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夏への扉
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「ルシオラ……俺は必ずたどり着いてみせる」
光化学スモッグでくすんだ夕日を、思い出が焼き付いた東京タワーから見つめていた。
大都会の喧噪も、ここには届かない。
展望台の上ではレインボーブリッジすら揺らす強い風が体を叩くが、チャクラを自在に操れる俺にはもはや関係が無い。
もしチャクラを回せなくとも、108の双文珠がある。
その気になれば、日本の天候くらいは操れる。
もっとも、そこまでの霊力発現は最高指導者のキーやんサっちゃんに止めといて、と言われているが。
「……全く、人外だな」
自嘲した笑いが顔に浮かぶ。
魔族因子の不活化に成功し、能力のみを活用できる半魔半人。
ルシオラが見れば、なんと思うだろう。
戦友であるGS疾風の望月や、美千恵隊長やピートにカオスなどの昔の知り合いからは、変わりましたねなどとよく言われた。
今の俺は、ハンズオブブレイドソードカッター使い、戦鬼横島だ。
何も出来なかったあの頃、がむしゃらに前に進んで、つかの間彼女と過ごした日々は黄金の秋にも負けない。
肩を寄せ合って一緒に夕日を見つめたのは、果たしていつのことだったろうか。
それすらも、もう定かでは無い。
アシュタロス戦役以来、俺はひたすら一つのゴールを目指して走ってきた。
日本古来の陰陽六名家を押しのけSSランクGSになったのも、妙神山で行った位相空間での100年修行も、令子や小龍姫も、側にいてくれた女達も、その為の素材でしかなかった。
外道と言われれば、俺は認めるしかない。
だが決して、後悔などしていない。
独善からは、生きている限り逃れられないのだから。
「どうせやるなら、とことんやってやるさ」
宇宙の卵を応用した体内の別宇宙から、もてる限りの文珠を顕現させていく。
およそ1000の文珠を積層にくみ上げ、禁止された時間跳躍を可能にする魔法陣をくみ上げる。
別次元から高エネルギーを呼び込む危険性は承知の上、例え失敗して体が消し飛んでもそれは運命だ。
周りを傷つける事しかしなかった俺には、丁度良い最後だろうから。
「この夕日が、また見られる事を祈って」
wineglassを掲げるように右手を太陽に伸ばし、燃え上がる光を手のひらに閉じこめた。
一気呵成、全霊力を開放する。
「いっけー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
世界がまばゆい光に包まれ、やがて闇に落ちた。
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「ぎゃべっ?!」
意識を回復した瞬間、俺は頭を強打された。
訳も分からず倒れ伏した地面が熱を持ち焼けている。
衝撃は徐々に遠のいていき、霧散した思考がまとまりを形作っていく。
これはなんだ。
まさか天界の追っ手か、いやそれはない。
だとすれば転移は成功したのか、それとも失敗したのか。
そもそもここは人界か魔界か、どこなのだろう。
「……先生っ?! なんでそこにいるのでござるか?!」
「スイカの為にそこまで体を張るなんて、アンタの命って安いわね」
ファインダー越しに覗いた世界は、徐々に焦点を合わせていく。
はっきりと知覚出来たとき、俺の目の前にいたのはシロとタマモだったと分かった。
「先生、いくら美神殿にセクハラしてご飯抜きで埋められていたからとはいえ、スイカ割りのスイカを狙うことはないでござるよ」
「食欲だったり性欲だったり、アンタ色々忙しいわね。人間らしいといえばらしいけど」
まだ幼い二人がいた。
俺の知っている成熟した大人ではなく、少年の香りを残した女性になる前の一瞬を捉えた姿があった。
似合いの水着を着込んでいても、色香よりは愛らしさが前に出る。
周囲を見渡せば、照りつける太陽の陽射しが砂を焼いて、波はそれを冷やそうとやっきに打ち寄せている。
鮮やかなマリンブルーが、空の色を一層印象深くしていた。
「ここは……どこだ?」
立ち上がり砂を払って俺は問う。
シロもタマモも、何を馬鹿げたことを言いたげな顔で言い返す。
「先生がどうしても海に行きたいとだだをこねて美神殿に連れてきて貰ったのではござらんか。もう忘れたのでござるか?」
「あんたが強く叩きすぎたんでしょ。元々バカだけど」
逆行には成功したようだが、何かおかしい。
事務所のメンバーと海に行った記憶はあるにはあるが、ひっかかる。
一体この違和感の正体はなんだ?
……そうだ!
「ルシオラがいたのは、確かタマモが事務所に来る前……と、言うことは」
俺は逆行には成功しても、時間指定に失敗した。
失敗した、のだ。
失敗
失
「はは、あははははは……」
暑いはずの体から、冷や汗が飛び出んばかりに吹き出してくる。
膝が笑い、力が抜け、崩れ落ち、そして泣いた。
「ちょ、ちょっと先生?! そんなに痛かったのでござるかっ」
「……カッコ悪」
そうさ、これ以上ないくらい。
一心不乱に、全てを犠牲にして、ようやくたどり着いたのがここだなんて。
シロやタマモの慰めが、余計心に突き刺さる。
―――俺が望んでいたのは、お前達との再会じゃないんだ。
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「ようやく、此処まで来たか……」
あれから10年、前の世界での経験を最大限生かして再び時間跳躍の体裁を整えた。
あの時シロに頭を殴打されたせいか記憶がこの世界での俺に沈着せず、多少苦労した部分もあったが、そこは連れてきた使い魔【隠嵐《いんらん》】のサポートでなんとか乗り切った。
もしかすると、いくらか忘れてしまった事はあるかもしれないが、それも修正できたろう。
「色々ありがとな、隠嵐《いんらん》」
「いえ、マスターの為に存在する。それが私ですから……」
「……なんだ?」
「マスターが行ってしまわれると、私はどうすれば良いのですか……」
「…すまない。お前に埋め込んだ【コード9】は、寿命を作る。お前はお前で、この世界での生を全うしてくれ。それが俺に出来る精一杯だ。これ以上、俺の我が侭に付き合うことはない」
隠嵐《いんらん》はただうつむいて、震えていた。
顔を上げろ、とは言わず。
俺は右手を差し出すと、引き上げた唇にそっと口づけをした。
「これでお別れだ、元気で生きろ」
「マスター!」
文珠に霊力を流し込む。
駆け寄る隠嵐《いんらん》をすら押しのけ、再び俺は時間跳躍を試みた。
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「ぎゃべっ?!」
「……先生っ?! なんでそこにいるのでござるか?!」
「スイカの為にそこまで体を張るなんて、アンタの命って安いわね」
この頭の痛み、聞こえてくる声、熱い砂浜。
まさか、まさか、まさか。
俺はまた同じ時間に戻ったのか。
「くそっ!! 魂の牢獄だとでも言いたいのか、ええっ?! だがな、俺は諦めん。諦めんぞっつ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「せ、せんせぇ?」
「本格的に壊れたわね、あーあー」
俺はルシオラに会いたい、それがなぜいけない。
会って、抱きしめて、二人して幸せになりたい。
ただそれだけなのに。
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「いかん、KOOLになるんだ!! 原因はなんだっ」
今回も逆行には失敗した。
もう、それは良い。
だけども原因が分からなければ、対策の打ちようも無い。
文珠の時間指定も間違ってはいない、法陣も間違いはない。
霊力にしたって、軽く5万マイトは越えている。
だとすれば、考えられるのは外的な要因か?
サッちゃんにしろキーやんにしろ俺の計画を知ってはいないし、邪魔するにしてもそれは直接的、物理的な阻害になるはずだ。
転移だけに影響させて妨害をする、等と言うことはもう別次元からの作為だとしか考えられない。
「へ、誰だか知らないが、やり通してやるさ」
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「ぎゃべっ?!」
シロ、いい加減にしてくれないか。
思わず、そんな言葉が口をついた。
そりゃ、お前の相手をしてやる時間を取らなかったのは悪かったかもしれん。
タマモにしてもそれは同じだったし、もしかしたら恨んでるのかも知れないが、それにしたって俺をここまで引きつけるほどだったのか。
……まあ、おっぽり出して捨てて来たんだから、当たり前か。
どうにも俺は、女性の気持ちってのには疎いからなあ。
どうにかして理解する事は出来ないもんだか。
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「きゃあっ?!」
またかいって……イヤ待て。
頭の痛みは毎度の事だけど、なんだきゃあッて気持ち悪いな、おい。
「先生?! なんでそこにいるのでござるか?!」
「スイカの為にそこまで体を張るなんて、アンタ相変わらず女捨ててるわね」
「女捨ててる、ってお前ら何を言って……なんじゃこらぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
胸元に山が二つ、くびれた腰に長い髪、細い手足。
間違いない。
この世界の俺は、俺は……女性だ。
胸をモミながら確認しているから間違いない。
リアル脂肪の純乳だ。
いや、そりゃ女性の気持ちを理解したいとは考えたけど、リアル女性になってどうするよ。
「どうしよう、このままじゃアタシ……っていかんっ」
この世界の体が、思考に影響し始めた。
早くしないと、記憶の書き換えが始まってしまう。
〜省略〜
「この世界はきつかったわね……今度こそは」
もうシロに頭をぶったたかれるのにも飽きてきた。
積層魔法陣はどうでもいい、とゆーかどうやんのか忘れた。
俺はこの状態でも確実に跳躍出来るように文珠に念を込める。
(え)(ー)(っ)(と)(、)(と)(り)(あ)(え)(ず)(ル)(シ)(オ)(ラ)(に)(あ)(え)(ま)(す)(よ)(う)(に)
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「えー、今回はバットでは殴られんかった訳だが……」
この水は甘いなー、っておい。
俺、なんで虫になってんだ。
いや、そらルシオラに会いたいとは文珠に込めたけどさ。
蛍になりたいとは一言も書いてない訳で。
どうやって逆行すりゃええんじゃ。
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「ぎゃべっ?!」
つまり世界は平行した無限の可能性が連続した形から成り立っており、その可能性の一つに俺はジャンプしている。
毎回の痛みも、いわばあり得た未来の一つに過ぎないわけで、言わば夢幻と言って良い。
まあ、痛みってのはいたくないんだとおもいたいおれのいいわけ、というかおれいまなんてしゃべってたっけ。
えーとー。
おれ、わかんない。
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「ぎゃべっ!?」
「なんでそんな所にいるんだ、あ〜る」
「やめてくださいよう、首がもげるじゃないですか」
おや、僕はこんなところで何をしているのでせう。
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「あきら様、バットで叩くのは止めてくださいっ!! マジで死にますからっ」
「うっさいわね、アンタはアタシを引き立てればそれでいーのよっ!!」
こんな世界、早いとこ ばいみー☆ しないと
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「ぎゃべっ!!」
ちょwおまwwwwwwいいかげんにwwwwwwwwwwwwww
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かゆ
うま
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いや、もう分かった。
いーかげん分かった。
何十回逆行したかわからんが、どうやら宇宙意志のうっちゃんが邪魔したいらしい。
相手がそれならそれで、こちらにも考えがある。
「どうあがいても同じ時間にジャンプするなら、大丈夫だと思いこんでる相手を油断させちゃれ」
文珠にこっそり『引』そして『半』を込める。
今までよりも、30秒程度前に飛べるよう半分の意味を込めて半だ。
俺は今まであの日あの時、ルシオラに出会った時間を文殊に指定して逆行していた。
たとえば、ルシオラにあった時間を七時三十分、シロがバットをふるう時間を八時十分としよう。
宇宙意思の奴がもし、俺が指定した時間を四十分ずらす事でシロに殴られるように仕組んでいるのならば俺が文殊の指定を「七時三十分引半」、つまり七時二十九分三十秒にすれば実際に飛ぶ先の時間は八時九分三十秒。
シロに殴られるぴったり三十秒前に着地(?)するって寸法だ。
もちろん、以上の事はすべて俺の憶測だ。
よしんば俺の考えがビンゴだったとしても、宇宙意思に感づかれたらそれでおしまいだ。
今はただ宇宙意思が
「なんだまたかよ、懲りねぇなぁ。はいはい、四十分後四十分後」
と、ルーティンワークの繰り返し過ぎでせっかくいい結果が出ても同じようにキャンセルボタンを押してしまうゲーマーのようなミスを犯してくれるように願うしかない。
藁を掴むような作戦だが、これまでと同じ事を繰り返すよりもよっぽど可能性がある。
シロのバットに叩かれる事さえ回避出来れば後はなんとでも、と言うか頭を叩かれすぎて大分転移術も忘れてきてる。
「これを最後にしないと、いい加減やばいからな……」
期待を込めて、俺は文珠にありったけの霊力を流し込んだ。
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「はっ、はっ、はっ」
気づけばそこに、走る自分がいた。
よし、転移成功!!
きっちり30秒ずらすのに成功した、さすが俺冴えてるぜっ。
視線の先にはシロがバットを構え、タマモが退屈そうにそれを眺めている。
このまま走り抜けて、バットを回避すれば連続跳躍だって出来るかもしれない。
なんでもっと早く、この仕掛けに気づかなかったんだろう。
そうすれば、あんなややこしい事態に巻きこまれずに済んだのに。
「って、あれ? 世界がスローモーションになってる?」
転移の影響だろうか、コマ送りにシロとタマモが映る。
「毎回頭叩かれてたから気づかなかったが、あいつらも楽しそうだな。んー、よく見るとあいつらもなかなか……」
最初に会ったときよりも大分成長しているのに気づく。
シロはスポーティーな白のビキニがよく似合っているし、飛び出た尻尾も愛らしい。
タマモも九房の髪に向日葵色のワンピースが鮮やかで、よく見ればハイレグでどことなく色香も漂っている。
さすがかつては傾国の美女たる美貌を誇っていただけはある。
シロにしたって、いずれはアルテミスの姿になる。
連続逆行に成功したら、あいつらとの出会い方変えるのもいいかもしれないな。
それだけじゃなくて、夢は大きく全員参加の大ハーレムっ!!
あれ、なんで俺逆行したがってたんだっけ。
ハーレム作る為だっけ。
……まあいいか、とにかく転移に成功したんだ。
「わはははははっ。熱い夏、高い空、まばゆい太陽、水着のねーちゃんっ! 爆裂ボディーはいずこっ?!」
嬉しさのあまり両手を突き上げようとしたその時、俺の目にしっかりとそれは映った。
「ぼんきゅっっぼんな、巨乳のねーちゃーんっ!!」
徐々に加速する世界で、俺はじっくり見定めようと思わず前のめりになった。
「え、ちょっと、あれ?」
いつの間にか俺はシロのバットのすぐ近くに走り込んでいた。
この体勢はいつもと違う、というかもっとやばい。
瞬間振り下ろされたのはいつものバットで、いやまて、そこ後頭部っ?!
「ぎゃべっ?!」
深い衝撃と共に、世界がまた暗転した。
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「あれ、ここ一体どこだ?」
一面の花畑があった。
ほのかに甘い香りがあたりに漂う。
穏やかな風に乗って聞こえてきたのは、女性の声。
この声は……この声は。
懐かしい、この声は。
「ヨコシマ……ヨコシマ。ほら、こっちに来て?」
丘の向こうで、ルシオラが手招きをしていた。
追い求めたその姿を見て、息をつく間もなく俺は走り出した。
「ルシオラっ!!」
思いを込めて、ぎゅっと抱きしめた。
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「ぎゃべっ?!」
殴打されて、俺は目を覚ました。
「お前は毎度毎度何をしとんじゃーっ!!」
「え、あれ? 美神さん」
「全く、後頭部強打したっていうから見てあげてればこの男は」
美神さんがいつものようにそこにいて、シロとタマモ、おキヌちゃんが俺をのぞき込んでいた。
どうやら、ヒーリングをしてくれていたみたいだ。
って、あれ。
俺、何をしていたんだっけ。
「アンタ、優しくしてやればセクハラばっかりしてからに」
「おキヌちゃんにしたら、俺ホントに悪者じゃないすか」
「私ならいーのかっ?!」
美しいもの、それが乳である。
神は果たして人間をそう作られた、健全な成年男子として乳を見て喜ぶのは寧ろ正常な反応だ。
さすがに黙って見ている事なぞ出来るはずもない。
ん、なんだシロ、そのあきれ果てた目は。
はっ、それどころかおキヌちゃんが絶対零度にっ!!
巨大な山があるから登るのだ。
乳があるから揉みたいのだ。
女はなんで、その辺の塩梅をわからないのか。
でも、口を突いたのは別の言葉で。
すみません、と謝った。
「起き上がりに、なんでだか。すみません」
「ホントに。あんたね、そもそもバットで叩かれたりするのがいけないんでしょ」
「いや、素敵な乳があったもんでついつい」
「えーから、しっかり前見て歩けっ!!」
「え、あ。……はい」
しっかり前見て。
美神さんの言葉がなぜだか胸に染みた。
「ったく。もういいわ。んじゃ、みんなでもっかいスイカ割りしようか」
「いいでござるな」
「私はみとく」
「スイカがあんまり飛び散りすぎないように気をつけてね、シロちゃん」
事務所の皆が楽しそうに笑う。
つと頭を押さえて、見上げた空に入道雲は澄んだ蒼に塗り込んだように高くそびえてた。
さざ波は繰り返し繰り返し打ち寄せては消えていく。
どこにでもある、どこにでもない夏がそこにあった。
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☆後書き☆
「……って、あいつ綺麗にオチが付いたと思って絶対安心してるわね。作者」
「書き逃げなど最低でござる。大体、なんで拙者が先生を毎回殴らないといけないのでござるか」
「私なんか、同じ台詞しか喋ってないわよ」
「拙者らの超感覚で見つけだして、折檻してやるでござるよ」
「……いた?」
「いないでござる。拙者らにも見つからないとは、一体どこへ……」
「案外自宅に行ってみればいるかもよ?」
「あそこだけが作者の安らぎの場でござるからな。行ってみるでござるか」
「ここがあいつの部屋ね。ブートキャンプのグッズおいてあるわ」
「あのびーる腹が鍛えているとも思えんでござるが」
「……何、この書き置き」
「なんて書いてるでござるか?」
【洒落心を忘れた読み手が嫌い。優しい読み手が好き。さよなら】
「「ロケットで突き抜けていきやがったでござる(わね・・・」」
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