2866

うた

 歌の文句ではこの日は決まって雪の日。

 だけど、歌の文句のようにはいかないもので、天気ばかりはどうにもならない。

 ぴんと澄み冷えた空気に、吐く息の白が浮かんで消える。

 星々の冴えた色を包み隠す空の青は、この日そのものを覆い尽くすかのように清涼に晴れ渡っていた。



 【うた】



 みんなでいる時は、たしかに楽しい。

 だけどいつでもみんなの真ん中にいるあのひとを見ると、胸がちくりと痛む。

 早朝から街に響くこの歌のように、二人きりでいたいのに。

 歌のように特別な時間を過ごしたいのに

 いつでも誰かがそばにいる。

 散歩帰りの『今』と同じような、少しの寂しさ。

 散歩の時には独り占めできるのに。

「拙者は一体、どうしたのでござろうか?」

 呟いてみても、答える者はいない。

 ただ、耳の奥で響く鼓動は明らかに、散歩で刻むリズムとは違うリズムだということだけは―― 理解できた。























「飾り付け終わったでござるよーっ!」「私も」

「えっと……シロちゃん、タマモちゃん―― これって………単に好きなもの?」
 星とモールに並んで樅の木に飾り付けられたのは、何枚もぶら下がる短冊。

 彼女が星に託した願い事は『さんぽ シロ』。

 あのひとを独り占めしたくって
 二人だけの大切な時間が欲しくって。
 想いを込めて書いたのに。

「七夕の時と同じボケをするな―― っ!!」
 何故か怒られた。
 個人的にいろいろあってしばらく書きから遠ざかっていましたが、久々に書きました。
 やはり書き手は書かないといけません。来年はせめて二月に一本ペースで……。

[mente]

作品の感想を投稿、閲覧する -> [reply]