4522

ジーク&ワルキューレ出向大作戦10『CROWD(1)』

『オラァ荷物持ち! 何をちんたらやってやがるんだ!』

荒涼とした乾いた大地に、野太い声が響き渡る。
筋骨隆々の褐色の肌をした角刈りの大男が、徐々に一団から離されていく青年に喝を入れていた。
青年は荒い息を吐きながらも、何とかペースを上げて、集団に追いつこうと小走りで距離を詰める。

角刈りの大男以外にも五人程、同じように筋骨隆々のはち切れんばかりの肉体の男達が同行している。
彼らと比べると、全員分の荷物――どう見ても青年の積載量オーバーだが――を背負う青年は、細身で頼りなく見える。

「リーダー、いくらなんでも六人分の荷物を僕一人で運ぶんは、正直無理です。
せめて夜叉丸を使わせてもらわんと――――」

『馬鹿野郎ッ!!』

泣き言を口にしようとした青年の言葉も終わらぬ内に、角刈りの大男の怒声が響き渡る。

『何回言わせやがるんだ! おめぇは何でもかんでも式神に頼りすぎなんだよ!!
腕力で持てねぇなら、腹の底に霊力を溜めて踏ん張れ!
そろそろ獲物のテリトリーに入るんだから、シャキっとしやがれ!』

――――ああ、僕はいったい何時になれば、日本に帰れるんやろうか……

グランドキャニオンを行進するのは魔族の賞金稼ぎ部隊に売り飛ばされた鬼道政樹。
今日も今日とて異国の空の下ではらはらと涙を流していた。














車の群が淀みなく流れていく高速道路。
高架上に設けられたそれは、利用者を短時間で目的地へと誘ってくれる。
まだ冬の寒さが微かに残る春の夜。
降りしきる雨の中、一台の車が道路の流れに乗っていた。

運転席でハンドルを握るのは、黒い髪を腰まで伸ばした青年。
そしてもう一人、助手席に座り、道路の流れを眺めている金髪の少年。

「どうにも嫌な雨だね。こういう日は、古傷が疼くんだ。」

青年はハンドルを握っていない手で自分の肩をなぞる。
既に傷は殆ど消えていたが、雨の日や寒さの強い日は傷痕がしくしくと痛むのだ。

「古傷、ですか?」

少年は青年の方に目をやる。

「ああ、まだ君がGメンに入隊する前の話さ。
唐巣さんから事の顛末は聞いてるんじゃないかな。
辻斬りから端を発した『フェンリル事件』だよ。」

少年は頷いた。
師である神父からも聞いていたが、それ以上に詳しい内容を当事者の一人から聞いていたのだ。

「確か……かなり凄腕の人狼が相手だったんですよね。
西条主任以外にも、美神さんや唐巣先生までいたのに、一方的に返り討ちにあったとか。」

超一流のスイーパーを揃えながら、なす術もなく撤退を強いられたのだ。
撤退の際、美神は髪を切り落とされ、西条は袈裟懸けに霊刀で切りつけられ重傷を負っていた。
その他にも被害多数。人狼自身の戦闘力もさる事ながら、それ以上に人狼が所持していた霊刀があまりに強力だったのだ。
苦い思い出に、西条と呼ばれた男は溜め息をつく。

「ピート君。正攻法で向かってくる奴には二種類のタイプがいるんだけど、わかるかい?」

少年――ピートは少し考え込んでから、口を開いた。

「一つは、考えるよりも先に体が動くような低級の妖魔。
もう一つは、策を弄する必要がないほどに強力な存在……だと思うんですけど。」

少々自信無さ気な回答だったが、概ね間違えていなかったようだ。
西条が正解、と答えた後、補足の説明を付け足す。

「前半は完璧だけど、後半の方はちょっと惜しいかな。
後半の相手には個体ごとの差があってね、一つは君が言ったように強力すぎる力を持つ存在。
そしてもう一つが、策を弄さないんじゃなくて、自分は策を弄さないのが一番力を発揮できると自覚しているような存在だ。
わかり易い例を挙げるなら、君の友人の伊達雪之丞君。彼はまさにその典型的な例だね。」

ピートは、乱暴だが親友の一人であるその男を思い浮かべる。

「いや、雪之丞は前者の方ではないんですか?
あいつは単なる単細胞だと思いますけど。」

爽やかな笑顔とともに下された友人への評価に、西条は苦笑する。

「いや、彼の場合は正攻法で戦った方が力を発揮できると自分で確信してるって事さ。
確信を持って振るわれる力は、無自覚な力よりよほど強力だ。」

自分の力が確固たるものだと信じているなら策は必要ない。
言葉だけ見れば、短絡的な発想だと思われそうだが、それを実践しているのが伊達雪之丞なのだ。
実際、雪之丞は正攻法で戦う場合と、策を用いた場合とでは、明らかにその霊出力に差が出る。
本人に聞けば、『単に気分が乗らないから』とでも答えるだろうが、霊能にとって気分というのは大きな影響を与える。

「そして、あの時戦った人狼も、正攻法でこそ力を発揮するタイプだったのさ。
正直言って、そういうタイプを相手にするのはかなりキツイんだ。」

ため息をつく西条だったが、ピートはいまいち納得できないのか、首を傾げている。

「ですが、相手が正攻法でしか戦えないのなら、罠を張るなりすれば楽に対処できるのでは?」

「まあ、普通はそう思うだろうね。
あの時も万全の体制で、しかも多人数で囲んでいたと言うのに、実際に戦った結果は惨敗さ。
僕自身、手痛い傷を負わされてしまったからね。」

痛む古傷を指でなぞりながら、あの時の戦いに思いを馳せる。
今考えれば、あれは失策だった。多人数で挑んだことで、あの人狼の戦闘意欲を刺激してしまった。
かと言って、一対一で戦ったとしても、やはり勝負は見えていただろう。
どう考えても、あの霊刀に対処する方法を思いつけないのだから。

全てが終わった今、思いつく一番成功率が高くリスクが低い方法は……遠距離からの狙撃だろうか。
人狼のテリトリーの周回パターンを分析し、先回りをする形で狙撃者を配置する。
銃弾が通じるかどうかは不明だが、少なくともこれなら接近戦は回避できる。

「ま、ああいうタイプにはそうそう出くわさないだろうけど……
もし出くわしたら、相手を下手に刺激しないように気を付けようって事さ。」

何時しか二人の乗った車は現場のそばまで近づいていた。
おしゃべりの時間は終わり、二人の表情はこれから始まる密輸船の手入れに向け、引き締まっていた。













「オカルトGメンだ! 積荷に違法な物が含まれている疑いがある!
全員、両手を頭の後ろで組んで膝をつけ! 早くするんだ!」

冷たい雨が降りしきる中、貨物船が到着し、積荷を降ろし始めようとしたまさにその時。
ピートの叫びとともに、警官隊とオカルトGメンの合同チームが一斉に貨物船に雪崩れ込んだ。
ほとんどの乗員は、とつぜんの警官隊の突入に、目を白黒させて慌てふためいている。
そういう人間は無害なので問題無い。だが、何名かは油断の無い目つきでその場から離れようとしている。

「そこッ! 動くなと言ったはずだ!!」

走るピートの鋭い声。その場を離れようとしていた男の一人が胸元から札を取り出していた。
それを破り捨てようとした途端、銃声が響き、ピートの精霊石銃が男の手の甲を打ち抜いていた。
男は焼けつくような痛みに、呻き声を上げながらその場にうずくまる。
駆け寄ったピートが男に手錠をかける隙を突き、別の男が取り出した札を破り捨てた。

『ギャオアァァァァアアアアーーーーー!!』

耳障りな叫び声を上げながら、札に封印されていた魔獣がピートの前に立ちふさがる。
二足歩行という点では人と同じだが、異様に発達した巨大な両腕と、一つしかない目玉がその存在が人外であると証明していた。
一つ目巨人サイクロプス。彼らは知能こそ高くないが、それ故に容易に呪術で使役することが出来る。

「無関係な人間もいるというのに、こんな危険なヤツを……!」

今ここで荷降ろしの作業をしていた人間の大半は、ただの雇われ作業員の筈だ。
密輸に関わっている人間など、ほんの一握りだけだろう。
混乱を引き起こし、その騒ぎに乗じて逃走するつもりなのだろうが、その手口の卑劣さにピートは怒りを覚えていた。
こんな危険な亜人種を解き放てば一番に犠牲になるのは、何の抵抗する手段も持たない、無関係な作業員達なのだから。

警官が悲鳴をあげ発砲する中、各所に現れた一つ目巨人が唸り声を上げていた。
巨人はコンテナを軽々とひっくり返し、その豪腕を今にも警官達に振り下ろそうとしている。

「こ、こんな化け物相手に、どうしろってんだよぉぉぉ!!」

悲鳴を上げながら半狂乱に銃を撃ち続けるが、巨人の強靭な肉体に損傷を与えることは出来ない。
銃弾をものともせずに距離を詰め、高々と掲げられた巨人の拳が振り下ろされた。

『グギャァァアアアァァアアアアッッッ!!』

だが振り下ろされたはずの拳は警官を襲わず、それどころか拳は――厳密には肘から先が――あさっての方向に飛ばされていた。
あまりの痛みに吼えたける巨人の前にピートが立ちはだかり、返り血で赤く塗れた刃を構えなおす。

原始風水盤の事件で亡くなった先輩から譲り受けた、不浄を断ち切る裁きの霊剣。
宙を駆ける跳躍。そして煌く一閃。ズシンと重い音を立て、霊力を乗せた一撃で巨人の首が胴体から滑り落ちていた。














「ちッ、まさか手入れが入るとは……誰かが情報売りやがったな!」

「今そんなこと言ってる場合か!
どうせ俺達の手に入らないのなら、せめて証拠を隠滅するんだ!」

「うっせぇ! 言われなくてもわかってる!!
畜生! これを仕入れるのにどれだけかかったと思ってるんだ……!」

二人の男達が言い争いながら甲板を走っている。
どうやら、証拠として押収されるくらいなら、自ら処分するつもりのようだ。
一人がガソリンで満たされたポリタンクを抱え、もう一人がジッポライターを握り締めている。
コンテナが積み上げられた一室に飛び込むと、ポリタンクの中身をぶちまけるべく、キャップを取り外した。

「おっと、そこまでだ。
悪いけど既に証拠は押さえさせてもらったよ。」

突然部屋の死角から響いてきた言葉に、男達は一斉に振り返る。
だが、完全に振り返る前に男達の首筋に衝撃が走り、意識を失っていた。

「覚醒剤だけじゃなく、禁制の霊薬まで持ち込んでるとは。
これは、間違いなく背後に大きな組織が潜んでるな……」

ピートたちは正面から堂々と突入して注意を惹きつけ、西条はこっそり忍び込み、手薄になっている船内を単独で調査をするという役割になっていた。
男達に手錠をかけ、仲間に連絡を取りこの部屋の事を伝える。
おそらくこの部屋が本命だと思われるが、一応念のために他の部屋も見て回る必要があるだろう。
西条は違う部屋に移るために腰を上げた。

だが、途端に古傷が疼き、また膝をついてしまう。
雨の日に古傷が疼くのは以前からだが、今日の疼きは特にひどかった。
呼吸を整え、傷跡が引きつるような感覚に耐える。

「こんなに古傷が疼くとは……僕もそろそろ年かな。」

やれやれとうな垂れると、その場を後にした。
























『おーい、野郎共! ここが獲物の巣だ!!
テリトリーに侵入してるってのに、まったく反応がねぇ!
恐らく罠張って待ち構えてるんだろう! 』

グランドキャニオンの山肌にぽっかりと空いた空洞の前で、角刈りの大男が部下に声をかける。
洞窟の奥は光が届かず、暗闇の深淵が待ち構えているようだった。
だが、大男は気にせずにずかずかと中に踏み込んでいく。

『罠を張るような獲物はつまらん獲物だ!
奥から何の気配も感じないって事は、ビビッて縮こまってるんだろう!
さっさと狩って、次の獲物に移るぞッ!!』

大男は豪快な笑い声を上げ、部下達も後に続く。
そのあまりに傲慢な態度は、とても腕利きとは思えない振る舞いだった。
だが、おっかなびっくりといった様子でついていく鬼道は、これまでの付き合いで彼らの強さを充分に知っていた。
これまでにも何十体という魔獣や魔族を狩るのを見てきたが、大男達は圧倒的な戦力で一方的になぎ倒してきた。
間違いなく全員が上級魔族クラスな上に、抜群のチームワークを誇るのだ。
神界・魔界・人間界の三界が認めた『掃除屋』なだけの事はある。

程なく一行は巣の奥まで辿り着いたが、何か罠が仕掛けてあるという訳ではなかった。
奥にあったのは、すでに息絶え、半ば白骨化した魔獣の死骸だった。
入り口に出入りした跡が無かったので、獲物を待ち構えるタイプの魔獣だと思ったのだが、どうやらとっくに死んでいたようだ。

多数の首を持つヒドラのような魔獣の死骸を前に、大男が膝をつき、死因を調査している。
鋭い刃物で輪切りにされたような傷跡に気付き、しかめっ面で舌打ちする。

『おいおい、またかぁ? 獲物を横取りされるのは、これで何度目かねぇ……』

ここ最近、彼らが巣に踏み込むと既に何者かに倒されているという現象が頻繁に起こっていた。
だが相手は魔族の手配書にのるほどの獲物なのだ。そこらのGSが相手に出来るようなレベルではない。
優秀な式神を従える鬼道でさえ荷物持ちに専念させられており、実際の戦いに参加する事は禁じられていた。

「かすかに残されたこの霊気……また同じヤツみたいやな。
賞金首を倒したってのに、死骸は放置……いったい何が目的なんやろうか。」

じっと考え込む鬼道だったが、大男に呼ばれ、意識を現実に引き戻される。

『おい、坊主! さっさと次の場所に移るぞ!
金が欲しいんなら、いつもみてぇにその死骸はおめぇが運ぶんだぞ!』

そう、彼らは賞金稼ぎでありながら、賞金には興味が無いのだ。
そのため、賞金首にかけられた懸賞金は全て鬼道の懐に流れていた。
荷物持ちで基礎体力・霊力を鍛えられつつ、高レベルの戦いを見学でき、おまけに借金返済の資金まで手に入るのだ。
扱いはかなり悪かったが、鬼道にとっては一石三鳥の生活だった。

























順調に船室の調査をすませ、残るは後二、三部屋という所まで来た時、西条の霊感が異常を察知した。
目の前の扉を開けようとした途端、背筋に冷たい氷塊を押し付けられたような錯覚に陥ったのだ。
重く圧し掛かる息苦しさと圧迫感に、西条の額にじわりと脂汗が浮かぶ。

――――さっきの部屋が本命かと思ったが……なんだ、この嫌な感じは……

自分の霊感が反応したのだ。この部屋には何かがある。
何かがあるのなら、この目で確かめなければ……

きぃと蝶番が軋む音を立てながら、重い扉がゆっくりと開かれていく。
扉の隙間から中の様子を窺うが、船室には穀物が詰められているであろう麻袋が高く積み上げられていた。
ライトが取り付けられた精霊石銃を右手に、逆手に構えた霊剣ジャスティスを左手に。
十字で組んだ両手を突き出し、銃と剣のどちらも使える体勢で、注意深く室内に身を滑り込ませる。

素早く左右を確認し、部屋の死角に敵が潜んでいない事を確認する。
室内に異常が無い事をまず確認し、それから視線を上げる。

  ズキリ!

だが、視線を上げようとした時、西条の古傷が一際痛み、今まで以上の圧迫感が襲い掛かった。
自分の意思とは反し、呼吸は荒くなり、まるで真夏のように脂汗が浮かび上がる。

――――麻袋の上に……何かがいる……!

何者かは、次の瞬間、麻袋の上から西条の背後に移動していた。
背後を取られた事までは知覚できたが、それから後の事は西条の記憶には残っていなかった。

























「ルシオラー、神通棍の再調整終わったー?」

「ええ、終わったわ美神さん。今までよりも出力が2割は向上してるはずよ。
特別な改造はしてないし、扱い方は今までと同じで大丈夫だから。」

手渡された神通棍を受け取りながら、美神は不満そうに口を尖らせている。

「ちょっとー、たったの2割なの?
別に高い精霊石使っちゃっても良いから、派手に10割パワーアップとかにしてよ。」

「うーん……でも、あんまり人間界の技術レベルから逸脱した改造だと、すぐにバレちゃうし。
ただでさえ、お隣さんがアレなのに。」

クリスマスの件でルシオラが横島の元に戻ってから、そろそろ四ヶ月が経とうとしていた。
横島を巡る爆弾発言から四ヶ月も時間が経過していたのだが、今のところ互いに牽制している状態が続いていた。
変わった事があるといえば、何故か美神と横島が二人だけで依頼をこなす回数が増えたり(依頼の人選は所長である美神の裁量)事務所でおキヌが作る料理が高級料亭顔負けのレベルになっていたり(それも横島が事務所で食事をする日限定で)シロが朝晩二回の散歩を要求するようになったり(これはむしろ逆効果だと思われるが)タマモがお揚げ以外のプレゼントもたかるようになったり(横島争奪戦に参加してないから好き放題である)アパートに戻ればやたらとルシオラが密着してきたり(一緒に暮らしているカオスとマリアは空気扱い)と人それぞれだった。
ルシオラは横島の稼ぎで食べていくという手もあるのだが、それだと事務所内での自分の立場が弱くなってしまうと考え、自分に出来る事で貢献することにしていた。
人間並みの霊力しか使えなくなった現状で何が出来るかと言われれば、お得意のオカルト工学がまっさきに思い浮かんだ。

除霊で使用する神通棍や悪霊探知機の改造や、中に仕込まれている精霊石の加工などは、基本的に極々限られた専門の技術者にしか不可能だ。
しかし、たとえザンス国の伝統技術であろうと、企業機密のブラックボックスであろうと、ルシオラの目から見れば子供の工作レベル。
魔神アシュタロスに仕え、兵鬼開発を一手に引き受けていた過去の知識と経験は、弱体化した身体に変わろうと失われるものではない。
かといって、あまりに派手に改造しすぎると、オーバーテクノロジーを流出させた罪でお隣の魔界大使館に捕まってしまうだろう。
大使が大使のため、本当に捕まるということは考えにくいが、ルシオラとしてもこれ以上迷惑をかけてしまうのは流石にためらわれた。
そんな事情があるため、ギリギリ人間界の技術レベルでも出来そうなくらいの改造にとどめているのだった。

「ま、最近はあんまり手ごたえのある相手もいないし、これくらいでも充分っちゃ充分かもね。」

ルシオラを雇ったおかげで、除霊道具の点検・整備は全て押し付ける事が出来るようになった。
素人の自分達がやるより手際が良いだけでなく、安全確実なのだ。業者に高い金を払う必要がなくなったのは、美神としても実に美味しい話だった。
ちなみに横島には内緒だが、ルシオラの給料は横島よりだいぶ多く――横島は百合子の要請により手取りを低く抑えられているため――もらっていた。
当の横島はルシオラの義体のメンテナンスのためにマリアとカオスを抱え込む事になり、跳ね上がった毎月の出費(主にマリアの膨大な電気代)に涙を流しているのだが。

「お二人とも、お茶を淹れたんですけど良かったら一休みしませんか?」

いつものように穏やかな笑みを浮かべ、おキヌが入ってきた。
美神の書類整理とルシオラの改造が終わるタイミングを見計らっていたのだろう。
二人とも、丁度仕事が一段落ついたところだった。

ちなみに今日は仕事の依頼は入っておらず、シロを横島を誘って外出、タマモは一人でふらりと何処かへ遊びに行ってしまっていた。
騒がしいメンバーがいないため、今日の事務所は穏やかな空気で満たされていた。
春の陽気が漂うお昼前。そろそろ昼食の用意をしようかなとおキヌが部屋を出ようとした所で、人工幽霊が客が訪れたことを伝えてきた。

『オーナー、西条様とピート様がお見えですが。』

「あら、西条さんが? もしかして、依頼でも持ってきてくれたのかしら。
とりあえず入ってもらって。あ、それとおキヌちゃん、悪いんだけど西条さん達のお茶も用意してね。」

既に予想していたのだろう、新しいティーポットを用意しておキヌが微笑んでいた。
























「ジーク、コーヒーここに置いとくよ。」

凛と響く女性の声。ふわりと温かな香りが室内に漂っている。
声をかけられ、窓からボーっと空を見上げていた褐色の肌の青年が振り返った。

「ああ、ありがとうべスパ。」

青年はいつものように穏やかで、のんびりとした表情である。
どうやら今日も魔界大使館は平穏なようだ。

正式に大使館として運営するようになり、早4ヶ月。
だが、魔族がらみの依頼が早々舞い込んでくる訳でも無く、彼らは一日の大半をのんびりと過ごしていた。
とは言え、実際に魔族が絡んでいなくても、その疑惑があれば調査するのも彼らの仕事なのだ。
そういった相談を受けた場合は、誰かが実際に出向いて確認するようになっていた。

「パピリオはちゃんとやってるかな……」

心配そうに呟くべスパに、ジークは心配いらないよ、と頷く。
基本的に、調査にはべスパかパピリオのどちらかが出向き、もう片方はジークの護衛として大使館に残るようにしていた。
聖夜の一件で力を無くしたジークは、そこらの並のGSにすら除霊されてしまう程に弱体化していたからだ。
パピリオとべスパは眷属を従えているため、それを使役しての調査に関しては特に問題なかった。

だが、精神的に幼く好奇心旺盛なパピリオは、一度調査に出かけたらなかなか戻ってこなかった。
なんやかんやと理由をつけて、観光がてらに寄り道しているためだ。
上司であるジークが命令すれば、すぐに戻らざるを得ないのだが、ジークがその手の命令をする事は殆ど無かった。
パピリオの今後の成長を考えれば、色んな場所を見て回り、人間界の事を知るのは重要だと考えていたからだ。

一方のべスパは、その成熟した容姿のためか、調査に出向いた先で男に声をかけられるのが日常茶飯事だった。
霊感を持たない人間には、魔族と人間の区別を感じ取るのは難しいためなのだが、べスパからすれば迷惑な話だった。
余計なトラブルを起こせば上司であるジークに迷惑をかけてしまうので、極力穏便に断るようにしていた。
大半の人間は自分が魔族だとわかれば一目散に逃げ出すので、大きな問題になるような事は、今の所無かった。

そんな背景もあり、調査に出掛けるのを喜ぶパピリオと、あまり乗り気でないべスパ。
両極端な二人のどちらかに行ってもらわなければならない、という事になると、ジークとしては考えるまでも無いだろう。

春の陽射しが差し込む室内は、時の流れを緩慢に感じるほどに優しい世界だった。
ギシリと椅子の背もたれを軋ませ、ジークが身体を伸ばす。
ふと気付けば、べスパがジークの机に腰をおろし、同じように空を見上げていた。

「おいおい、行儀が悪いぞ。」

何時の間に隣に来ていたのだろうか。

「いーじゃない、細かい事は気にしないでよ。」

『行儀が悪い』と言ったのは、机に座る事だけではなく、タイトスカートなのに脚を組んでいる事も含まれているのだが、当人は気にもしてないようだ。
春の陽射しを受け、艶やかに光る髪は、素直に美しいと思えた。

ジークは暖かな陽射しを楽しむべスパの横顔を眺めていたが、ふと何かに気付き、手を伸ばした。
べスパの背にかかる髪をすくい上げると、はらりとした感触がジークの指を撫でた。

「ジ、ジジ、ジークッ!?」

予想してなかった行動に、べスパが慌ててジークに振り返る。
だが、ジークの顔に浮かぶのは、いつもの穏やかな笑顔だった。

「髪、少し伸びたみたいだな。」

その言葉に、自分でも髪を撫でてみる。
もちろん言われる前から気付いていたが、確かに少し伸びていた。
人間界では髪型で人間性をある程度判断されてしまうらしい。
魔族であるべスパにはイマイチ理解できない価値観だが、郷に入らば郷に従わなければならない。
人間界の一部として魔界大使館が存在する以上、自分も人間の価値観に従うべきだろうか。

「ジーク、その……切ったほうが良いかな。」

暗に切るようにすすめられているのかも知れない。
所在なさげなべスパの問いに、ジークはふむと考え込む。

「いや、僕は別に切る必要は無いと思うぞ。」

あっさりと首を振られ、べスパは首を傾げてしまう。
それならさっきの行動と言葉は何だったのか。
そんな心境を見抜いたのか、ジークは申し訳なさそうに続けた。

「ああ、そうか。すまない。
そういうつもりで言ったんじゃないんだ。
手を伸ばしたのは、ただ――――」

首を傾げたままのべスパに、穏やかに微笑んだ。

「ただ、綺麗だと思ったからなんだ。」

気を悪くしたならすまない、と軽く頭を下げる。
その言葉が脳に浸透するまでに時間がかかったが、意味を理解した途端、べスパは慌ててジークから顔をそらした。
ジークは時たまこういう事を言う。それも、普段と同じ調子で言うからタチが悪い。
きっと本人に自覚は無いのだろうし、口説くとかそういうつもりも無いのだろう。

だが、言われる側はどうしても意識してしまう。
その辺が、精神構造が幼いパピリオと成熟した個体のべスパの違いなのだが、ジークはあまり気にしていないようだ。
本人にそういう気がないのに、一人で慌てているのだ。
こういう時の常として、ジークは急にどうしたのかと首をかしげていた。

一人で照れているのが何とも滑稽で情けなかったが、どうせ既に照れてしまっているのだから、普段聞かない事を聞いてみるのも良いかもしれない。
背を向けたまま、何でもない様子を装い、ジークに問いかける。
べスパの視線は、特に珍しい物も無い室内に向けたままのため、不自然さは隠しようも無い。
とは言っても、正面から向かい合うのは意識してしまいそうで避けたかった。

「ジークはさ……髪、長いのロング短いのショート……
どっちが好、良いと思う……?」

何で微妙に言い直すのか!
別に意識するような事じゃないんだから!
ただ、ちょっと同僚の好みを聞いてみただけだってのに!

どうやら完全に意識してしまっているらしく、内心で自分を叱りつけているのだが、ジークは特に考えるでも無く即答した。

「女性は長い髪の方が良いと思う。
少なくとも……僕はそっちの方が女性として見れるな。」

ふーんと、気の無い返事をしながらも、髪また伸ばそうかなぁとべスパが考えていたのは自然な事だろう。
だが、さっきの言葉の最後の部分がどうにも引っかかる。

「でもさぁ、それじゃあショートのコは女として見てないって事だよね。
もしかして、ショートのコに何かトラウマでもあるとか?」

意識してしまったのを振り払うため、悪戯めかして聞いてみる。
だが、それを聞いたジークはどんよりと暗いオーラを背負い、うつむいてしまった。
まるでそこだけ春の陽射しが避けているようだ。

「髪の短い女性はな……どうしても姉上ワルキューレ司令を連想してしまって、駄目なんだ……」

その後はブツブツと独り言を呟きながら膝を抱えて殻に閉じこもってしまった。
時折、「姉上に情けは無いのですか……!」「無茶です姉上……!」「僕を何だと思って……!」というような言葉が漏れているが、詳しく聞かない方が彼のためだろう。
完全にトラウマ・スイッチがオンになったジークを眺め、苦労してたんだなぁとべスパが熱い目頭を押さえていた。

と、その時、来客を告げるインターフォンが鳴り響いた。
しかし、今日は特に予定は無かったはずだ。素早くべスパが予定表に目をやるが、やはり今日の来客の予定は無かった。
大使館という立場を考えれば、本来はアポ無しの来客は断るべきなのだろうが、ジークの方針で極力話を聞くようにしていた。
完全にポンコツになった上司にちらりと目をやり、取りあえず話だけでも聞いてみようと、来客を出迎えに向かうべスパだった。




























「おま……っ……ちょ……待っ……」

「先生ぇ? どうしたでござるか。まだ海には着いてないでござるよ。」

地面に横たわり、微妙に危ない痙攣を繰り返す生き物らしき物体。
そしてそれを引きずる元気溌剌といった様子の少女。
ぜぇぜぇと荒い息を吐いていた物体は、突然起き上がり少女に抗議の声を上げた。

「お前はアホかーーーーッ!
何が悲しくて、朝晩二回も長距離走って同じ海に行かなきゃならんのだーーーー!!
しかも、海に行って後は普通に帰るだけって……お前は何がしたいんじゃーーーー!!」

朝晩二回の散歩コースは、何故かここ最近は海と事務所を往復するという苦行になっていた。
せめて今が夏なら海に行けば水着の女の子が砂浜でたわむれている筈なのだが、残念ながら今はまだ春先だった。
前までの散歩コースだった公園であれば、満開の桜を眺めつつ、せめてもの風情に浸る事も出来たというのに。

「だ、だって! タマモが男と女は海で急接近するって!」

またアイツの入れ知恵かッ!
満面の笑みを浮かべる狐の少女を背景に、横島が眩暈を感じよろめく。
ここ最近、どこから仕入れてきたのが、微妙に間違った恋愛指南をシロに授けるのがタマモの日課になっていた。
嘘を吹き込むのは良いとして、結局はその矛先が全て横島に向けられるのは言うまでも無い。

あっさり騙されるシロに悪気が無いのはわかる。
先月、タマモが事務所の台所に隠しておいた、秘蔵の特上キツネうどんをうっかり食べてしまったのも悪かったと思う。
あんまり美味しかったから、ショックで固まるタマモにおかわりを要求したのも、今思えば非常にマズかったと思う。
泣きながら事務所を飛び出したタマモを追わず(※狐火で焼かれて死にかけていました)、特に何のフォローもしなかったのも悪かったと思う。
そういった事情もあることだし、年長者としてなるべく付き合ってやりたい所だが、流石に肉体的な限界がある。

「……シロさん、取りあえずそこに座りなさい。」

なるべく神妙な表情になるように努め、横島が地面を指差す。
普通に地べたなのだが、シロは大人しく従いそこに正座する。

「この際だからハッキリさせておこう……」

何時になく、真面目な雰囲気の横島の姿に、シロも思わず姿勢を正した。

「お前は俺に女として見てもらいたいようだが、それは無理だッ!」

グサッ!

言葉の凶器が突き刺さり、シロがのけぞる。
だが、そこはやはり横島の弟子。素晴らしい回復力で立ち直り、逆に横島を問いただす。

「何故でござるか先生! 拙者のどこに落ち度があるというのですかッ!!」

「知りたいか!?」

「無論ッ!!」

この無駄に力強いやり取りの時点で、既に男女の機微など皆無なのだが、シロにはハッキリ言わなければ駄目なのだろう。

「お前に足りないモノ!それはなぁーー!配慮思想理念頭脳気品優雅さ慎重さ!!
そしてェ何よりもーーーー色気が足りないッ!!」
  
言葉の凶器が雨あられと降り注ぎ、これには流石のシロもかなりのダメージを受けたようだ。
血反吐を吐き(※あくまでイメージ映像です)、横島に向けて伸ばした手も力無く震えている。

「な、ならば……せ、拙者どうすれば……」

「うん。色気に関してはお前は将来有望な訳だし、後5年ほど待ってみたら良いんじゃないかな。」

爽やかな笑顔で答える横島。
いずれは色気たっぷりに成長するのはある意味確定事項なのだ。
だが、そこは流石に師弟関係。美神と横島の以心伝心よろしく、シロも横島の真意を汲み取ってしまっていた。

「そんなの、ただの厄介払いの口実ではござらんかぁーーーー!!
結局は身体が目当てだなんて、先生のバカーーーー! スケベーーーー! 甲斐性無しーーーー!」

「し、しまった! バレたかッ!!
ってコラ! 言い逃げするにしても言葉を選ばんかーーーー!」

5年待て、という事はつまり、それまでは相手にしないと言ってるようなものだった。
泣きながら走り去るシロを慌てて追いかける横島だったが、あっという間に視界から消えてしまっていた。
男女の悲しいすれ違いの話の筈が、何故かコントみたいに見えてしまうのも、この二人ならではだろう。























先生のバカ!!

気付けば、一人で海まで来てしまっていた。
人気の無い波止場に腰を下ろし、甲斐性の無い師匠への愚痴をこぼしている。

だが、シロとて本当はわかっていた。
あの夜、ルシオラの提案により、横島を巡る駆け引きが本格的にスタートしたのだ。
今まではそうでもなかったが、次の12月までという期限が設定されてしまった以上、美神達とて本気で動かざるを得ない。
美神・おキヌ・ルシオラ、彼女達にはそれぞれ独自のアドバンテージがあった。
各々、他には無い魅力で横島を振り向かせる事が出来るだろう。
それならば、自分には何があるのか?

何も無い。
少なくとも、横島を振り向かせるために使えるような何かを持っていないのは確かだった。
そんな焦りもあり、半ば騙されていると知りつつも、タマモの言うがままに色々と試してみたのだが、やはり無理だったようだ。
自分には、横島のためにしてあげられる事など、何一つ無いのかもしれない。

はぁ、と力無くため息をついたその時、突如うなじが逆立つような感覚に襲われた。
咄嗟に宙を跳ねてその場から離れ、霊波刀をいつでも出せるよう身構える。
だが、周囲には何の気配も無く、何かが潜んでいる様子も無い。

何かを感じたのはほんの一瞬だった。だが、その一瞬でシロの全身には嫌な汗が浮かんでいる。
先ほどの感覚の正体を探るシロの視線の先には、一台の貨物船が停泊する港があった。


























出された紅茶を味わうと、西条は小さくため息をついた。
怪我でもしているのか、カップを置くその仕草は何処と無くぎこちない。
普段は依頼を持ってきてくれたにしろ、別の用件にしろ、すぐに話に入るのだが、今日は少し様子が違っていた。
怪訝な表情を浮かべ始めた美神達に気付き、ようやく重い口を開き始めた。

「ところで……シロちゃんの姿が見えないけど、彼女は外出中なのかい。」

「シロなら、横島君と散歩に行ってるけど……今日はシロに用事なの?」

首を傾げる美神をよそに、そうか、と西条は呟くだけだった。
どうやらよほど口にしづらい話題なのか、なかなか次の言葉を話そうとしない。
話をしようとしない西条に代わり、今度はピートが美神達に質問してきた。

「あの、美神さん。今日はタマモちゃんは?」

「タマモ? タマモならどこかで遊んでると思うけど。
あいつ携帯はかけてくるくせに、かかってくるのは滅多に取らないから、連絡取るのは難しいでしょうね。」

少し考え込んだ後、ピートは席を立った。

「すみません、西条さん。それでは僕は失礼します。」

「ああ、ゆっくりと休日を楽しむんだね。」

目を丸くする美神達に会釈し、そのままピートは帰ってしまった。
一方の西条は、まだ考えがまとまらないのか、空になったカップに目を落としている。
理解できない展開に、美神も流石に苛立ちが募ってきたのか、表情が険しくなり始めていた。

「……令子ちゃん、僕も報告書には目を通しているんだけど、実際に見届けた君達の方が詳しいだろう。
この件について、詳しい話を聞かせてくれないだろうか。」

そう言い、取り出されたファイルには、過去に美神達が解決したある事件の報告書が挟まれていた。
それを手に取った美神とおキヌの表情が険しくなるが、ルシオラは自分の知らない過去の事件に首をかしげている。

「だからシロの事を聞いたって訳ね。でもこの事件はとっくに解決してるし、何年も前の話よ。
今更私達の話を聞いたところで、何か新しい発見があるとは思えないんだけど。」

「確かに、僕もすでに終わった件だと思ってたよ。少なくとも昨夜まではね。」

その含みのある言葉に、美神が聞き返す。

「昨夜? 昨夜何かあったの?」

「――――痛むんだよ。」

ポツリと呟かれた西条の言葉。

「――――あの時の古傷が痛むんだ。」

あの時、人狼の霊刀で斬られた傷跡が、昨夜からずっと痛み続けていた。


















陽が落ちてからも人が行き交う繁華街。むしろ陽が落ちてからが本番なのかもしれない。
酔いが回り、ろれつが回らなくなり、足取りすらもおぼつかないような者もちらほらと見受けられる。
皆一様に浮かれ、一瞬の快楽に身を委ねているように見えた。

だが、その人ごみの中を、明らかに周囲と違う雰囲気をまとった一人の男が歩いている。
無造作に伸びた黒髪と、ロングのレザーコートを身に纏うその姿は、明らかに周囲のサラリーマン達に比べると異彩を放っていた。
普通の人間では外見の異様さしかわからないだろうが、見るものが見れば気付いただろう。
その男が人間とは違う匂いを放っていた事、そして、その黒革のレザーコートに筒状の長物を潜ませていた事を。

その時、澄んだ音が繁華街に響き渡ったが、その音に気付いた者はいない。
ましてや、その音が鍔鳴りだという事に誰が気付けたであろうか。
男の足取りに迷いは無く、その目的の地へと辿り着くため、ただひたすら歩き続けていた。












皆様、お久しぶりです。
既に記憶のはるか彼方かとは思いますが、久しぶりの『出向大作戦』であります。
覚えていて下さった方も、初めて御覧になる方も、楽しんで頂ければ幸いです。

えー、とても季節外れですが、舞台は春真っ盛りです。
いっそ4月くらいまで更新を引っ張るのもアリかと思ったのですが、流石にそろそろ完結させたいので、更新と相成りました。
……相変わらず『話が長くなる症候群』に悩まされてますが、どうぞ最後までお付き合い下さいませ。

[mente]

作品の感想を投稿、閲覧する -> [reply]