ザ・グレート・展開予測ショー

横島忠夫のナンパ曜日【改訂版】後編


投稿者名:10番惑星
投稿日時:(06/ 9/21)

横島忠夫のナンパ曜日【改訂版】後編



メリッサは自ら撃たれるためにワルキューレに飛び掛かった。

その時、飛び掛かるメリッサの目前でまばゆい閃光が起こった。

そしていきなり誰かに抱き抱えられるとその人物はそのまま結界を破り外に飛び出した。

直後、結界の裂け目から聞こえる響き渡る銃声。

「さ、急いでこの場から逃げるぞ。走れるな。」

「は、はい!」

先ほどの閃光で目が眩んでよく見えないが、私は助けてくれた人に手を捕まれて一緒に走り出す。


「く、ふふふ、やられたな。」

「大尉、大丈夫ですか?」

「ああ、なんともない。メドーサはどうした。」

「はっ、何者かの介入があり逃げられました。すぐに後を追いますか?」

「いや、全員動くな、騒ぎが大きくなる、今動くのはまずい。」

「全員、速やかにこの場を撤収!人間に見つからないように注意しろ。」

「しかしそれではメドーサに逃げられてしまいます。」

「なに、私にはメドーサを逃がした奴に心当たりがある、というより人間界でこんな真似の出来る者はそうはいない。」

「そしてこの国では奴しかおるまい。なあ、ジーク。」

「はっ!確かに彼だけでしょう。」

「なーに、慌てなくても奴らが行く場所は大体見当がつく。」

ワルキューレは嬉しそうにニヤリと笑う。

「ジーク、作戦を変更する、後で私の所へ来い!」

「了解しました。大尉!」








美神礼子除霊事務所








「で、この娘を此処に連れてきたわけね、横島クン」

「は、はい、他に頼れるところがなかったもんスから、すいません。」

「はあー、もう仕方ないわね。それで、あなた名前は?」

「私はメリッサ、若月メリッサといいます。」

美神はこのメリッサと名乗る少女が只者ではないことにすぐ気づいた。

「で、あなたを襲った相手はワルキューレと名乗ったのね。」

「はいっ」

「でも、ワルキューレがなんで人間界の一般人を捕らえようとしんスかね?…」

「あの人達は私のことをメドーサと呼んでいました。」

「なんですって?」

「なんだって?」

驚く美神と横島。

「メドーサってまさか、そんな馬鹿な、あのとき俺は間違いなく【滅】の文殊でメドーサを滅ぼしたはずだ。」

「でも、確かにこの子は私たちが月で見た若返った時のメドーサにそっくりだわ。」

「それは、この子を公園で初めて見たときに俺も思いました、でもメドーサから感じた邪悪な感じはまるでしなかったんです。」

「まあ、それでも気にはなったのでそれとなく見張っていたんスけどね。」

「だから、あんたはこの子を助けることが出来た訳なのよね。」

「そうっス。」

「あの…メドーサというのはそんなに邪悪な魔物なのですか?」

メリッサは美神に聞いた、これだけははっきりさせなければならないのだ。

「そ、それは…」

「……」

メリッサの問いに思わず口ごもる美神と横島。

「そうなんですね?」

「実は私、過去の記憶が無いんです。それに普通の人間じゃないようなんです。」

「え?」

「詳しく話してもらえるかしら?」

メリッサは美神と横島に自分の記憶がアシュタロスが滅んだ日以前から無い事を話した。
そして自分が人間離れした身体能力、超感覚を持っている事も

メリッサの話を聞いて美神と横島の顔がこわばる。

「私、最近夢を見るんです。邪悪な魔物の夢です。大勢の人間を殺し、不幸をまき散らす化け物です、もしかしたら私はその化け物じゃないかって思うんです。」

「もし、記憶が戻った時、本当に私が化け物に戻るんじゃないかと怖いんです。」

「あんな化け物になって大事な人たちを手にかける事になるくらいだったら私は……」

「本当に私が化け物だったら死んだ方がいい。」

感情が高まって泣きじゃくるメリッサ。

そのメリッサにかける言葉が見つからない美神。

泣きじゃくるメリッサの頭を優しくなでて指で涙を拭く横島。

「優しい子だな君は……苦しかったろう、でもみんなのために自分が死ねばいいなんて考え、それは違うよメリッサ。」

「え?」

「君が死んだら残された者達がどれほど悲しむか、辛い思いをするか考えたことがあるかい?」

「実はねこんな俺にも恋人がいたんだ、彼女はルシオラという名の魔族だった。」

「え?…」

「でも彼女はもういない、アシュタロスとの戦いのさなか俺が瀕死の重傷を負ったとき、彼女は自分の命を俺に捧げて助けてくれた、だから俺は今生きている。」

「でもね俺は彼女が俺のために死んだと知ったとき、復活できないと知ったとき悲しくて辛くて胸が張り裂けそうになった、俺なんかのために何故彼女がと自分を責めた。」

「そしてあんな思いは俺一人でたくさんだ。」

「君は化け物なんかじゃない。本当にみんなのためを思うんなら、記憶が戻ったとしても戦うんだ、人間メリッサとして誇りを持って大事な人たちのために。」

「横島さん…」

「だから、君もあきらめるな、そしてみんなの所へ戻ろう。」

「はい。」


その時おキヌちゃん、シロ、タマモが連れ立って事務所に入ってきた。

「あー!先生が女の子を泣かしてるでござる!」

「あ、あ、シロ!おキヌちゃん、タマモも、ち、違うぞこれはだなー…」

「ひどいです。横島さん。」

「またセクハラしてその女の子泣かせたんでしょ、ホントに横島って…」

事情を知らない三人はジト目で横島を見る。

「ちょ、ちょっと待て!俺はこの子を泣かしてない、泣かしてないぞ!」

三人の視線にうろたえる横島。


「あれ?、その子昨日の朝車に轢かれそうになった子供を助けた子でござるな。」

メリッサを見つめていたシロが思い出したように言う。

「「「「え?」」」」

「ほら、昨日話したでござろう、拙者が朝の散歩をしていると車に轢かれそうになった子供を我々人狼並の凄い動きで助けた子がいたって、その子に間違いないでござるよ。」

「本当か?シロ」

「確かに間違いないでござる、その子はすぐその場からいなくなったけど。」

黙って俯いているメリッサ。

「そうか…ならなおさらだよな。」

メリッサを見ながら横島は呟いた。その顔は戦士の決意の色が見えた。

「メリッサをワルキューレに渡すわけにはいかない。」

「美神さん、俺ワルキューレを説得してみます、この子は少なくともメリッサと名乗ってからは普通の人間として生活したんだ。」


「横島、私を説得しようとしても無駄だ。」

「「「「ワルキューレ!ジーク!」」」」

驚く事務所の面々。

「ワルキューレ、あんたいつの間に?」

いつの間にか銃を構えた軍服姿のワルキューレとジークが事務所の中にいた。

「私は上からの命令で動いている、その命令はメドーサの逮捕、あるいは抹殺だ、邪魔する者はたとえ横島、お前でも排除する。」

「待てよ!ワルキューレ聞いてくれ!この子はメドーサなんかじゃない!何かの間違いだ。」

メリッサをワルキューレから庇いながら説得しようとする横島、だが

「問答無用!邪魔する者は排除すると言ったはずだ。」

ワルキューレは躊躇することなく横島に向けた銃の引き金を引いた。

ドキューン!

事務所に銃声が響き渡った。


「「「「!!!」」」」

「メ、メリッサ!」

「横島さん…」

横島を庇って銃弾を受けたのはメリッサだった。

メリッサは横島の顔をさわるとそのまま目を閉じた。

「ど、どうしてメ、メリッサ…メリッサー!」

「くう…」

「ワルキューレ!貴様ー!!」

横島は文殊を出すと【滅】の文字を込めた。

そして怒りに我を忘れワルキューレに飛び掛かった。

「そこまでです!」

威厳のある声とともに事務室の中がまぶしく輝いた。

そして横島の文殊が消えていく。

「な、なんだ?この光は?」

「すまんな横っち、試すようなことをして…」

「ですが、特例中の特例を認めるためには仕方なかったのです。」

十二枚の羽を持った人影と茨の冠を頭に頂いた光る人影。

「なーに、メドーサのことは悪いようにはせんよってワルキューレの事許したってや。」
「彼女は私たちの命令で動いていただけなのですから。」


光はふっと消えた。

事務所の中には美神、横島、おキヌ、シロ、タマモしかいなかった。

「あ、あれ?私たち一体何を?」

「そうっすね?俺たち何してたんだろ?」

見ればおキヌもシロタマも惚けた顔をしている。

彼らはここ数時間の間にあった出来事をまったく覚えていなかった。

事務所の中も荒れた形跡はなく人工幽霊一号の記録にも何も残ってはいなかった。








ある日曜日








ここは美神除霊事務所の近くの公園である。

「あら、あの男の子またナンパしに来てるわね。」

「あーあ、あんな下心丸出しで誘ったんじゃ誰も相手にしないわよ。ほら肘打ちされた。」

「あ、懲りずにまた違う子にモーションかけたわ。」

「そしてまた肘打ちを食らうと、ホントめげない子ねえ。」

その女性は身長170cmくらいで上下ジーパンに額にバンダナを巻いた17,8歳くらいの少年に注目していた。

彼はふられてもふられてもナンパに精を出していた。

「うふふ、でもあの子面白いしかわいい子なのよねえ。あんなにがっつかなきゃ誘いを受ける子だっているのにね。でも、なぜかわざとやってるみたいにも見えるのよね。」

女性は時間も忘れて彼をみていた。

「あ、もうこんな時間か、そろそろ彼の迎えの女の子が来るのよねえ。」

まもなく中学生くらいの二人の美少女が公園に現れた。

「ほらほら、来た来た。今日は尻尾のある娘とナインテールの女の子ね。この間は巫女の格好をした高校生くらいの娘も来てたわね。」

少年は二人を見つけると脱兎のごとく逃げ出した。

その少年を尻尾のある方の少女が凄い勢いで追いかける。

「あ、またあの尻尾のある子との鬼ごっこが始まったわ。もはやここの名物行事になってるのよね。彼今日はどのくらい保つかしら。」

「それにしても、あの尻尾のある子の運動神経凄いわね。オリンピックの陸上選手並みかそれ以上よ。」

その少女の足の速さは確かに凄かった。

誰の目にも少年がすぐに捕獲されると思うほどに。

「でも、その女の子からしぶとく逃げ回っているあの男の子だって相当な足の速さだわ。」

そう、逃げる側の少年もただ者ではない。

ありとあらゆる撹乱戦術を駆使して器用というかゴキブリ並のしぶとさというか少女の追跡をかわし続ける。

だが、ついに少女に捕まる少年。

「あーあ、彼とうとう捕まっちゃった。」

「で、二人に首根っこを捕まれて怒られながら連行されると。ホントあの子達を見てると飽きないわ。」

「いいわ。今度あの男の子を見かけたらこちらからデートに誘ってみよう。ふふ彼、私にデートに誘われたらどんな顔をするかしらね。楽しみだわ。」

横島とシロの追い駆けっこを楽しそうに見物していたその銀髪の中学生くらいの女の子は小悪魔の笑みを浮かべるとベンチを立つと公園を後にした。








次の日曜日








横島は先週ナンパしに来た公園にまた来ていた。

「さーて、先週はシロとタマモに邪魔されてうまく行かなかったが今日こそ綺麗なお姉様方と親密なお友達になるぞ。」

「そして、ああしてこおして、ぐふふふっ」

不埒な想像にふける横島だった。

だが、前回ナンパがうまく行かなかったのをシロ達のせいにしているがあの調子では何回やってもうまく行かないのは明らかであった。

それに気づいていないのは本人のみであろう、ただし彼はわざとやっている節も見えるが。

「さーて、今日は誰をターゲットにするかな?この辺りのお姉様方はレベルが高くて目移りするんだよな。」

きょろきょろと周りを見渡す横島。

その動作は第三者の目から見れば怪しいこと極まりなかった。

ひそひそと会話しながら足早に逃げていく女の子達。

「うーん、なにも逃げる事ねえのになあ。」

声をかける前に逃げていく女の子を目で追う横島。

その時だった。

「ねえねえおにいちゃん。これから私とデートしようよ。」

「え?」

横島は声のする方を見た。

そこにいたのはシロやタマモと同年代くらいの長い銀髪の美少女。

そしてその美少女は横島がよく知る人物にそっくりでもあった。

「げえ?おまえはメドーサじゃねえか!しかもコギャルバージョン!」

一瞬怯んだ横島だったが、すぐに霊波刀を右手に展開、左手に文殊を持ち臨戦態勢に移行する。

「メドーサ!お前生きていたのか?やるんなら相手になるぞ!」

一瞬きょとんとする少女。

「メドーサ?誰?もしかして私のこと?ううん、違うよ。私の名前は若月メリッサだよ。お兄ちゃんは?」

コギャルメドーサにそっくりな少女は自分をメリッサと名乗った。

「え、メドーサじゃないのか?」

確かに目の前の少女からは殺気も邪気も妖気すらも全く感じられない。まさしく人間だった。

霊波刀を引っ込め文殊をポケットにしまい込む横島。

「ははは、ごめんよ、俺は横島忠夫。よろしくメリッサ。」

「そういえばこの子、コギャルバージョンのメドーサによく似ているけどやっぱり違うよな。特に胸の辺りが…」

スパーン

「ぬおお!」

メリッサは自分の胸をまじまじと見ている横島の頭をどこから出したのか巨大なハリセンでひっぱたいた。

「私の胸のがどうしたですって?ええ、どうせ私の胸は小さいですよ!洗濯板ですよ!大きくなくて悪かったわね。人が気にしているのに…」

胸を隠して横島を睨むメリッサ。相当胸の事を気にしているようだ。

「いちち、ごめんメリッサ。君が俺の知り合いのメドーサっていう奴にによく似てたもんだから。」

「まあいいわ。でそのメドーサって女の人の胸が私と違って大きかったんだ?」

「ま、まあな。」

「横島はコギャルバージョンになる前の、美神いわくおばはんバージョンのメドーサを思い出していた。」

「おそらくあいつの胸は100cm位あるいはそれ以上あったよな。俺の知り合いの女性陣の中でもダントツだったな。」

「うーん…、正直な話美神さんやエミさん、ミイでも大きさという点では敵わん。確かに小鳩ちゃんも巨乳だが…色気という点でまけてるし…」

「正直な話、小竜姫さまやおキヌちゃん、シロ、タマモの胸はもはや論外だしな。」

等と本人が聞いたら横島は半殺しですまないであろう失礼な事をバカ正直に考えながら、大人バージョンのメドーサの巨乳を思い出している横島。

それにしても思っていることを思わず口に出してしまう癖は相変わらずのようだ。

その横島の独り言を怒りに肩を震わせて聞いているメリッサ。

相変わらず目の前の女の子の心の機微に気づかない、これが横島なのだ。

スパーン!

メリッサにふたたび巨大ハリセンでひっぱたかれる横島。

「なによもう!横島さんがいつもナンパに失敗ばかりしているからデートに誘ってあげたのに、もう知らない!」

「あ、ごめんよメリッサ!じゃあ俺から頼むよ。」

横島はおどけた顔を真剣な顔にしてメリッサの前に片膝をついた。

「メリッサ様、俺とデートしてください。お願いします。」

こういう調子のいい所も横島たる所以であった。

「もう、横島さんて本当に調子いいんだから。」

顔を真っ赤にして恥じらうメリッサ、まんざらでもなさそうだ。

その日はメリッサにとって本当に幸せな一日となった。



メリッサは横島忠夫という人間と友達になり、横島を通じてシロ、タマモという同年代の親友が出来、おキヌ、弓、マリ、小鳩、愛子という頼れる姉も出来た。

そしてそのメリッサにとっての幸せの輪はさらにどんどん広がっていく。














「なあキーやん。」

「なんですか?さっちゃん。」

「これで本当に良かったんやろな。」

「私もこれで良かったんだと思いますよ。なーに、横っちにならメドーサを預けても大丈夫ですよ。」

「…、メドーサを人間に転生させもう一度横っちと会わせる。メドーサの罪の重さを考えると我ながら無茶な話だったからな。」

「しかし、こうなった以上人間としての一生を全うして欲しいですよ。」

「そうやな。甘いかもしれんが滅ぼすことや肉体的、精神的苦痛を与えるだけが罰やないからな。」

「……愛を知る事もまたですね……」

「横っちはたいへんやろうけどな」











横島忠夫のナンパ曜日 【改訂版】後編

終わり









10番惑星でございます。

横島忠夫のナンパ曜日【改訂版】いやはやこれが何ともいえない代物になってしまいましたがな……

最初、軽いノリで書いたつもりの本作品だったのですが……

相変わらず突っ込みどころ満載です。平にご容赦を

で、これで一応重荷は下ろしたと、一服してまた馬鹿話をやりたいと思います。

何?お前はもう投稿しなくていい?ごもっともです(笑)

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