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【夏企画】夏風邪

<<SIDE:宿木 明>>






「うぅぅ……頭がガンガンするぅ〜。
 ノド痛い〜は、鼻水が……ぁ、ぁ……っくちゅんっ! は、は……くしゅっ……」

「大丈夫か初音?」



あの初音が、怪我や病気とは無縁、元気がとりえのあのケモッ娘が、バベル医務室のベットにふせって、赤い顔して汗だくになって、苦しそうにひーひーいってる。
こいつにゃわるいけど、マジに珍しい光景だ。
いつもとは逆だな……
だって大抵そんな目に合うのは、医務室やら病院やらの常連である――ま、それはもちろんこのバカが暴走するたびに、がぷっ! あぐっ! と、やられまくってる所為なんだが――このオレのほうだからな。
ほんと、らしくない光景だ。



「ぁ、あきらぁ〜」

「泣いたって駄目。自業自得だ。
 いくら暑いからって、調子乗って ぱかすか冷たいもんばっか飲み食いするからそーなるんだ。
 おまけに、腹出して寝やがって……いい機会だ。反省しろ」

「うぅぅ〜」



ったく、いい年こいてなにやってんだか。ガキかってーの。

しかしまぁ、あんまイジめるのも可哀想だ。
このクソ暑いさなか熱出して、マジでしんどいみたいだし……何より、滅多に無い病気――っても、夏風邪をちっとこじらせただけだが――で、だいぶ弱気になってるみてーだしな。
そろそろ勘弁してやるか。



「くるしー……明ぁ、くすりぃ……そこに賢木先生がおいてったヤツが……」

「クスリ?
 あぁ解った、コレだな? 今飲ませてや……」



そうそう、こんなんはクスリ飲んで、おとなしく寝てりゃすぐ治る。
初音のヤツに飲ませてやろうと、言われたクスリを手にとって……オレはびきっと固まった。
や、だってコレ……
初音のゆークスリってヤツは、カプセルだとか錠剤だとか、そーゆー”飲み薬”じゃなくて……



「おま、コレ座薬じゃねーか!?」

「うん。ニガいおクスリはヤダっていったら、コレ使えってせんせーが……」

「14にもなってワガママ言うな!
 てか、普通は座薬の方がいやだろ!?
 だいたい、こんなもんオレにどーしろと……
 お、おい……まさか……」



な、なにこれ!
なにしてんの賢木せんせー!?
てゆーかこれセクハラじゃないのか!?

……って、いやいやまてまて……何考えてんだオレは……

いかに初音とはいえオンナのコだぞ? 年頃だぞ?
いくらオレが保護者代わりだからっつーて、こんなんまでオレに面倒みろとか、そんなワケねーだろ、なぁ?
常識的に考えて……



「明やって……
 初音ひとりじゃできない……」

「って、うぉぉおい!?」

「せんせーも明にしてもらえーって……
 『アナ間違えんなよー♪』とか言ってた……どーゆーいみだろ?」

「あ、あんのセクハラヤブ医者がぁ〜!!
 ……って、ちょ、ま、待て! 何をしとるかお前はぁ!?」

「はぇ? だって、お尻出さないと……」



タオルケットを剥いだかと思うと、ベッドの上でもそもそと、初音は”準備”をはじめやがった。
オレの見てるまん前で。

汗に濡れた白いパジャマは、薄らと透けて肌に張り付き、下着の線やらなにやらがくっきりと浮かび上がってる。
もちろん、カラダのラインもばっちり……こいつ、スレンダーな様でいて、出るとこぁちゃんと出てるんだよなぁ。
いや、そりゃ流石に朧さんとか、不二子さんとかに比べれば、ささやかなモンかもしんないけど……
でも、初音のそのささやかなモンが、汗に濡れたパジャマ越しにベッドに押し付けられたまま、ぐにーっ むにーっ とやわらかそうに、形を変える様子はなんかこう…… グッ! とくるものを感じるな。

んで、そのままのカッコで蹲って、くいっとお尻を高く上げた悩ましい姿勢をとったまま、初音はパジャマのズボンに手を――



「……って、待て待て待て!
 ちょ、こ、こら脱ぐな! 脱ぐんじゃあない!!」

「だって、脱がないと入れられないよ? ……明がやりやすいようにしなきゃ」

「いくらなんでもそりゃヤバイだろ!?
 や、やらないからな! オレ絶対やらないからな!!」

「やぁー……明にしてほしいのにぃ……」

「だから脱ぐなってばーっ!!」



このバカ、まさか熱と暑さとで、脳ミソがトロけちゃったのか!?
いつにも増して、言動がアレだぞ!?

――がばっ!

背中から組み付くようにして、オレは初音を止めようとした。
ズリ下がりかけたズボンから覗く、目の前のぷりぷりとした破壊力抜群の白い何か……それから必死に目をそらしながらな!
病床とはいえこのバカは、オレより腕っぷし強いのだ。
オマケに、ある意味暴走してる……全力でかからなきゃ止められない。
……てか、当たってるしッ!? 
ぽよんぽよん あたってるよおいッ!?



「は、ぁ……ん、ん……んくっ……」

「へ、ヘンな声だすなーーー!?
 ……み、見えない分……そ、その色々と、あ、ああ、あらぬ想像を……」

「だ、だってぇ……ぁ、んぁ……明の手くすぐった……ぁ、きゃふっ!?
 それに……ぁ……な、なんかカタいのが当たって……ぁ、あんっ♪」

「や、こ、これはだなぁ……」



……この時、オレの心の中に邪な考えは少しも無かった……そういえばウソになるだろう。

でも、考えても見てほしい。
オレだって健康な青少年……しかも思春期まっさかりなんだ。

そんなオレが、半ケツ状態の初音と、ベッドの上でぴったり密着、汗まみれでくんずほぐれつ……そんな状況に置かれてだ。
それで、身体……というかぶっちゃけ下半身の一部分が劇的な反応を起こしたとしても、そいつは止むを得ないよな?
誰も、オレを責められないよな?
いや、むしろオレのこの反応は健康な青少年なら、当たり前の仕方の無い事……
そう、情けなくも思いっきり 『前かがみ』 になってしまったとしても、おかしなことなんか全然無いのだ!!

……やばい。
なんかもー初音だけじゃなく、オレも限界が近いかもしんない。



「くぅ〜〜ん……あきらぁ……はやくぅ……
 初音、もうがまんできない……」

「ぶふぅっ!? は、鼻血が……」

「ぁ、や……は、ぁふん♪」

「だ、だぁぁぁッ!! 
 ど、どどどどーしろってゆーんだぁぁぁ!!?」
















* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 
















 【数日後】



なんて事は無い。
オレはあの時病室から、さっさと逃げてりゃよかったんだ。
それで、看護婦さんなり何なりを探して……それで丸くおさまった。
あんなヤバイ事にはならなかった。

ふ……今更んな事に気付くなんてなぁ。
オレも、だいぶ慌ててたらしい。

それにしても……



「ううう……ち、ちくしょう……あんなあぶねーマネさせやがって……
 ゲホゲホッ
 オマケに風邪まで……げほっ!」

「明、しっかり!」

「あーもー黙れ。頭に響く」



初音のヤツ全快してやがる。
風邪はヒトにうつせば早く治るってホントだったんだな。
オレなんかおまえから貰った風邪、思っくそこじらせまくった挙句、入院までさせられてんのに。

一応、悪いと思ってるのか、初音は毎日お見舞いに来る。
病室できゃんきゃん騒いだり、お見舞いの果物をパクついたり……とてもそうは見えないけど。

でも、コレこそいつもの光景だ。
ベッドにふせったオレ、枕元で騒ぐ初音。
自分でもヘンだって思うけど、落ち着くとゆーか安心するんだ。

うん。
やっぱ、初音は元気でなきゃな。




「明……ホント、だいじょーぶ?」

「あー、おかげ様でな……」

「そっか……ごめんね?」

「……もーいーよ」




しゅーん……と、縮こまる初音。
あ〜……またちっとイジメすぎただろーか?

い、いやな? そりゃーオレだって、役得というかなんと言うか、他でもない初音相手にあんな事、嬉しくない訳がないんだけど……
まぁ、それはそれ、これはこれだ。

ともかく、初音のヤツちゃんと反省してるみたいだな。
コレでもう二度とあんなマネは……

……でも、オレは甘かった。
このバカをまだまだ甘く見ていた。



「でも、初音がきたからにはもー大丈夫!
 コレさえあれば風邪なんか一発で!」

「ちょ……ま、待て、お前が手に持っているそれは……
 ま、まさか……」



初音が手にしたそれをみて、オレはまたびきっと固まった。
見間違えるはずも無い、てゆーか暫くはもー見たくも無かったモノ。
この騒動の全ての原因。

そう……座薬が握られていたのだ!



「この前は、明のおかげで初音の風邪治ったの……
 だから、今度は初音が明に……そー思って賢木せんせーから、新しいのもらってきた!」

「あ、あのヤブ医者めぇ! 絶対面白がってやがるな!?」

「さぁ! ズボン脱いでお尻だして!!」

「い、いやいやいや……いい! いいから!! 
 オレは一人で出来るから……っておい初音、よせ! やめてくれ!」



しかし、初音は耳を貸さず、ベッドにごそごそと潜り込んで、オレのズボンに手をかけてきた。
オレは必死に抵抗したけど……



「や、やめろー!?
 ぬ、脱が……い、いやーー!? やめてー!?
 ぱ、パンツから手を離……ああーーーっ!?」

「いーからいーから、全部初音に任せるの! そぉれッ!!」

「いやーーーーー!?」



――ずるぅッ
そいつは、無駄な足掻きだった……
だいたい、風邪ひいてるときでさえ、このバカはオレより強いのだ。
風邪が治って元気いっぱい、そしてまたまたある意味で暴走してやがる今の初音に、ヘロヘロになった今のオレがかなうワケなんてないんだよな……
初音のバカにされるがまま、オレはベッドに組み伏せられて、ズボンをずるっと……

つか、なんだよ初音! ものすごーくいい笑顔しやがって!?



「さ、いくよ〜? えーい!」

「あ、ちょ…だ、だめだってーッ!?
 頼むから、ま、待っ……

 ぎにゃあああ ー ー ー ー ー !!!?」



……結局……初音のこの献身的な介護が功を奏したのだろうか……
オレはすぐに全快した。

でも……なんでだろうな?
何かこうヒトとして……いや、男として大事なものを、根こそぎゴッソリ丸ごと全部……失くしちまった気がするんだ……

あ、あは……あはははははははははははははははは……



はぅぅ……(泣)




























「う、うぅぅぅ……し、尻が……
 やいこら、初音! 裂けるかと思っただろーが!?
 あんな思っきりすることないだろ!?」

「ま、まぁまぁ、いいじゃない。過ぎた事は忘れよー!
 それはともかく、コレで明と初音とは、尻の穴のカタチまでシリあった仲とゆーことになるね」

「くぅっ……汚された……汚されちまった……!
 もう、お婿にいけない……」

「だいじょーぶ!
 ちゃんと初音が責任とって、明のこともらってあげるよ♪」

「やまかしいっ!!」






おしまい
座薬は、風邪薬というよりは解熱のためのお薬なのですが、そこら辺は大目に見ていただけると幸いです。

夏で何か → 暑い・熱い → しんどい → 夏風邪 → それをネタにイチャつくふたり → 風邪グスリは座薬を使って……

こんな感じで連想してって、出来たのがお話の元となる小ネタでした。
それを更に企画用に、色々と手直しして 出来たのがこのお話です。

夏に風邪ひくと、その辛さは冬の時の比じゃないんです。
夏風邪ってのは暑くて熱くて、もう本当にしんどくてキツいものなんです。
その思いを文章に……と想ったのに、なぜかこんなおバカなお色気のどたばたネタに……

こんなんですが、突っ込み・ご指摘など、いただけると幸いです。

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