共に、川は蘇ろうとしていた。




 ゴミを拾い始めて数十年目のある夜。
 男は一人で河原に立っていた。

 川のせせらぎだけが支配する空間。
 落ち着いた表情を浮かべながら男は河原の石に腰かけた。
 周りに飛び交う淡い光に目をやりながら静かにつぶやいた。

「また会えたな…」
お久しぶりです、ダヌです。
はじめての方ははじめましてです。
非常に短くて恐縮ですが楽しんで頂けると嬉しいです。
こんな再会の形はいかがでしょうか?

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