俺は……どーしたらいいんだろう?
給料が二ヶ月連続で間違っているなんて、美神さんらしくない。
さっきのピートの話じゃ『殺そうとする相手にはあえて贈り物をすることで警戒心を喪わせる』らしい。
思い当たる節は―― いかん、一杯ありすぎて、最早今更って感じになってきてる。
記憶はないが、平安京で何かあったのかも知れん。
ナニをやったんだッ?!ナニをやらかしちゃったんだ、俺ッ!!いや、俺に憑依してたヒャクメッ!?
……いかんいかん、落ち着け、俺。
そもそもヒャクメが何かやらかしたんなら、その分の迷惑料はしっかりその場で請求してるはず。
美神さんはそーゆー人だ。
第一、ヒャクメが何かやったんだったら、俺も被害者だ。
いくら美神さんとは言っても、そんな理不尽なことは―――――――― やっぱり考えるのが間違いだったな。
美神さんの過去の所行を思い起こし、ついつい鬱になった俺の眼に映ったのは、赤い鳥居。
へぇ……事務所の近くにこんなお社があったんだ。
今まで気付かなかったけど、気付いたのも何かの縁だ。
給料を貰ったばっかりだし、懐にも少しは余裕があるからな―― おみくじでも引いてみるか。
『大吉:
健康:日々健勝也 学業:焦らず励め 金運:身の丈に合うものは自然と獲る』
大吉ッ?!
し、信じられんッ!!
何か絶対揺り返しが来るんだ。俺の人生、いいことがあったらその分揺り返しがキツくなかったことなんて、一度もなかったぞッ!!
ちくしょう、神の奴めッ!!俺になんか恨みでもあるってのかッ?!
気分転換の心算が逆にダメージを食っちまったが、一応大吉は大吉だ。
おみくじをポケットに突っ込むと、俺は落ち着かないままに再び事務所への道を歩く。
それもこれも、理由がわからずにギャクタイが止むって異常事態のせいだ。
どーせなら、前のよーにギャクタイされてた方が……。
前のように、か。
やっぱり、何かが足りないんだよなぁ。
俺も妙神山の修行で強くなったことは強くなった。
だけど、修行の結果、文珠を使えるようになったとは言っても、やっぱり何かが足りない。
ギャクタイされるのがいいって訳じゃない―――― はずだけど、違うんだったら、何が足りないんだろうな?
いくら考えても答えが出ないその思いからぼうっとしたまま歩く俺は、横合いから近づく足音に気付かなかった。
「の゛わ゛っ…!?」
衝撃。
「きゃっ…!?」
そして、聞き覚えのある声。
「大丈夫ですかっ!? おケガはっ!?」
「てーなっ!! どこ見て歩いて―― え!?」
―――――― 時間が、止まった。
いくら考えても出なかった答えが、その瞬間に出たような気がした。
* * *
「み…美神さん…!
大変だ…!さっきそこでおキヌちゃんが―――― 」
あまりの驚きにおキヌちゃんとはぐれてしまったこともあって、急いで事務所に向かうことしか頭に残っていなかった俺は、気付いていなかった。
さっきのおみくじの『待ち人』には、『“苦難はあるが、必ず来る”』って書かれていた、ということを。
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