ザ・グレート・展開予測ショー

早苗の来た日 【改訂版】


投稿者名:10番惑星
投稿日時:(06/ 9/29)

早苗の来た日 【改訂版】(GS美神)





「あ〜あ、ついてないな、退屈だわ。」

病院のベッドの上で退屈そうにアクビをかいている少女、足に包帯とギプスをつけている。

「ふふ、あんな大きな事故にあって足の骨折だけで済んだんだべ、綾は運が良かっただよ。」

綾という少女が寝ているベッドの横で椅子に腰掛けリンゴを剥いているのはおキヌの義姉早苗である。

「まあね、でも早苗と一緒に東京に行けなくなっちゃたな…やっと横島さんに会えると思って楽しみにしてたのに…」

「まあ今回は仕方ないべ、ゆっくり養生するだ、東京も横島さんもどこにも逃げないべ。」

「うん、ところで早苗、その事で頼みがあるんだけど。」

「うん?なんだべ?わたすに出来ることなら何でも言ってくれ。」

「早苗さあ前に私の生霊をあんたに乗り移らせたことあったよね、それまたやって貰えないかな?」

「え、それは出来るだども、あんたまさか?」

「えへへへ、そのまさかを無理を承知でお願いしたいんだ、横島さんに是非会いたいんだよね、お願い。」

早苗に両手を合わせて拝む綾。

「ふう、だどもあんた大きな勘違いしてるだぞ、何度も言うけど横島さんはそんないい男じゃないだぞ、凄いスケベだし。」

「それは本人に会ってみなけりゃわからないじゃない?だけど横島さんあの死津喪比女とかいう大妖怪相手に大活躍したんでしょう?並の男の子じゃない事だけは確かじゃない。」

「まあそれはそうだども、会ったら間違いなく夢ぶちこわれると思うぞ。」

「えへへへ、ご忠告ありがとう、それじゃお礼にこれ上げるね。」

「なんだべこれ?」

「東京に行って横島さんにデートを申し込んだ時のために用意したデジャブーランドのアベック入場券、一日でいいからお願いね。」

「ふう、あんたの気持ちはわかっただよ綾、わたすにまかせておけって。」

親友の綾のために一肌脱ぐ決心をする早苗だった。

「東京に行ったら綾のことは伏せといた方がいいべな、おキヌちゃんにいらねえ心配させたくないからな。」







JR東京駅







「あ、いたいた!早苗お姉ちゃん、こっち、こっち!」

「あ、おキヌちゃん、久しぶりだべさー!」

久しぶりに会って手を取り合って喜ぶおキヌちゃんと義姉の早苗。

「かわりないようだな、元気そうな顔を見て安心しただよ。おキヌちゃん。」

「早苗お姉ちゃんも元気そうで何よりです。」

早苗は夏休みを利用して東京におキヌちゃんに会いに来たのである。

「ごめんな急におキヌちゃんに会いに行くなんて言って、迷惑だったんじゃねえか?」

「ううん、美神さんや横島さんもお姉ちゃんに会えるのを楽しみにしてるよ。」

「うーん、美神さんはともかく横島さんはなー…」

「どうして?まだ横島さんの事怒ってるの?」

「そだな、横島さんとはいろいろとあっだからな。あのスケベ性犯罪者め!」

ゴゴゴゴゴゴ…

両拳を握りしめて肩を震わせ怒りをあらわにする早苗。

「あははは……、」

横島のことをスケベ性犯罪者といわれても何も反論できないおキヌちゃん。

「それにしても、綾は何であんな奴のことを…」

「え?何か言った?お姉ちゃん。」

「い、いや、何でもねえだ。こっちの話だよ。」

おキヌちゃんに向かって何でもないとぱたぱたと手を振る早苗。

「シロちゃんとタマモちゃんもお姉ちゃんに会いたがってたよ。」

「うん、おキヌちゃんの手紙に書いてた人狼と妖孤の二人だべ、わたすも会うのを楽しみにしてるだよ。」

というわけで事務所に向かうおキヌちゃんと早苗。


「ただいま帰りましたー、美神さん。」

「お帰りなさい。おキヌちゃん、早苗ちゃんもいらっしゃい。」

「久しぶりだべ美神さん、しばらく厄介になるだ。」

「ふふふ、自分の家だと思ってゆっくりしてってね。」

美神が笑顔で早苗を迎える。

「へー、この人がおキヌちゃんのお姉さんなんだ?私タマモっていうのよろしく。」

「拙者、シロでござる、よろしくお願いするでござる。」

「わたすは早苗っちゅうだ、よろすくなタマモちゃん、シロちゃん。」


「あれ、横島さんはいないだか?」

「横島クンならもうそろそろ出勤してくる頃だと思うけど?」

「お姉ちゃん、横島さんに用があるの?」

「うん、実は明日横島さんにデートして貰いたいと思っているだ。」

ぴしし!


その早苗の一言によってその場にいる全員が固まった。

「さ、早苗ちゃん、今なんて?」

美神は早苗が横島を嫌っている事を知っているだけに、今の言葉を聞いた自分の耳が信じられないという顔で早苗に問い直す。

「はあ、横島さんに明日デートして貰おうと…、わたす何か変なこと言っただか?」

きょとんとした顔でみんなの顔をみる早苗。

「ほら、明日のためにデジャブーランドのアベック入場券も用意してるだよ。」

早苗はデジャブーランドの入場券を全員に見せる。

「でも、お姉ちゃんは横島さんのこと…」

おキヌちゃんは駅で早苗から聞いたことを問い質そうとする。

「ちーす、横島忠夫出勤しましたー!」

その時事務所のドアを開けて横島が入ってきた。

「あれ、早苗ちゃんじゃないか?来てたんだ?久しぶりだね。」

早速、早苗の手を取る横島。

ミシ!

手を握った瞬間、横島は顔面に早苗の渾身の右ストレートを打ち込まれる。

「おおお!」

たまらず吹っ飛ぶ横島。

「はっ、わたすったらなんて事を…、大丈夫だか?横島さん。」

はっとする早苗、どうやら早苗の横島に対するパンチはかつてのトラウマによる条件反射になっているらしい。

「ふふふ、相変わらず素晴らしいパンチだね早苗ちゃん、君が男だったら確実に世界を狙えるよ、残念だ。」

と言いながら何事もなかったように立ち上がる横島。

さすがは横島というところか、彼も世界を狙えるだろう、ただしタフネスさだけだが。

その時横島しか気づかなかったが、ふっと早苗の気配が変わった。

早苗に憑依していた綾が慌てて表に出てきたのだ。

「ああ、ご、ごめんなさい横島さん、もう早苗ったらなんて事をするのよ!」

「わ、悪かっただ綾、知らずにパンチが出ちまっただよ。」

「あ、な、なんだ?」

交互に出てきた綾と早苗に戸惑う横島。

「え?さ、早苗ちゃん?」

そして綾の人格が出ている早苗は横島に何事か耳打ちした。

「え?き、君は?」

「私は綾と言います。早苗の友達なんです、早苗に頼んで憑依させて貰っているんです。」

「私、以前から横島さんの事を早苗から聞いて憧れていたんです、お願いです、私とデートして貰えませんか?」

そして恥ずかしそうに顔を赤らめる早苗。

「おお、あの早苗ちゃんが恥じらっている、初々しいぞ、感動だ!とかいってる場合じゃないよな、…そうか、綾ちゃん…わかったよ。」

早苗に耳打ちされた横島は急に真面目な顔になり早苗に答える。

『おそらく早苗ちゃんは死んだ友達の綾ちゃんの最後の望みを叶えてあげるために憑依させているんだ、その望みが俺とのデートなんだな、よし、綾ちゃんの夢を壊しちゃいけない。」

これまたいい具合に勘違いしている横島だった。

だが、周りにいる女性陣達の目には早苗の耳打ちが横島に抱きついて頬にキスしたように見えた。

いきなりの早苗の行動に色めき立つ女性陣。

「横島クン!」

「横島さん!」

「センセイ!」

「ヨコシマ!」

「あああ、みんなまってこれは早苗ちゃんがだなって、なんでいつも俺が?」

横島の弁解の声を誰も聞いてはいなかった。

「ふふふ、早苗ちゃんに手を出したらどうなるか?わかっているわよね?」

「ひえええ!!!誤解じゃー!」

こうしていつものようにお約束の美神の折檻、(この場合ストレス解消)が始まった。







翌日 デジャブーランド







というわけで次の日、早苗に誘われてデジャブーランドに来た横島。

「横島さん、デートの誘いを受けてくれて嬉しいです、ありがとうございます。」

早苗に憑依している綾が早速表面に出ている。。

「いや、俺こそ誘ってくれてありがとう、綾ちゃん今日は楽しもうよ。」

横島も綾が相手なのを確認したようだ。

「よし今日は綾ちゃんをがっかりさせないようにしなくちゃな。」

横島は綾が心おきなく成仏できるよう頑張ることを誓うのだった、誤解だけど。


そしてその二人を物陰に隠れて追う怪しさ爆発の四人の人影。

何故か四人ともこの暑いのにサングラスに帽子、黒のトレンチコートを着込んでいる。

そのうち一人は白い尻尾をはやしていた。

「あらら?手を組んだわよ。」

「何故?本物のお姉ちゃんならここで右ストレートが炸裂するはずなのに?」

「もしかしたら、あの早苗どのは偽者でござるか?」

「そんなことあるわけ無いでしょう?馬鹿犬!」

「拙者は狼でござる!」

等という怪しい会話をしている四人。

その四人の周りだけ他の客が避けて通っている。


「ねえ横島さん、これに乗りましょうよ。」

「え、いきなりこれから?」

早苗が最初に指さしたのはこれは怖いと評判の絶叫ジェットコースターだった。

ジェットコースターは苦手な横島だが、ここは男として断じて逃げるわけにはいかない。

「おおおおお!!!、ぎゃーー、ぎゃーー、ぎゃーー、ぎゃーー!!!…助けてくれーーー!!!」

横島の顔が恐怖でゆがんでいる。

「あああああ!!!、きゃははは、きゃははは、きゃははは!!」

早苗(綾)綾は喜んでいるようだ。

ちなみに上から横島、早苗(綾)の叫び声と歓声である。


謎の四人組がヨコシマ達の乗っているジェットコースターを見つめる。

「くそー、横島のくせに楽しそうね、なんだか腹が立つわ!」

「あのー、横島さんのあれは本当に楽しんでるんでしょうか?」

「センセーっ、拙者も、拙者も一緒に遊びたいでござる。」

「……ヨコシマ……」

「でも変だな?なんだか早苗お姉ちゃんがお姉ちゃんじゃないみたい…」

早苗に違和感を感じるおキヌちゃん、流石というべきか。


そして横島は早苗(綾)に振り回されるながらデジャブーランドの中を駆け巡った。

「はあ、はあ、はあ、いかんあれに体力の半分は削られてしまった、だが綾ちゃんを幻滅させるわけにはいかん!頑張れ!俺。」

気合いを入れ直す横島。

そしてとても元気な早苗(綾)

「横島さん、次はこれに乗ろう!」

「おう!」

「えーと、次はこれ!」

「おおー!」

「今度はあれ!」

「ういっす!」

とはいえさすがは横島、早苗の言うとおりに引きつった笑顔で一通りのアトラクションに付き合った、しかし疲れ果てて周りにいる美人達にも気がつかない。

「何よ?横島さんてスケベなどころか立派な紳士じゃない、早苗ったら嘘ばっかり教えて、私惚れ直しちゃったわ。」

その事で遂に横島のことをいい具合に勘違いしてしまう綾ちゃん。


そして謎の四人組も横島達の後を追う。

「でも、不思議ね、横島クンが早苗ちゃんにセクハラする様子も見せないなんて?」

「はい、まるで横島さんじゃないみたいですね。」

「センセー!拙者は拙者は…グスン」

「確かに変よね…」

確かにセクハラをしない横島は横島じゃない。

さらに横島好みの巨乳で美人のお姉さんがたくさんいるのに軟派する気配もなければ目もくれようとしない。

「「「「異常だわ!」」」」四人はこの怪奇現象に恐れおののく。


そんな四人の思惑をよそに横島と早苗はある場所で足を止める。

そこはデジャブーランド内にある教会だった。

そこでは花嫁衣装を貸し出して記念写真を撮ってくれるのである。

「横島さん、今日の記念に一緒に写真を撮って貰っていいですか?」

早苗(綾)は恥ずかしそうに横島に尋ねる。

「え、いいのかい?でも俺と一緒に写真に写るのは……」

「いいんですそれでも、私が横島さんとデートした記念になるのなら。」

「そうか…」

一瞬、横島の顔が暗くなる。

そして花嫁衣装のドレスを着て出てくる早苗(綾)。

「えへへへ、やっぱり恥ずかしいですね。」


「………」

自分でもしらずに指をくわえて見ている令子。

「お姉ちゃん綺麗……嘘でも横島さんと…羨ましいな。」

「センセーの横は、あそこは拙者の場所でござるー!」

今にも飛び出しそうになってるシロ。

「はいはい、わかったから落ち着きなさい、馬鹿犬!」

シロをなだめているタマモも気が気ではないようだ。


「そうだ、出来るかどうかわからないけどやってみよう。」

横島は文珠を出すと念を込める。

すると早苗の身体が輝きだした。

早苗の姿が光の中で変わっていった。


「「「え?」」」

早苗が別人になって驚く四人。

「あ、あれは、お姉ちゃんの親友の綾さん!?」

姿の変わった早苗の顔を見て叫ぶおキヌちゃん。

「……」

「そうか、そういうことだったんだ…私、わからなかった…」

「なに?どういう事?おキヌちゃん。」

「綾さんは早苗お姉ちゃんのクラスメイトで一番の親友なんです。」

「綾さんは早苗お姉ちゃんに横島さんのことを聞いていて横島さんに凄く憧れていたって聞いてます。」

「でも、綾さんは先月事故に会ったって……お姉ちゃんの手紙にはそうありました…」

「なるほどそうだったの、その子おそらく凄い勘違いで横島クンを美化しちゃったのね、じゃあ早苗ちゃんはその子のために…自分の霊媒体質を使って最後に横島クンとデートを…」

「はい、たぶんそういう事だと思います。」

「…、」

「…、」

シロとタマモは俯いて声もなく美神とおキヌちゃんの会話を聞いていた。


「どう?これでいいだろ?綾ちゃん」

にっこりと笑って綾本来の姿に変わった早苗(綾)を見る横島。

そして鏡を見て驚く早苗(綾)。

「これ、私の…」

「さあ、一緒に写真を撮って貰おうよ、綾ちゃんの姿でさ。」

「ありがとう!横島さん。」

綾は横島の優しさに感激して抱きついた。


「「「「!!!!…」」」」

声なき悲鳴を上げる四人。

そんな四人の事を知ってか知らずか二人は記念写真を撮って貰った。


こうしてデジャブーランドでの横島と綾のデートは終わった。


「うううう…今日の所は綾さんに免じて折檻は許してあげるわ。」

美神は呟いた。







JR東京駅







早苗が帰る日がやってきた。

「おキヌちゃん、美神さんも横島さんもシロちゃんタマモちゃんも色々世話になっただな、とっても楽しかっただよ。」

「ううん私も楽しかった。」

「ねえ、早苗お姉ちゃん、綾さんのことだけど…」

「ああ、気づいていただか?ごめんな黙っていて、綾にみんなに黙っていてくれと頼まれたんだべ。」

「あの子、どうしても横島さんと会いたいと言うんでな、それでちょっと協力してやっただよ。」

「そうだったんだ。」

俯くおキヌ。

「まったく、本当は一緒に東京に来る予定だったんだけんど、事故にあって足折って全治一ヶ月の大怪我しちまって、綾もついてないだよ。」

「えええ?綾さん生きているんですか?」

「何驚いているだ?もちろんだ、足以外はぴんぴんしてるだよ、元気すぎて困るくらいだよ。」

「じゃ、私の勘違いだったんだ、よかった。」

綾が元気でいることを知って安堵するおキヌちゃん。

「ま、綾にとっては横島さんとデートも出来たし、いいお土産も出来たし、本当に良かっただよ。」

「うん」

「それに、わたすも今回のことで横島さんのことちっとは見直したしな。」

「え?」

「実は綾に身体を貸してやってる間も意識はあったんだ、横島さんが近づいただけで殴ってたら洒落にならないべ、おかげで横島さんの事少しはわかっただよ。」

「えええ?お姉ちゃんまさか?」

「あはは安心するだおキヌちゃん、わたすには山田君がいるだ。」

「だどもおキヌちゃん、あんたももっと積極的にならんと駄目だべ!おそらくライバルは多いだよ、今に誰かに横島さんとられちまうだよ、わたすも応援してるからしっかりな。」

「うん、ありがと早苗お姉ちゃん。」

「時間だでわたすは行くだ、じゃなおキヌちゃん。」

「綾さんに早く怪我を直してくださいって伝えてね。お姉ちゃん。」

「わかっただ、伝えとくだ。」







帰りの汽車の中







「わたすには山田君がいるだ…か…」

窓から景色を眺めながら溜息をもらす早苗だった。







こうして早苗は故郷に帰っていった。

「うふふ、横島さんにもみんなにも綾さんが元気なこと教えてあげなくちゃ、かなり落ち込んでたもん。」

綾が無事生きていることを知って笑顔で事務所に帰るおキヌだった。








終わり









10番惑星にございます。

早苗の来た日の改訂版でございます。

改訂版出すくらいだったらこれを最初から出せ!と

至極ごもっともな事でございます。

はい、叱咤、叱責存分に受ける覚悟にございます。ごめんなさい。

あああ、皆様やっぱり石は投げないでください。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa