ザ・グレート・展開予測ショー

THE MOVIE「踊るゴーストスイーパー」 (10−1)


投稿者名:3馬鹿鳥男
投稿日時:(00/ 8/ 7)

第10章「真実」(1)

日が真上に差し掛かる頃、一台のスポーツカーが峠カーブの道路脇に停まる。
その車には赤いボディコンスーツに包まれた栗毛色の髪をした美女と少女二人が乗っていた。
「あの屋敷みたいね」
美神は運転席から双眼鏡を覗き込み、崖の向こうの雑木林に囲まれた屋敷を見て呟いた。
「あそこに先生が居るでござるか」
美神は隣りで車からひょいと身を乗り出し、額に手を翳して嬉しそうにしっぽを振っているジーパンにTシャツ姿の少女をうるさそうに見た。
「そうよ」
「どうでもいいけど・・・この暑さどうにかなんない?」
その元気いっぱいの少女の隣りに猫目のかわいらしいラフな白のワンピースを着た少女がぐったりして呟く。
美神はサングラスを外し、しょうがないなと苦笑する。
「もう少し我慢しなさい。・・・シロ。お前も大人しくするの。」
シロと呼ばれた少女はふてくされて猫目の少女の隣りに座る。
「タマモと1つの助手席に座るのはこの車狭すぎるでござる。」
「嫌なら今からでも事務所の留守番していてもいいのよ。」
美神はぎろっと睨んだ。
シロはうっと引き、しぶしぶ「我慢するでござる」と大人しくなる。
その隣りではタマモと呼ばれた猫目の少女が相変わらずぐったりしている。
美神はそんな二人を苦笑して見てから、サングラスをかけて再び車を屋敷に向かって発進させた。

美神は屋敷から約2km手前の雑木林の私道で車を停め、周りを警戒するよに見渡してからシロ達に振り向いた。
「ここから適地まで歩いて行くから。準備をして。」
「えっどうしてでござる?」
シロは首を傾げる。
「馬鹿ね。罠がしかけてあるかもしれないからでしょ。」
隣りでタマモが呆れた顔をしながら、さっさと車を降りた。
さっきまで元気がなかったが、雑木林の木陰に入り涼しくなったのか元気よく振り返る。
「ほらシロも降りた降りた。」
「そうなのでござるか。」
シロは目を大きく開け、タマモに振り向いてから続いて車を降りた。
美神は車から必要なものを出すように二人に指示する。
「ほら。もたもたしない。すぐに日が欠けるわよ。」
「は〜い」
二人は元気良く返事をする。そして、いろいろな荷物を出していった。
美神はリュックに持ち出した必要な品物を確認して入れていく。
「破魔札が2千枚・・・見鬼君にそれと・・・神通棍が二本・・・なぜこんな確認を・・・横島君がいれば簡単なのに・・・」
その間にシロとタマモは美神に命令され車に木の枝などを乗せ、カムフラージュして隠していた。
「なんでわざわざ隠すでござるか。」
シロはぶつぶつ文句を言う。
タマモはふふんっと笑う。
「馬鹿犬には解らないみたいね。」
「タマモは知っているでござるか。」
シロは目を見ひらく。
「あたりまえでしょ。」タマモは得意そうに笑った。
「ではどうしてでござる?」
シロは手を止めてタマモに振り返る。
タマモも作業を止めて、腕を組んで得意そうに背中をそらした。
「いいわよ。教えてさしあげても。」
「・・・さしあげてもって・・・まあいいでござるか。教えて。」
タマモはシロの耳元に顔を近づける。
「実は・・・美神は追われているのよ。それも警察に。今逃亡中なの。それで痕跡を残さないように・・・って。あだっ。」
タマモは頭を抱える。シロは脅えたように見上げた。
そこには美神がタマモの後ろで拳を作り、冷たい微笑を浮かべていた。
「なにもっともらしい顔をして嘘言っているの!。ほらっ。サボっていないで早くコブラを隠して!」
二人は慌てて隠す作業を開始しする。
美神は鼻息荒くして「ほんとに子供の世話は面倒ね。横島に押し付けられないのがまた腹立たしい」と呟く。
今度会ったら真っ先に横島を殴ると決心する美神であった。

「美神殿。終わったでござる。」
シロは手をぽんぽんと叩いて、美神に振り返った。
美神は道の脇にある岩に腰掛けて、地図を眺めてながら「ごくろうさま」と声を掛け、「それでは出発しますか。」と腰を上げた。
シロとタマモは大きなリュックを背負い、大人しく美神に付いていく。
シロは美神の背中に先程の疑問をぶつけてみた。
「美神殿。どうして車を隠す必要があったのでござる?」
美神は振り返らずに答える。
「盗難防止よ。」
タマモは呆れて「嘘ばっかり」と呟く。
美神はタマモをちらりと横目で見たが、すぐ前を見て何も言わずに歩いた。
シロはタマモに振り向き「どうして嘘なんでござるか?」と訊く。
タマモはジト目でシロを見た。
「あんたってほんとうに馬鹿ね」
「なにをしみじみ言うでござるか。タマモこそ嘘吐き女狐でござろう。」
「誰が嘘吐きよ。・・・シロはちゃんと考えているの?どうして隠すのかを。答えを聞くのは考えていない証拠よ。」
「う・・・」
シロは痛いとこを付かれて、顔をしかめる。
「どうしてって・・・あんなとこに停めたら誰かが持ち去るかもしれないからではごさらんのか?」
「違うわ。」タマモは即答する。
シロは首を傾げて、どうして違うのでござるかと訊ねる。
タマモは馬鹿にしたようにふっと笑い、「あのね」と話は始める。
「あの車には「人工幽霊1号」の魂がコンプリートされているから普通の人には運転できないし、触ることも壊すこともできないわ。」
シロは目を大きく開け、ぽんっと手を叩く。
「そうでござった。あの車、単独で結界が張れるのを忘れていたでござる。」
でもすぐに顔をしかめて、「ならどうして隠したのでござろう」と首を傾げる。
「私も美神の真意ははっきりとは解らないけど、「盗難防止」で無いことには間違いないわ。」
「そうでござるな〜」シロは下を向き、腕を組んで考え込んだ。
タマモはそんなシロを横目で見て笑った。
「だいたい「車を隠す」ことは「自分達がここにいる事を隠す」ことか、「自分達が逃げるルートを隠す」ことくらいね。」
「なるほど・・・それで警察に追われているなんて嘘を吐いたのでござるか。」
シロは感心したようにタマモを見る。
タマモは得意そうに笑った。
「こら、おしゃべりしてないで、ちゃんと警戒をして周りを探って!」
美神は緊張した表情で見鬼君を持ち、前を見ながら二人に注意を促す。
シロは首をすくめた。
「美神殿は何をそんなにぴりぴりしておるでござる?」
タマモはいやし笑いをする。
「シロも経験あるでしょ。・・・好きな人が危険な目に遭っているかもしれないと思うと焦る気持ち・・・」
「えっ・・・もしかして先生の身に危険がせまっているでござるか。」
「多分ね。・・・胸騒ぎがするのじゃないかしら。・・・ほんとにあんな男のどこがいいのかしらね。」
「うるさい!」
美神は振り向いて怒鳴った。
「あんたたち先程から大人しくしてれば、勝手なことばかり言って・・・
ここに来る前に言ったでしょ!相手は上級魔族だって。
あなたたちの超感覚が必要だから連れてきたのに・・・それをよりにもよって!」
「まあまあ、ヒステリィーはお肌に毒よ。それにホントの事言われたからと言ってそんなに興奮しなくても・・・」
「ウッキーッ!」
美神はじたんだをふんだ。
ここに横島がいればすぐ殴れば済むことだが、今はいない。
タマモの言う通りに横島が居ないと不安な自分がまた腹だたしい。
また、嫌な予感もしている・・・これは霊能力者としての感覚で多分確実に危険が横島に迫っている。
それが解かるので余計に腹が立つ美神であった。
その時、タマモは急に真剣な表情になった。
「シッ・・・誰かがくるわ・・・怪しい気配がする・・・・」
美神とシロは静かにしてあたりを見渡す。
シロは首を傾げる。
「そうでござるか?自分はなんとも・・・」
「ふふん。馬鹿犬には解らないみたいね。・・・ほら向こうの方から怪しい気配がしない?」
タマモは屋敷とは反対方向の小道を指す。
美神はタマモが指した方向に振り向き・・・そして頭を抱えた。
そこにはインダラに乗った六道冥子の姿があった。

第10章 第2部に続く。

お久しぶりです。
やっとFF9が終わりました。
忘れているとは思いますが続きです。

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