ザ・グレート・展開予測ショー

核の華(前)


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/ 7/20)

ジブローの第二滑走路に残った最後の脱出用シャトルには、カオス教の将兵が殺到していた。
その背後に、雪之丞の運転するエレカが到着した。
「何だ!?」
雪之丞は、シャトルのハッチに群がる軍人達の怒声に唖然とした。
ノアの方舟に群がる動物の光景である。
「定員一杯だって乗せやがらないんだっ!」
「パイロットは一人でいい!怪我人を乗せろっ!」
雪之丞は、その軍人達のあさましい姿を見ているうちに頭に血がのぼった。
自分も獣にならなければ生き延びられないと分かった。
「これからは自分の力で生き延びろ。運がよければ死ぬことはないっ!」
雪之丞は。ジープの後ろに乗る傷兵たちに言った。
「中尉・・・・・!」
雪之丞は、傷兵たちの言葉を無視してシャトルに殺到している将兵達を押し退け、邪魔するものは殴りつけてシャトルのハッチに近づいた。
シャトルの機体が震え始めた。
「力のない者は死があるのみだっ!・・・・力のない者はっ!」
雪之丞は呪文のを唱えるように叫び、殴られれば殴り返し、押し入り、前の兵の肩に掴まって兵の頭の上をいった。
その雪之丞の足を引っぱる者を蹴っ飛ばし、雪之丞は、遂に手をシャトルのハッチにかけた。
自分の顔が鬼のようであろうと思う。
シャトルがズルッっと動き出した。
「駄目かっ!?」
雪之丞の指が伸びた。
と、雪之丞の手首を掴む手があった。
「・・・・・!?」
雪之丞の目がその腕をなぞった。肩・・・・そして、首、顎、その上に薄い唇とせせら笑うような瞳があった。
「・・・・・!!」
雪之丞の手がハッチを掴んだ。
同時に、シャトルの加速に雪之丞の体が乗り、シャトルはジブローの外に出た。
残された将兵の怒声と悲鳴がザッと流れていった。
「運の強い方ですこと・・・・・」
雪之丞を引き寄せた女性、弓かおりが笑った。


ジブローのコントロールルームでは、核爆弾の時限装置のカウントダウンが続いていた。
六分前・・・・・。
第一滑走路を臨むジャングルの中に、三機の生き残りのザックが潜んでいた。
「来たぞ・・・・・」
第一滑走路の奥の洞窟から、二機のガルーダのうちの一機、スードラ(ガルーダは巨大空母の総称)が滑走路に出て来た。
ランディング・ギアのホバーが埃を舞い上げて、その巨大な機体を運んでいった。
発進である。
もう一機のアウムドラ(これも一緒)は、洞窟内でアイドリングを始めたようだ。
「一機目は、カオス教の捕虜も多いようだ。アウムドラの方を狙うぞ!」
「ハッ!」
二機のザックが、ゴソッと腰を浮かせた。
その前をスードラが浮上していった。
まだ格納庫に待機するアウムドラでは、後部のハッチが開き、その上ではタマモとシロのディアスが出迎えの形のままで待機していた。
「先生、大丈夫でござろうか?」
「大丈夫よ、大尉もついてるんだし!」
二人とも心配そうな面持ちで目の前に広がるジャングルを見やった。
左右のシャトル用ハッチでは、ノモ隊が警戒していた。
その足下にも地球連邦軍の捕虜が寄り集まっていた。
「もう時間がありません!」
タマモのコックピットにアウムドラのブリッジに座ったパイロットから督促が入った。
「もう少し待つんだ!」
奥からヘッドライトを光らせたジープが来る。地球連邦軍の兵達だ。
ディアスが銃を構えるが、ジープはそんなものにも無頓着に突っ込んでくる。
「乗せてくれっ!車じゃ間に合わないっ!」
「乗れっ!」
タマモは舌打ちして言った。
ジープが、傾斜の激しいハッチを駆け登ってきた。
MSの足下で、その兵達に銃を向けるICPOの士官達たちの姿が見えた。
「大尉っ・・・・!」
アウムドラのブリッジからの呼び掛けである。誰に向けてのものか分からなかった。
「ああっ!」
「どうしたでござるっ!?」
通信機からの叫び声に、シロはディアスでアウムドラの前方を覗いた。
「敵です!」
アウムドラがこらえきれずに発進を始めた。

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