「貴様らの悪巧みもそこまでだ、覚悟しろ宇宙犯罪組織クマー!」
「おのれオニワバン! ええい、こうなったらクマー空間に引きずり込め!」
「クマッ! クマクマクマー(かけ声)」
「むむっ、かくなるうえは。ヨロイスーツ、装・着!」
日曜朝のテレビは、犬塚シロにとって非常に大事な時間となりつつあった。
スーパー英雄タイムと銘打たれたこの一時間は、特撮ヒーロー番組が二本立てで放映されている。
オカルトレンジャーと、宇宙侍オニワバン。
オカルトレンジャーも面白いのだが、それよりもシロの心を刺激して止まないのが、宇宙侍オニワバンであった。
宇宙の平和を守る銀河御庭番としての素性を隠し、地球で剣の道をきわめんと修行に励む主人公。
敵が現れれば銀のヨロイスーツに身を包み、コードネーム・オニワバンへと変身、愛剣サムライブレードで敵をなぎ倒す。
戦国時代の甲冑をそのままヒーローっぽくアレンジした銀の具足は、敵の刃を受け止め攻撃を跳ね返す。
武士の道を追い求めるシロにとって、いぶし銀の宇宙侍オニワバンはまさに理想そのもの。
そして今日も、シロは眼を輝かせてテレビにかじりつき、オニワバンの活躍に胸踊らせていた。
「ああっ……やはりカッコイイでござるよオニワバン」
番組が終わって興奮気味に振り返ると、美神除霊事務所に朝食を食べに来ていた横島が苦笑していた。
「お前も好きやなー。ま、このシリーズはガキの頃よく見てたけどな」
「先生も! やはりオニワバンはみんなの憧れでござるか」
「必殺技とかよく真似したもんだ。棒きれで構えて、とうっ! ってな」
「拙者も真似してるでござるよっ。オニワバン・だいなみっく!」
霊波刀を振りかざし、部屋の中で見栄を切るシロの後頭部を、誰かがこつんと突いた。
「部屋の中でチャンバラごっこしない。家具がこわれたらどうすんの」
慌てて振り返ると、そこにいたのは呆れ顔の令子。
「う、美神どの。申し訳ない」
「ヒーローの真似事なんかしなくても、同じような仕事してるでしょ」
「それはそうでござるが……こう、格好いいのでござるよっ。ピカッと光って変身とか、構えてズバッ、とか――!」
「はいはい、わかったから家の中では大人しくしてなさい」
それは日常の他愛もない一幕――で終わるはずだったのだが。
これがやがて、あの忌まわしい事件へ繋がるとは、誰が想像できたであろうか。
(――美神どのはああ言うものの、やはり憧れるものは憧れるでござるなあ。拙者にもオニワバンのようなヨロイスーツがあればっ)
ヒーロー熱冷めやらぬシロは、一人あれこれと模索していた。
ヨロイスーツが在れば、自分はもっと強くなれるはず。
まったく同じと言わないまでも、似たような戦闘服は存在しないのか。
あるとすれば、どこで手に入れるのか。
どうやって情報を得たらいいのか。
(そういえば、おキヌどのがよく読んでる本に服がたくさん乗ってた……ということは、どこかにヨロイスーツのことが書いてあるかも)
間違いすぎな発想を間違っていると気付かぬまま、シロは勇み足でおキヌの部屋へ向かう。こんこんこん、とノックしてみたが、中からの返事はなかった。
ドアノブに手を掛けてみると、扉は容易く来訪者を受け入れた。
「誰もいない……鍵のかけ忘れとは、いささか不用心でござるな」
部屋の中をキョロキョロと見渡していると、ベッドの上に女性用のファッションカタログが置いてある。これこそシロが探していたものに間違いない。
(ふむふむ)
シロはカタログを手に取ると、パラパラとページをめくり始めた。
可愛いワンピース、新作のキャミソール、カーディガンといった衣服から、アクセサリーや小物、ミュールやブーツに至るまで、様々な女性用ファッションアイテムが掲載されている。
シロとて年頃の女の子。
眺めていると「いいな」とか「着てみたいな」とか思う服がいくつもあり、可愛い服を着て横島とデートしている自分の姿をつい夢想してしまう。
(ううっ、いかんいかん……心を強く持つでござるよ、シロ!)
今の目的はそれではない。
自らを高みへと導く戦闘服を探さねばならないのだ。
ぶんぶんと頭を振って雑念を振り払って次のページをめくると、今までと衣装の趣が違っている。
令子に勝るとも劣らないモデル達が、見たこともない派手な下着を身に着けてポーズを取っている。
「セクシーランジェリー特集。破壊力抜群、勝負下着はコレで決まり。どんな相手もノックアウト……」
勝負下着。
破壊力が抜群という、勝負のための下着。
これはまさしく探していたもの――ヨロイスーツではないのか。
下着のデザインなのは、きっと女性用であることと動きやすさを考慮してのことだろう。
書かれている記事をブツブツ読み上げながら、シロはかつて横島と修行したときのことを思い出していた。
――これを履けば、霊力の流れに変化が――
横島が持っていた派手なパンツ。
それを身に付ければ強い霊力が得られると思ったが、あの時は止められてしまった。
当時まだ未熟だった自分には、身体に負担がかかったのでは?
楽をして力を手に入れようとすれば、手痛いしっぺ返しを食う。
横島はそれを知っていて、止めてくれたに違いない。
(先生……拙者への気遣い、嬉しいでござるよ!)
逆に清々しくなってくるほど都合の良い解釈を暴走させ、一人感動するシロは、横島への想いを深くしながら胸中で誓う。
(拙者はもう、あの頃の未熟な自分ではござらん。この勝負下着という名のヨロイスーツを使いこなし、今度は先生を守るでござる!)
固く決意するシロであったが、ふと我に返る。
見つけたはいいが、どうやって買えばいい?
値段を見ても、彼女のお小遣いでは手が出せない値段である。
いきなり壁にぶち当たってしまい、シロは頭を抱えてその場にへたり込んだ。
と、その時。
「?」
おキヌのベッドの下に何かがある。
近付いて覗き込んでみると、見慣れない箱が隠すように置いてあった。
「何でござろうか」
箱を引っ張り出して何気なく蓋を開けてみると、シロは眼を丸くした。
「こっ、これは――!」
二週間経った日曜日。
事務所で朝食を食べながら、横島はテレビニュースをじっと見ていた。
おかわりの茶碗をおキヌに差し出しながら、横島は訊いた。
「なあ、おキヌちゃん」
「はい、どうしました横島さん」
「最近さ……変な事件が続いてるよな」
「どんな事件なんです?」
「なんつーか、変質者スレスレの謎の人物が街に出没するっていう」
「へえ、そんな事件があったんですか。痴漢、でしょうか」
「それがさ、見た目は変態だけど、そいつは人助けしたり悪人捕まえたり、悪霊まで退治しちまうんだと」
「すごいじゃないですか。でも……」
「ん?」
「なんだかその話、どこかで聞き覚えがあるよーな。確か韋駄天さまが――」
「あああっ、言わないでくれッ! 両腕両脚がボキッと折れて、そこに肋骨にヒビが入って小錦がっ、小錦がーッ!」
かつて味わった超加速の後遺症を思い出し、横島は引きつった声を出して悶える。
おキヌがクスクスと笑いながらご飯をよそっていると、新しい情報が入ったとニュースはにわかに慌ただしくなっていた。
通行人が撮影したビデオに、街を騒がせている人物の姿が映っていたのだという。
『――これが夜間に撮影された問題の映像です』
酷くぶれた映像の中で、チラリと人影が画面を通り過ぎる。
動きが速すぎてよく見えないため、スロー再生でもう一度人物の姿が確認される。
「きゃーーーっ!?」
その姿を見た瞬間、おキヌは文字通り絹を裂くような声で悲鳴を上げ、おかわりの茶碗を横島めがけてぶちまけていた。
闇に舞う謎の人物は真紅のビスチェとガーターベルトを身に付け、ホッケーマスクで顔を隠している。
背格好からしてまだ少女のようだが、誰がどう見てもまごうことなき変質者である。
「……ごふっ」
顔面が米だらけになった横島は、おキヌがやけに取り乱しているのに気付いて訊ねた。
「一体どうしたんだよおキヌちゃん。あの変態がどうかしたのかい?」
「いっ、いいい、いえっ! な、なな、なんでもないんですぅ!」
なんでもないと言いながら、おキヌの声は思いっきり裏返っている。
もっと突っ込んだ質問をしようとしたのだが、それを察したのかおキヌはそそくさと掃除を済ませ、席を外してしまった。
(無くしたと思ってた下着があんなところに映ってるなんて。それにあの人影、まさか……)
自分の部屋でおキヌはウロウロしながら考えていた。
そしてクローゼットの中に隠しておいた箱を出し、決心した。
(きっと気付いてないんだわ。あの子を止めるには、こうするしか――!)
箱の形は、以前シロが持ちだしたものと同じであった。
深夜の裏通り。
ほとんど人影のない路地を、若い女性が歩いている。
その背後で、呼吸を乱した男が後を追っていた。
彼の手には、鈍く光るナイフが握られている。
周囲に民家はなく、声を出しても助けは来ない。
歪んだ欲望に突き動かされ、男の影は女性めがけて滑り出す。
「お、大人しくしろ! 騒ぐとぶち殺すぞ!」
「だ、誰か……助け――!」
「騒ぐなっていってるだろぉぉぉぉぉ!」
女性を羽交い締めにしてナイフを突き付けていたのは、脂ぎった中年の痴漢。
口を塞ぎ、力ずくで物陰に引きずり込もうとしたその刹那、
「待てッ!!」
どこからともなく、芯の通った美しい声が響き渡る。
痴漢が慌てて声のした方を見ると、塀の上に立つ人物の姿が月明かりに照らされていた。
「だ、誰だ!」
「非力な女性を刃物で脅し、乱暴狼藉を働こうなどと……許さん!」
「く、くそっ!」
痴漢は女性を突き飛ばし、その場から逃げ出した。
謎の人物は後を追って天高く跳躍し、クルクル回転して痴漢の前に着地する。
フード付きのコートを被っていた謎の人物はゆっくりと立ち上がり、行く手を阻む。
「逃がさんっ」
「な、なんなんだオメーは! こ、こうなったらヤケクソだ、死ね!」
「フッ、拙者に挑む気か」
逆上した痴漢は滅茶苦茶にナイフを振り回すが、謎の人物にはかすりもしない。
足払いをかけて痴漢転ばせると、謎の人物は近くの塀の上に飛び乗ってポーズを決め、高らかに叫びながらコートを脱ぎ捨てる。
「常・着!」
現れたのは真紅のビスチェにガーターベルト、顔にはホッケーマスクの少女。
威風堂々とした佇まいで男を見下ろしていた。
「宇宙侍、シロバン!」
ドカーン!(効果音)
あまりの出来事に唖然とする男に、少女は言い放つ。
「説明しよう!」
「は?」
「シロバンは勝負下着を常着するのに一ミリ秒とかからない。では、シロバンの常着プロセスをもう一度見てみよう!」
シロバンと名乗る少女――というかもうシロなのだが――は、脱ぎ捨てたコートをいそいそと羽織り、もう一度脱ぎ捨てる。
「このよーに、最初から勝負下着を装着、つまり常着しているのでござる!」
「……」
「てなわけで覚悟しろ、この変質者!」
「変質者はオメーだろうがぁぁぁぁぁぁぁっ!」
痴漢の全力ツッコミなど聞こえるはずもなく、シロは右手に霊波刀を作り出す。
「サムライぶれーど……ッ」
巨大な月を背に跳躍したシロは、痴漢の脳天めがけて霊波刀を振り下ろした。
「シロバン・くらーっしゅ!」
すぱーん! という見事な炸裂音と共に、痴漢は白目を剥いてひっくりかえる。
夜明けまでは、この痴漢が目を覚ますことはないだろう。
「またつまらぬものを斬ってしまった……」
霊波刀を収め、シロが立ち去ろうとしたその時、
「だれっだっ。人の下着ぬす〜むのはっ」
どこからか聞こえる歌声に、シロは背中に氷を流し込まれた様な悪寒を感じた。
あわてて声が聞こえた方向に目を凝らすと、そこに。
青の戦士がいた。
青いブラ。青いパンツ。青いガーターベルト。そして青く長い髪に般若のお面。
やはり一段高い塀の上から、青装束――というか青い下着に身を包む少女はシロをじっと見下ろしていた。
「お、おぬしは!?」
「私は……そうね、宇宙侍ハンニャー、とでも名乗っておこうかしら」
「宇宙侍ハンニャー……まさかお仲間――!」
般若面を被った青の少女は、その手に短いながら刃物を持っている。
遠くからでもかなりの業物と分かる輝き。
――いや、あの見覚えある刃はシメサバ丸(の包丁)ではないか。
なるほど仲間に違いない――というかおキヌに間違いないと納得したシロは、少しホッとした。
人知れず悪と戦うシロバンの事を知って、加勢に来てくれたのだろう。
それなら勝負下着を持っていたことも合点がいく。
彼女もヒーローであったのだ、と。
「せっかく助太刀に来てくれてかたじけないが、悪はやっつけたでござるよ」
えっへんと得意気に言うシロだったが、宇宙侍ハンニャーことおキヌは無言で首を振る。
「いいえ、まだ残ってる」
「なんと?」
「あなた……今の自分に疑問を感じないの?」
「疑問? 正義を貫く己が姿に疑問などござらんよ」
「ええ、悪い人をこらしめるのは立派。でもね……あなたが身に着けているものは、どこで手に入れたのかしら」
「ぎくっ」
「それからもうひとつ。私の姿をみて、何とも思わない?」
シロはあらためておキヌの姿を仰ぐ。
派手な下着姿。露出した肌。
そんな姿で夜の街に立つ女。
そう。なんというか。これは――
「か、かなり恥ずかしいカッコでござるな」
「やっぱり自分では気付いてなかったのね」
「……何が言いたいのでござるか」
「私の姿はあなたの姿。つまりあなたは、そんな恥ずかしい格好で街中を飛び回っていたのよ!」
「な……なんだってーーーー!?」
「目には目を。歯には歯を。変質者には変質者を……気付いてもらうにはこうするしかなかったのよシロちゃん!」
「ぶっ!?」
「その下着は横島さんだけに見てもらおうと思ってたのにっ!」
「ど、どうして拙者の名前――い、いいいや、拙者は宇宙侍シロバンでござるからっ」
いきなり正体を言い当てられ、動揺するシロ。
ヒーローは正体を知られてはいけない。それが鉄の掟。
なぜバレたのか。たまたま拾ったホッケーマスクで顔も隠しているというのに。
いいや、きっとおキヌがカマをかけているに違いない。
そう自分に言い聞かせて立ち直ったシロは、そんな人物は知らないと強気に答える。
「第一、どこに証拠が」
「シッポが丸見えよ」
「ぐはぁっ!?」
瞬殺。
瞬殺であった。
それを言い当てられては言い訳ご無用。
もはや退く道はない。
かくなる上は。
「かくなるうえは実力で押し通るッ!」
涙目で霊波刀を作りだし構えるシロ。対するおキヌは、手にした刃物をゆらりと動かした。
「シメサバ丸……戦い方はこの刀が知っている。いい加減観念なさい!」
紅い下着と青い下着が交差する。
闇に火花を散らし、二撃、三撃と打ち合いが続く。
「シロバン・くらーっしゅ!」
「シメサバ・ふらっしゅ!」
必殺の一撃がぶつかり、鍔迫り合いへもつれ込む。
互いに一歩も引かず頑張っていると、いつの間にかサイレンの音と赤い回転灯の光が集まり、無数の警察官が周囲を取り囲んでいた。
「そこの変質者二名! 武器を捨てて大人しくしなさい!」
拡声器から響く声に、シロとおキヌは驚愕する。
変質者を退治に来て、よもや自分が変質者呼ばわりされようとは。
なんたる、なんたる屈辱かっ。
「変質者はもう退治したでござるよ!」
「わ、私は違いますっ!」
「言い訳は署で聞いてやるから、大人しく投降したまえ!」
もはや逃げ場はない。
ここで補導されれば、人生に一生消えぬ汚点が付くこと必至。
にっちもさっちもいかなくなって、シロとおキヌは涙目で訴えた。
「せ、拙者は……拙者はっ。助けてください先生ーーーーーッ!」
「も、もしここで捕まったら、学校にも行けなくなっちゃう。私はただ、シロちゃんを連れ戻しに来ただけなのに……いやーっ、横島さはーーーーんっ!」
乙女の絶叫が、願いが天に届いたのか。
下着姿の少女たちをストーキングしていたのか、それは分からないが。
民家の上から高らかに響き渡る男の笑い声。
「ふははははは、警察のみなさんお勤めごくろう! だが、いたいけな下着少女を捕まえて変質者呼ばわりとは感心できんな! 諸君、今日という日を忘れるな――」
男は天高く跳躍し、その姿を月明かりに晒す。
「本物ってヤツに出会った日のことだ!」
口元だけを赤いバンダナで隠し、衣類らしきものを一切纏わぬ身体。
そう、全裸なのだ!
いや――
一ヶ所。
一ヶ所だけ隠されている。
股間に、真っ赤なソックスがひとつ装着されている。
むしろ全裸より恥ずかしい変態の、神々しいばかりの雄姿であった。
「んな――ッ!?」
あまりの見た目に硬直する警官たちを尻目に、全裸に靴下いっちょうの男はシロとおキヌに近付いてそっと囁く。
「ここは俺に任せて、行くんだ二人とも!」
「せ、先生!?」
「見覚えのあるシッポだと思って後をつけてみれば、案の定じゃないか。テレビに映ったのはまずかったな」
「横島さん、どうしたんですかその……その、口に出すと色々アレな格好は?」
「ヨゴレは俺の領域……そんな昔を思い出した。ただそれだけさ。さあ早く!」
文珠で小さな爆発を起こし、その隙にソックス男――横島はシロとおキヌを逃がす。
そして周囲を取り囲む警察官やビデオカメラに向かって突撃していく。
「九ケツ部隊レッドソックス最後の生き残り、タダオが相手じゃぁぁーーーッ!」
深夜に変質者数名が乱舞。
仕事帰りのOLが通報。
そのうちの一人、怪人レッドソックス逮捕――!
翌日の新聞やニュースでは、その話題で持ちきりであった。
犯人は未成年だったため、氏名や顔はついに公表されないままだった。
そして。
「あーもー、横島くんったらいつ出勤してくんのよ。もうすぐ仕事の時間だってのに」
いつまでも事務所に顔を出さない横島を、令子はイライラしつつ待っていた。
「おキヌどの、あ、あの、えっと」
「……なに、シロちゃん」
「なんであんな下着を持っていたので?」
「乙女の好奇心……そうとしか、言えない」
「そ、そうでござるな……」
しばし、沈黙。
「拙者は――どこが間違っていたのでござろうか」
「……ヒーローは下着姿でうろつかないんじゃないかな」
きっとそれが、ヒーローの条件。
顔に影を落としたシロとおキヌは互いに視線を逸らしつつ、そう呟くのであった。
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