Re. 安奈みら取材紀行「蝙蝠屋敷の怪事件」最終章(解決編その3)

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  • No.1
  • 夏みかん
  • 2009-01-04T17:52:33
  • 賛成
連載完結お疲れ様でした。折角の意欲作ですので、超長文になりますが感想を。

<全体的に>
いつもながら、文章が読みやすく、話がなめらかに流れていくのは美点です。
トリックの独創性を云々できるほどミステリーは読み込んでいませんが、トリック自体の論理的な破綻は感じません。
ただ謎解きには後述の問題を感じるほか、福原君が共犯者となる動機の説明の記述が不十分(福原君は羽臼学の孫の一人ですよね?)と思います。
安奈みら先生といえば妄想で、彼女の暴走する妄想が事件の捜査を引っかき回すかと思いきや、少々切れ味不足で、連載途中のコメントにも書きましたが、印象が薄い感じがしました。
また、安奈・福原、横島・おキヌ、樹理・茂という三つのカップルの心情描写にかなりの字数を費やしていますが、本筋に関係する人物である安奈・福原にある程度絞った方がすっきりとしたと思います。

<ミステリーとGS>
ミステリーとオカルトが物語の中で共存するとすれば、
A 一見犯罪、実はオカルト現象(例:悪霊のたたり)
B 犯罪だが、実行方法にオカルト現象を使用(例:殺害に文珠を使用)
C 一見オカルト現象、実は普通の犯罪(例:横溝正史の八つ墓村)
D 普通の犯罪の解決にオカルトを使用(例:被害者の霊に真犯人を語らせる、文珠を使って真犯人の思考を読む)
以上の4つが考えられます。

フェアプレーの定義を、読者に対して必要な事実をすべて開示し、共通の論理的思考に基づいて犯罪が解決されるものとします。
上記のうちA、Bは論理的思考では解決できないし、Dは論理的な根拠なく犯罪を解決しているので、フェアプレーにはならないでしょう。
GSの世界ではオカルトも論理的思考に組み入れられているという見方はありえますが、それでは「何でもあり」になってしまいます。

第1章でフェアプレー宣言がありましたので、私はCのパターンだと思いました。
Cならば、話を面白くするためには、犯罪がオカルト現象である可能性を読者に刷り込む必要がありますが、蝙蝠屋敷伝説部の記述が思いの外少なかったこと、第5章で樹理に「偽の霊障」説を語らせたことから、「あれれ大丈夫?」と思いました。
横島君の文珠を使えなくしたこと、おキヌの幽体離脱を解決の絶対的な鍵にしなかったことは評価できますが、第18話で、安奈みら先生が真相に到達する前に樹理の霊に名指しでなかったにせよ犯人を語らせたのは、失礼ですが「反則では?」と思いました。
当初のフェアプレー宣言から見るとどうだったのでしょうか。
ハードボイルドやスリラーはともかく、GSといわゆる本格派との共存はシリアスな話では結構ハードルが高いのではないでしょうか。

<挿話の必然性>
ミステリーでの挿話は、犯罪の解決に必要であるか、気分転換、またはその挿話自体が面白い場合に、有効だと思います。
おキヌ不妊説(第7章)は犯罪の解決にも気分転換にも役立っているとは思えませんし、かなりの人にとってはそれ自体愉快な話ではないでしょう。
適材適所という言葉もあります。折角思いついたアイディアですから、別のお話で使用したら良かったのではと思います。

<投稿形式>
いわゆる投稿掲示板では、作者と読者の相互作用により作品が形成されていくのが一つの理想型でしょうが、ミステリーの場合は最初からほとんどストーリーが決まっている以上、読者の方も連載途中ではコメントしにくいかも知れません(少なくとも私はそうでした)。
たとえばSACのようなサイトにまとめて投稿する方がしっくりくるかも知れません。

<最後に>
私は、いつも虚心坦懐に読もうと思いながらも、余計なことばかり気になる読者です。
もっとちゃんとした感想を書きたかったのですが、私の力ではこれが限界です。
失礼なことも申し上げたと思いますが、大変な意欲作を見事完結されたことこそ素晴らしいと思います。
今後も楽しい作品を期待しております。

mente

コメントを書く時、せっかく書くのですから、なにかしら良い事が書けたらな、と思うのですが。夏みかんさんのコメントには脱帽ですね。

それはともかく。
長編の投稿だけではなく、それを各所で完結まで書ききる。まずその姿勢が素晴らしいと思います。
もちろん、投稿速度と一定の質の両立を果たしている所もまた、並大抵ではありません。

今回読ませていただいた作品も、GSというシリアス要素もありつつかなりギャグ要素が多い漫画をネタにミステリーに仕立てるという、実に難易度の高い課題に取り組んでおられますが、やはり一定の質を保っておられるので安心して読めました。

構成も変に奇をてらったようなこともなく(挿話であるとか、人によっては違和感を感じるであろう設定はさておき)安心感、安定感のある構成でした。ただ、ミステリーとしては、その安心感は逆に言うと意外性の破棄にもなるので、難しいところではあります。

総じて、実に楽しませてもらえました。

mente

  • No.3
  • あらすじキミヒコ
  • 2009-01-31T17:56:38
  • 中立
>夏みかんさん
三回もコメントを頂き、ありがとうございます。
『文章が読みやすく、話がなめらかに流れていく』『トリック自体の論理的な破綻は感じません』と言って頂けて嬉しいです。

『各章のサブタイトル』は、ネタ探しに苦労して知名度の低い物も使ってしまいました。
これも反省点ですが、以下、もっと大きな反省点です。

ミステリー仕立て(特に主人公の相手が共犯者)にしたことで、伏線の書き方が難しかったです。『共犯者となる動機の説明の記述が不十分』となったのは大失敗。『三つのカップルの心情描写』も、全員を丁寧に描きたかった(後述)だけでなく、「木を隠すならば森の中」という意図もあったのですが、力不足。もっと「人物」を描く力が必要でした。

『第5章で樹理に「偽の霊障」説を語らせた』のは、構成ミス。解決編での真相提示が情報過多にならないよう、早くから小出しにしたのですが、早過ぎて『犯罪がオカルト現象である可能性を読者に刷り込む』のが不十分となってしまったようです。私が思った以上に「刷り込む」必要があったのですね。

『樹理の霊に名指しでなかったにせよ犯人を語らせた』のは、書きながらも悩んだ部分。
この作品で「小説」として書きたかったことに「三カップルそれぞれに、幸せと不幸せの両方を」というのがありました。不幸にも殺された樹理に「幸せ」を与えるためにGSの幽霊観は好都合でしたが、ミステリーとしても活かしたい。でも被害者が全部語っては、御指摘のとおり『反則』。
そこで「ヒントを出すだけで、正解を言うのは探偵役」としましたが、「どこまでがヒントとみなされるか」のバランス判断でミスをしたようです。読者の皆様とのバランス感覚の差は、指摘されて初めてわかる点でした。

『横島君の文珠を使えなくしたこと』を評価して頂けたのは嬉しいです。一時的に使えないという状況も考えましたが、この作品では恒久的に使えないことにしたくて、そこから湧いたのが『おキヌ不妊説』(この作品がなければ思いつかない発想)でした。
上述の「三カップルそれぞれに」の意味でも、おキヌ横島カップルへの「不幸」だけでなく、最終章で主人公がおキヌたちと旅を続ける「救い」の場面に「おキヌたちに子供がいない(出来ない)」というのは活かせると思いましたが、上手く表現できなかったようです。

『GSといわゆる本格派との共存はシリアスな話では結構ハードルが高い』というのは、おっしゃるとおりです。
私の力量では、まだチャレンジしてはいけない分野だったのだと、今、痛切に感じています。
「自分が書きたいもの」と「皆様が読みたいもの」の間に壁があると感じていましたが、今回は「自分が書きたいもの」と「自分が書けるもの」との壁を思い知らされました。
『投稿形式』も、たしかに『たとえばSACのようなサイトにまとめて投稿』できれば良いのでしょうが、広く門戸を開かれているサイトに投稿するだけでも「投稿してよいのかどうか」と考えてしまうレベルです。誰が見ても傑作な作品のみが掲載されているサイトへの投稿など、考えることすら恐れ多いです。その意味でも「まだチャレンジしてはいけない分野だった」のでしょう。

>akiさん
全てにコメントを頂き、ありがとうございます。
それなりの長さで区切るようにしましたが、章が多過ぎることでコメントを下さる方の負担になってしまったかもしれず、申し訳ないです。

未完の長編というのは、前菜(appetizer「食欲をそそるもの」)だけで終わるコース料理のようなものだと思っています。欲が煽られてソノ気になって、そこで終わり。
ただし、前だけでも満足できる場合があるように、未完でも、読者を満足させられるならば許される。
未完の長編SSが多くても、だからOKなのでしょう。
でも私は、到底そのレベルの書き手ではありません(『一定の質』と言って頂けるのも、あくまで「かろうじて投稿が許されるレベル」だと受け止めています)。だから私レベルでは、長編を『完結まで書ききる』ことは、他人様の(しかも公共性の高い)サイトに投稿させて頂く以上、最低限の義務だと思っています。

「安奈みら取材紀行シリーズとして、第二作や第三作を書く時のために」と考えて、今回、美神に関して深く触れなかったのですが、『実に難易度の高い課題』と言われたように、この手の作品を書き続けるのは私には時期尚早のようです。

自分に書けるものは何なのか考えながら、二次創作を続けていこうと思います。
今後も、よろしくお願いします。

mente

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