ザ・グレート・展開予測ショー

時限爆弾(後)


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/ 7/20)

下士官が部屋を飛び出すのを見てから、捕虜将校が胸を張り、作り笑いを浮かべて西条の方を向いた。
「感謝する。私は、君のことを連邦政府に報告して反乱でなかったと証言してやる。」
「黙れっ!アマゾンの自然を破壊するのが地球再建を掲げた連邦政府のやることかっ!僕は、貴官らのためを考えて助けるのではないっ!人質は使いようがある。だから助ける。それだけだっ!」
西条の怒声に将校は黙り、兵に左右を抱えられた。
「捕虜が速やかにガルーダに収容できるように指揮をとれっ!いいなっ!」
西条は、その捕虜の将校に命じた。
兵に抱えられた将校は、頭を前に揺すっただけであった。
「タマモ君、士官の宿舎は分かったか?美神艦長の夫子を保護する約束を果たしたい。」
「調査させたけど、無人だったよ。」


エリア3から伸びる鍾乳洞の一角では、第二滑走路に向かって避難する地球連邦軍の将兵で一杯であったが、その列も途切れ始めていた。
ヘッドライトを点けたトラックが数人の兵を追い越していった。
その奥の鍾乳洞の暗闇の一角で、また石筍が崩れた。
その上から雪之丞の体が滑り降りてきた。
「タイガーさえいてくれれば、こんな無様な事には・・・・」
雪之丞は、退路になっている道路に降りると駆け出していた。
「手を貸してくれっ!」
そんな苦しそうな声に足を止めたくないと雪之丞は思った。だから、薄い光の方向だけを見て走っていった。
横転しているエレカを、数人の傷兵が起こそうとしているのが見えた。
雪之丞は近づく傷兵を押し退けるようにしてエレカを押しやった。そして、エンジンをかける。
「乗れるか?」
雪之丞は、背後の傷兵たちに早く乗れと急かせるとジープを走らせた。


エリア2に戻る闇の中をMK-Uは歩いていた。
コックピットから乗り出した横島は、前方に意思を集中するようにしていた。
よく分からないのだが引っぱられる感覚がするのである。
「・・・・この方向にメドーサさんがいるんじゃないのか・・・・・」
MK-Uはオートマチックで足下の足場を探りながら前進していた。
ジブローの第一滑走路に続く洞窟の入り口では、戦線から戻ってきたノモやジェムが、巨人機ガルーダに乗り込んでいるところだった。
「横島と連絡がとれない?」
ディアスの手の上に乗って下の士官と怒鳴り合うタマモは苛立っていた。
西条の十式が立ち止まって、
「そういえば、横島君はメドーサがいるとか言ってたな・・・・」
タマモが振り向いて、
「じゃあ彼女を捜しに?」
「タマモ君、あとは頼む。時間になったら脱出してくれ!」
「だけどっ!」
「大丈夫だ。間に合わせる!」
西条の十式が、またも洞窟の奥にジャンプしていった。


監獄のあるビルの周囲にも幾つかの破壊されたMSが煙を吐いていた。
「ああ〜もう!なんて頑丈なドアなんだい!?」
ひたすらドアを蹴りつづけていたメドーサだったが、諦めて傍らの壁に寄りかかった。
と、何かがビルにぶつかり、バリバリッと外壁のコンクリートとプラスチックが破壊される轟音が部屋に響いた。
何かがビルを破壊しているのだ。
クレーンかなにかが壁を壊しているような音なのだ。
「・・・・うわっ!」
窓からコンクリートの塊が崩れてその土砂が吹き込んできた。
「・・・・ここだ!絶対にここだっ!どこだ、メドーサさんっ!」
横島は、モニターに映るビルの最上部が崩れてゆくのをのを見守りながら、メドーサらしい人が呼んでいるのを感じていた。
MK-Uの上体をかがませて、ビルの壊れた部分を手ですくう。
「・・・・・!?・・・・ここかっ?」
横島は、外部音声入力のボリュームを最大にして耳を澄ませた。
「横島・・・・!?」
確かにメドーサの声が聞こえた。
「メドーサさん!」
MK-Uのライフルの銃床が、天井らしいところを突き破った。
独房の中からそれうぃ見るとライフルの銃床は鉄の塊に見え、それがコンクリートとプラスチックの外壁の崩れをかき回しているように見えた。
それが抜けるとMK-Uの指が入って天井のプラ板をめくっていった。
「横島!ここだよ!横島!」
「メドーサさんっ!」
横島は、破壊したビルの瓦礫を足場にしてハッチから獄舎のドアの前まで降りていった。
「下がってください。」
横島はドアにプラスチック爆弾を仕掛けたようだ。
「いいっスね?」
小さい音をたててドアの錠前が破壊され、メドーサは奇妙にゆっくりとドアの破片が舞い上がるのを見た。
横島が、そのドアを外に開けた。
メドーサは、そのドアを押すのを手伝って、横島に飛びついていた。
「坊やっ!」
横島はメドーサに抱きつかれて狼狽し、そして納得していた。
「(やっぱり乳がでけーっ!)メドーサさん(の胸)・・・・よくご無事で・・・・・」
「ありがとよ・・・・坊・・・・いや、横島・・・・・・」
「・・・・・・・・」
メドーサの胸にすべて埋まってしまった横島の顔はもはや昇天していた・・・・・」


「メドーサさん、どうして敵の撤退がこんなに早いんスか?」
少し経って、ようやく平常心を取り戻した横島が顔を上げながらメドーサに尋ねた。
「ここは引越し中だったんだ。本気で防戦するつもりじゃなかったのさ。」
「マジかよ・・・・・」
それは横島が聞きたくない言葉だった。
「メドーサさん、MK-Uの手に乗ってください!本隊と合流して、一応本当かどうか確かめないと・・・・」
横島は怒ったように言った。
「ああ・・・そうだね・・・・・」
「?」
横島は、一瞬メドーサの表情が曇ったのに気づいた。
「何か・・・・・あったんスか?」
「何でもないよ。・・・・あら?銀色のMS?」
MK-Uの手に乗ろうとしたメドーサは、MK-Uの後方に接近する西条の十式に気づいた。
「西条大尉のです。手に乗ってください。」
「ふ〜ん」
メドーサが素っ気無く応える。
着地した十式のハッチが開いて、西条の赤いノ^マルスーツが覗いた。
「あと十分でジブローの核が爆発するぞ!!」
「やっぱり・・・・そんなこったろうと思ったよ!」
メドーサは体を強張らせながら、とりあえずMK-Uに体をはりつけるように乗った。
十式はMK-Uの前に立つと、
「急ぐぞっ!横島君っ!」
「了解!」
「間に合うか・・・・?」
西条は十式のバーニアを噴かしてジャンプした。

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