ザ・グレート・展開予測ショー

核の華(後)


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/ 7/20)

「・・・・・・!」
タマモは、もう制止はしなかった。ディアスのモニターで前方を拡大する。
滑走路に三機のザックが見えた。
「迎撃っ!遅いっ!」
タマモはライフルを数発射ちながら、もう一度洞窟の闇を見た。
「・・・・・!?西条大尉!」
奥からビームが走り、滑走路前方に着弾した。
タマモのいる場所より背後の西条の十式の方が、滑走路上のザックが見えるらしかった。
一機のザックが、その攻撃で撃破された。
残った二機のザックがたじろいだ。
洞窟の奥から、西条の十式が大きくジャンプして、アウムドラを追い越していった。
「飛べっ、MK-U!敵は僕が抑える!」
西条は、MK-Uの手の上のメドーサの身を考えて叫んでいた。
「大尉っ!」
横島は、浮上しかかったアウムドラの背後のハッチに向かって、MK-Uの機体を押し込んでいった。
メドーサを乗せたMK-Uの手が、アウムドラの後部のハッチの上にとりついているタマモのディアスのいる所に差し出された。
「もっと前だよ、横島!」
タマモだ。
「分かった!」
横島がMK-Uのバーニアを噴かし手をハッチに突っ込ませる。
アウムドラが浮いた。
メドーサが、乗り出してディアスの手に飛び込もうとするが、風圧が強く一瞬ぐらっと風に流された。
右の方で十式が、ザックの動きを牽制しつつ走っていた。
「くっ!」
メドーサは態勢を立て直して1メートルほど飛んでディアスの手に乗った。
「ふぅ・・・・・」
横島は安堵の表情を浮かべた。
「大尉を援護してくるっ!」
横島はキッと表情を引き締めると十式の方へMK-Uを向けた。


ジブローの地下の時限装置のカウントダウン表示は、一分前を示していた。
「こんなの!生かして帰すなっ!」
兵士がザックのコックピットで叫んでいたが、十式の動きに押されていた。
「やめろ!!あと一分で核が爆発するんだ!」
「誰だ、貴様は!?」
ガルーダのブリッジで、ICPOの士官がマイクに怒鳴っていた。
「自分は連邦軍の名を与えられなかった少佐だ!(泣)早くお前達も逃げろ!ジブローの核が爆発するぞっ!」
「名もない奴の言う事など信じられるかっ!」
そういう兵の前のモニターには、十式とMK-Uの姿が迫っていた。
「うっ!」
アウムドラが確実に浮いた。
MK-Uのライフルで、ザックのシールドが吹き飛んでいった。
「大尉!横島!戻って!」
タマモは、ディアスの足がハッチに固定されているのを確認しながら、ライフルを射ってザックを牽制した。
「横島君っ!」
横島は、西条の声に振り向いた。
アウムドラが完全に空に浮いているのが見えた。
速い。
十式はザックに向かって射ち、ザックの前が弾着で土の壁を作った。
「大尉っ!先にいくぞっ!」
横島は、MK-Uのバーニアを全開して、全力でジャンプした。
MK-Uは、あたかも飛ぶようにアウムドラのハッチに取り付いた。
西条は、それを確認すると、
「届くかっ!?」
同じくバーニアを全開してジャンプした。
「届けっ!!」
MK-Uの手を十式に伸ばす。
十式を待つ・・・・!
左右のディアスとノモ、ジェムのライフルが、十式の後を追ってジャンプするザックに向かってビームの雨を降らせた。
MK-Uの手が十式の手を掴んだ。
背後でディアスが、MK-Uの機体を支えてくれていた。
「やったね!」
強風が吹き込むなかで、メドーサは感嘆の声を発した。
アウムドラは上昇を続けた。
時限装置のカウントダウンは10秒前である。
第一滑走路の中央に着地したザックに、後続のザックが駆け寄った。
ジブローの上空を二機のガルーダが、急上昇していくのが見える。
「この地球上で逃げられるものかっ!・・・・・ン?」
兵士がそう言った瞬間であった。
地震がきた・・・・・。
二機のザックがよろけた。
と、閃光が二機の機体を隠した。
二基のの核が爆発したのだ。
アマゾンを核の閃光が包んだ。
その閃光を背に受けて、二機のガルーダの機体が激しく揺れた。
ややあって、ジブローから巨大なキノコ雲がくっきりとその輪郭を現していった。
「アマゾンが・・・・・」
「なんてこったい・・・・・」
横島、メドーサ、そしてICPO、地球連邦軍、カオス教の軍人たちが、震動が収まってゆく機体の中でそのキノコ雲を見つめていた。
それは、凄惨な光と雲の狂宴である。


アウムドラのブリッジに入った西条は、思わず嘆息した。
「作戦は、全く失敗だった・・・・・しかも、核まで使わせてしまった・・・・・」
「・・・・・カオス教が、いや、地球連邦軍が腐りきってるんでござる!・・・大尉、これからどうするのでござる?」
シロは、怒りで青い顔を西条に向けた。
「このガルーダを奪ってパイロットだけは宇宙に帰す予定だったが、シャトルはない。宇宙には帰れんな・・・・・」
「アウムドラと言います。」
パイロットシートに座っているICPOの隊員が教えてくれた。
「アウムドラか・・・・・前の方は?」
「スードラとかで・・・・・敵ですっ!」
二機のガルーダの前方に三角翼の飛行機が上昇してきた。
西条は覗き、
「いや・・・・・!待て・・・・オカルトGメンかもしれない・・・・・」
その飛行機は、翼を左右に振って自分に敵意がないことを示した。
「オカルトGメンだ・・・・間違いない・・・・・」
その三角翼の飛行機は、古い爆撃機である事が分かった。
そのコックピットには、ボンバージャンバーを着た鬼道政樹が乗っていることは、まだアウムドラにいるクルーは知らなかった。
背後には、苧立するキノコ雲がくっきりとあった。
当分、消えることのない光と煙と熱の狂乱・・・・・それが、アマゾンを焼いていった。

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