ザ・グレート・展開予測ショー

時限爆弾(前)


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/ 7/19)

エリア2の手前の鍾乳洞では、MK-Uとノモの小隊が、たいして厚くもない防御網を突破していた。
エリア2はエリア1より小さい規模の市街地になっていた。
閑散としていることには変わりはなかった。
横島はその空漠とした鍾乳洞の下の街並みを見て、西条たちと同じ奇妙さを感じていた。
「・・・・・・?」
その時だった。
横島は、メドーサが何かに体当たりしている映像を見たような気がした。
「あれ・・・・・?」
目の前に幕がかかって、キラッときらめくようにその形が空に浮いて見えたのである。
「メドーサ・・・・さん・・・・?」
横島がうめく間に、左後方のハイウエーから銀色の機体が飛び降りてきた。
西条は呆然と立ち尽くすMK-Uを見とがめた。
「どうした!横島君!」
「メドーサさんがいます。」
「なんだとっ!?」
西条は、モニターの右正面のMK-Uのハッチが開き、横島がハッチの上に乗り出すのが見えた。
「メドーサさんがいるんスよ。」
「見たのか?」
「いや。ただ、そんな気が・・・・」
「・・・・・?」
と、エリア2に繋がっている幾つかの鍾乳洞の横穴のひとつから、数条のビームが発射された。
十式とMK-Uの機体が土砂の爆発の中に包まれた。
横島は転がるようにコックピットに飛び込みモニターを見た。
土煙の中を銀色の機体が走った。
その前方にマラッサと数機のザックが斜面を駆け下りてきた。
そのマラッサのコックピットで、雪之丞は快哉を叫んでいた。
「いた・・・・MK-Uだっ!・・・チッ!」
西条の十式がジャンプするのを見た時、雪之丞の脇につけていたザックが打ち抜かれていた。
「MK-Uのできそこないがっ!てめえは色だけじゃねえかっ!!」
が、雪之丞の目に映る十式は早かった。
銀色の残像が見える。
マラッサの腕の動きがついていけない。
「なんてMSだっ!」
押し捲られると直感した雪之丞は一旦後退した。
十式はまたもザックを一機撃破していた。
横島は、その十式を追うが、今見た幻覚が気になって、背後の軍のビルを見た。


「なんだって!?」
タマモは息を呑んだ。
机を挟んで座る捕虜の将校は、信じてくれと言うように周囲のICPOの将兵達を見回した。
エリア1の一角のビルで、タマモ以下の将兵がジブローの士官を尋問していたのだ。
「本当なの!?」
タマモが身を乗り出して怒鳴った。
「あと一時間だ。大人しく捕虜をやってたやるから、早くここを脱出させてくれっ!」
「嘘だっ!核は一年戦争でさえ使っちゃいないんだぞ!」
「南極条約以前は使ってたよ。俺はここの司令が地下にある核の起爆装置にスイッチを入れるのを見たんだ。もう一時間もないっ!」
「解除はできないのか?」
「無理だ。核爆弾は、地下百五十メートルに埋まっている。もう誰も手が出せない。」
「でまかせを言うなっ!」
タマモは言いながらも将校の言うことに嘘はないと直感していた。
「結果的に嘘と分かったら銃殺刑にでもしてくれよ!」


エリア2のビル街には、丘の向こうから戦闘音が響いていた。戦闘はエリア3に移動しているようだった。
エリア3の奥にはジブローの第二滑走路へ続く幹線道路しかない。
カオス教は、ザックを固定して、それで鍾乳石の壁を破壊して少しでもICPOの足をとめようというのである。
雪之丞機も小さいエリアに後退して、十式を振り切ったのだが、そのためにMK-Uまで見失ってしまった。
その時、一機のザックが雪之丞に接触会話をしてきた。
「中尉、後退しましょう!」
「うるせえ!逃げたきゃ勝手に逃げろ!俺はMK-Uをっ!」
「知らないんですか!時間の余裕がないんですよっ!」
雪之丞は聞いていない。
「どうしてなんだ・・・・!どうしてあいつと接触できないんだ?」
そう叫んでいる時は決してMK-Uの出現を想像していない。だから叫ぶのだ。
雪之丞はその最後の言葉を飲み込んでいた。
MK-Uの白い気体が、闇の中に浮き上がっていた。
「・・・・・・・!!」
横島もまた、潜んでいないであろう場所にマラッサを見て、ギョッとした。
間髪いれず横島はライフルを連射させた。
雪之丞が、かわしたように見えたが、鍾乳洞の壁を抉るビームの閃光の手前で、硬質な爆発の光があがった。
マラッサの片腕がもぎとられたのだ。
「ぐあっ!!」
しかし、MK-Uのライフルのパックもエネルギー切れだ。
「くそっ!」
横島は自分の迂闊さを罵りMK-Uを後退させた。
雪之丞は、そのMK-Uの挙動に気づき、片腕のマラッサの機体を前進させた。
「横島っ!カタをつけるっ!!」
雪之丞はマラッサをジャンプさせ、残った腕でライフルを連射した。
MK-Uは、前部に装備したバルカンで反撃しつつ後方へ飛びのいた。が、MK-Uの足が着地した処の地盤が崩れた。
MK-Uの機体が闇の底に転がり落ちていった。
「うわっ!!」
爆撃の土砂の中から突き抜けたマラッサのモノアイが、ギッ!と音を立てて輝いた。
「とどめだっ!」
マラッサが谷間を覗いた。
崩れた岩の中でもがいているMK-Uが見えたが、その間にMK-Uはエネルギーパックを補給していた。
「タイガーの仇だっ!!」
マラッサが射つ!
が、MK-Uもバーニアを噴かして飛び上がりながら射った。
闇の宙空でビーム同士が激突して、エネルギーの干渉を起こした。
その爆発的なエネルギーの解放が、両機を岩肌にめり込ませ、鍾乳壁を崩しながらMK-Uはさらに横穴に転がり落ちていった。
雪之丞機は、腹部に爆発の直撃を受けて石筍に激突して、土砂の中に転がっていった。
そして、静まっていく土砂の中でマラッサのハッチが開くと、雪之丞が飛び降りて一方の岩陰に飛び込んでいった。
同時に背後でマラッサが爆発した。
「くそがっ!!」
雪之丞の拳が、岩を叩いていた。
迷路のような洞窟に倒れたMK-Uは起き上がり、その目を光らせた。
「・・・・・これは?」
横島は感度をあげたモニターを通して周囲を見渡した。
その壁には、さまざまな脇道が一面にあった。
だが、横島は、ひとつの方向だけが気になっていた。
「メドーサさん・・・・?」
横島は、ひとつの横穴が気になってMK-Uをその方向に接近させていった。


エリア1の市街地に戻った西条は、十式のハッチをビルの窓につけると、その窓から中に入った。
「どうなんだ!?」
「いま、確認を取るために、中央コントロールルームに兵を遣ってる。」
「確認するまでもないだろう。この男の言ってる事は本当だ。」
西条は顔に冷や汗を流している捕虜の将校を見た。明らかに怯えていた。
「・・・・・また、地球は汚染されるのか・・・・・」
ドアが開いてICPOの兵が飛び込んできた。
「二基の核は四十分後に爆発します。解除は不可能です!」
「・・・・退去命令を出すにしても・・・・できるのか?」
「ガルーダを二機確保してあります。」
「第一滑走路か?」
「はい。」
私達も連れていってくれ。」
将校が立ち上がった。
「二十分後に全員がガルーダに収容されるように手配しろ!」
「捕虜もですか?」
「当たり前だ!」
「はいっ!」

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