ザ・グレート・展開予測ショー

大気圏突入(3)


投稿者名:NEWTYPE[改]
投稿日時:(00/ 7/15)

雪之丞は、嬉しそうにコックピットで喚声をあげていた。
盲撃ちの艦砲射撃などでは当たるわけがない、と分かってきた余裕でもある。
が、もう一機のマラッサのタイガーは違っていた。
「MK-Uは出てるんですノー・・・・?」
雪之丞より冷静なパイロットであった。
雪之丞と違って、横島と妙な関係がないだけより正確に戦況を把握できるのだ。
今の空域で問題なのは、MK-Uだけであるという判断を持っていた。
十式の存在は知らない。
タイガーは、自分の前に出すぎる雪之丞のマラッサの機体を正面のモニターで見て、本能的な不安を抱いた。
「雪之丞サン、焦っちゃ駄目ですノー!場所が場所ですケン、重力に引かれますノー!」
「だからこそチャンスだって言ったんだろ!!」
雪之丞の声が、ノイズ越しにタイガーの耳を叩いた。
「落とすっ!!」
雪之丞のマラッサのライフルが連射された。
「くっ!」
横島のMK-Uが、その火線に気づいて西条の十式の前に出ようとした。
アーギャマのおキヌのいる部屋が大きく揺れ、下士官たちの悲鳴が部屋を覆った。
「きゃっ!・・・何が起こってるの・・・・・?横島さんは無事なの・・・・・?」
おキヌは近くにあったノーマルスーツを着込むと、ベッドから飛び降りるように流れてオセロを抱きしめたまま部屋を出てアーギャマのブリッジに駆け込んだ。
そこに行けば、横島のMK-Uが見えるかもしれないと思ったからだ。
ブリッジの窓からは、地球の巨大な青さと戦闘の閃光が見えた。
が、それだけだった。
MSの姿を見ることなどはできない。
「横島さん、大丈夫なんですか?」
そのおキヌの声に、傍らのヒャクメが振り向いた。
「なにやってるんですっ!?部屋に戻ってなさいっ!」
その声に美神が気がつき、
「今からじゃかえって危ないわ。そこに座ってなさい!」
空いているシートを指す美神に、おキヌは気が抜けたように座った。
『横島さん、死んじゃ嫌・・・・・死んじゃ嫌です・・・・・』
おキヌの目には、ビームの閃光がひどく強烈なものに見えたからだ。
「大気圏突入まで、あと1分です!」
操舵手の声に応えるようにして、ヒャクメが、
「小竜姫機が片腕損傷してますねー!!」
「何ですって!?大気圏突入を中止させなさい!小竜姫中尉は後退よっ!]
「小竜姫中尉、ただちにアーギャマに帰投してください!大気圏突入は無理ですねー!」
「私はジブローに降ります!この程度の損傷なら、作戦に支障はありません!」
「艦長命令よ!小竜姫中尉!後退しなさい!」


「見えた!」
雪之丞のコックピットの照準が、MK-Uを拡大していった。
雪之丞は、マラッサのライフルをその一点に集中した。
「来たっ!」
横島機は、十式と共に小竜姫機を押しやったが、その小竜姫機に至近弾が爆発した。
弾かれる小竜姫のディアス!
小竜姫は、揺れるコックピットの中で、これでは強がりは言えないと思った。
西条の十式が出て、前方から来るMS隊を迎撃するために火線を張った。
「大気圏突入だ!小竜姫っ!いいかげんにしろ!・・・・・来たっ!?」
西条機の前方で左右に別れる二機のマラッサが見えた。
「大気圏突入、時間ですねー!」
アーギャマのブリッジのヒャクメである。
「小竜姫機を収容するわっ!アーギャマ、降下っ!」
美神の号令に操舵手が、操舵輪を押し込む。
ガクッという震動で、ブリッジにいてもアーギャマが降下するのがわかった。
「横島さん・・・・・!」
おキヌは、オセロを抱いたままうめいていた。
「大気圏突入開始っ!」
「各員の健闘を祈りますっ!」
美神は、マイクをとって西条に叫んだつもりだった。


アーギャマの前方、やや下では、ICPOのMS隊がバリュートを展開しはじめていた。
バッ、バッと開くバリュートは、MSの機体を包んで青空に浮くパラシュートそのままのように美しく見えた。
さらにその前方の空域では、タイガーと雪之丞にはさまれて、ビームを射ち合っているMK-Uがあった。
「・・・・新型だっ!あいつは・・・・・!」
横島は、敵のMSの編隊からひとり離れる奇妙なMSに嫌なものを感じていた。
タイガーのマラッサである。
「強いな・・・・・!」
小竜姫のディアスをアーギャマに押しやった西条は、
「小竜姫中尉!・・・・・アーギャマを守ってくれっ!」と叫んでいた。
「西条大尉!」
小竜姫がモニターの中の十式を見た時、それは横島の戦闘の方向に機体を向けていった。
その銀色の機体が、地球を背景にして美しい白銀の矢に見えた。


「高度を下げなさい!」
激震が始まっているアーギャマのブリッジで美神が怒鳴った。
「これ以上下げるのは危険です!」
操舵手の声だ。
「大丈夫よ!下げなさい!」
アーギャマが、流れてくる小竜姫のディアスを確認していた。
小竜姫は、激震するアーギャマにディアスの腕を伸ばしていった。
しかし、甲板を掴んだ瞬間に小竜姫のディアスは甲板に激突していた。
「うあっ・・・・・!空気抵抗なの・・・・・!?」
小竜姫がうめく間に、
「小竜姫機、収容しました!」
「高度上げなさい。脱出します!」
「後方、対空砲火!弾幕開いてください!」
アーギャマのブリッジのモニターのひとつに意気消沈した小竜姫が映し出された。
「・・・・・地球に降りられたのにっ!」
そのボソッとした声を美神は聞き逃さなかった。
「うぬぼれないでっ!地球でのMS戦はカオス教で教えられたほど甘くないわっ!あとでブリッジに上がってきなさいっ!話がありますっ!」
「・・・・・・・」
モニターの中の小竜姫がうつむいたようだった。


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