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へんしん

<<SIDE:宿木 明>>



【その1】



初音の変身能力は、あいつ自身のイメージにその全てがかかっている。
あいつが『狼』へ変身すんのは、それが初音にとって一番やり易い力の引き出し方だからってなだけで……
だから初音はやろうと思えば、狼以外の動物にだって変身する事が出来るのだ。

……と まぁ、これ全部皆本さんからの受け売りなんだけどさ。



「ふぅん……って事は、初音どんなどーぶつにもなれるの?」



まぁ、理屈的にはそーなんだろーな。
ってか、どーした初音? 
いつもだったら、ムズカシイって聞き流すよーな話なのに。



「うん。 初音、ちょっとなってみたいどーぶつがあって……
 ためしてみてもいい?」



へぇ……いいね。やってみな。
変身のレパートリーが増えるのは悪い事じゃないからな。



「わかった。それじゃ……う、うぅぐるるるるるるるる!」



めきめき、音を立てながら変化してゆく初音のカラダ。
でかい。今までに無い大物だ。

ぎんっと尖がった三角アタマは天井にまで届きそう。
矢印を思わせる形状の、丸太のようなその巨体の中ほどに初音の顔がのぞいている。
その特徴的な本体の下から、ヘビを思わせるしなやかな細長い腕が幾つも伸びて……

……

……って、おい……
お前、それは……



『げそげそ〜!』



いや、イカはんな声で鳴かないから!
てゆーか、なんでイカだよ!?



『きのうテレビでみた。すごーくつよかった』



あー、そーいやロードショーでなんかやってたなー。
イカのレスラーがエビの拳闘士とたたかうB級映画……

つか、話しながら触手をうねらすな。気色悪い。



『だめ? ……このながーい腕あれば便利かなぁって。犯人とか捕まえる時、ガブってしなくていいし……』



んー……確かにそれは……でもほら、見た目とかさぁ……
お前、どっかの悪の組織がつくった怪人みてーになってるぞ?
このままどこぞの戦隊ショーやら、ライダーショーやらに出れるんじゃないか?



『それに、イザってとき食べられる……おいしそーでしょ? 
 ほら、タコとかイカとか、お腹すいた時、ご飯がないと自分の足を食べるんだって。だから初音も……はむ』



って、こら!
喰うな!しゃぶるな!!



『はむはむちゅぱちゅぱ……まずい』



当たり前だ。
それホンモノのゲソ足じゃないから。そー見えてるだけだから。



『ガッカリ……』








【その2】




「……とゆーわけで、また新しい変身を考えた」



ほー……今度はタコか? それともクラゲか?



「ぶーっ! ちがうもん!
 今度のは、部分変身だもん!!」



部分変身ってのは、身体の一部分だけを変身させるパターンだ。
例えば、腕だけを翼に替えたりとかな。
因みに、複数の動物の特徴を併せ持つキメラ型の変身とかは、これの応用だったりする。



「姐さんが『コレいいんじゃね?』って、アイデア出してくれた!
 すごいんだよー!
 『明、絶対よろこぶから』って!」



……ぅわぁ……薫ちゃんが絡んでるのかぁ……
いや、もうこの時点で、アレな結果になるってのは確定したも同然って気が……

まぁ……とりあえずやってみな。
見てみなきゃツッコミもできないし。



「うん、わかった!
 ……う、うぅぐるるるるるるるる!」



みちみちっ 
変身を始めたその途端、劇的に変わる初音のカラダ。
ぴっちりとした、黒いタンクトップがむりむりと内から押し上げられて……

……って、おい!? な、なんだよそりゃ!?



「おっぱいだけ 『ほるすたいん』 になったの!」



ぶるんっ ぶるんっ
ぶちんぶちんと悲鳴を上げる、破けそうなタンクトップ。
ぎりぎりと伸びきった襟元からは、今まで存在しなかった深〜い『谷間』がのぞいている。
初音が動き回るたび、ゆさゆさたゆたゆ大きく揺れて、己の存在を誇示してみせる圧倒的なその存在感……
柏木さん……いや、蕾見管理官のそれにすら、匹敵するんじゃないだろーか……それくらいの質量だ。



「明、どお?
 巨乳さんだよー」



たぷんっ たぷんっ と……ゆれる胸元。
そう、あの慎ましやかな平原だった初音の胸に、魅惑的なふくらみが……
やーらかそーな肉の果実が……ッ!!



「んとね、いつもとちがって服の上から変身したんじゃなく、シャツの中で膨らませたの。
 先っちょとか、カタチの方もちょっといぢって……んでほら! ちゃんとホンモノのおっぱいみたくみえるよーにしたんだよ?」



な、なんつー能力の無駄遣いを……

い、いや、落ち着けオレ!
そうだ、あれは初音の変身……決してホンモノの乳じゃないんだ……
偽乳なんだ、虚乳なんだ……

つ、つーか、なんで乳牛なんかに!?



「だって……おっぱいおっきくなるかなーって。
 『男はみんな巨乳スキーだ!』って姐さんいってたし……
 だからこーやって……ばいんばいーんって!
 だめ?」



ぇ、あ……そ、そんな事は……

でも、オレ的にはいつもの初音のサイズが……
こうやって手のひらにこー、すぽっとおさまるくらいのが丁度いーんだけど……

いや、しかしスレンダー巨乳っつーのも、これはこれで……
そう、これはこれで!

……って、い、いやいやいやいや!

何を考えてるんだオレは!?



「……明、どうしたの? そんな前かがみになって……」



い、いやべつに! 
そ、それよりも早く元にもどってくれないか?

……何か、色々とやばいから……



「むー……そっか、明は小さいおっぱいが好き、と」



な、なな、なんでそ−なるっ!?



「ちがうの?」



い、いや……そ、それはその……







おしまい
明クンが、煩悩少年になってしまいました。
因みに、その1が何故『イカ』なのかとゆーと、これはそのまま暴走したイカ初音嬢の触手に明クンが捕まってアッ--!? ……とゆー、最初考えてたネタの名残だったりします。
初音嬢の変身ネタは、色々と遊べそうだなぁと…頭の悪いお話ですみません。

こんなんですが、ご指摘、ツッコミなど頂けると幸いです。

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